紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ!   作:RightWorld

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第12朝から第12夜 その1

 

 紅葉が朝食を食べてると、ピココン! と、スマホのメール着信が鳴った。

 

『これ、やばいくね?』

 

 今日のメールはクラスの男子からだった。なので先日と違って、まあこの題名はあり得る。

 だいたい男子というのは得体のしれない、失礼な生き物だ。メールでなければ、カエルとかウ○チとかを「見てこれ」とか言って、鼻先に突き出しかねないのだ。

 例の学校の情報教科の関係で、やむなくメールアドレスを教えてしまったんだけど、今でも失敗したと思っている。こんな無遠慮に語ってきていい仲じゃないんだけど。それにメッセージチャットを使わずにメールにしたのはなんでだろう。

 

 ふとその題名の文言が気になった。

 

『やばいくね?』

 

 まあガサツな男子なら言いかねないけど、「やばくね?」が正しいだろ。日本語やり直しなよ。

 ……それかまさか。

 

 わたしはスマホではなく、パソコンでメールを見直した。メールがHTMLメールだったことでほぼ確信し、メールのソースを見てみた。特にメールヘッダ部分。

 差出人のアドレスは確かにクラスの男子のだけど、ここは偽れるのだ。

 

 物理的な紙のメールがいろんな郵便局や集配所を経由してくるのと同様に、電子メールはわたしに届くまでにいくつもの中継用のサーバーを経由してくる。メールヘッダーにはその履歴が刻まれているのよ。

 そして案の定、差出人は少なくともウチの男子生徒のメールアドレスにあるドメインとは全然違う、外国のメールサーバーに投函されていた。中継したどこにも男子生徒のメールアドレスのドメインがない。

 違和感あるメール題名は、日本語がお達者でない人が書いたものだったのかもしれない。

 

「このメールも、送った男子君ともども学校の情報教科のネタ行きね」

 

 メールを詐欺師フォルダに移動した。

 

「紅葉ー、学校遅れるよ?」

 

 お母さんに注意され、家を出る時間が差し迫っていることに気付く。

 

「わわわ、ごちそう様!」

 

 食器を片付けていると、お母さんがスマホ見ながらがっかりした声を出した。

 

「今日もお料理サイトが見れないわ。困ったわねえ。今夜の夕食なしでいい?」

「いいわけないじゃん。たまにはネットじゃなくてアナログ回帰して料理雑誌でも見なよ」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「でね、朝のメールって実は学校のいろんな人にも送信されてたのよ。しかもHTMLメールだったでしょ。メール開くと、超エロエロの画像とか動画が再生されちゃうらしくて、学校へ行ったら、メールが見れた人たちどうしで、凄い話が盛り上がっててさ。男子ってやあねえ。まあ一部の女子も混じってたけどさあ。悪意あるサイトだったら、あれ開いた人ヤバいんじゃないかなあ。スマホだとだいたい開いちゃうしね」

「開いただけでもウイルス感染するサイトってあるらしいね。でもそういうところって、警告出たり、繋いでいいか聞いてきたりするんじゃないの?」

「定期的にセキュリティ更新してればね。それだってまだブラックリストに載ってないサイトだったり、対策されてない脆弱性を突かれたらわかんないわ」

「紅葉提督は見れなかったんだよね。なんで?」

「うふふ、そこはね、わたしのパソコンはメーラー、メール専用のソフトを使ってて、テキスト表示しかしないように設定してあるからよ。HTMLメールはソースコードしか出てこないから大丈夫なんだ」

「紅葉提督って学校でもユニークそうだね。それでその男子生徒は、なんでそんなメールを紅葉提督や皆に送ったの?」

「当然本人が送ったんじゃないわ。メール発信元サーバーがその男子のメールアドレスのドメインじゃなかったし。でも送付先はそいつのアドレス帳にある人だったのよ」

「うわっ、もしかしてその子のアドレス帳が流出してたってこと?」

「きっとそうに違いないわ。そんなだからさ、送った先には担任の先生もいてさあ、まあ臨時のホームルームが紛糾しちゃって大変だったわよ」

「おっかないなあ。あ、フタフタマルマル。さっ、そろそろ本日の艦隊勤務もおしまいですよ~。ご苦労様でした~。寝よ寝よ」

「寝ません! 始めるわよ。まずは工廠! 軽巡大井さんができてるかもしれないでしょ」

「大井っち、欲しいねえ。鎮守府海域じゃドロップしないからねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅葉提督が工廠画面に遷移した。

 あたし(北上です)も、吹雪と曙を連れて電脳世界の工廠にやってきた。

 

「おやあ、景色が変わってるよ」

「まるで工場みたいですねえ」

「本物の工廠らしくなったっていうのかしら。北上さん、あっちに建造ドックの看板があるわ」

 

 曙が見つけた看板のところに移動すると、カプセルホテルの部屋みたいなのが4つ、横2列、縦2列で並んでいた。2つは「使用できません」と張り紙がしてある。課金すると使えるようになるんだろうか。扉は半透明で中は良く見えないが、人らしきものがもそもそ動いている。

 

「エイリアンじゃないだろうね?」

「なんなの、失礼なこと言うんじゃないわよ、このクソ軽巡」

「それもう、この中が誰だか確信を持って言ってるよね」

 

 紅葉提督が完成したドックを開けると、電脳世界でもカプセル部屋の扉が開いた。

 出てきたのは当然の人(艦?)だった。

 

「特型駆逐艦「曙」よ。って、なんでがっかりしてるの! このクソ提督!」

「特型駆逐艦「曙」よ。って、なんでがっかりしてるの! このクソ軽巡!」

「まあ、提督に軽巡の建造は無理だよねえ」

「あたし以外も無理なんじゃないの?」

 

 新造の曙×2がカプセルから出るのを、曙と吹雪が手伝う。

 

「えーと、今日は北上さんに合体よー」

「どんどんやって」

 

 紅葉提督が改装の操作をすると、卵黄ヘルメットを被った妖精さんがたくさんやってきて、あたしと曙×2を引っ張っていく。

 案内されたところは、工廠内の「改装」と看板があるところだった。そこには人が一人入れるボックスが5つ並んでいた。

 

 曙2人は、それぞれ一人用カラオケボックスのようなところに入れられた。

 あたしが案内されたのは、今や見るのが難しくなった公衆電話ボックスであった。駅前にあったのを撤去して持ってきたかのようにくたびれている。

 

『まだかいそうちゅうみたいです。いまは、まにあわせでこれらしいので、がまんしてください』

 

「そういえば、部屋の模様替えしてるのは、別の妖精さんグループだっけ?」

 

『はい。なのでつかいかたは、とりせつをみないと。ええと、とりせつによるとですね、、、はだかになってはいれ!』

 

「ええ!?」

 

『とりせつにかいてあります。はだかになってはいれ!』

 

「今までそんなことしなかったじゃん! どこに書いてあるのさ!」

 

 妖精さんが取説なるものを見せてくれるが、訳の分からない模様がのたくっていた。

 

「読めない」

 

『ここにかいてあります。さあ、ぬぎましょう』

 

「だ、だいたい電話ボックスに裸でって、変態みたいじゃん! 外からも見えちゃうし!」

 

『だいじょうぶです。そとからはみえません』

 

「本当に?」

 

 ぼろいからか、摺りガラスのようになっていて、確かに中はよく見えない。入ってみると、壁一面に女の人の写真やイラストに電話番号が書かれた、名刺サイズの怪しい広告がいっぱい貼られてあった。

 

「な、なにこれ、気持ち悪うー」

 

『おお、これこそ、しょうわのでんわぼっくすです。さあ、そとからはみえませんから、はだかになれ』

 

 あたしは、しぶしぶ服を脱いだ。幸い、棚には電話の代わりに、衣服を入れる籠があった。妖精さんに渡すと食べられるかもしれないから、そこだけは安心する。

 裸で突っ立っていると、何のエフェクトもなく、妖精さんから『ごうせいにせいこうしました。ふくきてよいです』と言われた。

 

「これ、服脱ぐ必要ってあったの?」

 

 服を着て外に出る。

 

『らいそうが+2されて28になりました』

 

 と、嬉しそうに妖精さんが告げる。

 

「たしかノーマルのあたしの雷装MAXは79だっけ。まだ三分の一強かあ。遠いなあ」

 

 

 

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