紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ!   作:RightWorld

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第14夜

 

≪提督が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執ります≫

 

 しーん

 

「あれ? 旗艦の北上さんのセリフがない」

「ていとく~」

「それに代わって吹雪ちゃんの声がするわ」

「あの、北上さんは、昨夜の出撃の被害とか、特別配合の高速修復材とかのせいで、精神がまだ立ち直ってなくて。できたら少しの間、お休みにさせてもらえないかと」

「そ、そう。な、なんかこのところ変だったもんねえ、高速修復材使った後とか特に。いよいよデジタルデーターらしくなくなってきたわね。

 わかったわ。北上さんには安心して休息を取るように言ってね。妖精さん達も変なお薬混ぜちゃダメよ!」

 

『ていとくに、おこられちゃいました』

『これはたいへんだ』

『ないていいですか?』

『みんなでなきましょう』

『『『ふえ~ん』』』

 

「な、泣いてもだめです!」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 北上は艦隊を解かれた。

 

 待機部屋に一人ぽつんと座る。しかたないからトランプのタワーを作る。

 待機部屋でひたすらトランプタワーを積み上げていると、曙が2人やってきた。建造されたそうだ。デジャヴである。

 

「クソ提督が、あたし達をあんたと合成するって」

「工廠に来なさいよ、クソ軽巡」

 

 あたしの奥底にいる本来の北上が、うざぁって感情をこみ上げる。

 

 工廠の例の電話ボックスとカラオケボックスにそれぞれ入り、2人の曙はあたしに偽装合成された。

 あたしの雷装値が+2され、32になった。

 出撃もしないのに強化してもらって、なんか後ろめたい。

 

≪出撃よ。蹴散らしてやるわ!≫

 

 聞こえてくるセリフから、今日も曙を旗艦に据えて出撃したようだ。

 

 

 

 

 10分ぐらいして。

 

≪艦隊が戻ってきたって。ふんっ!≫

 

 曙の録音された帰投時のセリフが流れた。

 そして、ざわざわざわざわという妖精さんズのムカデ足音が聞こえてきた。

 

「えっ、まさか?」

 

 待機部屋から首を出すと、黒焦げになった2人が、ムカデ輸送で運ばれてくるところだった。

 

「吹雪!? 曙!」

 

 2人は顔も含め、体中のあちこちにモザイクがかかっている。モザイクのかかったところから突き出ている傷のない1本の腕は角度がおかしくないか? 変な方に向いていて不自然だ。

 

「うわあ、もしかして、大破してひどい傷に!?」

 

『きたかみさん、ふくぬがせるの、てつだってください』

 

「わ、わかった!」

 

 ムカデ輸送にくっついて、一緒にドック(お風呂場)へ行く。そして妖精さんの『そーれ』の掛け声で2人は入渠し(湯船に叩き込まれ)た。

 

『ふく、はぎとってください』

 

「放っておいたら、体にくっついちゃうんだっけ!?」

 

『はやくしてください。ふたりいますから、ぬがすのがおくれたほうのかんむすがきけんです』

 

「そんなんだったら、一人ずつ入れてよー!」

 

 あたしは蛍光緑色のお湯に満たされた大浴槽に服を着たまま飛び込む。

 とはいっても、2人とも見えちゃいけない所以外は脱がす制服がほとんど残ってなかった。手探りで脱がした下着を湯から引き上げると、こっちはほんの僅かに煤が付いただけで健在だ。

 

「なんでこんなに下着だけは丈夫なのさ」

 

『ようせいさんしるしのぱんつは、いよいよせんかんのそうこうをこえました。とうしゃひ』

 

「だったら、まず頭を守るべきじゃない!?」

 

『ぱんつをあたまにかぶるのですか? それはへんたいさんです』

『あたまはさいせいできるから、それほどじゅうようじゃねーよ』

『それより、おとめのひぶです』

 

「頭は重要じゃないってどーいうこと? いいからその秘部を守れる材質で服も作ってよ!」

 

『そ、それは、ぎじゅつてきに、ひじょーにこんなんきわまりなくて……』

 

「技術じゃなくて、あんたらグレムリン共の趣味でしょが!」

 

 曙の下着をはぎ取り終わると、吹雪に取り掛かる。顔はモザイクがかかってて表情は見えない。

 

「ど、どうなってるの?」

 

 恐る恐るモザイクの下に手を入れてみる。

 べとっとしたものが付着した髪の毛と、その下には陥没した何か。

 こ、ここ、顔だよね? 顔って凹んでないよね!?

 

「ひい!?」

 

 思わず手を引っ込めた。

 

『きたかみさん、はやく』

『のぞきみは、いけませんよ。そこはR100していです』

 

「100歳超えたら、このモザイク取れちゃうの!?」

 

 これはずっとモザイクかけておいてほしい。

 吹雪も服はほとんど吹っ飛んでたので、上下の下着を引ん剥くだけだった。すると、

 

『ていとくから、しれいがきました。ふぶきちゃんには、きょうてにはいった、こうそくしゅうふくざいをつかいます』

『がってん』

『がってん』

どっく(湯舟)、うつしかえろー』

『うおー』 

 

 妖精さんが湯船に鈎付きの紐を投げ込むと、吹雪の体に引っ掛かり、『おーえす、おーえす』などと掛け声を上げて、お湯中から次第に吹雪が引っ張り上げられてきた。うつ伏せ状態で、頭の方が先に水面に現れる。顔にはモザイクがまだかかったまま。次第に肩から下も引き上げられてくる。ぐったりして手足もだらんとして全く動かず、まるで死体のよう。

 

 うおお、中学に入ったくらいの子供かもしれないけど女の子の生裸だ! お尻にホクロあるんだっけ? この際だから確認を……

 

 ペチッと顔に何かが貼り付いて目を塞いだ。

 

「うおい、何も見えないよ」

 

『みちゃだめですぅ~』

 

「いいじゃん別に、減るもんじゃなし。あたしも女だし(見た目だけ)」

 

 そうしている間に、吹雪は引きずられて隣の1人用の湯船に落とされ、沈められてしまった。ぷくぷくと泡だけが水面に上がってくる。

 

『ふー、あぶなかったー』

 

 顔に張り付いてるのを引き剥がすと、吹雪の恥ずかしい姿を防御していたのは、ミニ吹雪の姿をした妖精さんだった。

 

「深海棲艦にもその防御力を発揮しなよ」

 

 吹雪が着底している湯舟に、天井からバケツ(手書きで特別配合の張り紙付き)がひっくり返って、緑色の高速修復材が注ぎ込まれた。すると湯舟がぼこぼこと泡立って白い煙が立ち込めた。そして数十秒すると、

 

「ぶはっ!」

 

 煙の向こうから立ち上がった吹雪が現れた。

 

「吹雪!」

 

 モザイクがかかって直視できなかった顔も元通りに復活している。

 

「大丈夫なの?」

「はい! 問題ありません。提督、修理完了しました! 再出撃します!」

 

 そう言って吹雪は、ざばあっと風呂から飛び出た。そして脱衣場の脇に置かれた修理済みの艤装を担ぎ上げると、ダッシュで廊下を駆けていった。全裸のままで。

 口をぱかぁっと開けて唖然とするあたし。

 

 ぺちっ。

 

『みちゃだめ~』

 

「もう遅いよ! さっきのミニ吹雪妖精さんの行為が台無しだよ! 丸見えだったよもう!」

 

 あたしも湯船から飛び出て吹雪を追う。

 

「おい、グレムリン共! 高速修復材が凄いことになったままだよ!」

 

『てへへっ』

『こうひょうかです』

 

「褒めてないから! 戦艦を超える装甲も着けないで行っちゃったよ! 吹雪、待ちなー!」

 

 数多の提督共にはおいしい絵面かもしれないけど、無装甲はシャレになんない。スケベな元男でも、それは許しません!

 

 

 そのあとちゃんと服を着て出撃した吹雪は、またもモザイクがかかって戻ってきた。

 1-1-A海域には相変わらずロ級、ハ級のエリートが現れ、結果は2回ともD敗北だったとのこと。

 また2回目のあわや無装甲で出撃しそうになった海戦で、吹雪は晴れてレベル3にアップした。

 

 

 ◇1回目の出撃

 1-1-A海域 ロ級1隻のパターン2(ただしエリート)

 旗艦:曙

 MVP:曙

 累積EXP

  吹雪:298

  曙 :201

  北上:150

 

 

 ◇2回目の出撃

 1-1-A海域 ハ級1隻のパターン3(ただしエリート)

 旗艦:吹雪

 MVP:吹雪

 累積EXP

  吹雪:340(Lev3にアップ)

  曙 :201

  北上:150

 

 

 

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