「マツ!これから用事ないでしょ?」
本日の授業がすべて終わった後、いきなり席に走り寄って来たセっちゃんから放課後の予定を聞かれた。
そういえば昼休みあけに、セっちゃんの顔がやけにニヤついていたので「何かあったん?」と聞いてみたら、「秘密」と笑顔ではぐらかしてきてたが、どうやら放課後に何かを企んでいた様であるとは推測はできた。
「んー、特に用事と言う用事は……あらへんかな?」
「それなら!一緒に行こ!」
セっちゃんの企みは、今に始まった事でもない。
ただ、ほとんどは残念な結果になったのが多い為に、あまり警戒する事はあまりないので「付き合ってあげるよ」と返しつつも席を立つ。
「それで、どこへ?」
「なーいしょ!!」
笑っていたセっちゃんは、そう答えながらも無理やりともいえる恰好でこちらの腕をつかんで教室を出た……かと思えば、急に立ち止まって振り返って
「どこ行けばいいんだろ……」
と、いきなりこの世に絶望したかの様な顔をしてきていた。
そもそも、セっちゃんが何を企んでいたのか分からない此方が、分かるわけない訳無いだろう、という呆れた状況に陥った。
まぁ、セっちゃんはそういった秘密の企みをしては、結果的に失敗して涙目になっては、コダチ姐やフォー姉を困らせたりしており、今回も何かしらの事柄を失敗するんじゃないかなぁと、うっすらとは思ってたりはしたが、まさかまさかの出鼻でやらかすとは思ってもみなかった。
「どこに行けばいいかわかんないよぉ……ねぇマツぅ……だすげてぇ」
目の前には、涙目になって此方にしがみ付いては困惑してくるセっちゃん。
セっちゃんの事だから、この大きな施設を探検しては、面白い設備か何かを見つけた様な事だとは思うが、目的が決まっていても、目的地となるその場所をわかってないというのが、まぁ、セっちゃんらしいといえばらしいが、ここは助け舟をだしておくかな。
「ねぇ、セっちゃん」
「なぁに……マツゥ……あぁ、どうしよ……」
「うちらまだ、ここらの事に詳しないから、フォー姉とかに聞いてみたら?」
「……そ、それだ!!」
思い立ったが吉日かのごとく、今度は目的地が決められた。
* * *
やって来たのは生徒会室。
コダチ姐とフォー姉が所属する所とは聞いてはいたけれど、やっぱりこういった場所の扉を開けるのは緊張する。
ノックをして、名前を言って、返事が返ってきてから扉を開け、入室後、すみやかに静かに締めて……
そんな練習を頭の中でしていた矢先、こちらがノックをする前に、いきなり扉を開けては中に首をつっこむ存在が一つ。
「フォー姉います?」
「ちょ……セっちゃん!」
セっちゃんの行動力に、流石にこれは不敬で不味いのでは?と焦ってしまう。
肝が大きいのか、心臓に毛が生えているのか、こういう思い切りの良すぎるところは、こういった場所では如何なもんだとは思う。
「……せめて返事を返してから入ってきてくれないかな?セコンド」
「ひぃっ……こ、この声は……」
「あ、コダチ姐だ!やっほー、って、フォー姉います?」
ほら、やっぱり怒られる……。
開かれた扉から見えたのは、机に向かって何かしらの書類?を処理しているコダチ姐の姿が見えたが、こちらにマナーがなっていないという怒りの眼差しが此方に向けられており、"これは、怒られる!?"という恐怖に身をすくめてしまう。
コダチ姐の説教はそう、それは子供の頃、おやつを食べようと手を洗わずにいた時……
「フォー姉どこー?どこにいったか知らない?」
こちらの思い出なぞどこ吹く風で、話しを進めていくセっちゃん。
セっちゃん!まずいって!コダチ姐がどうみても青筋たててる状況だっていうのに!
「ハァ……お前のその猪突猛進な性格は治らんのか……」
「ん?そんな事ないよ?」
「自覚無しなのが余計に厄介だ……廊下に立ってないで、いいから入ってこい」
「はーい」
「し、失礼します」
「マツカゼも道連れにしてからに……フォースは別件で外出中だ。何かようだったのか?」
「えっ、フォー姉いないの?」
「帰ってくるのは、夜遅くになるはずだぞ」
「そんな……」
「セっちゃん、コダチ姐に聞いてみたらどうなの?」
「そだねマツ。コダチ姐!えーっと……ちょっと耳貸して?」
「何だ?また何時ものつまらん企てか?」
「今度はつまらなくないもん!だから耳貸してって」
「自覚はあったんだ……」
「もー!マツまで!!って、コダチ姐、いい?」
「わかったわかったから、そう圧し掛かってくるな」
セっちゃんの圧に参ったのか、コダチ姐は耳を貸しては内緒話をして「ほぅ……」「なるほど」「ね、いいでしょ?」「たしかに……うむ」などの相槌が聞こえる程度であり、こちらは何を話いるのかわからずじまいであった。
「よし、ならば私が案内しよう」
「やったー!コダチ姐大好き!たすかる!」
「そのお調子加減も、何とかならんのか。今回はマツカゼを連れていくという話だからな」
「でしょでしょ、ならすぐいこー」
「だが、少し待て、この書類を終わらせてからだ」
「えー……」
「そこの椅子にでも座って待っててくれ。すぐに終わらせよう」
コダチ姐はそう言っては机の書類を素早く処理していった。
* * *
「ほ、本当にここなの?」
「あぁ、間違いない。旧舎となっている建屋に、だそうだ」
あれから、コダチ姐につれられ、目的地となる場所をコダチ姐のトレーナーから聞き出しては、日が少し傾き、当たりが暗くなってきた頃あいに、セっちゃんの目的地が近づいてきていた。
ただ、見るからにくたびれたともいえる木造校舎。
人の気配すら一切しない。
しかも、入ってみれば足場の木造廊下からは、歩くたびに軋み音をだしており、いまにも崩れてしまうのではないかと思える。
さらに、夕日も沈み始め、周囲が暗くなっていく中、電灯がまともに灯る気配もなく、点滅しているところすらある。
「本当に、本当なの?」
「だから間違いないと言ってるだろう」
「セっちゃん、いくら怖いからって、抱き着いたままなの、さすがに歩きにくいって」
懐中電灯を片手に歩いているコダチ姐、そして、私にしがみつくセっちゃん。
そういえば、肝試しの時も怖がって私にしがみつき続けてたっけか。
「だって、だって……」
「セっちゃん、お化けとか苦手だもんね」
「もー!マツ!!お化けの話はしないでよ!!」
そうして歩き続けて「ここだな」と、コダチ姐といっしょにたどり着いたのは建屋の一番奥。
扉にはすりガラスもなければ、隙間から灯すら漏れてこない。
そんな木製扉の前で、室内板をさがしてみるために懐中電灯の明りをそれらしいところへと照らし合わせると、そこに書かれてあったのは「用具室」という文字。
「えっ?間違いないの?用具室って書いてあるけど……?」
「あぁ、間違いない。教わった場所はここであっている……のだが、どういう事だ?」
「入ってみたらわかるんじゃないかな?」
わたしのその言葉に対し「それもそうだな」とコダチ姐が言っては、その用具室の扉の取手部分を触ろうとした時、木製の扉が勝手に開いては中から人影らしきものがあらわれ、それに対して懐中電灯を下から照らし出し、
「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「「「!?」」」
脱兎のごとく走り去っていったセっちゃん。
こちらも、その現れた人影には驚いたが、それ以上の驚きに上書きされ、逆に冷静になってしまった。
「えーっと……いらっしゃい、でいいのかな?」
人影からはそう声がするも、驚いて逃げ去っていく一人を、ただただ見送りながら、たまに何かに当たっては、大きな音を出しては去っていく一つの存在を目で追う恰好になりながら、三人が場違いなような言葉を発している状態になっていた。
「いらっしゃい……で、本当にいいんだよね」
「あ、ああ、それでいいとは思うが……」
「追いかけた方がいいよね?たぶん」
遠くで再び「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」という叫び声が聞こえた。
「申し訳ありません。出直してきます」
「あ、あぁ、わかった……驚かせてしまった点に関しては……」
「その謝罪も、後日、本人とでお願いします」
「そ、そうだな。うん、そうさせてもらおうか」
そして、「みんなどこぉぉぉぉ」という叫び声が聞こえたことにより、これ以上、此処にとどまる訳にはいかない事であると示していた。
「では、失礼します。いくぞ、マツ」
「は、はい!し、失礼しました!」
「お、おぅ……」
そうして、その場を後にしたが、やっぱり、セっちゃんの企み事は、こうなっちゃう運命なのだろうか……?