先生と次回会う場所を決めた後、私たちは星光館に帰ってきた。双葉ちゃんと純那ちゃんは先程の殺陣に興奮したのか、盛り上がっている。どうやら先生の掌打のキレがすごく、力強くも美しく見えたのでとても気に入ったとのことらしい。
「あ!みんなおかえりー!どこ行ってたの?」
帰ってきた私たちに気づいた華恋ちゃんが子犬みたいに駆け寄ってきた。
「みんなで一緒に、私が昔教わってた先生に会いに行ってたんだ」
「おぉー、ばななの恩師かぁー。どんな人なの?」
「ふっふっふ。何を隠そう、先生は私に演技を教えてくれてた人であり私の憧れの人なのです!」
「大場さん、今の話もう少し詳しく聞かせていただいてもよろしいですか?」
「んー、ちょっと待ってね。続きは夕飯の時に話すから♪」
夕飯の時間、私は華恋ちゃん達に先生について色々説明をした。殺陣の話をした時は双葉ちゃんと純那ちゃんも盛り上がって説明に加わった。先生の殺陣について聞いた真矢ちゃんは、一度その殺陣を見てみたいですね、と言っていたのでどうやら真矢ちゃんの関心を引いたようだ。
「ねぇなな、そういえば聞きそびれていたことがあるのだけど…。
ななが怯える程の、先生が演じたキャラクターってどんなものだったの?」
「え、えっと…その……」
みんな興味深そうにして私の続きの言葉を待っている。
「前にも言った通りキャラクターの名前はわからなかったんだけど……格好はわかるよ。
まず金髪オールバック、サングラスに黒コート。身長は190くらいかな。顔は外国の人っぽい「ちょっ、ちょっと待って!」
ん?どうしたの?まひるちゃん」
「え、ええっと。さっきばななちゃんから聞いた話だと日本人かなって思ってたけど…。ばななちゃんの先生って外国の人なの?」
「ううん、日本人であってるよ」
「…それじゃあ、演技を始めた瞬間髪の毛の色や顔が変わったように見えたってこと?」
「そうだね、それに服も髪型も身長も変わって見えたよ」
「「「「「……………
ええええぇ!?!?」」」」」
「ほう。そのような素晴らしい演技をされる方、是非とも会ってみたいですね」
「そうね、私も会ってみたいわ。
でも変ね、それだけすごい人なら名前くらいなら天堂真矢が抑えていると思ったのだけれど。
それにそんな演技ができるのになな達に演技を教えてもらっているってなんか変じゃない?」
うーん、真矢ちゃん達が交戦的に目になってしまった。真矢ちゃん達が先生に会うのは構わないのだが、先生に迷惑をかけてしまわないか心配だ。
「大場さん。そのキャラクターは本当に参考文献があるのですか?その方の妄想や想像ではなく?」
「うーん、あるとは思うんだけど……。
あ、そういえば『世に出ていない創作物ではなく、存在しない創作物』『本当に存在しなかった』みたいなことを言ってた気がする」
「ふむ…そうですか。では明日、その方が演じたというキャラクターを図書館で探してみるので、後で他の特徴を教えてもらってもよろしいですか?」
「あ、ちょっと天堂真矢!私も調べるわよ!」
「ふふっ、わかったわ。後で紙にまとめて渡すね」
「ねぇねぇばなな!」
突然、華恋ちゃんが身を乗り出してこちらを見てくる。
…華恋ちゃんの次に言うことがなんとなくわかった気がした。
「次その人に会いに行く時、私もついていっていい?」
「うーん、多分大丈夫とは思うけど…。出るかわからないけど、今電話で確認してみるね」
プルルルルルル、プルルルルルル
ピッ
『はい』
「あ、もしもし先生?」
『大場か、どうした?』
私は先生に、友人たちが先生に会ってみたいと言っていることを伝え、次回会う時連れてきてもいいか尋ねた。
『私はもちろん構わないが、あのスタジオに入りきる人数か?そうじゃないなら他の場所を見繕っておくが』
「あぁー…そうかもしれないです。お願いできますか?」
『了解した、場所が決まったらまた連絡する』
ピッ
「なぁ、ばななはん?田中はんって昔からあんな喋り方だったん?」
電話の内容をみんなに伝えて、みんながリビングを立ち去った後、香子ちゃんが私に尋ねてきた。
「昔からって…どういうこと?香子ちゃん先生に会ったことあったの?」
「会ったことある言うても昔のことやで?その時は田中はんはもう少し優しそうな感じやったけど、今の田中はんはなんと言うかこう…うまく説明できひんけど今までの優しさがどこにも見当たらへんの。それに一人称まで僕から私に変わっとったし…
まぁ10年以上経ってるからかもしれへんけど…」
確かに言われてみれば少しおかしい。あの日、私が先生から逃げてしまった日までは確かに先生は自分のことを僕と言っていた。香子ちゃんの言う通り雰囲気もあの頃とだいぶ違っていた。
2年も経っていないのに期間で人はこんなに変われるものなのだろうか…?