一夜にして構築された霧烟る街『ヘルサレムズ・ロット』…。
魑魅魍魎、超常犯罪、魔導科学などが跳梁跋扈する街に召喚されやってきた異次元からの客人、鍾離。
本日はライブラオフィスにてにスティーブンに元素視覚について問いただされていた。
ーーーライブラオフィス。
先日の師匠襲来事件から数日後の事。
スティーブン「それじゃ鍾離、この前の元素視覚について聞こうか?」
鍾離「構わないぞ。」
スティーブンはソファに深く腰掛け鍾離も向かい側に座る。
レオナルドとザップ、新しく仲間に加わったツェッドも内容が気になるのか近くによって来た。
ツェッド「鍾離さんは本当に異次元から召喚されてやってきた方なんですね。」
レオ「そうっすよ、ツェッドさん。ちょっと前に鍾離さんの国の歴史とか少し話して貰いましたけど今回は元素視覚ってやつの話をするんすよね?」
ザップ「この間俺見て元素反応がどうとか言ってたアレか?つかそんなん出てんのかよ俺…そこの魚類は如何なってんだ?」
ツェッド「なぜそこで僕を引き合いに出すんですか…。」
鍾離はメンバーを見渡してからテーブルに自分の神の目を置いて説明を始めた。
鍾離「これは俺の岩元素の神の目だ。まず神の目を手に入れた者は7つの元素のうち1つを扱う事ができるがそれに元素視覚と呼ばれる元素を直接見る事が出来る視界も手に入れる、元素が付着した物や人の痕跡もたどれるが時間が経てば消えてしまうものが多い。視覚を切り替えれば七元素に関わる色として目に映るようになる。例に挙げるなら先日見たザップの体内の炎元素の色だが微かに赤い色を体に纏って居るんだ、血を属性に変える影響か常に体に纏っているのは俺もあの時初めて知ったよ。」
スティーブン「それで個人の判別もできるのかい?」
鍾離「元素は発生させた物の固有の物で同じ流派を使うザップ達だから分かったようなものだな、しかもかなり集中しなければ見れないほど薄い色をしている。じっとしていれば長く見れるが動くと見きれない。」
スティーブン「はぁ、それなら特に問題はないかな。」
鍾離の説明に神の目をまじまじと見つめるザップ。
ザップ「こんなガラス玉みてぇなの持っただけであの便利バリアとか出来るようになんのかよ…?」
レオ「便利バリアって…確かにメチャクチャ世話になってるけども…。」
ツェッド「これは他の人が持っても意味が無いんですか?」
鍾離「意味はないな、これは個人に与えられるもので奪ったところで使えない。」(それに俺から奪った所で意味は無いしな…。)
ザップ「なんでぇ、使えたらバ~リアッてして旦那に今度こそ勝てると思ったのによ…。」
レオ「あんた鍾離さんから借りるつもりだったのか…。ホントに天罰が下るといいのに…。」
ツェッド(そんな野蛮なことをしているのかこの人は…。)じと~
ザップ「…んだ魚類やんのか~今なら高値で買ってやるぞ~。」
スティーブン「やるならここでするなよ。」
鍾離は神の目をテーブルから回収すると再び身に着けた。
鍾離「それに神の目の所持者はあまり多くない。神の目を欲しいと願う人は沢山いるがただ欲しいと願っていても現れる事は無いようだ。」
鍾離(それに神の目を持つ事は1つの『契約』、何かの力を得るには対価が必要になる。この中で少年が一番身に沁みて分かっている事だろうがな…。)
レオ「そうなんすね~『グウゥゥ。』あ。」
レオナルドは話の途中でお腹が鳴った。
レオ「…アハハハハ…お腹すいちゃいました…。」
スティーブン「そういえばもうランチの時間か…鍾離の話も区切りがいいし俺はこれからクラウスと打ち合わせが有るから失礼するよ。」
そう言ってスティーブンは先に出掛けて行った。
レオ「あ、なら昼メシ鍾離さんとツェッドさんも一緒に行きましょーよ。」
鍾離「良いぞ。」
ツェッド「え、僕は」
ザップ「てめーレオてめー、何誘ってんだお前生臭くなんだろメシが」
レオ「じゃあいいです、僕ツェッドさん達と行きますから。そんな事言う人は死ねばいいです」
そう言ってレオナルドは鍾離達を連れて外に行こうとする。
ザップ「ちょ…!!待てよ…!!…いいぜ一緒に食おう」
そうして一緒にランチに出掛けたがザップが選んだのは回転寿司だった。
ドドン!
ザップはニタニタしておりレオナルドとツェッドは露骨な店選びに呆れており、鍾離は回転寿司を目の前にして顔色を悪くしていた…。
レオ「………」
ツェッド「………」
鍾離「ッ………。」
ザップ「いやーウマそうったらないなあ〜オイ」
だがツェッドは普通に暖簾を潜ろうとしていた。
ザップ「…って入るんかい…ッ!!」
ツェッド「え?何がです…?海にいる魚が普段何を食べてると思ってるんですか?同じ海にいる生き物達です」
ザップはツェッドに効いてない事に悔しがっている、別の人物には効果抜群だが。
ザップ「……ッ!!」
ツェッド「貴方の程度の低い嫌がらせは無教養からくる的外れも含まれるわけです。さ、理解できたらさっさと頂いてしまいましょう」
だがレオナルドが鍾離の様子に気がついた。
レオ「…ってあれ?鍾離さん顔色がめちゃくちゃ悪くなってるッスけどもしかして…。」
鍾離「………海産物は…苦手なんだ…。いや魚以外のを頂くから気にしないでくれ…」
ザップ「マジか!?良しッそれなら早く食おうぜ〜。」
レオ「いやいやいやいや有り得ないよ!鍾離さん無理せず別の所行きましょ!僕鍾離さんのオススメの店行きたいッス!!」
ツェッド「鍾離さんの方がお店を知ってるんですか?」
レオ「鍾離さん美味しいお店巡りをしてるっすから!ねっねっ!」
レオナルドは鍾離とツェッドの背中を押しながら別の店を探し始めた。
ザップ「鍾離が良いってつってんだからここで食えばいいじゃねぇか…ってオイコラ俺を置いてくな陰毛頭!!」
ザップもレオナルド達を追いかけ始めた。
ーーーとある場所。
スティーブンはクラウスと合流しある人物に合っていた。
スティーブン「レギオカ千兄弟?」
ダニエル・ロウ警部補「ああそうだ、新興のファミリーヤクザが一発逆転を狙ってる。ヤクザファミリーじゃねぇぞ、ファミリーヤクザだ。信じ難いが千兄弟ってのはガチ話らしい」
その人物はタバコを吸ってひと息つく。
警部補「先日中華製中古パワードスーツが千機輸出された、だが世界中どこを調べても荷受けの情報が出ねえ。ヴァーロー&ホーラー運輸のジャガーノート・スミスが持ち込んだ線が大だ」
スティーブン「『底なしブリーフケース』の仕業か、そんなに積込んで余命は大丈夫なのかね」
警部補「カバンとアイツの間の契約なぞ知らん。問題は推測が正しい場合追いつめられた異界ヤクザが近いうちに街中で巨大なパーティーをおっぱじめるだろうって事だ。奴らは『千人同時』に動く、挙げるには頭数が足りねぇ。」
人物はクラウス達を見てニタリと笑った。
スティーブン「で、俺達にも手伝えと」
警部補「そうだ」
スティーブン「…危ないなぁドサクサに紛れて後ろから手錠をかけられたりして」
警部補「順当な邪推だな、そうしてやりたいのは山々だ。だが考えてみろこれだけ大きな山だ耳聡い連中にはもう伝わってるだろう。ヘルサレムズロットの混乱が長引けばその機に乗じて他の厄介者共も動き出すぞ」
スティーブン(あ、ずるいそこ突くんだ)
スティーブンは横にいるクラウスを見るとヤル気に満ちていた。
ゴゴゴゴゴ…
クラウス「(`・ω・´)………」
スティーブン「( ¯ㅁ¯; )………」ガックシ
クラウス「?」
その様子を見たダニエル警部補は笑みを浮かべた。
警部補「……ボスの腹は決まった様だな、宜しく頼むぜ」
スティーブン「……これは貸しと言う事でいいのかな?ダニエル・ロウ警部補」
警部補「そうさ、だから今も逮捕してねぇだろ?」
警部補はそう言うと少し遠くを見た。
警部補「……ちなみにお前等んとこの片目の年増スゲエな。うちの狙撃班が右往左往してるぜ、絶対居るはずなのに見当たらねぇてな。胸は無くても能力は有る…」
ズドンッ!!シュ〜…バチチッ
警部補の斜め上を電撃を纏った銃弾が狙撃した。
警部補「……褒めたんだけどな」
警部補の頭は電撃の余波で少し焦げていた。
スティーブン「だとしたらKKのギリギリ残った理性に感謝しなくちゃね」
ーーー
レオナルド達は鍾離のオススメのお店を目指して移動していた。
レオ「でも鍾離さんにも苦手な食べ物があったんですね。いつも美味しいお店を探してるから好き嫌い無いと思ってたッス」
鍾離はまだ少し顔色が悪かったが話を始めた。
鍾離「…話すと長くなるから省かせてくれ、昔色々あって嫌いになったんだ。ああいう何というかつるつる滑るような感覚と洗っても消えない生臭さを見るだけで思い出してしまってな…。」
ザップ「それなら魚類も見ただけで駄目なんじゃねぇのかよ?コイツはつるつるヒンヤリの触覚くず餅だぞ〜」
ツェッド「貴方如何しても僕をイビりたいんですね…隠す気も無いとは…。」
鍾離「ツェッドは仲間だし見た目で海産物だと思わなければ大丈夫なんだ。」
レオ「見た目でわからなきゃいいんだ…。」
会話を続けていると鍾離の目的の店が見えてきた様だ。
鍾離「ああ、あの店だ。最近できた店で中国からの出店で新鮮な食材と料理人の腕が自慢だそうだ、俺もまた来たいと思っていたんだ。」
ザップ「へぇ〜、そんなに美味かったのかこの店。」
そうして4人はお店に入店した。
店員「いらっしゃませ〜」
店内は沢山の異界人、人類のお客で賑わっていたが、4人は運良く個室に通された。
レオ「僕達初めてだから注文は鍾離さんに任せてもイイっすか?」
ツェッド「確かに一度来ていますもんね。」
ザップ「何でもいいから早く頼んでくれよ〜腹減った〜。」
鍾離「俺の好みになるが、分かった。」
そうして鍾離が注文した美味しそうな料理が運ばれて来た。
ザップ「うお〜美味そうッ!!」
レオ「じゃ早速ッ!」
ツェッド「では頂きます。」
鍾離「追加があるなら言ってくれまた注文する。」
4人は鍾離オススメの料理を堪能していた。
レオ「やっぱり鍾離さんのオススメに間違いは無かったですね〜。」
ツェッド「本当に美味しいです。」
ザップ「鍾離オメェが頼んだのこれで全部か?」
鍾離「いや後頼んでいる料理が何点かあるがとても辛い料理が有るので注意してくれ。」
店員「お待たせしました〜。」
残りの料理を店員が運んで来たが一つだけ異様な料理があった。
見た目がぜんぶ真っ赤でありグツグツ煮えたぎった麻婆豆腐だった。
店員「うちの店長オススメ大赤山の麻婆豆腐ですー。」
3人「…ッ?!」
鍾離「ああ、ありがとう。」
その麻婆豆腐は『地獄の血の池』的な見た目をしていたが鍾離は普通に受け取っていた。
鍾離「さあ食べよう、冷める前にな……だがこの麻婆豆腐は見た目通り辛いから無理はしなくていいぞ。」
そうして4人で食事を再開した。
ザップ「なぁお前ら無理して食べなくてもいいとか言われたら気にならねぇか?」
ザップは地獄麻婆を普通に食べている鍾離を見て2人に話しかけた。
レオ「…まぁ気になりますけど見た目からして絶対に辛いヤツですよ。」
ツェッド「でも鍾離さんは普通に食べてますね…。」
ザップ「…やっぱりキニナルッ!鍾離俺らにもその麻婆豆腐くれ。」
鍾離「…構わないが本当に大丈夫か?」
鍾離はザップ達の前に麻婆豆腐を回した。
3人は同時に麻婆豆腐を食べたが…
パク…… 3人「辛ぁァアアッ!!!」
鍾離「……この店のメニューで一番辛い料理らしい。」
ツェッド「鍾離さんよく平然と食べられましたねッ……(泣)」
ザップ「お前の味覚どうなってんだよッ……!!(泣)」
鍾離「璃月には“絶雲の唐辛子“という特産品を使った料理が沢山あるんだ。だから辛い料理には慣れている。」
レオ「……ッ……ゴホ……ッ……水下さい……ッ……(泣)」
そうして美味しいランチを食べれたが最後に食べた麻婆豆腐の辛味が抜けずまだ悶えている3人がいた。
店員「ありがとう御座いました〜。」
ザップ「あ~あ酷でぇ目にあった…。」
鍾離「だから言っただろう?とても辛いと」
レオ「でも他の料理はホントに美味しかったですよ…まだ口の中痛いけど…。」
ツェッド「そういえば僕ら支払いしてませんけど…。」
鍾離「前にここの店長が料理に使う食材に迷っていたから偶々一緒に食材選びをしたらすごく感謝されてな、俺の事を覚えていたらしく今回の料理は店長が奢ってくれたそうなんだ。」
ツェッド「意外な所で縁が…。」
ザップ「でもよ〜口の中やべぇ状態のままだから口直しにコーヒー飲まねぇか?」
レオ「賛成〜」
こうして口直しの為に4人は「ダイアー」に向った。
ーーー貸し会議室内にて
警部補「中華製人体追随式起動歩兵『人民華星3型』、こいつが今回消えた機体だ。型番としては旧式も旧式だが信頼性ととにかく頑丈な事で一世を風靡大ベストセラー。まぁそうでなきゃ千機も用意できねぇわな」
ダニエル警部補の説明と共にスティーブン達も資料を確認している。
警部補「とにかく安かろう悪かろうの人海戦術には打ってつけのチョイスなんだが、問題はこれだけの数一斉稼働させようってんならこっそりとはいかねぇって事さ」
スティーブン「『調整屋』周りは張り込み済み?」
警部補「当然だ、人間用に作られたパワードスーツを異界人が使うなら必須だからな。『仕掛け屋ビリー、ジーン&サクソン、オペガレージ、ゴードンバイオメカニクス、アーマースミスカンパニー、ハッセルホッフGmbh』…出ねーんだわこれが」
スティーブン「大口の注文があれば隠し様がない筈だけどねぇ。…更に地下に潜った?リトルアキバの個人営業窟は?」
警部補「それも考えたが…千だぞ?」
スティーブン「精度がマチマチなのを飲むなら複数雇用でゴリ押すかも、何よりも格安で済むしね。こっちで調べよう」
スティーブンはチェインに連絡を取り始めた。
ーーー
ダイアーに向かう道中の4人は…何故か異界人マフィアの抗争に巻き込まれていた…。
レオナルドは鍾離の玉璋シールドに守られ、3人は周りのマフィアを蹴散らしていく。
レオ「ザップさんが悪いんスよ?!あそこで近道しようぜとか言うから!!」
ザップ「…ッチンたらしてたら何時まで経っても口ん中辛いマンマなんだよ!!」
ツェッド「というよりも何故辛味が全然取れないんですか!!」
鍾離「俺は何とも無いのだが…もしや…。」
ツェッド「心当たり有るんですか!?」
鍾離「俺が店主に進めた食材と唐辛子は食べ合わせがあって一緒に調理するとより辛味が増す方法があるんだが…」
襲い掛かってくるマフィア達を話ながら蹴散らしていく3人。マフィアと言っても下っ端集団の抗争なのかとても弱かったのだ。
それでも銃を乱射したりしているが玉璋シールドの強度を上回る威力では無く鍾離が時間切れ毎に貼り直しているので無傷だった。
鍾離「店主はその方法に更に改良を加えると意気込んでいたので、初めて食べた3人は辛さに耐性が無いので過剰反応を起こしているかもしれん…。」
レオ「えッ!?それって戻るンデスヨネ?!」
ザップ「……すぐには戻らねーよ。辛いの苦手な奴が辛いモン食うと余計にキツくなるのと同じ原理だろ。」
ツェッド「……ッ!!じゃあまだ暫くこのままなんですかッ!!」
鍾離「時間が経つのを待つしか…。」
3人の戦闘が終わり、鍾離達はようやくダイアーに向かった。
カランカランッ
ビビアン「よおレオってどうしたその顔?」
レオ「……ッ……ッ……ッ……(泣)」
レオはまだ口の中が痛むのか時折顔をしかめている。
レオ「実は……かくかくじかじかで……。」
ビビアン「成る程な〜。……ちょっと待ってな。」
そう言って厨房に入っていったビビアンが持ってきたのは小さな小瓶に入った蜂蜜色の液体。
レオ「……これは?」
ビビアン「ウチの特製ハチミツ水だよ。口の中がヒリヒリする時はコレが一番効くから飲んどけ。」
ツェッド「……ありがとうございます……。」
レオ「ゴク……ゴク……ぷはぁ〜美味しい〜♪」
ツェッド「……確かにこれなら飲みやすいですね。」
ザップ「……あ〜生き返った〜。」
鍾離「3人共すまない…。」
レオ「いや〜鍾離さんのせいでは無いッスよ〜。好奇心に負けたのは僕らなんで…。」
そうして4人はひと息ついた。
ーーー会議室内
プルルルルルル。
スティーブン「_スターフェイズ。チェインか、どうだった」
チェインは異界人オタクの顔を踏みながら電話していた。
チェイン『…シロですね、エロゲーやりながら寝落ちしてました。仲間に関しても仕事しに何処かへ泊り込んでる可能性はゼロだそうです』
スティーブン「何故わかる?」
チェイン『___なんだっけ?』
オタク(;//́Д/̀/)ハァハァ『「星眠りのスタシオンIV」の発売日だからです…っ!!取り敢えずレムリア司書ルートと風凪族サーシャルートとそして断崖宮の双子ルートを攻略するまで絶対休めませんから…!!』
スティーブン「……えーとゲームか!!」
チェイン『その様です』
スティーブン「分かった、戻ってくれ」
警部補「どういう事だ!?」
スティーブン「いや俺に聞かれましても、どうやら憶測が外れている可能性がありますな。意外と状況は待ったなしかもしれませんよ?」
………
チェイン「もう行くけど…これぐらいで大丈夫かな?」
オタク「…はいっありがとうございます…っ」
チェイン「それでは」シュタッ
オタク「何よりもご褒美でした…っ!!また何なりとお聞き下さいいいいい!!」
ーーーダイアーにて
鍾離は頼んだコーヒーを待ち、3人はビビアンが入れてくれたハチミツ水をカウンターで飲んでいた。
レオ「はぁ〜まさか食べ合わせで辛さが倍になるなんて思わないですよね。」
ツェッド「食べ合わせ次第で変わる味もあるんですね…勉強になります」
ザップ「俺は暫く辛いモンは見たくねぇぞ…。」
鍾離「一流の料理人は食材は良いものを選ぶのが当然だが作る料理によって様々な工夫を凝らす物だ。」
料理の話題に鍾離は璃月にある人気店『万民堂』のシェフ『香菱』の事が頭に浮かび話をし始めた。
鍾離「俺の住む璃月港には『万民堂』という人気店の『香菱』というシェフの娘がいてかなりの料理の腕をしているんだが、彼女は料理の腕を磨く為に自ら新しい食材を探しに出掛けたりしてレシピの参考にしている。その際に少し奇抜な材料を使った料理を考えたりするが味は確かだ。彼女の料理に対する情熱は自身の料理を美味しく食べてくれる人達の為に有るのだと料理の提供をしてくれた際に笑顔で語ってくれたよ」
ツェッド「お客さんに親身になれる良い方なんですね。」
ザップ「でもよ、その奇抜な材料ってのは何なんだ?食えるんだろ?」
鍾離「…討伐したスライムの体液等だな…。」
レオ「…えっ?聞き間違いかな?スライムって言いませんでした?」
ザップ「そんなモン喰うのか!?」
鍾離「ああ、彼女はそれ等を調味料として使う事でより一層味わい深い物に仕上げている。だから材料を聞かなければ確かに美味いんだ。たまに馴染みの客がわざわざ頼んでいる。」
レオ「そ、そうなんデスカ……。」
スライムを使った料理の話で盛り上がった4人にビビアンが頼まれていたコーヒーを提供しにきた。
ビビアン「はい、鍾離のコーヒーだよ。あとコレ口ん中ヤラレタ3人組に哀れみサービス。」
4人の前にビビアンはチョコミントアイスを置いた。
ビビアン「メニューにはないけど後で金払えよ〜。」
ザップ「お〜!よっビビアンちゃん商売上手!」
レオ「おっさん臭いッスよザップさん!」
ツェッド「いいんですか?」
ビビアン「いいのいいの。試作に使おうと買ってあって余ったヤツだからな」
鍾離「なら有難く戴くよ。」
4人はそれぞれアイスを食べようとした次の瞬間!!
ドゴォン!!
天井を突き破って巨大物体がレオナルド達を押し潰そうとしていた…
落下してくる一瞬の間にツェッドは隣に座っていたレオナルドを後ろに投げ飛ばし前方のビビアンも避難させたが、大きな破片がツェッドの背中に当たりツェッドは仰向けに倒れ込んでしまった。
ゴッ!!
ツェッド「!!」
ガンッ
助けられた2人がツェッドに手を伸ばしたが届かずザップと鍾離が動いた。
ザップ「斗流血法・カグツチ『刀身の弐•空斬糸』_赫綰縛!!」
ギシンッ…
ザップが放った血法の糸が落下物体を一瞬押しとどめた。
その間にツェッドは落下物体の下から脱出。
鍾離「岩山破蓄!!」
更に鍾離が元素スキルを発動し落下物体を下から押し返した。
ガゴゴゴ…。
ザップ「おお、わわ!」
下から石柱による支えができた為ザップは血法を解除しツェッドを見た。
ザップ「…手間かけさせるな魚類!!」
鍾離「怪我は無かったか?」
ツェッド「ありがとうございます、怪我は無いです。」
ザップに対して素直に御礼を言ったツェッドの返答に御礼を言われたザップ本人は困った顔をした。
そんなザップの顔を見たレオナルドは…
レオ「ぷ、ぷはははっ」
ザップ「(°罒°)……ッ!!」
ザップはレオナルドの頭に拳骨を落とし外に出た。
レオナルドは拳骨された頭を抑えていた。
レオ「イタイ……ッ!」
ザップ「おうおう何だオメェら…!?」
そこにはクラウス達が戦闘していた。
ザップ「へ?旦那…!?」
クラウス「丁度良かった…!!手伝ってくれ給え三人とも!!」
そこには大量の同じ武装、同じ顔をした異界人達がおり三人は状況を把握した。
ザップ「……あ~…」
ツェッド「…はい分かりました…」
鍾離「…承知した。」
こうして21時間にも及ぶ『レギオカ千兄弟』討伐作戦に鍾離達は参加した…。
ーーー討伐作戦終了後…
ファンファンファンファンファンファン…。
スティーブン「はい、撤収!!」
KK「おつかれさま〜ふぁ〜」
1日ずっと戦闘をしていた疲労は流石に3人には蓄積されたようで…
ザップ「け…けんかいた…っ!!いっほもうこけん…!!」
レオ(疲労のあまり濁点が発音出来なくなってる…)
ツェッド「……ぁの、ぜぇ、鍾離さんは、ぜぇ、何故、ぜぇ、まだ、ぜぇ、立ってられるので?ぜぇ」
疲労で地べたに倒れ込んでいる3人に対して鍾離はしっかり立っていた。
鍾離「俺も疲れてはいるが…ここで気を抜くつもりが無いだけだ。流石に少しは休みたいがな…」
鍾離は3人を見て少し考え…
鍾離「ここで少し待っていてくれ、すぐ戻る」
そう言って側の路地に行ってしまったが10分程で戻ってきた。
鍾離の手には4人分の「美味しそうなモラミート」があった。
ツェッド「それは…?」
鍾離「これはモラミートという料理だ、焼いた餅に味付けした肉を挟んだシンプルな品だが美味いぞ。少しでも食べられればまだ動けると思って用意したんだ」
鍾離は3人にモラミートを手渡した。
ザップ「たしかにくったほうかうこけるか…」
レオ「そうッスね…」
ツェッド「では頂きます。」
パクッ 3人はモグモグと食べ始めた。
ツェッド「……ん!おいしいですね!」
ザップ「うめえなこれ」
レオ「うま!うま!」
鍾離「口に合ってよかった。」
鍾離も4人の側に座って一緒に食べた。
4人はそのまま地面に座り込みながら食事を続けた。
ザップ「はぁー腹に貯まったら少し落ちついたわ…」
レオ「あ、発音戻った」
ツェッド「これなら執務室まで持ちそうですね…」
鍾離「ならそろそろ行こうか」
そしてようやく4人は帰路に着いたのだった
―――翌日。
ツェッドの水槽前でレオナルド達は会話をしていた。
レオ「いや〜鍾離さんのオススメを食べに行かなかったらきっとランチ食べ損なってたと思うんすよ!」
ツェッド「確かに無駄に意地を張って別の所を探そうとしたかもしれませんねこの人なら…」
ザップ「んだヨ、結果的にはランチ食えたじゃねぇかよ!」
そんな他愛もない会話をしていてふとレオナルドは思った。
レオ(そういえば鍾離さんは何処からあのモラミートを用意したんだろ?あそこら辺はあの回転寿司屋しか飲食店は無かった筈だ…それにモラミートって鍾離さんの世界の料理っぽい…何か鍾離さんの謎が一つ増えたような…)
こうして鍾離の気になる謎が増えたレオナルドだがそれは少し先に本人から語られるのである…。
―終幕―