超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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デミ・ハンティング

 

 ≪龍の都≫における異常は御影にも届いていた。

 彼女とフォンがいた一枚岩は龍人族の里を一望できる場所にあり、エウリディーチェからの念話もあった。

 そしてそれ故に、アルテミスが自分たちのいるところに真っすぐ向かっていると知ることができた。

 その時点で御影の判断は一瞬で完了した。

 即ち、フォンをその場において自分が迎撃することだ。

 戦闘能力が飛翔に基づく彼女は、今まともに戦えない。

 だったら自分が戦い、アルテミスを食い止めなければならない。

 御影自身にしても愛斧である≪伊吹≫を置いて来たが、それでも戦いようはある。

 実際、アルテミスと彼女を追いかけたシュークェが何やら口論してたのでとりあえず周りに生えていた木を引っこ抜くことで武器とした。

 三メートルほどの高さと、五十センチほどの太さの針葉樹らしきものだ。

 投げつけるにはちょうど良く、いい感じにアルテミスに激突した。

 続けて良い感じにシュークェからの賞賛を受けて、

 

Omnes Deus(オムニス・デウス) Romam ducunt(ロマ・ドゥクト)!!』

 

「ッ――気を付けろシュークェ!」

 

 その叫びを聴いた。

 空気が張り詰め、魔力に似た何かが溢れ出す。

 

『かき鳴らせ―――――≪凶禍錘月(ディアナ・ストリングス)≫ッッ!!』

 

 甲高く、澄んだ音を御影は聞いた。

 そして二つのものを見る。

 まずは大地に突き刺さった投木が一瞬でコマ切れになったということ。

 もう一つは姿を変貌させたアルテミスだった。

 水色を基調とした軽鎧だ。

 正確には上半身はほとんど鎧の体を為していない。

 肩出しのボディスーツに控えめな膨らみを包む胸当て、肘までを包む長手袋のみ。対し、下半身は重厚な脚甲に包まれている。特に脚の脛から膝の先までは三日月を模したような装甲だった。

 特徴的なのはウサギの耳のような長い装飾が付いたティアラ。

 

「なんだ……ウサギ女……女ウサギ……獣人族!?」

 

「てめぇみてぇな畜生と一緒にすんじゃねねぇ! せめてバニーガールと言えやぁ! 可愛いだろ!」

 

 バニーガール。

 確かに、王国の賭場でそう言った恰好の女が給仕をしているのは見るし、それに近い装いではあった。

 気になるのは記憶にあるヘファイストスとは変化の仕方が随分と違う。

 あれはもっと生態的であった。

 

「―――てめぇ、随分とこすい真似してくれるじゃねぇか」

 

「ん? それは私のことか?」

 

「決まってるだろうが」

 

「何か文句でも?」

 

「いいや? 悪くなかったぜぇ? その後の会話はムカついたがよ。……てめぇ、混血か?」

 

 アルテミスの三白眼が細められた。

 

「だったらなんだ? 貴様、どうにも亜人嫌いのようだが」

 

「あぁ、嫌いだね。大っ嫌いだ」

 

「はっ、亜人差別なんぞ今時流行らん」

 

「てめぇの信条を流行と合わせるわけがないだろ」

 

「――――確かに。良いことを言うな」

 

「おい、鬼の姫よ。そこ納得するのか? いいのか?」

 

 敵だとしても良い言葉は良い言葉だ。

 アルテミスが言った考え方は大事だと思う。

 忘れずにおきたい。

 だが。

 

「お前、何故こちらに向かってきた? 狙いは私……というわけでもないか?」

 

「勘が鋭いねぇ。―――向こうにいるんだろ? 極上の獲物の匂いがする。鳥臭い、狩り甲斐がありそうな獲物だ。トカゲ狩りも良いけどよぉ、鴨撃ちのが好きなんだよオレぁ」

 

「なるほど」

 

 理屈は分からないが。

 しかしこの女はフォンの存在を感知しているらしい。

 そして彼女を狙っている。

 龍人族を襲いに来ただろうにフォンを標的とするのは明確な目的があるのか、言葉通り単なる趣味なのか。

 勘だが、おそらく後者。

 もっと言えば。

 フォンが先祖帰りということも関係あるかもしれない。

 何にしても。

 

「そういうことなら、私とシュークェで満足してもらうぞ」

 

 笑い、大地を蹴り、

 

「――――いいや、てめぇらは片手間だ」

 

 

 

 

 

 

「≪鬼切童子≫―――≪駒鳥殺し(ロビンキラー)≫」

 

 ()()()、という音をシュークェは聞いた。

 聞こえたと思ったら、

 

「ぐおっ――――!?」

 

「ッッ―――――!?」

 

 シュークェと御影の苦悶の声が上がる。

 傷が生まれ、それは二人の全身に及んでいた。

 油断なんて当然していない。

 それにも関わらず、攻撃を察知できることなく、シュークェの翼を含めて余すことなく細い斬撃が食い込んでいた。

 まるで、全身を絡め取るように。

 

「ぬっ……?」

 

 シュークェは不可解なことに気づいた。

 傷は全身に及んでいるが、それでも彼自身の再生力であればすぐに治癒されるはず。

 なのに治らない。

 加えて、

 

「体が……動かん……!?」

 

 指はかろうじて動かせるが、四肢は動かない。

 

「ふん!」

 

「無駄だぜ鳥畜生!」

 

「ぬあ! へあっ! とぅ! ハァアアアアアア!!」

 

「うるせぇ!! 動かねぇって言ってるだろ!」

 

「これは…………体が動かせん!!!」

 

「―――――糸、か?」

 

 ぽつりと、同じく体を拘束された御影が呟いた。

 厚手の袴姿だったが、何かが全身に食い込んで彼女のスタイルを浮き出している。

 

「へぇ。アンタの方がちょっと頭が良いようだな」

 

「だが、それだけじゃない……っ、痛いぞ。龍人族に対してた毒とやらと似たようなものか」

 

「ご名答! 龍だろうが鬼だろうが鳥だろうが関係ねーんだよ。まートカゲ相手のよりはちと効果は薄いがそれでも十分だろ?」

 

「確かに……痛いし、気分も悪い、力が抜ける」

 

 彼女の言う通りだなとシュークェは思った。

 加えて肉体の再生速度が明らかに遅い。

 それから傷口を改めて見た。

 凝視して、やっと光に反射し、体に食い込む線がある。

 

「鈍い痛みは苦しいだろ?」

 

 兎鎧の女は笑い、二尾の髪が揺れる。

 罠にかかった獲物を見る様に。

 事実今、シュークェと御影は彼女の手の中にいる。

 目を凝らせば、彼女の手袋には鋭利な爪があり、そこから極細の糸が伸びているようにも見えた。

 これ、ちょっと拙いのではないだろうか。

 なんかサディスティック的な趣向を見せているアルテミスだが、彼女がちょっとその気になったら首とか飛ばないのだろうか。

 驚異的な再生力を誇るシュークェでも流石に首を飛ばされれば死ぬ。

 多分。

 試したことないから何とも言えない。

 斬られてすぐ押さえつけたら大丈夫だったりしないだろうか。

 

「おい、シュークェ」

 

「うむ?」

 

「フォンの為に命かけられるか?」

 

「無論だ」

 

「よし」

 

 即答に、鬼の姫はニヤリと笑った。

 全身を糸で拘束されていることも、切り刻まれていることも、亜人に対する毒をアルテミスが持っているということにも構わず。

 

「あぁ? てめぇ、何をする―――」

 

「―――こうするとも!」

 

 

 

 

 

 

 御影は自らの魔力を解放した。

 ごうっ、と熱が生まれる。

 身体強化魔法に伴う発熱だ。

 鬼種の身体強化は熱を生む。

 体内にあるエネルギーを瞬間的に燃焼させることで肉体機能を活発化させるものだ。

 それは別の場所でトリウィアとデスレースを繰り広げているアポロンの炎とも、シュークェの翼の火とも違う。

 現象としての炎は生み出さず、しかし高熱があった。

 灼熱を宿した彼女は無理やりに周囲の糸を掴み、想いきり引き寄せた。

 

「奮ッ……!」

 

「うおっ!?」

 

「ぬっ……!」

 

 大元のアルテミスが姿勢を崩す。 

 だが無理に動いた故に、糸は御影とシュークェの体に食い込み切り裂いた。

 全身から血が飛沫を上げる。

 

「てめぇ……!」

 

 体勢を崩しながらもアルテミスは五指を動かした。

 それだけの動きで張り巡らされた糸は致命の動きをする。

 糸が絞まることで肉を裂き、宿された亜人殺しの術式が彼女を蝕む。

 並みの亜人であれば、既に死んでいるはずだった。

 だが、

 

「舐めるなよ……!」

 

 天津院御影は嗤った。

 全身から血を流し、衣類が引き裂かれ褐色の肌を濡らそうが構わない。

 流れ出す血が蒸発し、陽炎と共に立ち昇る。

 肉が裂け、骨が軋み、

 

「こういう拘束は一度やられててな……!」

 

 もう一度、極細の糸をまとめて引き寄せた。

 龍人族を除けば最も膂力に優れる鬼種。

 混血とはいえ原種を上回る強度を持ち、その魔力全てを身体強化に回した。

 

「うおっ……!?」

 

 その結果が、勢いよく引き寄せられるアルテミスだった。

 兎鎧の少女の体が浮く。

 後は、簡単だった。

 

「狩人が兎の恰好をするものじゃない」

 

 灼熱を纏う拳を、アルテミスへとぶち込んだ。

 

 

 

 

 

 

「――――!」

 

 御影は、自身の拳を見た。

 

「褒めてやるぜ。半分は人間にしても、大したもんだ」

 

 兎鎧の女、その顔面に打ち込んだはずだった。 

 その拳が受け止められている。

 彼女の手ではない。

 髪だ。

 ツインテールになった水色の髪が蠢き、網となって拳を受け止めていた。

 

「これは――」

 

「残念だったな、オレの武器は糸じゃなくて髪なんだぜ?」

 

「っ……!?」

 

 髪糸が軽い動きで御影の腹に触れ、何かを貼りつけた。

 

「アンタにゃ特別だ。半分人間で半分畜生なんだろ? ちょっと前に手に入れたばかりのとっておきだ―――有り難くとっておきな」

 

 それは符だった。

 皇国における魔法具であり、魔法の発動を補助するものだ。

 単発の攻撃魔法であったり、強化や回復であったり、専用の紙とインクに目的の為の術式を書き込むだけなので汎用性は高い。

 基本的に力任せな傾向にある鬼種の戦いを補助するもの。

 或いはと、御影の脳裏に過る。

 符術のメジャーな使用法。

 

 ―――()()()()()()()()()()

 

「解」

 

 その何かが、御影の腹で弾けた。

 

「―――――――!?」

 

 それは渦巻く衝撃であり、そして呪いだった。

 怨念。

 情念。

 想念。

 何であるか、その時の御影には理解できなかった。

 ただ事実して強烈な衝撃が御影の腹部で炸裂し、吹き飛ばす。

 轟音。

 十数メートル離れた大木に激突する。

 

「天津院御影ッ――ぐっ!」

 

「お前は後だ」

 

 シュークェの動きは既にアルテミスに止められた。

 折れた大木にめり込んだ彼女は動かなかった。

 

「思ったよか時間取っちまったからなぁ。さっさとメインディッシュに行きてーんだよ」

 

 ギザギザの歯をむき出しに笑いながらアルテミスは指を鳴らした。

 途端彼女の髪が捻じれ寄り合い、鋭い槍を生む。

 高速回転するそれはまるでドリルのようだった。

 動けなくなった彼女の腹を突き抜けるには十分。

 

「どうせ呪われの傷物だ。行き場所なんてねーだろ?」

 

 酷薄な笑みと共に軽く指が振るわれ、致命の髪槍は放たれた。

 

 

 

 

 

 

「…………あぁ?」

 

 髪槍は確かに放たれた。

 大気をぶち抜きながら鬼の姫へ。

 ≪神性変生(メタモルフォーゼス)≫によって増えた髪糸は膨大かつ極めて細く自由自在だ。

 まとめて武器や盾を形成し攻防することも、体を持ちあげて高速移動することもできる。

 その槍はしかし、天津院御影を殺すことなく木の根と大地を穿つに留まった。

 

「――――嫌な人ですね」

 

 声は背後から。

 振り返れば、御影を横抱きに抱える背中があった。

 黄緑の紋様で編まれた翼を背負う少年だった。

 鳥人族のような黒い袖無しと臍出しの戦闘着。

 首元には風に吹かれて棚引く濃い黄色のマフラー、露出した腕や腹筋にはそれぞれに流線形の刺青がある。

 アルテミスは知っている。

 父であるゴーティアを倒した二人の内1人。

 ウィル・ストレイト。

 彼は御影を宝物のように大事に抱え、その黒と若草色の瞳でアルテミスを睨みつけた。

 普段らしからず、その真っすぐな視線に怒りを込めて。

 

「呪われようと、傷つこうと―――誰よりも美しいこの人は僕と共にある」

 

 

 




アルテミス
バトルバニーガール!
亜人特攻でやりたい放題

ウィル
げきおこ
にしても袖無臍出しは良くないんじゃないでしょうか


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なんと今話で100話だそうです。

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