ヒト>ウマ>ヒト 作:ゼン◯ロブロイ
ライスは、お兄さまと手をつないでいたかった
ライスがお兄さまと初めて会ったのは公園だったの。あの頃のライスは、誰かを不幸にしちゃうんだ、だめな子なんだって…
お父様やお母様に隠れて泣いてたんだ。今なら誰かを不幸に、なんて事は無かったのが解ってる。偶然と、ほんの少しの悪意…ううん、いたずらかな。
たったそれだけで、ライスは自分がだめな子で、周りの子が不幸になっちゃうんだって、そう思い込んで泣いてるだけだったの。
でも、お兄さまと出会って全部変わったんだ。
涙を拭って、帰らなきゃって思って顔を上げたら、お兄さまがライスを見てたの。ライスも不思議とお兄さまから目を離せなくて…
お兄さまの目を見てたら、『この人に近づきたい』『この人と繋がりたい』ってライスの中から溢れてきて、気がついたら涙は止まって、お兄さまの目の前にライスは立ってた。
そんなライスに、お兄さまはしゃがんで目線を合わせてから挨拶と自己紹介してくれたの。
「こんにちはお嬢さん、こんな所でどうしたのかな?」
「あぁ、私は鉄再人という…まぁ、通りすがりのお節介さ」
「お嬢さんのお名前を頂いても宜しいかな?」
ちょっと気取って、かっこうをつけながら、ゆっくり、優しくお兄さまはライスに聞いてくれたんだ。
だから、ライスもちゃんと私はライスシャワーですって言えたの。
そしたら、お兄さまはちゃんと言えて偉いねって褒めてくれて。
それからゆっくりとお話したんだ、いっぱいいっぱいお話して、お兄さまは全部ちゃんと聞いてくれて、お兄さまに聞いてもらったら、今まで悩んでたことも、ライスがだめな子だって思ってたことも、周りを不幸にしちゃうって思ってたことも。
全部全部、溶かしてくれたの。
だから、お兄さまに聞いたの、なんで、ライスに声を掛けたの?ライスを助けてくれたの?ライスに手を伸ばしてくれたの、って。
「…他人の言葉だけどね、手が届くのに、手を伸ばさなかったら死ぬ程後悔する。それが嫌だから手をのばすんだ、って」
「その言葉を思い出して、私もそれは嫌だなって思ったから手を伸ばしたんだ」
たったそれだけで、手を伸ばせたの?なんでそんなに強いの?そうライスが聞いたら、お兄さまは苦笑いしながら答えてくれたの。
「それに、袖振り合うも他生の縁、躓く石も縁の端というからね」
「あぁ、わかりやすく言うなら、生まれる前に何処かで会ってたかもしれないから、また仲良くなっても良いよねって事さ」
お兄さまはそう言ってたけど、ライスはご本読むのが好きだからちょっと意味が違うのを知ってたの、知ってたけど、何でか解らないけどそれが凄く嬉しくて…
じゃあ、ライスと仲良くなってくれるの?きょうだいみたいな仲良しになってくれるの?絵本のおにいさまみたいになってくれるの?って、思い切って聞いたら、ちょっと驚いてから、ニッコリ笑って。
「今すぐ、は難しいけど…私はライスと仲良くしたいと思ってる。」
「だから、今から私と仲良くなってくれるかな?」
お兄さまがそう言ってくれて、ゆっくりとライスの目の前に差し出された手に、ライスは…ライスが仲良くしたい、ライスのお兄さまになって欲しいって、ライスが触ってもいいのかなって、色々な思いがグルグルしちゃったけど…。
ライスがゆっくり伸ばした手を、お兄さまが握り返してくれた時に色々…うん、色々と決めた瞬間だったと思う。
それから、お兄さまと手をつないでライスのおうちまで一緒に歩いてたんだけど、お兄さまはライスのおうちが見えてきたら段々面白いお顔になってたのは今でも不思議かなぁ…。
もう夕暮れで、心配したお父様とお母様、優しいお姉様みたいなお手伝いさんの文緒さんが門の前に見えて、ライスは何だか嬉しくなって、ただいまって大きな声で言っちゃったの。
そしたら、お父様もお母様も、文緒さんもびっくりしちゃったみたいで、目を真ん丸にしてたのがおかしくって、ちょっとはしたないけど、ライスは笑いながらお兄さまと手をつないだままお父様達の前に行って、お兄さまが送ってくれたの!って元気に言えたんだ。
そしたら、お父様が『娘を送ってくれたようだね、先ずはありがとう。それで、君は娘の何だね?』って言ってたから、ライスが思わずライスのお兄さまだよっ、て言っちゃった。
今思い出したらちょっと恥ずかしいな…
『少し、時間をもらえるかな?ゆっくり聞きたい話も出来た事だしね?』
「アッ、ハイ」
お父様がお兄さまの耳元で何か囁いたら、お兄さまが少し困ったような顔になったから、ライス、お父様におこっちゃったの。
お兄さまをいじめないでお父様!って。
そしたら、お父様は苦笑いしながら『いじめてなんかないさ、一緒に夕食でもどうかなと話しただけさ』って言うから、お兄さま本当?ってライスが聞いたら、お兄さまもそうだよって答えたの。
お兄さまと一緒に夕食なら、夕食が出来るまではライスの部屋で一緒にまってようね、お兄さま、ってお兄さまに抱き着きながら言ったら、お父様が面白いお顔になってたのは何でなんだろう?
ライスの部屋にお兄さまを案内したら、ライスが大好きな絵本を見せたり、お母様からもらった宝物を見せたり、トランプで遊んだりしてたらあっという間に夕食の時間になって、ライスはお兄さまと手をつないで食堂に案内したの。
それから色々お話しながらお食事したんだけど、お父様とお母様が、お兄さまに
『これからもライスと仲良くして欲しい』
って言って、お兄さまが。
「私はもう、ライスに仲良くなろうと手を伸ばしました。ライスもその手を握ってくれたんです、仲良くしますよ、駄目だと言われたとしても、ね。」
お兄さまのその言葉を聞いたら、何だかライスのお顔が真っ赤になっちゃって…すごく、恥ずかしくなって、お母様と一緒に御風呂に逃げちゃった。
『…それで、馴れ初めは聞かせてもらえるのかね?』
「単刀直入にいきますけど、ライスは、娘さんは悩んでいたんですよ。運が悪い事で、誰かを傷つけてしまうかもしれないと。偶然通りかかった私が見過ごせないと思う程度には。」
『そう、か。娘はそんなにも悩んでいたのか…改めて、礼を言わせてほしい。娘を助けてくれてありがとう。』
「疑わないんですね?」
『娘はあれで人を見る目に間違いは無いと思っているからね、だから、ありがとうで間違いないのさ』
「礼や見返りが欲しかったわけじゃ無いんで、その、困ります」
『ハハハ、君は存外シャイなようだね。しかし、どうしたものかな…運不運は具体的な対策も取りにくい。』
「あの、それなんですけど、ちょっと心当たりがあるんで…そうですね、2、3日待って頂けますか?」
「気休めですけど、ちょっとしたお守りが用意出来ると思います。」
『うん?それは構わないが、料金などは必要かね?即金でポケットマネーだが3本までなら動かせるよ?』
「3本?」
『あぁ、分かりにくかったかな。300万までなら直ぐに用意出来る、と言っているんだが。』
「いやいやいやいや、普通のお守りですからそんなにかかりませんからね!? 精々300円くらいのモノですからね!?」
『むっ、そうかね…だが覚えておいて欲しい。私も妻も、娘の…ライスの為なら不可能も可能にするつもりがあるんだ。それくらいあの子を愛しているんだよ。』
「…はぁ、それなりに見栄えのいい、何時も身に着けられるデザイン。幾つか考えてるんですけど、どんなものがいいですかね」
『いきなりだね、だが、必要な事のようだね。そうだなぁ、ライスに合わせるならブローチやシュシュ、リボン何かが妥当じゃないかな?まぁ、妻が居たら朝まで会議どころかデザイン決定まで帰れないだろうから、今決めた方がいいと言っておくが。』
「えぇ…?わ、わかりました、それじゃあ三日後にまたお邪魔しますので、その時にライスにプレゼントしますよ。あ、連絡先交換してもらえますか?お互い予定が変わったら困りますし。」
『勿論構わないさ。折角だから名刺も渡しておこう。裏に私のプライベートの番号を書いておいたよ。』
「ありがとうございます。それじゃあ、私はこれで。少々忙しくなりますから。」
『わかった、娘には私から巧く言っておこう。』
ライスがお母様に髪の毛を拭いてもらって、パジャマに着替えてからお兄さまの居る筈の居間に戻ると、お父様しか居なかった。
お父様が言うには、そろそろ良い時間になるし、家族も待っているし、用事も思い出したから帰る、と言っていたと伝えられて、ライスは凄く残念に思っちゃったの。
お兄さまだって、家族が待っているのだから、帰らねばならないのだ、でも、だけど、ちゃんとお兄さまにまたねって、おやすみなさいって言いたかったなぁ…
その夜、ライスは不思議な夢を見たんだ、何処かわからないけど、ライスはお兄さまと一緒に駆け回って、遊んで、仲良くしてたの。
でも、ライスはお兄さまから段々離れて行って、お兄さまに手を伸ばしても届かなくて、そのうちに段々身体もヤギさんやヒツジさんみたいになっていって…
目を覚ましたライスは、夢が夢だった事に安心したけど、夢の最後に見た、ライスだけどライスじゃない、見た事のない生き物は何だったんだろうって、今でも思うの。
お父様が、今日はお兄さまが遊びに来るから早く帰って来なさい、って言いだして朝からびっくりさせられちゃった。
この日は学校でも一日ニコニコしてたから、友達からもどうしたのって聞かれちゃったけど、良い事があるのって元気に答えたら、なんかびっくりしちゃってたのは何でなんだろう?
ライスはお兄さまに早く会いたくて、でもお家まで走ったら危ないから、急いで歩いて帰ったの。
「お嬢様、おかえりなさいませ。お客様は中でお待ちですよ」
門の前で文緒さんがにっこり笑いながら教えてくれたら、ライスはもう我慢できなくて駆けだしてしまった。
あうぅ…はしたないって怒られないかな?お兄さまに呆れられなかったから良かったけど、お母様は足音に気づいてたのか、少し眉が上がってた…
「おかえりライス、この間は挨拶もしないで帰っちゃってごめんね?」
お兄さまが少し困ったような笑顔でそう言ってくれたから、残念に思ったことも忘れちゃって、ライスも笑顔でただいまお兄さまって言って、そのまま抱き着いてまた来てくれたから良いよって言っちゃった。
それからお母様がホットミルクとおやつを持ってきてくれて、手を洗ってきてからお兄さまと一緒に食べたの。
お兄さまの膝の上で一緒におやつを食べて、それからお兄さまが一回降りてって言うから、ちょっとだけだよって言いながら降りたのは、今思えばわがままだったよね…うぅ……思い出すと恥ずかしいよぉ…
ええっと…そう、それからお兄さまがポケットから小さい箱を取り出して、プレゼントだよってライスに手渡してくれたの!
お兄さまに開けてもいい?って聞いたら、いいよって笑いながら言うんだもん。
お母様まで早く私にも見せて頂戴って笑いながら言うから、ライスのお顔に何かついてるのかなって、ぺたぺた触ったけど何もついてなくて、二人にライスのお顔に何かついてる?って聞いても笑うだけで大丈夫、何もついてないよって言うだけだから、ライスむーってなっちゃった。
でも、お兄さまがごめんごめんって言って、早く開けてごらんって言うから許してあげたんだからね?
箱から出てきたのは、青い薔薇のブローチだった。
掌に載せてみると、金属製の筈なのに、何だか暖かい感じがして、不思議だなぁって思いながら眺めてたら、お兄さまが付けてごらん?って言うから、じゃあつけてってお願いしたら何故かお母様が付けてくれた。
ライスはお兄さまに付けてほしかったのになぁ…
「そのブローチは私が作った御守なんだ、どうかな?気に入ってもらえたかな?」
お兄さまのその言葉を聞いて、ライスは思わずお兄さまに抱き着いてありがとうって言ってたの。
お兄さまはそのままライスを撫でてくれて、それからゆっくりお話しして、お母様とも一緒にトランプで遊んで、お父様も帰ってきて、一緒に夕食を食べて…
お兄さまがそろそろ帰るからって言ってもしばらく引っ付いたままになったのは、ライスがちょっと悪い子になったのはお兄さまが悪いと思うの。
それからはあっという間に季節が過ぎて行った…
週に二、三度は会いに来てくれて、お散歩にも、お出かけもしたの。
気が付いたら、ライスは運が悪い事も無くて、お友達も増えて、お兄さまとも沢山一緒に居て…ずっと、こうやって過ごしていけるって、ライスは思ってたんだ。
でも、お兄さまの家族がお仕事の事情で引っ越すって聞いて、ライスは頭が真っ白になって、よく覚えてないけど…いっぱい駄々こねて、我侭も言った、らしい。
この時の事は今でも時々お父様お母様がからかってくるのは困りものだ。
お兄さまは、また会おうねって約束をしたんだ。
だから、事故のニュースでお兄さまが…死んだなんて信じられない。
それ以上に、お兄さまのプレゼントの暖かさが、お兄さまが生きてると伝えてる気がするから…ライスは生きてるって確信してる。
だから、ライスが最初にお兄さまにしてもらったように、お兄さまに手を伸ばせるように…何処までも伸ばせるように、いろんな人と手を繋ぐんだ。
ライスとお兄さまの話は、今はここまで、次はスズカさんのお話聞かせて?
この世界線のライスは笑顔の似合うステキな娘です(棒
作中時間は96年世代相当なんですが時間経過は
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ポンポン飛ばそう
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季節毎に、くらい
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月毎に、くらい
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週毎に、くらい
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そんな事よりおうどんたべたい
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ちくわ大明神
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ガチャ爆死したからしらん!