鏡境ヘリックス   作:夢現図書館

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侵入準備

 

 

「じゃあ、これまでの話は終わりだ。コレからの話をしてくれ。水族館の件は今、どの段階なんだ?」

 

『切り替えが早いね。うん、過去を引き摺らず気持ちに整理を付けて切り替える。言い方は悪くなるけど、理想的な子だ。要望に応えてその話に入ろうか』

 

「「…………」」

 

『水族館の『ゲート』の場所は君達の調査により判明したからね。今、此方でもバックアップサポートへの向けての準備を進めている最中だよ』

 

「おいおい、まるで初めての事業みたいな有様じゃないか」

 

『はっはっは、勘弁してくれたまえ。閉店休業状態だったんだ。動きたくても動けないんじゃ、維持費も掛かるからね。何処の業界でもお金の問題は1番の敵なんだよ』

 

「……そう言うモノなのか」

 

『で、流石にスティグマが居るとは言えど、君を生身で向かわせる訳には行かないからね。戦闘用の服を準備中だ』

 

「へぇ……出来れば動き易い奴が良いな」

 

『分かった。要望としてその様に伝えておこうか。そう言う訳で今は色々な方面で準備中と言う訳さ。

 何度も言うけれど、鏡面世界への調査は君達だけが頼りだ。無茶はせず、危険と感じたら速やかに撤退する事。それだけは覚えていて欲しい』

 

「分かった。肝に銘じておく」

 

『それから、君は現状、六夜ちゃんと赫黎ちゃんの2人を扱える。いずれは複数人のスティグマと一緒に行動して貰おうかなと考えているけれど、今はその為に必要な準備が整っていないからね。今回突入するのは六夜ちゃんとする』

 

「……分かりました、長官」

 

『そう言う訳だから、此方の準備が整うまで待って欲しいんだ。……幸いと言うには気分を害しちゃうかも知れないけれど文理君の転校手続を進めているんだ。オトゥールの管轄学校ならば時間調整も簡単だからね』

 

「はは、そう言う面もあるのか。で、待っている間は?」

 

『そりゃ勿論、管轄学校やオトゥール本部施設にて六夜ちゃん達とイチャコラしていてくれたまえ‼︎

 機密保持や守秘義務の都合上、オトゥールの寮棟に入って貰うからそのつもりでいてくれたまえ。君には悪いけどアパートの私物関連を今、運び出している最中だ。あ、賃貸住宅の解約手続も此方で進めるから安心して欲しい』

 

「それは先に言えよ⁉︎ もうなっちまったもんはしょうがない気もしなくも無いけれどな‼︎」

 

 もう事後報告ともなれば呆れて来た。此処まで事態が発展した以上は諦めるしか無いだろう。

 

「……って、あの倭文の奴は?」

 

『ターリアちゃんかい? 彼女には既に帰還命令を出していてオトゥール本部に向かっているよ。どうだった? ツンデレ娘のメイド姿の感想は?』

 

——此処でそんな頓珍漢な感想を求めて来るな。つーか、アンタがああ言うバックストーリーを吹き込んだんだよな。

 

「せめてもう少し自然な形は無かったのかよ……」

 

『ハッハッハ‼︎ それ、感想じゃないよ。そもそも男の子の夢じゃないか。可愛い女の子がメイド服でご主人様って呼ばれるシチュエーションはグッと来るじゃないか‼︎ いやぁ、羨ましいねぇ』

 

 間違いない、この人、確信犯だ‼︎ 人を困らせて楽しむ類の確信犯‼︎ しかも実行者もノリノリと言うから始末に負えない。

 

「完全に面白がっているじゃないか⁉︎」

 

「……文理、メイドさん、好きなの?」

 

「好きか嫌いか言われたら、嫌いじゃない‼︎」

 

——着飾ってて貶す真似は出来るかッ‼︎

 

『うん、素直で宜しい。もっと正直になりたまえよ。六夜ちゃん、君ももっと押した方が進展するかもよ?』

 

「ん、頑張る……‼︎」

 

「……出来れば常識の範囲内で頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの馬鹿」

 

 杏がその事実を知ったのは翌日だった。六夜が文理を引っ張って其の儘、学校の外へと出て行ったその翌日にその2人が唐突に転校したと言う通知が在籍クラスの生徒達に伝えられた。

 その通知を受けて六夜を狙っていた男子生徒各位は慟哭に沈み、同クラスの女子生徒達は『駆け落ち⁉︎』と言い合い噂をしていた。

 教師達も何分、唐突過ぎる展開に困惑を隠せなかった。余りにも急過ぎる内容であったのだが、何分既に事務処理が済ませられていたのも事実。何れにせよ何をどう言おうとも既に終わった後であった。

 

「……絶対、何かロクでもない事に巻き込まれていたじゃないの……‼︎」

 

 そんな中、杏は文理が自身の手に負えないナニカに巻き込まれていたと確信した。いや、その予兆は前々から発生していた。

 京 六夜。彼女が現れてから明らかに文理の態度が可笑しくなっていた。

 幼馴染だ。彼の挙動の怪しさなどとっくに気付いていた。自分に明かせない秘密を抱えてしまっていたのだろう。その理由は六夜の存在が証明している。短い時間だが、彼に近付いては変な事を言って困らせていた。

 極め付けは今朝に届いた自分宛の手紙だ。その内容は思い出すだけ無駄な謝罪文だった。

 

「何が心配するな、よ。心配以外、何物でも無いじゃない……‼︎」

 

 杏は手紙を破り捨てた後、文理の家であるアパートに来ていた。どう言う手際の良さか、引っ越した後と言わんばかりの殺風景な部屋が視界に入って来る。もう、此処には居ないと言わんばかりの風景だ。

 

「……こんな短期間で引越しの作業が終わるとは思えない。何か、大きな組織が関わってる? 考え過ぎだと思いたいし、そんなの漫画の世界の話よね……」

 

 そう愚痴りながらかつて存在していた情景を思い出す。しかし、もうコレから先はその光景はあり得ないのだろう。

 

「……文理って、隠したい物を隠す時はこんな所に隠すのよ、……ね?」

 

 本人は隠しているつもりでも杏にはバレていたと言う隠し場所を何気なく漁る。其処には撤去し忘れていたのか、何かしらの書類の束らしきモノが無造作に置かれていた。

 

「コレは……?」

 

 杏はその書類の束を引き寄せては手に取って内容を見てみる。其処には。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………機密機関、オトゥール?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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