私たちは二週間に一度の頻度で先生に演じ方を教えている。なんだか私に演技を教えてくれた先生に演技を教えるというのは不思議な気もするが。
しかし今回はいつものように私と純那ちゃんの2人ではなく、香子ちゃんと双葉ちゃんがついてきている。
というのもある日、いきなり私と純那ちゃんは、先生について香子ちゃんと双葉ちゃんに問い詰められた。どうやら2人は、私達が定期的に男の人と会っているために心配してくれていたようだ。
もちろん私たちは事情を話し、2人は一応納得してくれたようだが、香子ちゃん達は暇潰しに先生に会いたいと言い始めた。双葉ちゃんが止めてくれるかと思ったが、どうやら双葉ちゃんは先生の殺陣が気になったらしいのだ。
実は昔先生に演技のいろはだけでなく殺陣についても学んでいた。刀や拳、蹴りなどの一般的な殺陣も習ったが、聖翔では教えてもらっていない中国拳法や銃を使った殺陣も習った。双葉ちゃんは殺陣が得意なので、先生の印象を良くしようと殺陣についても話したのだが思った以上に興味を持ってしまい、会ってみたくなったようだ。
いきなり2人を先生の元に連れて行くのは迷惑になるかもしれないので、とりあえず先生に連絡をした。先生は聖翔祭のメインキャストがさらに2人来るということに驚いていたが、問題はなく、むしろ喜んでいた。
4人で集合場所に向かう。集合場所は毎回先生がスタジオを借りている。レンタル料を私たちも払おうと思ったが先生は、自分は依頼している立場だから料金は私が持たせてもらう、と言っていた。少し申し訳ないという気持ちもあったが、お言葉に甘えさせてもらった。
集合場所に着くとすでに先生は柔軟をしていた。学生に教わるくらいだから基礎的な部分もそこまで出来ていないだろうと思っていた香子ちゃん達はとても驚いていた。私たちが来ていることに気がついた先生は柔軟を止めて、初対面の香子ちゃん達と軽い自己紹介をした。
今日やった練習は台本の読み合わせだ。
先生は、台本を読むときに自分の中でストーリーを作り、相手役の感情をこうだと決めつけてしまい、独りよがりな演技になる癖がある。今日の練習でなんとかその癖を無くせたらと思ったが直せずに練習は終わった。
練習終わりに双葉ちゃんは先生に、中国拳法や銃を使った殺陣を見せてほしいとお願いすると、先生は快く受け入れてくれた。
そして、先生と私で昔やったことのある殺陣を3人の前でやることになった。
「今はモデルガンを持っていないから銃を使った殺陣は見せることができないが、中国拳法の方なら見せてあげよう。
大場、昔私達がやった一連の流れは覚えているかな?」
「はい、今でもしっかり覚えていますよ!」
よろしい。先生はそう言って力を入れながら手を開いたり閉じたりし始めた。
先生が間合いを詰めつつ私に掌打、前掃脚、踵落としを繰り出すのをステップで後ろに下がりながら避ける。
そして勢いをつけた先生の前蹴りに合わせて、軸足を後掃脚で払う。
背中から倒れる先生だが、スターフィッシュキックアップで起き上がる。
「まぁ…私がやるのはこんな感じだ」
「これが…拳法…。かっこいい!」
「す、すごい動きです!」
「最後の起き上がり方、出来るようになれば演技の幅も広がりそうやね…」
双葉ちゃん、純那ちゃん、香子ちゃんの順番で感想を言っていく。
「……水を差すようで悪いが、今やったのは拳法だけではない。テコンドーやマーシャルアーツも入っていた」
「あー、確かに言われてみれば踵落としって拳法にないよな」
「その通り。まぁ実の所、拳法だけでやる殺陣の段取りを思いつかなかったからなんだかな。
だから、見せておいてなんだが、君たちの役には立てないかもしれない」
申し訳なさそうな顔をして私たちから顔をそらす先生。
私がフォローしてあげちゃいます!
「そんなことないですよ先生。確かに中国の武術家を演じるときに使う格闘術は拳法だけですけど、使っている格闘術が明確でないキャラクターもいるんですよ!
だから複数の格闘術を混ぜて、なおかつ魅せる動きをする。それを見せてくれただけでも私たちにとっていい経験になりますよ!
ね、みんな?」
「そうね、ばななの言う通りだわ。
田中さん、今日は貴重な経験ありがとうございました。ほら、あなたたちも」
「あ、あぁ、そうだった。田中さんありがとうございました」
「ありがとうございました。
……田中はん、よろしければ他の日に銃を使ったアクション、教えてくださる?」
今回田中とばななの使った体術は全てウェスカーが作中で使っていた技です。
掌打(バイオハザード5::技名 先崩掌打)
踵落とし(バイオハザード4:技名 ネリチャギ)
前掃脚(バイオハザード5:正確には使っていたのは後掃脚)
後掃脚(バイオハザード5:特に技名はない。ウェスカー戦でクリスが近い場所にいると後掃脚をする時がある)