紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ! 作:RightWorld
スマホはバックグラウンドでアプリが動いているせいか、あたしは眠ることなくあれからずっと起きている。何もすることないので色々と考える時間になった。
ネットにも繋がってるので、吹雪に声をかけてみる。
「吹雪、いる?」
「はあーい」
元気よく駆け寄ってきた。
「何してたの?」
「別に何も。提督が呼んでくれるまで何もできませんし。ひたすら待機です」
「あたし達ってなに?」
「へ? 艦娘です」
「あー、うん。艦これってゲームの、艦娘っていう、いわばデータだよね。ゲーム会社のサーバーの中にある」
「あー、そういう難しいのはよくわかんなくて……」
自分の存在が何者かなんか気にしないか。しょせん電子データだし。
「でもこうやって使われてないときにお話できたり、この一定の空間ですが、動き回ったりできるので、なんなんでしょうね?」
そういえばそうだ。名前や砲撃力やレベルとかのプロパティデータの集まりを持った電子のオブジェクトのはずなのに、まるで自我を持ってる生き物みたいだ。そしてこの会話や、この白い不明な空間での移動とかは、コンピューターの中の何なんだろう。
「他に話せる艦娘って曙の他に誰がいる? 他の鎮守府とか」
「いいえ。他の鎮守府の艦娘とか見たことないです」
ふーむ。他の鎮守府の艦娘が入り乱れたりしたら、そりゃさすがにバグだもんね。そんな状態になったら勝手に使われて轟沈させられてたって事が起きるかもしれない。そしたらサポ電鳴りまくり、その日は臨時メンテナンス間違いなしだ。そういや演習やったらどうなんだろう。
「でもコンピューター上のデータを使った計算だけだったら、あんな海戦で痛い目にあったり、死にそうになったりしなくていいよねぇ」
「はい。あれは怖いです」
「そういうの疑問に思わないの?」
「え!? そ、それ、暗にあたしのことおバカって言ってますぅ?」
吹雪がすこし膨れっ面になった。
「生い立ちによるかなあ。ねえ吹雪。吹雪ってさあ、実は前世があって、何かの拍子にここに飛ばされて艦娘になったとかない?」
「へえ!? なんですかそれ」
「違うのかぁ。あたしの世界では流行ってたんだよねえ、そういうの」
「え!? もしかして北上さんは前世から飛ばされて来たんですか!?」
「そうだって言ったら信じる?」
「面白いです! あっ、曙ちゃんも呼んできていいですか? あの子も暇してるでしょうし。提督は夜しか鎮守府に来ませんから時間はたっぷりあります!」
すててててと吹雪は走っていった。
この後、あたしのおマヌケな身の上話で盛り上がるのであった。ただ前世であたしが男だったと口を滑らした途端、二人の態度が急変して、「もう一緒に入渠しませんから!」と言われてしまった。
ちっ! ちいっ! あたしとしたことが! せっかく転生したのに、これじゃなんの意味もないじゃん!
この先もっといろんな艦娘がこの鎮守府に入ってきて、色っぽい戦艦や空母や重巡のお姉さん達が仲間になって、一緒に出撃して、きっと紙装甲だからあたしだけ大破して、一緒に入渠して、あら~北上さん痛そう~ナデナデしてあげるわ、こっちおいでとか言って、そ、それじゃあ遠慮なく~、あ、大きなお胸ぷにぷに、あたしもこれくらい大きくなるかな~、それじゃあ改5くらいまで実装されないとダメかもねえ~なんて、裸の付き合いになれたはずなのに!
もう次の海戦で轟沈しちゃおうかな。
ちなみに曙も転生者ではなさそうだった。
この電脳世界はなんなんだろう。あたしはここに転生して、どうしていけばいいのだろう?
さすがに短すぎ?
あ、今日はトラトラトラの日ですね。