紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ!   作:RightWorld

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第10夜その3

 

 ざあぁー

 

 大海原を疾走する単縦陣の艦隊。

 

 ぶぅ~ん。

 

『敵艦隊のと遭遇が予想されます』

 

「まずは砲撃戦! 当てていくよ!」

「「了解!」」

「敵艦視認! よしよし、最弱の駆逐イ級ね……え!? エリート!?」

「ええ! またズルですか!?」

「なんの! ちょっと硬くて、火力が3倍、雷撃が2倍になっただけだって!」

「なによそれ、インチキもいいとこだわ!」

「当てりゃあいいのよ!」

 

『どうこうせんです』

 

「同航戦だよ! 狙いがつけやすいからよく狙って! 撃てーっ!」

 

 ドドン、ドドドン!!

 どばっしゃーー! どぐぁーん!

 

「おおー、当たったあー!」

「北上さん、すごーい!」

 

 しゅるしゅるしゅるしゅる……ぐわーーん!

 

「あぎゃあああ!」

「北上さん!?」

「北上さーん!」

「げほっ、げほっ、煙で見えない。同航戦は敵も狙いつけやすいのよね」

 

『てきだんが、ちゅうおうかんぱんにめいちゅういしました。ちゅうはです』

『しゅほうだんやくこのよこで、かさいがはっせいしました』

 

「弾薬庫の横!? 消して! 爆発轟沈しちゃう!」

 

『やろーども、ひをけせー』

『おーっ』

『おーっ』

 

「なんなの、このリアルなダメージシーンは。立ち絵の変更だけでいいじゃん!」

 

『らいげきせんです』

 

 やった、雷撃戦まで大破にならずに来れたよ! よーし日本海軍自慢のでっかい魚雷をぶっ込んであげる!

 

『うてるはっしゃかんが、ないぞー』

 

 なぬ!?

 そんなはずは……って、両手の魚雷発射管はどっちも穴が開いている!

 中破なら魚雷戦参加できんるんじゃなかったっけ!?

 

『ぎょらいだけ、なげこめー』

『ぎょらいせん、さんかするぞー』

『えーい』

 

 どっぽーん!

 

「本当に魚雷を手で投げ込んでるよ。それかもしかして誘爆防止の魚雷投棄?」

 

『てきぎょらい、ひだりげん』

『にげろー』

 

「え、またあたし!? 狙うなーっ」

 

 どばばーーーっ、どかーーん!

 

「ぎゃーー!」

 

 痛い、痛いー! おしりが痛いーー!

 

『ぎょらい、かんびにめいちゅう』

 

 片目でかろうじて後ろを向くと、制服の黒っぽいスカートは吹っ飛んで、パンツ丸見えだった。パンツは少々焦げてるけど、幸い穴は開いてない。

 

『しんすいしてるぞー』

『そういん、たいかん』

 

「やめて、よして、見捨てないで!」

 

『たいかんちゅうし。ぼうすいに、ぜんりょくつくせー』

『おーっ』

『おーっ』

『かいせんは、Dはんていです』

『きかん、たいはにより、かんたいてったいします』

 

 1-1-A海域 イ級1隻のパターン1(ただしエリート)

 旗艦:北上

 MVP:北上

 累積EXP

  吹雪:235

  曙 :104

  北上:58

 

 

 帰投への道すがら、大破したあたしを左右から支える吹雪と曙が、あたしをまたいで会話する。

「曙ちゃん、レベルが2にアップしたね」

「まぁ、いい感じ、かな」

「……おめでと」

「北上さんもMVPおめでとうございます。やっぱり主砲の14cm単装砲は命中率高いですねえ」

「……当たっても、ぜんぜん被害与えてないじゃん」

「大丈夫よ。今度はレベルが上がったあたしが、何とかするから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてまたいつものように、へろへろになって帰還すると、妖精さんのムカデ輸送で陸上をスライド移動し、入渠ドック(おフロ)に叩き込まれた。

 お湯の中で服を脱がすのを、吹雪と曙が手伝ってくれる。

 

「北上さ~ん、大丈夫ぅー?」

 

 心配した提督の声が天井から聞こえてくる。

 

「魚雷がお尻に当たって、痛いよー」

「ひへっ!? お尻!?」

 

 紅葉が素っ頓狂な声を上げて頬を赤らめる。

 

「安心してください。スカートは殆ど跡形もないですけど、パンツは無事です」

 

 吹雪が冷静かつ的確に損傷状態を報告する。

 

「うん。ちょっと煤けてただけだわ」

 

 脱ぐの手伝ってくれてた曙も、正確に報告を補足した。

 こんちくしょう、しっかり見られてるし。まあ、あたしもあんた達のしっかり見てたけどさ。

 

『あんしんの、ようせいさんしるしのパンツです。さいきょうです。せんかんのそうこうにも、まけません』

『きょうも、おとめのひぶは、しっかりまもられました』

 

「なにそれ! 戦艦の装甲並ならそれで服も作ってよ! そしたらこんな恥ずかしいことにならないで済むじゃん!」

 

『それでは、あまたのていとくさんたちが、ろぐいんしてこなくなります』

 

「いいよ! 乙女の肌の方を守ってよ、どケチ」

 

 聞こえてくるやり取りに、紅葉は赤面しつつ苦笑する。

 

「声だけじゃなくて、お話してる場面も見えるようにならないかなぁ」

「はあ!? 覗くなこのクソ提督!」

「ま、まだ覗いてないよお! 覗き機能が実装されたら分かんないけど」

「やっぱり! この変態クソ提督!」

「あはは。曙ちゃん、提督は興味いっぱいの思春期だもん。仕方ないよ」

「それより提督。あたしに高速修復材使って」

 

 緩い提督と駆逐艦達の会話を押し退けて、あたしは真面目な声で割り込んだ。

 

「え?」

「まだ時間あるでしょ。高速修復材使ってすぐ戦線復帰するよ。もう1戦くらいできるでしょ」

「だ、大丈夫なの? ほら、疲れた兵隊が途端にしゃきっとするのとか、あれ、いけないおクスリなんでしょ? 薬漬けはマズいんじゃないかなー」

「あたし達はゲーム内のデジタルデータ。ダメージ値だってプロパティーに設定された単なる数値でしょ。データベースの値をいじるのは薬でも何でもないよ」

「え、でも……」

 

 紅葉は少し躊躇ったが、決断した。

 

「分かったわ。それじゃ、使うね」

「ありがと、提督」

 

 

 

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