頭が割れるように痛い、『僕』は、大場に何を見せた?
能力を使って、私が一番好きだったキャラクターを再現してなりきろうしたが、そこから先の記憶が曖昧だ…。
なんとか家にたどり着き、手を洗おうと洗面所に向かうと、
そこには知らない顔をした男がいた。
しかしそいつは『俺』と同じ動きをしている。
何が起こっている。まさかこれが今の私の見た目だと言うのか?
確かアレックスが永遠の命を手に入れるために、魂を他者に移す研究をしていたが…それと同じことが起こっているのか?
瞬間、俺の頭に身に覚えのない記憶が甦った。
この身体の持ち主の名前は田中と言うらしいが、こいつは転生をしたらしい。
驚くべきことに、田中の転生前の記憶の中に会ったことのないはずの俺がいたのだ。しかも洋館事件の少し前からクリス一行に敗れた瞬間までの俺がそいつ記憶に写っていたのだ。
しかし俺はこいつなんぞに会ったことはない。
俺は理解してしまった
俺は物語の中のキャラクターの1人だと
俺はスペンサーによって創られた存在だが、
スペンサーや俺の思想までもが他の誰かによって創られたのだと知ってしまった。
不快感とともに絶望が俺を襲った
ショックを受けて落ち込んでいる間に俺はこの身体の本当の持ち主である田中の記憶を整理した。
こいつの記憶曰く、この世界も俺のいた世界のように作られたものらしい。
その世界の名は少女歌劇レヴュースタァライト。
この世界についての情報を求めるため再び記憶の中を探ると、面白いことがわかった。
どうやらこの世界は『舞台』らしい。
レヴューの間では舞台少女の持つキラメキによって舞台装置が動くとのことだが
レヴューの間ではないこの世界もまた舞台であるなら、この世界を構成する舞台装置が存在するということだ。
今一度よく考えてみよう。
おそらくだが、この世界では舞台に生きる人間が何かを演じ、他者の心を響かせている時にキラメキが発生する。
そしてそのキラメキに舞台装置が反応し、その場にあった世界を構成する。
では俺の場合は?
奴の記憶を探るに俺は物語の登場人物だ。
ならば、舞台で生き誰かを真似るような奴らよりも、俺はより多くのキラメキを生み出せる可能性がある。
もちろん、この世界に生きる奴らが自分を登場人物だと認識しない限りの話ではあるが。
それに俺が仮に登場人物でなくても、より多くのキラメキを生み出せる自信がある。
田中の持つ能力のおかげでな。
どうやら田中はこの世界に転生した時、ある能力を手に入れたらしい。
『自分のよく知っている者の真似をした時、それに完璧に成り切ることができる』
こんな能力は他の世界では使い物にならないが、この世界では別だ。
これはこの世界における最も優れた武器である。
私は本当にキラメキを放つことができるか、
またそのキラメキが本当に舞台装置に反応するのかどうかを確かめるために
かつての私を想像した。
成功だ
私の身体に力がみなぎる。これは身体にウロボロスウィルスを投与した時に似ている。
右腕に力を込めると、ウィルス嚢胞が触手のように生えてきた。
ウロボロスウィルスを投与する前は体内の他のウィルスが安定せず身体の制御が効かなかったが、今この身体はウロボロスウィルス投与後の身体を模倣しているので常に安定状態であることがわかった。
この世界が作り物である以上、長居する理由はない。
この世界にとっての地獄を作り出し、完全に壊してしまおう。
そうすればおそらくこの俺、アルバート・ウェスカーの魂もこの世界を抜け出すことができるだろう。