紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ! 作:RightWorld
23時になってしまい、30分しかできなかったが、パソコンの艦これを終わらせた紅葉は、スマホ版艦これにログインし直し、建造の指示だけしてこっちも終わらせた。
「曙ちゃん叫んでたけど、撤退指示したらちゃんと母港に戻ってこれたし、入渠操作もできたから、大丈夫よね」
ますますリアルさを増してきた、艦娘たちの会話から聞こえてくる戦闘。特に被害。場面が想像しきれないけど、大丈夫なんだろうか。
特に出撃する度に大破している北上さんは、明らかに精神にもダメージがいってるのが分かる。
これも艦これゲームにプログラムされたものなの? 出撃の度に大破を続けると、疲労度が取れないとか、回復しにくくなるとかあるの?
そういう仕様があるならまだ良い。暫らく出撃させないで休ませれば、きっと元に戻るのだろうから。
でももし、彼女らが本当に痛い目に合っているのなら、これは由々しき事態だ。非人道的だ。人じゃないかもだけど。
本当にどこかに存在してるかもしれない北上さん達を、痛みと恐怖に晒してまでネットゲームの敵に勝利することが、何の役に立つっていうのだろうか。
◇◇◇
眠りについた紅葉の夢の中に、久々に妖精さんが現れた。
『どう? きたかみさんは。つよいでしょ?』
『これでボスも、たおせたでしょ?』
本当に彼女強いの? いまのところ最初のマスで毎回大破してるわよ?
『あれえ?』
『おかしいな』
『これでたおせるとおもったのに』
『きょうはよいせんかがでたって、ほうこくがあったんだけど?』
『ちょっときいてくるっす』
夢の中に現れた妖精さん達は、何人かはどこかへ行き、残りは円陣を組んで会議を始めた。
わいのわいのと可愛らしい会議を微笑ましく見ていると、円陣の中央の地面からにゅっと、どこかへ行っていた妖精さんが湧いて出てきた。
『きいてきました』
『それでそれで?』
『えんまさまのところへおどされにいかせたあと、ちゃんとかんむすにしたって、いってました』
『くうぼになったって、いってました』
『およよ? きたかみってくうぼだっけ?』
『かいぞうすれば、なるんじゃない?』
『なるわけあるか。ありゃ、かいぞうするほどに、ぎょらいばかになるやぞ』
『じゃあ、くうぼはどこにいっちゃったの?』
『きたかみさんは、どこからきたの?』
『……』
『……』
『こりゃたいへんだ!』
『とりちがえちゃった!?』
『どうする? どうする?』
妖精さん達は慌て出した。
どういうこと? 北上さんはこの国を守るために、わたしの家族を助けるために、わたしのもとに現れたんじゃなかったの?
今のところ目立った活躍はないし、AIスピーカーみたいだったし。話し相手としては役に立ってるけど。
『でもていとくの、みっしょんくりあほうしゅうの、じょうけんにはあってるよ』
『あ、そうなんだ』
『めでたい、めでたい』
『わかりました』
『おお、べつのちょうさたいが、かえってきたぞ』
『それでそれで?』
騒ぎになってバラバラになってた妖精さん達が再び集まり円陣を組む。
『ていとくの、1めんもくりあできない、とくいたいしつが、けっかをゆがめてます』
『『『『『ええーっ』』』』』
ちょっと、なに人のせいにしてるのよ!
『ようせいさんでも、せいぎょできないちからなんて、どれだけていとくはすごいのかしら』
『もしかして、ていとくは、かみでは!?』
2頭身の小人達が、今度は環状列石のようにわたしを円形に取り囲んで、ははーっとひれ伏して、崇める仕草で両手を上げたり下げたりして拝み始めた。
ちょっとやめなさい!
なにその神って! わたし涼宮とかって苗字でもないわよ!
っていうか、失礼なこと言ってるよね!? わたしを世にも稀なダメゲーマーだって言ってるよね!?
『とにかく、このままでは、ししょうがありすぎます』
『どうしよう。ほかのていとくにする?』
『えー? でもきたかみさんは、つれてけないよ?』
わたしがダメゲーマーだから、他の人に鞍替えするっていうの? 別に構わないわよ。わたしには重荷だわ。もっと強い提督に頼みなよ。
『そうすると、ていとくのかぞくがまもれないよ?』
ねえ、それって何なの? わたしの家族に何があるの?
『#$$〇*、%=◇■』
『うまくつたえられねーや』
『とにかく、にほんとかぞくをまもるために、やっぱりもみじていとくに、がんばってもらわなきゃなんです』
『ていとくはがんばって、ボスをたおしてください』
倒せる見込みがないんだけど。北上さんは改になれば、なんとかなりそうな事は言ってたけど。あれじゃいつ改になれるかわかんないわ。
『じかんがひつようってことですね?』
『いまより、ていとくとかんむすが、こうりゅうできるようにすればいいってことですね?』
『さっそくとりかかるぞ』
『おー』
『おー』
今よりあの娘たちと交流できるようにするって、なんだろ。一緒に入渠できるようにしてくれるとか?
『それは、きたかみさんに、しげきがつよすぎますねー』