鏡境ヘリックス   作:夢現図書館

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白い人

 

 

 転校生が来た。

 その噂話は現実となって学校中に知れ渡る。そして、眼前に現れた。

 

 京 六夜。転校生として現れた彼女はそう名乗った。絹糸の様な銀色の長い髪。吸い込まれそうな灰色の眸。同年代より少し高い身長。完璧とも呼べる容姿。正しく容姿端麗、深窓の令嬢、高嶺の花。そんな声が聞こえて来そうな美少女と呼べる。現に男子生徒の視線の釘付けとなっていた。

 

「……それじゃあ——」

 

 担任の教師が空いている席に座る様に指示を出す。彼女の所作は歩いているだけだと言うのに洗練され、視線の的となっていた。

 

——……この時期に転校生、ね。漫画やラノベとかの女主人公(・・・・)って感じだろうな。

 

 文理はその様子を遠い世界の出来事の様に眺めていた。その容姿故に密かに囃す同級生達、話題の中心となるであろう光景……自分には然程、関係が無い。そう考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「申し出は有り難いのだけれど、ごめんなさい……」

 

「チクショォォォォォォォォ‼︎‼︎」

 

 授業の合間の休憩時間。其処では愚かな男子生徒の号哭が劈く様に響き渡った。その騒動の中心には例の転校生である京 六夜の姿。

 

——……馬鹿か、莫迦なのか?いいや、大バカだった。初対面でいきなり告白しに行くとか、度胸はあると言うか愚かと言うか……しかも、そんな連中がこんなにも居ようとは……。

 

 美少女転校生の噂は現実。その話を聞いた野郎共は大挙として現れての告白祭となった。容姿端麗、硝子の様な儚さ、あわよくばお付き合いしたいと考える男子達が告白しに来るのだが六夜はその男子達を悉く玉砕させた。因みに現在36人目。1クラス分の野郎の夢と希望を打ち砕いた。

 かく言う文理は言うと休憩時間は寝る事に費やしている。友人の様に話す相手など杏以外、ほぼ居ない。言うなればボッチである。しかし、現時点ではご覧の通り周りが騒がしい故に寝れやしない為に仕方なく野郎共の悔しさに沈む号哭に聞き耳を立てていた。

 

「……な、何故だ‼︎ 何故なんだ⁉︎」

 

「貴方じゃ、ダメ……だから」

 

——うわ、見掛けに寄らず容赦ねぇ。存在全否定とか、アイツ立ち直れねぇんじゃ……。

 

「が、ハッ……⁉︎」

 

——あ、死んだ。

 

 そして無自覚に追い討ちを掛ける。断る理由としては簡素であったが簡素故に訂正出来る要素が見当たらない。つい先程、告白しに来た男子生徒はその精神的なショック故に頽れた。

 

「お」

 

「ごめんなさい」

 

——コンマ1秒……視線すら合わせて無ぇだろう。コレは泣ける。

 

「せめて何か一言、言わせてくれェェェェ‼︎‼︎」

 

 後から現れたが、口説き文句を言う前に玉砕。号泣する男子生徒。今度は視線は愚か1文字しか言わせて貰えなかった。完全に興味すら持たれていない。

 

「ねーねー、京さん。どんな人が好みなの?」

 

 近くで男子達の屍が出来上がる中(このクラスの野郎は壊滅した)、女子生徒の1人が恋バナのつもりか質問する。その言葉にいま、告白の順番待ちをして居る野郎共や玉砕した連中が聞き耳を立てた。

 

「……良く分からない」

 

 空虚な眸で六夜はそう答えた。その返答に意外だと思った女子生徒は更に踏み込む事にした。

 

「簡単に言えば『こんな人なら良いな』って事。前の学校でも告白沢山、されたんじゃないの?」

 

「…………うーん」

 

 その言葉に六夜は暫し考え込んだ。頬杖を突いて瞑目して考える姿もまた絵になる。

 

「も、物憂な京さん。綺麗だぜ……‼︎」

 

「俺が好みドンピシャに決まってるだろ。こう言うのはスポーツマンに惹かれるモノなんだよ‼︎」

 

「体力バカのハゲ頭は黙ってな。天才こそ相応しいんだよ」

 

——本当に外野が喧しい。何時からこの学校はアホの巣窟になったんだ……。

 

「……うん」

 

 京が目を開いた。どうやら考えが纏まった様である。

 

「私を守ってくれる人」

 

 ガタガタと音が鳴る。その言葉に色目気立つ野郎共。現金な事である。まぁ、分からなくは無いだろう。その容姿故に色々とやっかみが起こる事は容易に想像出来る(現時点でも発生中とも言える)。

 

「……そして……………………………っ」

 

——……ん?

 

 その続きは⁉︎ と真剣な顔持ちの野郎共。京の言葉が途中で止まる。

 

「……見つけた。私の……フィアンセ(・・・・・)になってくれそうな人……」

 

「な……‼︎」

 

「「「何ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ‼︎⁉︎」」」

 

「「「きゃぁぁあああああああああああああああああ‼︎‼︎」」」

 

——五月蝿ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ‼︎‼︎

 

 唐突に放たれた爆弾発言。その言葉に野郎共は絶叫を、女子生徒達は黄色い歓声を上げた。ダブルで喧しいレベルの声量により文理は悲鳴染みた本音が心の中で飛び出した。

 その直後、休憩時間の終了を告げる本鈴が鳴り響くのであった。

 

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