拙い所もありますが最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
「なあ、知ってるか?」
アメストリス国南部に位置するダブリス。
その街の片隅に、ひっそりと佇む一軒の酒場がある。
店の名は――Devil’s Nest。
薄暗い店内では、数人の男女が一つのテーブルを囲み、酒を酌み交わしていた。
「遠い遠い海の向こう。その海の底には、人魚たちの暮らす楽園があるんだ!」
そう言って両手を大きく広げたのは、メッシュの入った前髪を後ろへ流した吊り目の男だった。
手には酒の注がれたジョッキ。
顔はすでに赤くなっている。
「またその話かい?」
呆れたように返したのは、金髪を短く刈り込んだ女だった。
右肩には特徴的な刺青があり、左手で頬杖をつきながら、右手のグラスをくるくると回している。
「あんた、酔っぱらうといつもその話ばっかりだね。いい加減、耳にタコができちまうよ」
「なんだとぉ?」
男は不満そうに声を上げる。
「……まあ、お前は女だから分からねぇだろうが、人魚ってのは男の浪漫で夢なんだよ」
そして、隣に座る大柄な男へ顔を向けた。
「なあ、ロア。お前なら分かるよな?」
「……俺は、そういうことはよく分からん」
ロアと呼ばれた男は、大柄な身体には似合わないほど静かな声で答えた。
「フハッ!」
それを聞いた女が鼻で笑う。
「ほら、ドルチェット。あんただけだよ。魚に興奮するような変態は」
「いや、オレは分かるぜ!」
そう答えたのは、ロアとは対照的に小柄な男――ビドーだった。
その小さな身体のいったいどこに入るのかと思うほど大量の酒を飲みながら、楽しそうに笑っている。
「ロアはカタブツだからな。聞く相手が間違ってんだよ」
「おい、誰がカタブツだ」
「フハハハ!」
男二人がそんな話で盛り上がるのを横目に、マーテルは手元のワインを一口飲んだ。
「ふん……まあ、アタシは人魚なんかより、空島の方がよっぽど興味あるけどね」
ぽつりと呟く。
誰に聞かせるつもりもなかった、何気ない独り言だった。
――だが。
「空島!?」
即座にドルチェットが食いついた。
「なんだよ、お前! 俺たちのこと馬鹿にしておいて、お前の方がよっぽど夢見る女の子じゃねぇか!」
「なっ……!」
マーテルの顔が一気に赤くなる。
「ち、違う! 興味があるって言っただけだろ! 行きたいなんて一言も――」
「おい、お前ら」
その時だった。
背後から、低い声が飛んできた。
「やけに楽しそうに話してんじゃねえか」
振り返る。
そこには、一人の男が立っていた。
「グリードさん!」
ドルチェットが嬉しそうに声を上げる。
「ちょっと聞いてくださいよ。マーテルの奴、空島に行きたいんだそうですよ」
「だから違うって言ってるだろ!」
「空島ぁ……?」
グリードが興味深そうに眉を上げる。
そして空いている椅子を引くと、どかりと腰を下ろした。
「いいじゃねぇか」
「……え?」
マーテルが目を丸くする。
グリードはニヤリと笑った。
「空島、魚人島。そういう島の存在が、なぜ絶対に無いって断言できる?」
テーブルを囲む全員が、グリードを見る。
「誰か実際に行って、『そんなもんは無かった』って確認したのか?」
「……」
「してねぇだろ?」
グリードはジョッキを手に取り、酒を一口飲む。
「誰も行ったことがねぇなら、無いなんて誰が決めた?」
そして、口元を吊り上げる。
「それにな」
グリードは周囲を見回した。
「お前らの存在だって、世間一般的には『あり得ない』のくくりに入っているだろうよ」
自分自身を指差す。
「俺も含めてな」
誰も口を挟まない。
「だがオレ達は今、確かにここに存在している!!」
グリードの声が酒場に響き渡った。
「だったらよ」
グリードはジョッキをテーブルへ置く。
そして、いつもの不敵な笑みを浮かべた。
「……いつも言ってるだろ?」
ほんの一瞬、店内が静まり返る。
「――『あり得ないなんてことはあり得ない』ってな」
ということでプロローグとしてこんな感じで始まりましたが如何でしょうか。
本作を書くに当たって特に書きたい所があり、早くそこまで行きたいという気持ちを抑えつつ一話一話進んで行こうと思います。
デビルズネスト組は原作でもかなり好きだったのですが、本編では時系列の関係上既に退場済みとなってしまうので仕方なくプロローグのみでの登場になります。
おのれ大総統め……。ゆ" る" さ" ん"‼︎ o(`ω´ )o