何がどうしてこうなったのか…そんな疑問がずっとシェフィールドの中で消えないでいる。食堂から自室へと戻り、こうしてふかふかのベッドに腰を掛けている今でさえ彼女の頭からは熊野の言葉がこびりついて離れようとしないのだ。
チクタクと音を立てる壁時計に目を遣りつつ、彼女は数十分前に食堂で起きた出来事をゆっくりと思い出してみた。
「では、八時半に鎮守府の正面玄関で待ち合わせいたしましょう。楽しみにしてますわ」
大方、文句の一つでも言いに来たのかと最初彼女は構えていたが、「お友だちになりましょう」と熊野は言う。思わぬ発言にシェフィールドはおろか熊野の後ろにもじもじしながら控えていた鈴谷も面食らっていた。
しかもシェフィールドと鈴谷が言葉を失っているのをいいことに熊野は一人でペラペラと喋り続けている。そして弾んだ彼女の声が突きつけてくる言葉の意味を気が遠くなりそうになりながらも理解し、ようやくシェフィールドが初めて言葉を口にしようとした時。その時にはもうすでに約束が取り付けられていたのであった。
私の都合はどうでもいいんかい!と海外艦らしからぬ突っ込みを心の中でしながら、結局シェフィールドは「では、ごきげんよう」と優雅な言葉を残して立ち去る熊野と鈴谷の背中をそのまま見送ることしか出来なかった。
「…あと十分弱、かぁ」
もうまもなくで約束の時間である。とりあえずこのまま部屋でやり過ごすわけにはいかないとシェフィールドは適当に上着を羽織って部屋の外へと出た。
気乗りしないし、勝手に取り進められたことではあるけれど…かと言って待ち合わせ場所に赴かないのもそれはそれで失礼なことだとシェフィールドは思ったのだ。
どんよりとした足取りで待ち合わせ場所へと赴く道すがら、もう一度熊野に言われた言葉をシェフィールドは思い出してみた。
「ほほほ、いいところに連れてって差し上げますわ」
そういえば、そもそも友だちになるかどうかの返答をした覚えは彼女にはない。それに仮に友だちになれたとして、当然自分たちはお互いに知らないことばかりだ。自己紹介さえしていないこの状況でこのままホイホイ行ってもいいのだろうかとシェフィールドの不安は募るばかりであった。
「あ、来ましたわ!こっち、こっち!」
そして待ち合わせ時刻の少し前に正面玄関に現れたシェフィールドに熊野は大手を振って応えた。対して鈴谷は軽く手を挙げるだけであった。
両者の距離が縮まって、ようやく三人が約束の場所に集う。この再集結にシェフィールドは食堂での光景を思い出していた。
「…本当に来てくれたんだ」
鈴谷は少し驚いていた。てっきりシェフィールドは来ないとばかりに思っていたのだ。
「…私が何か言う前に行っちゃったんじゃない」
「あ、そっか…」
時間を経たことで、シェフィールドと鈴谷は一応お互いに目を見て話せるくらいまでの関係にはなっていた。しかし未だにシェフィールドと鈴谷の間には何とも言えないぎこちなさが残っている。
そんな二人の様子を眺めながら熊野は言ったのだ。
「さぁ、コンビニへと参りましょう!」