「ちょっ、ちょっと鈴谷!いったいどうしましたの!?」
「いや、いいから!本当に何でもないから!」
テラス席のガラス窓に映りこんだシェフィールドのムスッとした表情に熊野は首をかしげる。そこで背を向けて座るシェフィールドにもう一度声を掛けようとしたのだが、自分の背中をぐいぐいと押し始めた鈴谷に思わず熊野は叫ばずにはいられなかった。
しかし鈴谷は言葉を濁して熊野を押しやろうとするばかりで、そのまま二人はシェフィールドの背後でしばらく押し問答をする羽目に。
シェフィールドはシェフィールドで自分のすぐ後ろで繰り広げられている諍いを煩わしく思いながら、気にも留めたくないと言わんばかりにクッキーをぼりぼりと音を立てながら頬張っていた。
「あっちでワケを話すから!ほんとに!もういいんだってば!」
ようやく決着がついたのか、鈴谷が声を張り上げたのを最後にシェフィールドの真後ろで聞こえていた二つの騒ぎ声は次第に小さく遠くなっていった。
「やっと静かになった」と一人こぼすとシェフィールドは残り少なくなったクッキーをゆっくりと噛みしめるように味わうのだった。
一方、鈴谷に有無を言わさず食堂の隅へと押しやられた熊野は眉をひそめて鈴谷を見た。
そんな彼女の視線に観念したように「実はさ…」と鈴谷は切り出す。そしてことの顛末を鈴谷が恥ずかしそうに打ち明けると熊野は「そうでしたの…」と口にしてから目をつむって腕を組み、何かを考え始めた。
「…熊野?」
ウンウン唸っている熊野の顔を心配になった鈴谷が覗き込む。すると
「ひらめきましたわ!!」
熊野が戦闘時に発する奇声さながらのビックボイスが鈴谷の鼓膜を揺らした。しかもそれは鈴谷の鼓膜を揺らすだけに留まらず、食堂にいた艦娘たちからの注目を浴びるのに十二分な威力であった。
「行きますわよ、鈴谷!」
「な、なに…!?どうし―――」
そして困惑する鈴谷の手を取り、ずんずんと行進するように歩く熊野の行き着く先は
「…なに?」
つい数分前に二人で押し問答を繰り広げた…つまりシェフィールドのところであった。
シェフィールドはというと最後のクッキーを食べ終わり、今まさに席を立とうとするところであった。
クッキーのお陰で少し気持ちが落ち着いた気がしていたのに、まさかまたあの二人が自分のところにわざわざやって来るなどシェフィールドは想像出来ただろうか。
一度は晴れたと思っていたモヤモヤとムカムカが再来したことにシェフィールドは不機嫌さを隠すことなく二人を…特に、自信にあふれた表情で自分の横に立っている熊野を睨みつけた。
さて、いったいどんな文句でも言いに来たのかとじっと熊野を睨んでいるとシェフィールドは熊野の口から思わぬ言葉を聞くのだった。
「お友だちになりましょう!」
自信満々にそう言いきった熊野とは対照的に、シェフィールドと鈴谷は面食らったようにポカンと口を開けて絶句するのであった。
コミュ強熊野、爆誕