自称凡人が参戦する血界戦線!   作:『 』を応援するテト

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今回のお話は血界戦線の原作を少しとオリジナルの内容になっています。
原神の『魈』の伝説任務のネタバレが少しあるのでご注意ください。


自称凡人、懐かしい景色を思う。

テロリスト病原菌が起こした事件から何日か立った頃。

ライブラオフィスがあるビルの鍾離の部屋にて、

鍾離はテーブルの上に黄金色をした龍が描かれた壺を用意していた。

 

鍾離「最近は『洞天』に入っていなかったからな…霧ばかり見ているから少し気分転換にはなるか」

鍾離はオフィスに向かいギルベルトに声をかけた。

鍾離「すまないギルベルト殿、今日は部屋に籠もるので夕食の時に声を掛けてくれないか?」

ギルベルト「それは構いませんが、何か作業でもされるのですか?」

鍾離「ちょっとした気晴らしさ」

ギルベルト「そうですか、かしこまりました」

鍾離は自室に戻り、壺に触れた。

???「ようこそお帰りなさいませ、帝君」

 

………

鍾離が自室に籠ってからしばらくしてあと少しでランチの時間という頃、スティーブンは書類処理をしながらザップとツェッドにお遣いを頼んでいた。

スティーブン「なぁに簡単な仕事だよ。単なるお届け物、君ら二人なら文字通り朝飯前だ帰りにサブウェイでサンドイッチでも買ってきてくれ」

ザップ「えーと楽勝なんですよね?だったら…」

スティーブン「二人で行け、これは命令だ。」

スティーブンの有無を言わさない圧がありザップは黙った、そして手紙を差し出された。

スティーブン「はいこれ、三番街のブーリーロマノフに届けてくれ」

ザップ「ゲッ‼ブーリー‼」

スティーブン「ついでにツェッドの紹介も宜しく、あいつは初めての人間には絶対合わないからな」

ザップは行先を聞いてかなり焦っていた。

ザップ「…ブーリー…あのスターフェイズさん?おお、お遣いと紹介だけなら誰か他の…」

スティーブン「それがな?ご指名なんだよザップ君。君と彼女との間にどれだけの金銭貸借関係があるのかは知らないが、あの剣幕を見ると詳細を聞くのも憚られるな」

 

そうしてザップとツェッドは二人でお遣いに出かけて行った、人込みの中を2人は進んで行く。

ブロォォォォォ、パパーー。

ザップ「…何だよ!!」

ツェッド「何も言ってませんよ」

ザップ「言いたいことが山程ありますギョギョギョ~って顔してんだろがこの魚人間!!」

ツェッド「どんな顔ですか、貴方の類まれなる呆れを通り越して憐憫にまで届く救いようの無い素行の悪さなんて興味ありませんよ」

ザップ「全部言ったなコノヤロウ!!」

ツェッド「聞きたいのか聞きたくないのかどっちなんです?煩わしい」

こうして二人は進んでいったがこの先でまさかピタゴラスイッチのごとく偶然の連鎖に巻き込まれて命の危機で疲れ果てるとは思いもしていなかった…。

 

ーーーライブラオフィス

2人を送り出したスティーブンは変わらず書類を片付けていた、そうして1時間がたった頃…。

スティーブン(…ん?…そういえば今日はまだ鍾離の姿を見てないな…いつもならこの時間帯にランチに出かけていくのに…)

ふと思ったところにレオナルドがバイトを終えたのかオフィスに入ってきた。

レオ「ちわ~す。あれスティーブンさんだけっすか?」

スティーブン「ああ少年、あの二人なら少し前にお遣いを頼んだから今はいないぞ」

レオ「あーそうなんですか…すれ違いになっちゃったか…」

スティーブン「ランチに行く気だったんだろ?今日は鍾離をまだ見てないから部屋にいると思うぞ」

レオ「それなら鍾離さん誘って行こうかな?」

レオナルドが鍾離の部屋に行こうとした時、鍾離の伝言を聞いていたギルベルトが声を掛けた。

ギルベルト「ああレオナルドさん、鍾離様でしたら今日は一日お部屋に籠るそうですよ?夕食の時に声を掛けて欲しいとお願いされました」

レオ「そっすか……じゃあランチどうしようかな……」

スティーブン「俺はザップ達にサブウェイ頼んだからなぁ…でも、少し遅いか?」

 

………

そんな噂をされている二人だが、現在ライブラの武器調達調整担当の『「武器庫」パトリック』の探していた超威力の範囲限定アンプル型極小爆弾を発見、戦闘になったが偶然に偶然が重なり吹き飛ばされ何故か蜘蛛型の魔獣と一緒に飛んできた金庫に閉じ込められていた。その金庫を空を泳いでいた巨大大空亜虫が飲み込み上昇していく…金庫内ではザップとツェッドが中にいた蜘蛛型魔獣を倒したが糸に絡まっていた。

 

ツェッド「落ち着け…落ち着くんだ…」

ザップ「落ち着けよバカ落ち着け!!魚野郎!」

ツェッド「落ち着いてますよ!!黙ってください!!!……これ上昇…してますね…」

ザップ「ああ…落ちたなミンチだなこの感じ」

そういったザップは倒した蜘蛛型魔獣の糸に絡まり逆さまになりながら爆弾のアンプルを血法で巻いていた。

ツェッド「…それ…やっぱり…例の爆弾ですよね?」

ザップ「ああ…咄嗟にキャッチしちまったが、まあ多分ビンゴだわ」

ツェッド「両手疲れるでしょう、震えてるじゃないですか」

ザップ「いや、それがよ。どうやら少し割れてるっぽいのさ」

ツェッド「…いつ⁉」

ザップ「多分俺らが飛ばされたショックで」

ツェッド「そこから今まで⁉ずっとその薄ガラスをずらさない様に保持してたっていうんですか⁉」

ザップ「声がでけぇよバカフィッシュ!今もっかい巻き直してんだ集中させろ!!」

ザップはアンプルに慎重に血糸を巻き直していく。

ツェッド(……凄い…本当に天才なんだなこの人)

ザップが血糸をアンプルに巻き終わり、蜘蛛型魔獣の糸を切断してからツェッドが金庫を風で斬って開けようとするが少しの傷しか入らなかった。

ヒュパカアン…。

ザップ「ぎょぎょぎょぎょ~?使っかえねぇなぁ」

ツェッド「何でいちいちそんな言い方するんです(汗)」

今度はザップが金庫壁を燃やそうとするが無傷だった。

ボウォ…。

ツェッド「お話になりませんね」

ザップ「『耐火金庫』って言葉知ってるか?」

ツェッド「失笑モノです」

ザップ「(# ゚Д゚)」

ザップは八つ当たりで炎を金庫壁にぶつけていく…。

ボッボッ、ボボッボボッ、ボウワ…。

ザップ「畜生‼畜生‼畜生畜生畜生畜生ッ!!!」

ツェッド「やめて下さいよッ‼ああーッ‼魔獣‼燃えてる‼消して消して消して‼」

そして燃えた魔獣を2人がかりで鎮火した。

ザップ「…暑い…」

ツェッド「当たり前でしょう」

ザップ「…ケムイ…」

ツェッド「誰のせいですか‼」

ザップ「………頭痛がいてぇ…」

ツェッド「そうなんですか?……実は僕もです…」

ザップ「はッ⁉」

ツェッド「当然ですよ…‼こんな密室で火を燃やせば酸欠になるに決まってる…‼」

ツェッドの言葉にザップは不思議そうな顔をしていた…どうやら理解できていないようだ…

ザップ「(´・ω・`)・・・?」

ツェッド「燃焼っていうのは酸素と物質が結びつく科学反応じゃないですか‼」

ザップ「………???」はなほじり…

ツェッド「ウワ~~~~‼この人炎を使う資格無いわ…‼(汗)」

ツェッドはため息を吐いた…。

ツェッド「はぁ…どっちにしろ別の手を…」

ザップ「いやそれがそーも言ってられねー様だぜ?」

ツェッド「へ?どうしてです?」

ザップ「いや何だかさっきからエライ吐き気がする上に…どうも指先の感覚も無くなって来てのんさ…‼」

ツェッド「ええッ!!?」

確かにザップの手は震えていた。

ザップ「こりゃもう全賭けで突っ込むしかねぇな。いいか俺がカグツチを使って最高温度で発火させるから、お前はシナトベでそいつを限界まで一点に集中させてガンガンに酸素を送り込め」

ツェッド「…ッ即席のエアプラズマカッターって事ですか⁉この状況でぶっつけでそんな精密作業…!!」

ザップ「出来るに決まってんだろがーい!!」

ザップは何を当然の事を聞くのかという顔をしていたのでツェッドは驚いた。

ザップ「マジ何言ってんだ?お前。___俺たちは斗流だぞ?いいか__こんなハコ一つぶっ壊せずまとめておっ死んだらあの雑巾ジジイにどんな罵詈雑言で笑われるか知れねえぜ…‼」

ザップの言葉の終わりと共に二人でエアプラズマカッターを作り出し…。

ジッ、ジジジジジジジ

二人はそれぞれの修行中の出来事を思いだしていた。

 

………

ザップ『師匠!!今の技…風が操れんのかよ⁉ヤベエじゃんそれ!!当然教えてくれるんだよな⁉』

ツェッド『我が師よ、カグツチを伝授頂ければ我が血法はより戦闘力を増します。何卒…!!』

師匠『愚昧が、己が器も図れぬか。次に貴様と儂を並べて語らば耳鼻を削ぎ落とし野良犬に食わせるぞ。万謝を以って自らの技を研鑽せよ、何処までも深く鋭く。貴様の敢え無き一生などそれで終わる、二兎なぞ追えば何にもなれはせん。何にもなれぬのならこの先貴様を待つのは陰惨な死のみだ、ならば今ここで儂が楽にしてやるがどうだ?』

ザップ「あのクソジジイがああああ!!!」

ツェッド「師匠見ていて下さいィィィ!!!」

 

ボッ、ビュアァァァァ!!ガギギギギ、ドガ、ガチャーン…。

 

二人は無事に地上に戻ってこれ、ザップは血糸でネットを作って引っかかていた。

ザップ「……ズルイぞお前、軽く滑空出来るなんて聞いてねぇ」

ツェッド「聞かれてませんでしたから。あっ!!もうこんな時間ですよ!!」

ザップ「えーーー今日はもういいだろうもう~」

ツェッド「何言ってるんですか特に怪我も無いんですから行かないと…‼何があったか話しても絶対信じて貰えないですよ‼」

ザップ「うううううう」

 

ーーー

レオナルド達が噂してからしばらくして二人は無事お遣いを終えてオフィスに戻ったが…

スティーブン「なンだよ、そんでサブウェイ忘れたのか。意外と使えないんだな君達」

ザップ「うおお…キビシーナー…」

レオ「アハハハ…(汗)」

スティーブン「こんな事なら少年と一緒にランチ行けば良かったよ」

ツェッド「…?レオ君はランチ食べてないんですか?」

レオ「お二人と行こうと思ってたのでまだっすね、鍾離さんも今日は部屋から出ないつもりみたいですし」

ツェッド「そうなんですね…」

スティーブン「まあ一応ご苦労だったな。」

しょぼくれていたザップがこの場に居ない鍾離について少し文句を言い始めた。

ザップ「ちくしょう~今日は俺たち散々な目にあったのにあいつは部屋でお休み中ってか~」

ツェッド「鍾離さんは全然関係ないじゃないですか…あれは本当に偶然おきた事件ですよ」

ザップ「い~やこうなったらあいつにも俺たちの苦労話引っ張り出して聞かせてやる!!」

レオ「完全に八つ当たりじゃないっすか!!やめましょうよ…!!」

レオナルドの静止を無視してザップは鍾離の部屋に向かい扉を開けた。

バタンッ!!

ザップ「鍾離~おい話聞けッ…て、あ?いねえじゃねえか?」

鍾離の部屋にはテーブルに少し豪華な壺が空中に浮いていて鍾離本人は居なかった。

ザップ「つか…なんだこの壺…浮いてる?」

続けてザップを止めようとレオナルドとツェッドも鍾離の部屋に入ってくる。

レオ「え?鍾離さん居ないんすか?ギルベルトさんの話だと今日は部屋に籠るって…」

ツェッド「…ギルベルトさんに出かけていないか確認してきますね」

ツェッドは確認しに部屋を離れたがレオナルドも宙に浮いている壺に気づいた。

レオ「…壺?」

ザップ「またあいつが買ってきたガラクタか?」

レオ「鍾離さんは価値のある物し買ってませんよ…でもなんで浮いて…」

レオナルドが壺に近づき確かめようとすると壺から声が聞こえた。

鍾離「すまないが少年、そこをどいて貰えるか?」

ザップ「壺から声⁉」

すると壺の近くに鍾離の姿が現れた。

レオ「えええええええ⁉鍾離さん⁉今壺から⁉」

鍾離「はぁ…まさかノックもせずに部屋に入ってくるとは…ザップの短慮さを考えておくべきだったか…」

ザップ「はぁ⁉喧嘩売ってんのか~⁉」

そこにツェッドがスティーブンを連れて戻ってきた。

スティーブン「ツェッド…鍾離は部屋に居るみたいだが…」

ツェッド「何がどうなっているんです?」

メンバーが混乱してきたので鍾離は『塵歌壺』について説明する事にした。

 

ーーー

クラウス「…皆そろって何かあったのかね?」

スティーブン「俺も何が何やら…鍾離が説明してくれるみたいだけど…」

クラウスもオフィスに集合し鍾離は『塵歌壺』について話し出した。

 

鍾離「この壺は『塵歌壺』という璃月の仙人の道具だ、まあ実際に見てもらった方が説明も早いだろう」

そう言った鍾離は壺の前に立ち…

鍾離「この場の者たちの『洞天』への立ち入りを許可する」

??「かしこまりました」

メンバー『⁉』

メンバーは一瞬景色が歪むのを確認したが次の瞬間見たことがない風景が広がっていた…璃月の琥牢山、奥蔵山をモデルにした小島に竹林、璃月港の建物に稲妻の温泉をモデルにした建物など一部違うが鍾離が住む璃月の景色を切り取ったような光景だった。メンバーがガラリと変わった場所に驚いていると…

??「ようこそ、鍾離様のお客様方」

そこには宙に浮かぶ鳥?のような生物がいた。

鍾離「彼はマル、この『洞天』を管理をしてくれている壺の精霊だ」

スティーブン「壺の精霊って…ここはさっきの壺の中なのか…?」

鍾離「そうだ、仙術と霊石を使って作られた壺に『洞天』という小さな箱庭を作っているんだ」

鍾離の『洞天』には五つの空中に浮かぶ島が存在している。

レオ「これ…小さいっすか…?」

ザップ「…全然小さくなんかねぇだろ…」

ツェッド「…スケールが違いすぎますね…」

マル「では私から改めて自己紹介させていただきます。私はこの『洞天』の管理をしているマルと申します、以後お見知りおき下さい」

クラウス「うむ……ではこちらも……私はライブラのリーダーを務めているクラウス・V・ラインヘルツと言うものです、よろしくお願い申し上げる」

スティーブン「俺はスティーブン・A・スターフェイズ。よろしく頼む」

ツェッド「僕はツェッド・オブライエンと言います」

レオ「レオナルド・ウォッチっす」

ザップ「……ザップ・レンフロ」

マル「はい、皆さん宜しくお願いします」

一通り自己紹介を終えると鍾離は大きな建物の中へメンバーを案内した。建物内には部屋が沢山あり今まで鍾離がテイワットで購入してきた美術品や骨董品、書籍や巻物が置いてある部屋、食事を作るための台所、珍しいお酒や食材が保管されている保管庫などがあり、リビングにあたる部屋にメンバーを座らせた。

レオ「かなり広いっすね……」

スティーブン「……さっき一瞬見えた部屋は鍾離が集めたコレクションルームか?凄いな……」

クラウス「…後ほど中を見せて貰えないか確認しよう」

鍾離が人数分のお茶を用意して部屋に入ってきた。

鍾離「待たせてすまないな、では話を再開しよう。この『洞天』は持ち主の意思次第で景色や建物を自由に変換できる、今皆が見た景色は俺が住む璃月の物を再現した物になる。実は霧ばかりの景色を見ていて気分転換をしたくなってな…一日ここでゆっくりしようと思っていたんだ」

クラウス「先ほどの景色が鍾離殿が住む国の風景の一部か…確かに恋しくなるのも分かるな…」

スティーブン「でもこの壺は君の世界の仙人の物なんだろう?よく手に入ったね?」

鍾離「この『塵歌壺』は俺の古い友人が作ってくれたんだ」

レオ「作ってくれたって…その人が仙人なんすか?」

鍾離「そうだ」

ツェッド「じゃあかなり長生きされている方なんでしょうか?」

鍾離「まあ長く生きている仙人ではあるな」

レオ「はぁ~仙人ってすごいんですねぇ……術式とか全然見えなかったのに壺の中にこんな空間を作っちゃうなんて…もしかしてこの間のモラミートって…?」

鍾離「ああ、ここで作って外に持っていったんだ。そうだ昼食に用意してた俺が作った料理があるんだが食べるか?」

レオ「いいんすか⁉実はまだランチ食べてなくてお腹すいてたんっすよ~」

スティーブン「一人で食べるつもりだったなら用意しているのも少ないんじゃないかい?」

鍾離「時間が少しかかる料理なので多めに作っていたんだ問題ない、今持ってくる」

鍾離は台所から『とろ火で煮込んだ腌篤鮮』『美味しそうな絶雲お焦げ』『美味しそうな明月の玉子』を人数分用意してきた。(調理時間約8時間以上…。)

鍾離「熱いので気を付けてくれ」

レオ「おおー!!美味そう!!」

スティーブン「これはまた…本格的な味だな」

クラウス「うむ…素晴らしい味付けだ」

ザップ「はふッあつッうまッ!!」

ツェッド「…熱くてなかなか食べられませんね…ハフ…モグモグ……ゴクン…とてもおいしいですね」

メンバーは鍾離の作った璃月料理を堪能した。

クラウス「鍾離殿とても美味しかった、ありがとう」

スティーブン「ごちそうになった、本当においしかったよ鍾離」

レオ「すっごく美味しかったっす!」

ツェッド「ごちそうさまでした」

ザップ「サンキューな」

鍾離「喜んでくれたようで何よりだ」

食後のお茶を入れて少しゆっくりしたクラウス達は『洞天』の中を見学したいと思っていた。

クラウス「鍾離殿、出来れば屋敷の中を見せてもらいたいのだがいいだろうか?」

スティーブン「俺もクラウスとあのコレクションルームを見せてもらいたいね」

鍾離「そうか、なら案内しよう。少年たちはどうする?」

レオ「僕は外の景色をもうちょっとゆっくり見たいっすね」

ザップ「俺もだな~」

ツェッド「僕も景色を見たいですね」

鍾離「そうか、ゆっくり見てくると良い」

 

………

3人はクラウス達と別れて洞天内の散策を始めた。屋敷のある一つ目の島から渡ると二つ目の島には軽策荘をモチーフにした竹林と段々と連なる花畑に小さい納屋と沢山の魚が泳ぐ池があった。

ツェッド「この池は……観賞魚を飼っているんですかね?異界産の魚とも違う綺麗な種類が多い…」

レオ「え?どれっすか?……ホントっすね、泳いでる魚の種類が違うみたいっす。これが鍾離さんの世界の魚か~」

ザップ「…こいつら後で料理に使われんのかな?」

レオ「ちょ、夢の無い話しないで下さいよ!」

 

三つ目の小島は琥牢山と奥蔵山をモチーフにしているのか高い崖から滝が流れ落ちあちこちに巨大な琥珀がある、中央には大きな岩がそびえたち清心と流璃袋があちこちに自生している。

ツェッド「ここは鍾離さんが言うように自然をそのまま再現した場所なんでしょうね……」

レオ「なんか……仙人の世界って感じの場所っすね……」

ザップ「滝まであんのかよ、この壺ん中…」

四つ目の島は木々に囲まれ守られるように沢山の"天然の流璃百合"が咲き誇っていた。

 

レオ「おおー!凄い景色っすね」

ザップ「お前ほんっとこういうの好きだよなぁ」

ツェッド「……確かに幻想的な風景ですね」

最後の五つ目の島には今までの璃月の風景と少し違い稲妻の建物が建ち、近くには石でできた椅子やテーブル、一番奥にはとても大きな銀杏の木と周りに咲く沢山の霓裳花があった。

レオ「あれ?この建物だけ雰囲気違くないっすか?」

ツェッド「そういえばそうですね…」

稲妻の建物には暖簾が出ており温泉マークが付いていた。

ザップ「…まさか…ジャパニーズ温泉ってやつか!?」

レオ「まあわかりやすくマークついてるし、多分…温泉っすね」

ツェッド「…温泉…」

ザップ「おや〜?な〜んか入りたそうだなぁお魚ちゃんよ〜。でもお前が入ったら煮魚になっちまうんじゃねぇの?」ε⁃(˃᷄ε ˂᷅ ๑))

レオ「…アンタがいつか釜茹でにされるべきだと思うっすよ…」

ツェッド「…同感ですね」

そんな風に3人が『洞天』を探索している一方で…

 

………

最初の島の屋敷に残り鍾離が集めてきた璃月の書籍や色々な貴重品をクラウスとスティーブンは見聞していた。

スティーブン「…うーん予想はしていたけど、書籍は鍾離の世界、テイワットで使われている文字だからまァ読めないよね…鍾離は俺達の世界の文字は最初から読めていたのかい?」

鍾離「いや、言葉は聞こえるし話せていたが文字は分からなかった。なのでギルベルト殿に協力してもらい文字を覚えたんだ」

スティーブン「短時間で覚えたって…簡単に言うね…」

鍾離「記憶力はいい方なのでな…」

クラウスは2人の側で品物をじっと観察していた。

クラウス「…この品達を見ていると地球によく似た文化があるのはよくわかる。これらの品は古代の中国文化の品に似ている…。」

スティーブン「相変わらず、君も大分博識だよね。俺がわかるのは西洋文化の品くらいだよ」

2人は壺や小物、石泊や夜泊石が収められた宝石箱などを見ていると、クラウスはあるモノを見つけた。

クラウス「…?…これは……」

本棚の近くに出しっぱなしになっていた本で挿絵が入ったページが開かれていた。

クラウス「鍾離殿、ここに置いてある本は…」

鍾離「その本は…出しっぱなしにしていたか。その本は『護法仙衆夜叉録』という本だ。璃月の過去に起きた妖魔を払う『仙衆夜叉』達について書かれている。」

スティーブン「『仙衆夜叉』?仙人について書かれた本なのか…読めるなら自分で読みたい所だけど…」

クラウス「私も興味があるのでぜひ読み聞かせて欲しいのだが……良いだろうか?」

鍾離「ああ、構わない」

鍾離は『護法仙衆夜叉録』の内容を話始めた…

 

___

太古の昔…璃月は瘴気に満ち魔に溢れていた…。七神が国を統治する前に起こった『魔神戦争』によって敗北した魔神の残骸は怨嗟をまき散らしやがて妖魔となった…妖魔は疫病、怪異そして動植物の変異を引き起こした…やがて岩王帝君は仙人の夜叉を招集し魔を滅する事にした。彼らは護法の為殺生し悪を滅する事を岩王に誓った…しかし長い決戦の中、『業障』に囚われ魔神の憎悪に染まってしまう…恐怖に支配され発狂する者…同士討ちで死に至るもの…精神が壊れ魔物となる者…最も強かった5人の『仙衆夜叉』の内3人が悲惨な死を遂げ、1人が行方不明となった…幾千年の時を超え生き残ったのは『降魔大聖』ただ1人…そして彼の姿を覚えているのは孤雲閣に照らされる月明りと荻花州の笛吹だけとなった…。

___

鍾離は『護法仙衆夜叉録』の内容を語り終えた。

クラウス「…強大な力を持った仙人達『仙衆夜叉』が蝕まれた『業障』…そしてたった1人残った『降魔大聖』…その彼は今も鍾離殿の国を守り続けているのだろうか…?」

スティーブン「仙人なら今も生き続けているはずだろう?」

鍾離「彼の噂なら聞いている、だが彼は滅多に凡人の前に姿を現すことはない。先ほどの本の内容通り彼は岩王帝君との契約を守り璃月を飲み込まんとする闇と戦う事が役割だ、姿を見たとするなら生と死の瀬戸際に立たされる程の危機に陥った者達だな…そんな危険を救ってもらった者達が彼の話を後世に繋いでいるんだ」

(…俺はもう、神の座を降りた。魈…お前もずっと俺の事を慕い続ける事はないんだがな…俺がHLに来てから大分時間が経過しているがテイワットの時間とHLの時間の流れが同じとは限らない、あまり時間が経っていない事を願うしかないな)

鍾離は望舒旅館に今も居るだろう少年仙人を思いながらクラウス達に説明をした。

鍾離「さて、少し長くなってしまったな」

スティーブン「いや、こっちも興味深い本の内容が聞けたからね。」

クラウス「是非とも他の本の内容も知りたいものだ…本格的に鍾離殿の世界の文字を覚えるか…。」

クラウスが本気でテイワットの文字の勉強をしようとか悩んでいるとスティーブンが呆れた顔をしていた。

スティーブン「ハイハイ…でもそんな暇もないし、ここに来るには鍾離の許可がいるんだからナンセンスだよ」

クラウス「むう……」(´。_。`)

スティーブンの言葉を聞いて残念そうな表情をするクラウスだった。

鍾離「ははは。そうだな今度はギルベルト殿達皆を連れてこようか。今の形態の『洞天』には旅人から貰った設計図で作った温泉があるから、時間がある時にゆっくりしていくといいぞ」

スティーブン「そんな物まであるのかここは…マジで至れり尽くせりな場所だな…」

クラウス「時間があれば是非とも…!!」

こうして外を探索していた3人も戻り鍾離達は『塵歌壺』を後にするのだった…。

鍾離達が出て行って少したった後…。

マル「この『洞天』に沢山の方々を帝君がお連れしたのは何百年ぶりでしょうか…。帝君も肩の荷を降ろして凡人としての生活と今の世界を楽しんでいらっしゃるようですし、マルは嬉しいです」

壺の精霊マルは自分の主を思い嬉しそうにしていたのだった。

 

ーーー連鎖的事件後の壺で見る石泊の思う景色__終幕__


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