紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ!   作:RightWorld

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第1部
第1夜


 

「……いててて」

 

 ものすごい長時間寝てて体が凝り固まった感じだ。体中の節々が軋む。

 

「……寝てたのか。悪い夢を見ていたようだ」

 

 明るいライトが目に入り眩しい。

 周囲を見渡そう……としたら。

 

 おお!??

 

 目の前で、大きな目を見開いてこっちを見つめている女がいたのだ。

 

『女だ! 女の子がこっちを凝視している!』

 

 驚愕の表情。

 信じられないものを見る目。

 

 そ、そんなに見つめないでくれ!

 女子の視線には慣れてないのだ。免疫ないんだ。さらにこの女、そこそこに見れる顔立ちなのでよけいだ。こいつに何かしてしまったのかな? なぜこんなに凝視されてるんだ?

 

 見開かれていた目は、次に細くなり、何か間違ってないかを探すような目に変わり、次いでまた嬉しそうに大きく見開かれると、ぱあっと口が大きく開かれ、頭の後方に花がぱっぱっぱっと咲き乱れた。

 

「けっ、軽巡!!? 軽巡だ! 軽巡洋艦が出たぁー!! ライトクルーザー出たぁー!」

 

 両手を上に上げて万歳のポーズを取って、そっくり返らんばかりに大喜びした。

 

『……どういうこと?』

 

 首を下にして身体を見下ろす。

 国防カラーを薄めたような緑色をした服を着ている。その服に黒っぽい濃い緑のスカーフを巻いている。

 

 ……セーラー服? 下半身もスカーフと同色の、なんとまあ短いスカート。

 

『こ、これは……まだ夢が続いてるの? 寝て起きたというのにまだ夢の続き……』

 

 そこで、はたと思い出した。

 

『というか、これ夢じゃなくて、バカげた転生話の続きじゃないの? で、もしかしてこれ、希望通り艦これに世界じゃないの?』

 

 だがしかし。ここで重大なことに気付く。

 

 セーラー服、スカート……

 

『司令官でなく艦娘になっちゃってる!?』

 

 あの馬鹿神様! 人の話ぜんぜん聞かないで転生させて! あたしは提督になりたかったんだ!

 

 ……あたし?

 

 あれ、一人称が変わっちゃってる。

 男なんだから、自分のことはオレあたしって……

 

 なんで訂正されんの!? もう女子決定!?

 

 ああもう! 先進まないからとりあえず受け入れて。

 それであたしにはどんなチート能力くれたのさ!?

 いやまって、チート能力、付与してくれてるよね? それについてなんも話し合わなかったケド。もしや何もくれてないってことないよね?

 

 スカートのポケットに、何か当たるものがあったので取り出してみると、手鏡だった。さすがは艦娘も女の子か。身だしなみは気になるらしい。

 手鏡で顔を映してみる。

 

 おお、こ、これは……

 

「球磨型軽巡3番艦の、北上……?」

「やっぱ軽巡なのね?! 北上さんかあ!」

 

 目の前の女の子が叫んだ。

 

 なんなんだこれは!

 艦これの世界へ転生したにしては、この目の前の女は何者なんだ? 艦娘では見た事がない。年はどう見ても十代。中学生か高校生の前半。と言う事は同じ軽巡くらいの娘だろうか。最近実装されて知らないだけかもしれない。艦これ暫くやってなかったし。

 

「誰?」

「あははー、わたしはここの鎮守府の提督、三枝紅葉(さえぐさもみじ)。よろしくねー」

 

 もみじ?

 

 もみじマークが真っ先に思い浮かんだ。

 

 ぎゃーっ! オレあたしを轢き殺したじじいを思い出すよ! なんて不吉な名前だ!

 ……待って、提督だって!?

 

 提督と言えば白い二種軍装を着ているイメージがある。だけど、この女は薄いピンクのパジャマを着ている。今日の業務は終わってこれから寝るところなのかな?

 

「もう全然何もできないから、今日戦果上げられなかったら提督辞めちゃおうかと思ってたんだよー。でもやっと軽巡の艦娘、それも北上さんを迎えられたなんて、これでわたしの不運も変わるに違いないわ! 北上さん、わたしを導いてね!」

 

 提督を辞める?

 どういう事?

 艦これ世界なんだから深海棲艦に人類は攻められてるんでしょ? そんな簡単に止めちゃっていいの? 明日の日本の運命は提督の手腕にかかっているんじゃないの?

 

「もう1ヶ月も提督やってるのに、ぜんぜん戦果出せなくて、未だに海域をひとつも開放できないし……」

 

 ど、どういうこと? わかった、無能提督ってことだ! そしてきっとここは流刑地ブラック鎮守府!

 

「あ、いけない11時過ぎた! わたし夜更かしはしない主義なの。おやすみなさい、また明日ね!」

 

『!?』

 

 バムっと照明が落とされ、いきなり視界が真っ暗になった。

 カリカリとどこかで聞いたことのある音がして、オレあたしの意識もそこで途絶えた。

 

 

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