紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ!   作:RightWorld

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第12夜 その2

 

 天井の方から紅葉提督の声が聞こえてくる。

 

「任務の設定したから、装備開発もやるよー」

「北上さん、あっちに開発の看板がありますよ。見に行きましょう。曙ちゃんも行こう」

「し、仕方ないわね」

 

 吹雪に引っ張られて、開発コーナーへ移動する。

 で、まあ毎度のごとく、今いる艦娘では使えない装備が出てくる。

 九一式徹甲弾、零式艦戦62型、中型艦用増設バルジ、12cm30連装噴進砲。

 

「見たことない装備ばっかりだわ」

「私達じゃ載らないもんね」

「これ、最低レシピで出したの? なんで出るの? 提督ってどうなってんの?」

 

 ずらっと並んだ強力な装備は、妖精さん達が台車に乗せて、装備品を保管するらしい地区に運ばれていく。そこの「装備品一覧」と書かれた看板には、「いつか使うかもしれない」と手書きで書き加えられていた。

 妖精さん達は、保管地帯にその装備を乱暴にガシャーン、ガシャーンと投げ込んでいた。

 使う気ないだろお前ら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は出撃してもらおうと思うんだけど、その前に何かすることある?」

「そうだねえ。搭載している兵装を少し変えてみようか。まだ改装画面にいる?」

「いるわ」

「一人ずつ選ぶと、スロットに積んでる装備が出てるでしょ。そこクリックすると、ストックされてる別の装備に換装できるんだ」

「何に換えるの?」

「あたし達ってさ、中小艦艇だからやっぱり火力が弱いんだよね。少しでも底上げするために、スロット全部を主砲に積み換えちゃおう」

「魚雷下ろしちゃっていいの? 撃てなくならない?」

「基本パラメーターの雷撃値の分の魚雷攻撃力は残るから、魚雷が撃てなくなるわけじゃないよ」

「そっか。スロットの魚雷で基本の雷撃値をかさ上げしてたのね。今度は砲撃力をかさ上げしたいのね?」

「砲戦ターンで撃ち負けて、魚雷戦できなくなるのは悔しいからね。それに素の雷撃力だけでも敵と同等くらいあるじゃん。艦数も3倍だし、雷撃戦は絶対うちらの方が有利なはずなんだよ」

「それって、1-1-A海域だけの話よね」

「だって1-1-Aですら攻略できてないからねえ。まずはそこを突破しなきゃ。そういうことだから、提督やってみてよ。あたしの14cm単装砲は残してね」

 

 3人の魚雷発射管は下ろされ、艤装合成で曙から外された12.7cm連装砲に積み替えられた。

 

「工廠の中に、艤装換装する工場はなかったわね」

「ここの景観って、別の妖精さんグループが担当してるんだっけ。まだ作られてないみたいだけど、そこのエフェクトいる? 裸にされるかもしれないよ?」

「く、クソ提督に覗かれるかもしれないわね」

「そっちの妖精さん達とは会えないのかな」

「吹雪、会いたいの?」

「待機部屋を豪華にしてくれてるお礼を言っても良いかなあって」

「どこまで優等生なんだよ」

「はーい、本国艦隊、出撃してくださーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

どどおぉぉーー。

 

今日も海は少し荒れている。

 

≪てきかんたいとのそうぐうがよそうされます≫

 

ピッチングする視界の向こうに、赤い靄が見えてきた。

 

『てきかん、みゆ』

『はきゅう、えりーと1せきです。はんこうせん』

 

「一番堅いけど、経験値も一番もらえるよ。みんな、よーく狙ってー!」

 

『てきかん、しゃていにはいります』

 

「みんな、狙いはいい? てーっ!! 

 

 どどどどん、どどどどん、どどどどどん!」

 

 うおーっ、主砲を積み増しただけあって、今までとは砲撃の迫力が違うよ!

 

 ざっしゃーっ、どぐわーん! ばががーん!

 

 駆逐ハ級から次々と火花が上がる。

 肩に乗ってる妖精さんが双眼鏡に目を当てたまま報告する。

 

『ほんかんとふぶきちゃんのほうげきで、めいちゅうだんかくをにん。だめーじ15ぽいんと』

 

「おー、さっそく効果出たよ!」

 

『てきだん、きます。かいひしてください。おーもかーじ』

 

「え、面舵?」

 

 体を右に向けようとするが曲がらない。少しタイムラグがあって、ぐぐっと舳先が回った。と思いきや、周囲を水飛沫が覆った。

 

 どどどおーっ ばがーん!

 

「いたああーーっ!」

 

 横腹を思いっきり蹴られたかのような痛みを感じた途端。

 

 どぐおおっ!!

 

 お腹が破裂した!?

 爆風で手や頭が本来曲がる方向とは真逆の方に持っていかれ、ちぎれ飛ぶかと思った。

 お笑いコントなら縮れアフロヘアに煤けた顔になってるに違いない。飛んで行かなかった首を戻してお腹に目をやる。

 

「お、お腹の中が熱い……」

 

『げんそくちゅうおうぶに、てきだんめいちゅう』

『かんないでゆうばくはっせい』

『かさいはっせい』

『しょうかいそげー』

『おうきゅうしゅうりはん、げんそくのあな、ふさげー』

 

 艤装や身体の上のあちこちを妖精さんが走り回っている。艤装からは真っ黒な煙がもうもうと噴出しており、その中で小さな爆発が起きたり赤い炎が見えたりしている。横腹のところの制服が燃えていて、妖精さんがホースを引っ張ってきて水をかけ始めた。既に制服がなくなってるところでは焦げた素肌が見え、なんだか穴も開いてるように見える気がする。肉の焦げたいやな臭いもする。ついでになんだか真っ黒いものを海に垂れ流している。

 

「おえええええ」

「き、北上さん、何吐いてるの……」

「ひいっ、曙ちゃん見ちゃダメ!」

 

『じゅうゆたんくにきれつ。ねんりょうがもれてます』

『てきかん、まよこをつうかします』

 

「か、各艦、魚雷戦。一斉はっしゃー……」

 

 ぐらぐらする視界の中で辛うじて指示を出す。我に返った吹雪と曙が駆逐ハ級を見据え、一斉に魚雷を放った。

 

「当たってください!」

「いっけぇー!」

 

 どごおーーんっ!

 

 ハ級からでっかい水柱が上がった。

 

『あけぼのちゃんのぎょらい、めいちゅう。だめーじ20ぽいんと。てきかん、ちゅうは』

 

「どんなもんよ!」

 

『みぎげん、3じほうこう、らいせき』

 

「えっ、どこ、誰に!?」

 

 ずっどーーーん! ドバーーッ!

 

 物凄い水飛沫が上がって、それが滝のように落ちてくる。

 霧のようになった水柱が去ると、曙の制服が穴だらけになっていた。

 

「もう何なのよ!」

「曙ちゃん、大丈夫!?」

 

 殿の吹雪が心配して声をかけてくる。曙は艤装の上の妖精さんに状況を聞く。

 

「妖精さん、被害は?」

 

『ちゅうはいっぽてまえのしょうはです。ぜんぜんいけます』

『やせんだ、やせんだ』

『とつげきをぐしんします』

 

 艤装の上を走り回る妖精さんは、被弾したのにキラキラ状態である。マストによじ登った妖精さんが、勝手に手にしたライトでバシャバシャと発光信号を送る。

 

『あけぼのの、ようせいさんから、はっこうしんごう』

『ついげきのよう、みとむ。てきちゅうはにつき、やせんでげきはかのうなのよくそていとく』

 

「妖精さんがあんなこと言ってますよ、北上さん」

「……」

「ひっ、真っ黒いもの垂れ流しながら倒れかかってる!」

「て、提督! 北上さんが大破です、大破!」

「わ、わかった! みんな引き上げて!」

 

 提督が撤退の指示を出した。

 

『また、やせんできないのー?』

『ぶーぶー』

『たまにはやらせてよ、ぶーぶー』

 

 まるで川内のように妖精さん達は文句を言うが、旗艦大破なのである。

 

『かいせんは、せんじゅつてきはいぼくC、です』

 

「やったね、曙ちゃん、今までで一番軽い敗北だよ」

「吹雪、それぜんぜん嬉しく聞こえないんだけど」

 

 

 1-1-A海域 ハ級1隻のパターン3(ただしエリート)

 旗艦:北上

 MVP:曙

 累積EXP

  吹雪:280

  曙 :158

  北上:134

 

 

 

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