トウカイテイオーは生徒会副カイチョー   作:橋本みちか

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盛り上がってまいりました。盛り上がってるといいな。
※※※※このお話にはキャラクターを激しく叱責する描写が含まれています。苦手な方は読み飛ばしたほうが良いかもしれませんが、今後の流れが掴みにくくなるかもしれません※※※※


誉れ高き逸走

十月も末。天皇賞の盛り上がり冷めやらぬ中、URAは臨時の幹部会の為に秘書課の女性3人―正確には人間ふたりとウマ娘ひとり―で準備が進められていた。なんでも今年入ったばかりの新人がかねてより温めていた計画と共に今の制度に物申し、革命を起こすつもりらしい。

 

「でも、頭の凝り固まった幹部連中に何か言って通じるもんかね」

 

ひとりひとりのコースターを並べている女性が呟く。

 

「あれですよね?クラシックを撤廃して不完全燃焼のままレースから去るリスクを減らすって話。おおかたの施設の賛成は得られていたっていうけど、実際どうなんでしょう」

 

ひとり混じっているウマ娘が、その新人―シンボリルドルフというらしい―から全員に配布してくれと頼まれた資料を斜め読みしている。

 

「でもさ、昨日の天皇賞とかでもいろんなトコのウマ娘ちゃんたちがなんかやってたじゃん。チラシとかもらったし。なーんか、ちぐはぐなような、本質は違うところにあるような、そんな気がするんだよなあ」

 

三人目の女性は、昨日見に行った秋の天皇賞で名前も知らないウマ娘から手渡されたチラシをほかの二人に掲げて見せた。

 

「実際その時期を過ごしたウマ娘として、どう思うの?」

 

それをウマ娘に寄越し、感想を訊く。

 

「うーん。私の戦績はメイクデビューとプレオープンの1着止まりですし。クラシック競争にすら出走できませんでしたから。正直レベル高すぎて関係ない話かなって思います。―でも、だからといって最後まであきらめたつもりはありませんし、クラシックがなくなっちゃうと、その間の目標を失ってしまうようで...」

 

チラシに印刷されている中央の校舎を懐かしそうに見つめるウマ娘。

 

「それをカバーするために“URAファイナルズ”なんて作るんでしょ?今まで主催はウチだったけど実質的な運営や利益については各競バ場にいってたんだ。それをすべてURAの名のもとに開催しちまおう、カネを全部せしめちまおうってのが、透けて見えちゃわない?」

 

コースターを並べ終え、今度は椅子に敷くシートを取に行く。数人分の仕事だ、ぶっちゃけひとりでも出来るし、事実ひとりしか呼ばれていない。のだが、興味をひかれたウマ娘と同僚がついてきてしまった。

 

「あんたたちも着いてきたなら手伝いなさいよ」

 

ぱらぱらぱら、と資料を見終わったウマ娘がそれをもとの位置にもどし、他の資料もキチンと各テーブルに置いていた。

 

「だからこうしてやってるじゃないですか。―正直、現状目指されている競争を撤廃して新たな目標を作っても一緒だと思うんですよね。どうせそこを目指してケガするウマ娘も出てくるっちゃあ出てくるし。―クラシックはそれが最低3回、なくなれば年末だけで済むっていうのはありますけど。それに、クラシックそのものがなくなるってことは、身体が未成熟な段階からシニア相当の仕上がったウマ娘たちを相手にしなきゃならなくなるんですよ。私たちのようなレベルの低いウマ娘はそれこそ頭角を出すチャンスなんてなくなっちゃいます。これを受けて恩恵を得るのは、シンボリルドルフみたいに年少時にすでにシニアを凌駕するようなバケモノと、その全権を手にするURAだけだと思うんですよね」

 

なるほどねー、と他の人間ふたりは同意する。

 

「やっぱ当事者の意見は違うわ。私、なーんにも考えてなかったもん」

 

「ンまあ、私もシンボリルドルフと直接話したわけじゃありませんし。彼女が本当は何を思って、何を重視してこんなことしてんのかわかりませんよ」

 

準備の整った会場の椅子に座り、雑談を続ける。やはり旬の話題ということもあり、掘り下げは進んだ。

 

「でも、URAは最近になってウマ娘の競技者による組織?U-NIONだっけ?それの活動を公に認めたんでしょ?それを受けてのあの活動ってわけだし」

 

「プロ野球の選手会みたいなやつですよね。―あれがどのような趣旨で設立されたのかはわかりませんが、そもそもURAがこの話を知っていたかすら怪しいと思っています」

 

なぜ?という顔をして女性二人はウマ娘の話の続きを待つ。

 

「だって競バ界を根幹から覆しかねない大きな話ですよ。そんな話が上がっているのならとっくにココは大騒ぎだし、広く物事を考えると競技者のわがままなんて聞いてなんかいられないでしょう?組織の存続のために続けることは続ける、切るところは切る。どこもそういうもんだと思います」

 

ある種納得し、次の質問を重ねようとしたとき、遠くから靴音がいくらか聞こえてきた。

 

「ヤバッ、もう来た」

 

「開始時刻の45分前ですよ。じじいもばばあも早すぎますって」

 

ぱっと椅子から立ち上がり、扉を開け放って老人たちを出迎える体制を素早く作る。続けざまにやってきた4人の幹部に恭しく頭を下げ、御席までご案内差し上げ、飲み物をお渡しし、その後ろに控える。女三人寄れば、というもののやはり秘書。やるときはやるのだ。

 

その数分後、やけに大きくヒールを鳴らしながら、今日の主役がやってきた。かつーん、かつーん、と廊下に響く音が、その主が自信とプライドの持ち主で、それが決して上辺だけのものではないことを秘書たちに思い知らす。

 

「競技部競技課、シンボリルドルフです」

 

部屋には入らず、開け放たれた扉の前で一礼するシンボリルドルフ。新人にしては所作がとれすぎている。秘書課への移動を願いたいくらいだ。

 

「入れ」

 

桐生院の老婆に促され、シンボリルドルフは部屋へ―その中央に設けられた証言台のようなものに立たされた。その一歩一歩に力が籠る。シンボリルドルフは明らかに昂っていた。この老人たちを説き伏せさえすれば。あともう一歩なのだ。誰もが幸せに競技者としての生命を全うできる世界が開かれる。それに向けての準備はもはや一点のぬかりもない。何を突っ込まれても答えられる―突っ込むことすら許されないほどにできた資料はすでに渡してある。ゴールはもう自らの手中だ。台の上から再び恭しく一礼し、凛とした姿勢でシンボリルドルフは話し始めた。

 

「URAという我々ウマ娘たちにとって母ともいうべき組織。その頂点にいらっしゃるあなた方にお目通りが叶いまして、至極恐悦にございます。先ほども申しましたが、私、競技部競技課のシンボリルドルフで御座います。本日はよろしくお願いいたします」

 

―が、幹部たちの表情は冷ややかだった。いったい何を言っているのか?というような顔で幹部たちどうし顔を見合わせている。やがて正面の老人がす、と手を挙げた。

 

「静かにせい。―お前がシンボリルドルフ。なるほど桐生院の言うように気が早いようだな。…よいか、お前が今日ここに呼ばれたのは―、詰問の為だよ」

 

「詰問…?」

 

今度はシンボリルドルフが何を言われたのかわからないというようなそぶりを見せる。それはそうだ。自分が“話をしに”来たのに向こうの質問に”答えなければ“ならない。さすがのシンボリルドルフもここにきての立場逆転は全く想定外のことであった。

 

「まず私から質問させてもらおう。このチラシを知っているかね?」

 

引き続き正面の老人から質問が飛んできた。同時に、ウマの耳を付けた秘書から例のチラシがシンボリルドルフに手渡される。無論、これ自体はシンボリルドルフも昨日の天皇賞で名も知らぬウマ娘から受け取っていた。

 

「存じております。―ですが、これはあくまでウマ娘たちの運動にすぎません。学園、施設からは別の回答を得られており―」

 

「聞かれたことだけに答えればよい」

 

彼女の熱弁は老人のにべもない言葉により遮られた。

 

「次の質問だ。これに書かれてあること―、“ケガ等のリスクを考慮してクラシックを撤廃し、年末に巨大なレースを行うことで全ウマ娘の焦点を集め、URAの名のもと明確にタイトルを与えたりランクをつけたりする、という趣旨のものである。―そして、これをURAの職員が全国の施設学園に流布し、概ね賛同を得た―とあるが、この”URA職員“とは誰のことかね?」

 

まるで手柄でも獲ったかのように、力強い視線と口調で、シンボリルドルフは答えた。

 

「私でございます。私が計画を練り、実行に移し、多くの施設学園から賛成を勝ち取ってまいりました。あとはあなた方の承認さえあれば、競バ界はURAの名のもとに下り、すべてのウマ娘たちにケガのリスクを最小限に抑えた競技生活を提供することができます」

 

背筋を張って熱弁するシンボリルドルフを冷ややかに見つめる老人たち。各老人の後ろに控えている秘書たちはこのやりとりに些細な“ズレ”を感じ始めていた。

 

「―どうも君は喋りがすぎるようだ。我々にわかる話ならばよいのだがね」

 

「理解できない話ではないはずです。これが実現すれば、競バ界におけるURAの地位は絶対不変、唯一無二のものとなり、莫大な権力と富を得ることができる。それをあなた方の功績にしてしまえば、よりその力を増すことができる。やがてそれは競バ界に収まらなくなることでしょう。あなた方はURAという檻に収まっている器ではない。それを破り、外の世界へ羽ばたいていくのに必要なことなのです」

 

「戯言もほどほどにせんか若造がッッッッッ!」

 

シンボリルドルフから見て右に位置する老人がついに限界を迎え、怒鳴り声をあげながら立ち上がった。

 

「貴様は今尋問を受けている立場だ!余計なことを口にするなど許されるはずも無い!」

 

「尋問、ですって…?」

 

それを聞いたシンボリルドルフの顔が変わった。不本意な言葉に”皇帝“としての圧が放たれ始める。

 

「私は私の計画をあなた方に提唱しに馳せ参じたのだ!尋問など受ける謂れも無い!」

 

「その身勝手で自己矛盾に満ちた行動がッッッ!」

 

がつーん、と杖で思いっきり床を叩き、老人は怒りを表現する。

 

「URAの評判を!地位を!権力を!地の底まで引きずり落そうというのにまだ気づかんのか!」

 




※※※※次のお話にはキャラクターを叱責する描写が含まれています。苦手な方は読み飛ばしたほうが良いかもしれませんが、今後の流れが掴みにくくなるかもしれません※※※※
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