紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ! 作:RightWorld
「お腹がはちきれそうだよ。もうすぐ寝る時間だっていうのに、これは艦これやってないで、外を一回り走ってきた方がいいんじゃないかしら」
紅葉はまだ凹まない丸いお腹をさする。
お母さんお気に入りのお料理サイト『食いねえ飲みねえ』が復活したということで、掲載されていた料理が夕食に出たのだが、サービス止まっちゃっててごめんね・おわびメニュー特集ということで、簡単・豪華・おいしい・安い・量多いと五拍子そろったレシピがどどんと載ってて、少し、いえ、多いに食べ過ぎたのだ。
「だいたいあそこはフードファイター御用達のサイトなんだから、お母さんもお洒落な料理が多い『デリシャス・キッチン』とか見て欲しいわ。家族からフォアグラでも取るつもりか。そういえば『デリシャス・キッチン』もサービス再開ってニュースで言ってたわね」
紅葉はノートパソコンの電源を入れた。
ぴろりろりん!
スマホに着信のアラームが鳴る。
「また? 学校からだわ。……宿題?」
学校で使っているコミュニケーションツールのクラスの
「参考資料としてこのサイトを見ろ?」
嫌な予感がした紅葉は、そのリンクのURLをよく見た。
「……いや、隣の危ない国のドメインってないでしょ。「.」が入るべきところを「_」でごまかしてるとかってヤバいでしょ」
うーん、艦これやりたいのに。でもこれ、放っておいたらクラスのみんながリンク先に行っちゃうかもしれないし。
「し、しかたないな」
チャットの通話で先生を呼び出してみる。
「……出ない」
紅葉は先生の投稿に返信する形で、このリンク触らない方がいいと返すと、自分の部屋を出て階下の居間に下りて行った。
「おかーさーん、担任の先生の連絡先わかるー?」
◇◇◇
30分くらい経って、ようやく自室に戻ってきた。
「あーもう、艦これ30分しかできないじゃん」
スリープモードになってたパソコンを再立ち上げする。
学校のコミュニケーションツールを見ると、「403 Forbiddenエラー」となっていた。接続し直しても同じだ。
「知らんわもう」
コミュニケーションツールをぶった切ると、艦これのショートカットをダブルクリックした。
『提督が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執ります』
「お待たせ、わたしの艦娘達!」
紅葉はニコニコ顔でノートパソコンを持ち上げてくるくる回った。
「あたしは、け、軽巡、きたか、み。て、提督! 目が、目が回る!」
「ひどい目に遭っちゃったわ。そんなのどうでもいいから、時間無いから早くやりましょ」
「はあ、はあ。あたしもひどい目にあったよ! そっちのひどい目ってのも気になるけど、どうでもいいようならいいや。新しい艦が進水したってさー。いつも思うけど就役だよね」
「了解。工廠へ行ってと、はーい、曙ちゃんたち、完成おめでとーっ」
完成したドックを開けると、出てきたのは当然のように曙だった。
「特型駆逐艦「曙」よ。って、なんでわかったの! このクソ提督!」
「特型駆逐艦「曙」よ。って、なんで知ってるの! このクソ提督!」
今日もあたしに艤装合成してもらって、雷装値が+2された。
「そういえば、妖精さんの調査って何か分かったの?」
紅葉の問いに、あたしはため息をついた。
「もう提督の特異体質が、めっちゃ際立ってるってことが、よーく分かったよ」
というわけで、装備開発について分かったこと、特にまたデーター改ざんがされてたことを報告した。
「そんなわけだから、装備は最低資源指定でばんばんやっちゃっていいみたいだよ」
「本当!? わたし開発の才能あるんだ!」
「すぐには役に立てないのを開発しちゃう才能だけど」
「将来への投資でしょ。ふっふーん、ではさっそく、わたしの類まれなる能力を見せてあげましょう。デイリー任務の新装備開発をせってーい!」
「提督の類まれなる能力は、ペンギンは回避するけど今いる艦娘に使えない装備だけを選んで開発することだから、見せない方がいいと思うけど」
提督に聞こえない声でぶつぶつ言いながら、みんなで仮想空間の工廠へ移動して何が出てくるのかを見守る。
きらりーん、ぱぱあ。
「おおお! 大きい大砲出たあ! 41cm連装砲!」
こっちにも長門が背中に背負う巨大な艤装が現れた。
「わあ、装備してみたいなあ!」
「言っとくけど、史実の長門の41cm連装砲は、吹雪型駆逐艦の重さの半分以上だからね」
「それじゃ載せただけで、吹雪沈んじゃうわね」
「いつものように報酬ゲットしてから、装備開発集中強化任務設定っと。どんどん開発するよー」
ぽよよ~ん、ぱっ。
「おおー出たよ瑞雲! いいよね瑞雲!」
「開幕爆撃までしちゃう水上偵察機だね。航空戦艦や水上機母艦で運用したいねぇ。うちの鎮守府にはいないけど」
きらりーん、ぽい。
「あら、かわいい。鉄砲の先にカモメがとまってる~。12cm単装砲だって。これなら小さそうだから積めるんじゃない?」
「「「……」」」
「なんで黙ってるの?」
「吹雪や曙の標準装備の主砲口径が12.7cmで砲門も2門の連装砲だから、それより性能低いんだけど」
「……み、身軽になって、弾避けやすくなるんじゃないかな(汗)」
ひゅうぅん、てれれれん。
「あちゃー、ペンギンと変な綿生物が出てきたー。開発失敗だわ」
なぜか工廠にも冷たい風が吹いて枯れ葉が舞い、変な物体が出てきた。どうすんだこれ?
「クソ提督にしちゃ珍しいわね」
「よく見なよ曙。開発資材がもうないからだよ」
あたしが工廠の開発資材置き場を指差すと、空っぽだった。吹雪が顎に手をやって考え込んだ。
「そうか。デイリーの開発任務を2つやると、回さなきゃいけない開発回数は4回。任務報酬でもらえる開発資材が3つだから、どうしても赤字になっちゃうんですね」
「いや、開発が4回とも毎回成功するのがおかしいんだって。使い切っちゃう提督が異常なんだって」
工廠の妖精さん達が『ほうしゅうだ、にんむせいこうほうしゅうだ』と釘や鉄板が入った木箱を3つと、火炎放射器みたいなのを1個、ムカデ輸送で運んできた。そしてペンギンと得体のしれない生物が入ったダンボール箱を回収していった。
「妖精さん、それどうするの?」
『ようせいさんは、しげんはむだにしないのです』
そのセリフ、まさか食べてるんじゃないよね?