紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ! 作:RightWorld
ざあぁー
大海原を疾走する単縦陣の艦隊。
ぶぅ~ん。
『敵艦隊のと遭遇が予想されます』
「まずは砲撃戦! 当てていくよ!」
「「了解!」」
「敵艦視認! よしよし、最弱の駆逐イ級ね……え!? エリート!?」
「ええ! またズルですか!?」
「なんの! ちょっと硬くて、火力が3倍、雷撃が2倍になっただけだって!」
「なによそれ、インチキもいいとこだわ!」
「当てりゃあいいのよ!」
『どうこうせんです』
「同航戦だよ! 狙いがつけやすいからよく狙って! 撃てーっ!」
ドドン、ドドドン!!
どばっしゃーー! どぐぁーん!
「おおー、当たったあー!」
「北上さん、すごーい!」
しゅるしゅるしゅるしゅる……ぐわーーん!
「あぎゃあああ!」
「北上さん!?」
「北上さーん!」
「げほっ、げほっ、煙で見えない。同航戦は敵も狙いつけやすいのよね」
『てきだんが、ちゅうおうかんぱんにめいちゅういしました。ちゅうはです』
『しゅほうだんやくこのよこで、かさいがはっせいしました』
「弾薬庫の横!? 消して! 爆発轟沈しちゃう!」
『やろーども、ひをけせー』
『おーっ』
『おーっ』
「なんなの、このリアルなダメージシーンは。立ち絵の変更だけでいいじゃん!」
『らいげきせんです』
やった、雷撃戦まで大破にならずに来れたよ! よーし日本海軍自慢のでっかい魚雷をぶっ込んであげる!
『うてるはっしゃかんが、ないぞー』
なぬ!?
そんなはずは……って、両手の魚雷発射管はどっちも穴が開いている!
中破なら魚雷戦参加できんるんじゃなかったっけ!?
『ぎょらいだけ、なげこめー』
『ぎょらいせん、さんかするぞー』
『えーい』
どっぽーん!
「本当に魚雷を手で投げ込んでるよ。それかもしかして誘爆防止の魚雷投棄?」
『てきぎょらい、ひだりげん』
『にげろー』
「え、またあたし!? 狙うなーっ」
どばばーーーっ、どかーーん!
「ぎゃーー!」
痛い、痛いー! おしりが痛いーー!
『ぎょらい、かんびにめいちゅう』
片目でかろうじて後ろを向くと、制服の黒っぽいスカートは吹っ飛んで、パンツ丸見えだった。パンツは少々焦げてるけど、幸い穴は開いてない。
『しんすいしてるぞー』
『そういん、たいかん』
「やめて、よして、見捨てないで!」
『たいかんちゅうし。ぼうすいに、ぜんりょくつくせー』
『おーっ』
『おーっ』
『かいせんは、Dはんていです』
『きかん、たいはにより、かんたいてったいします』
1-1-A海域 イ級1隻のパターン1(ただしエリート)
旗艦:北上
MVP:北上
累積EXP
吹雪:235
曙 :104
北上:58
帰投への道すがら、大破したあたしを左右から支える吹雪と曙が、あたしをまたいで会話する。
「曙ちゃん、レベルが2にアップしたね」
「まぁ、いい感じ、かな」
「……おめでと」
「北上さんもMVPおめでとうございます。やっぱり主砲の14cm単装砲は命中率高いですねえ」
「……当たっても、ぜんぜん被害与えてないじゃん」
「大丈夫よ。今度はレベルが上がったあたしが、何とかするから」
そしてまたいつものように、へろへろになって帰還すると、妖精さんのムカデ輸送で陸上をスライド移動し、
お湯の中で服を脱がすのを、吹雪と曙が手伝ってくれる。
「北上さ~ん、大丈夫ぅー?」
心配した提督の声が天井から聞こえてくる。
「魚雷がお尻に当たって、痛いよー」
「ひへっ!? お尻!?」
紅葉が素っ頓狂な声を上げて頬を赤らめる。
「安心してください。スカートは殆ど跡形もないですけど、パンツは無事です」
吹雪が冷静かつ的確に損傷状態を報告する。
「うん。ちょっと煤けてただけだわ」
脱ぐの手伝ってくれてた曙も、正確に報告を補足した。
こんちくしょう、しっかり見られてるし。まあ、あたしもあんた達のしっかり見てたけどさ。
『あんしんの、ようせいさんしるしのパンツです。さいきょうです。せんかんのそうこうにも、まけません』
『きょうも、おとめのひぶは、しっかりまもられました』
「なにそれ! 戦艦の装甲並ならそれで服も作ってよ! そしたらこんな恥ずかしいことにならないで済むじゃん!」
『それでは、あまたのていとくさんたちが、ろぐいんしてこなくなります』
「いいよ! 乙女の肌の方を守ってよ、どケチ」
聞こえてくるやり取りに、紅葉は赤面しつつ苦笑する。
「声だけじゃなくて、お話してる場面も見えるようにならないかなぁ」
「はあ!? 覗くなこのクソ提督!」
「ま、まだ覗いてないよお! 覗き機能が実装されたら分かんないけど」
「やっぱり! この変態クソ提督!」
「あはは。曙ちゃん、提督は興味いっぱいの思春期だもん。仕方ないよ」
「それより提督。あたしに高速修復材使って」
緩い提督と駆逐艦達の会話を押し退けて、あたしは真面目な声で割り込んだ。
「え?」
「まだ時間あるでしょ。高速修復材使ってすぐ戦線復帰するよ。もう1戦くらいできるでしょ」
「だ、大丈夫なの? ほら、疲れた兵隊が途端にしゃきっとするのとか、あれ、いけないおクスリなんでしょ? 薬漬けはマズいんじゃないかなー」
「あたし達はゲーム内のデジタルデータ。ダメージ値だってプロパティーに設定された単なる数値でしょ。データベースの値をいじるのは薬でも何でもないよ」
「え、でも……」
紅葉は少し躊躇ったが、決断した。
「分かったわ。それじゃ、使うね」
「ありがと、提督」