超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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前回、アレスまでウィルのハーレム扱いで笑っちゃいましたね


ストレイトズ――グリーティング――

 

「ゲンコツ!」

 

「ツメ!」

 

「ヒレ! ……和睦でゲンコツ!」

 

「ヒレ!」

 

「ツメ! ……おかしい、何回目だ。3人しかいないんだぞ?」

 

「私たちこんなに息が合わなかったでしょうか」

 

「じゃあトリウィアが負けてくれていいんだよ……!」

 

「そういうわけにはいきませんねぇ、えぇ!」

 

「ははは、そういうことだ――行くぞ!」

 

 アクシオス王国王城の来賓用一室にてウィルは御影、トリウィア、フォンがアース111式じゃんけんによる熱い戦いを繰り広げるのをぼんやり見ていた。

 入学試験を明日に控え、昨日までその為の調整を行っていたせいか凝っている肩を回す。

 今日この日、各国の王たちが魔族や≪ディー・コンセンテス≫について話し合うのだ。

 

 

「終わらないですねぇ」

 

「終わらないなぁ」

 

 隣に座っているアルマに声をかけた。

 制服姿の彼女は頭を自分の肩に預けてリラックスした様子で息を吐く。

 

「誰が自分の国の王に挨拶に行くか、か。ここまで熱が入るのは……分からなくもないけど」

 

「そうなんですか?」

 

「んー、まぁ場合によっては序列やら国家やら色々あるけど、あれはじゃれ合いだよ。楽しそうでいいんじゃない?」

 

「はぁ。……そういえば、こっちのじゃんけん、アレなんですけど。なんででしょう。今まで特に疑問もなかったんですけど。ふとアース・ゼロの思い出して。グーとチョキと……ぱかーんですっけ?」

 

「パーね、パー」

 

 そうだった。

 流石に20年近く昔のことな上に新しい知識のせいで記憶が曖昧だ。

 じゃんけんをする相手も転生する直前はいなかった……と思う。

 やはり前世で死ぬ直前は思い出せない。もっとも、もう別に良いと思うのだけど。

 

「獣人族のゲンコツに、リザーディアンのツメに、魚人族のヒレだったかな。元々はパーはエルフの耳だったらしいんだけど」

 

「ですけど?」

 

「最初ゲンコツはドワーフだったらしいんだけど、ドワーフがエルフに負けるとかおかしくね? ってなったドワーフがキレてプチ論争になって剣作るからチョキにしろってなったら今度はエルフが怒ってまた論争になって、ややこしいからその二種族が外れて紆余曲折あって今の形になったらしい。どこの世界でもドワーフとエルフの種族は仲が悪い」

 

「はえー」

 

 会話と同時並行で掲示板でアルマが同じ説明をしてくれたのでコメントをしたら同じことが声に出ていた。

 言っている間にも3人のじゃんけんは行われている。

 自分の国の王城で婚約者3人がじゃんけんしているのは妙な感覚だった。

 

「―――ヒレ! はい、私の勝ちです! 終了!」

 

「くっ……トリウィアに負けた……!」

 

「やるな……!」

 

「あ、勝負がついたみたいですね」

 

「ふむ」

 

 見ればトリウィアは目を伏せて無表情のドヤ顔でぱーの掌を突き上げ、フォンは膝から崩れ落ち、御影は頬の汗を拭っていた。

 トリウィアは左目だけを開け、ウィンク状態を維持させながら速足でウィルの下へ来る。

 

「さぁさぁウィル君。まずは私の国の皇帝陛下に会いに行こう? 挨拶は大事だよね、アンドレイア家の権力は引き継がなくても。というか私が皇帝陛下に彼氏自慢したいし―――」

 

「トリウィア」

 

「……………………なんですか、アルマさん」

 

「君、一瞬魔眼使ったよね」

 

「………………」

 

「はぁ!? ずるくない!?」

 

「ず、ずるくないですよー? 私の血の力ですよー?」

 

「ずるでしょ! それが良いなら私だって≪山海図経≫でトリウィアと御影の指を減速させて強制後出し敗北とか出来たし!」

 

「そこまでされると私は物理的に邪魔するしかないんだがな。というか先輩殿、≪番外系統≫でどう勝ったんだ?」

 

「私のはつまり『解析』なので筋肉の動きを解析して何を出すのか先読みしたんです」

 

「ずるっ! 御影も思うでしょ」

 

「うーむ…………ずるだな! 反則負け!」

 

「ば、馬鹿な……!」

 

「………………ウィル、今どんな感情で3人見てるんだい?」

 

「そうですねぇ」

 

 小さく首を傾げて考え、笑う。

 

「仲が良くて嬉しいなぁって」

 

 

 

 

 

 

「じーちゃん、久しぶり!」

 

 御影との一騎打ちにより勝利したフォンは連合盟主であり、自らの祖父であるリウの下へウィルと訪れた。

 先ほど自分たちがいた部屋と似たような間取り。

 そこにリウは王国の高そうな椅子に杖を付いて腰かけている。

 自分の知っている祖父とは違和感が強くて少し笑える。

 鳥人族らしい意匠の、しかし露出はなく全身を覆う長い丈の『チャンパオ』と呼ばれる礼服だ。

 リウは腰の曲がった背の低い老人だ。

 自分はおろかアルマよりも小柄だろう。

 口元には仙人みたいな長い髭を蓄えているのに、頭部は完璧なつるっぱげ。

 加えて、部屋にいたのは祖父だけではなく

 

「エウリディーチェ様!」

 

「久しいな、フォン、ウィル。息災だったか」

 

 伏せられた目と静かな微笑。

 高い位置で結んだ藍色の髪、古びた皮鎧。

 龍人族の長のエウリディーチェだ。

 

「来ていらっしゃるとは聞いていましたが、こちらにいらしたんですね」

 

「うむ。今では余も亜人連合の末端故にな。今日集まる王たちは、大戦時代の知己である故、余も無理を言ってリウの付き人としてはせ参じたというわけだ」

 

「ふぉっふぉっふぉ。ゆうてもワシはエウリディーチェ様のおまけのようなものじゃがのぅ。フォン、ウィル様。ワシの相手もしてくれると嬉しいが」

 

 好々爺と言わんばかりに朗らかに笑う。

 フォンにしてもウィルにしても、彼と会うのは去年の≪七氏族祭≫以来だ。

 

「ふむ、フォンよ。制服着こなしておるのぅ」

 

「あー、ん。まぁね」

 

「ふぅむ、良いことじゃ。エウリディーチェ様や手紙でも聞いたがウィル様との関係も良好のようじゃが――」

 

 ふと、杖が動いた。

 自然な動きだった。

 ウィルとフォンの意識の合間を縫うような達人染みた挙動。

 気づいた時には、

 

「―――その割には乳が増えておらんのう。成長期は終わっておったか?」

 

 杖先が自分の胸を突いていた。

 

「――」

 

「――」

 

「ふむ。余はつつましい胸も悪くないと思うがな」

 

 のんきな声を上げるエウリディーチェの声を聴き、フォンは状況を理解し、

 

「っ―――んのスケベ爺ッ!!」

 

 顔が真っ赤になるのと共に蹴り脚を叩き込んだ。

 我ながら鋭い蹴りだ。

 

「ひょひょひょ! まだまだ子供じゃのう! 未通子のままか? いや、それはなさそうじゃな! 纏う風で分かるぞぅ!」

 

「ジジイーー!」

 

 しかし蹴りは回避された。

 座っていたはずなのに、予備動作も無く直上に飛び上がったのだ。高齢であるリウは翼を折っている。だがそれを感じさせない軽やかな動き。

 この祖父はこうなのだ。

 フォンに体術の基礎を教え、シュークェに武術を修めさせた。

 あとたまに自分の口が悪くなるのはこのスケベ爺のせいだと思っている。

 

「こんっの……! しばらく会ってないけど全く変わってないなじーちゃん! いい歳なんだから落ち着けっての!」

 

「ほっほー! 大体の鳥人族というのはいい歳になってから飛ぶ以外の喜びに目覚めるもんじゃ! お主は違うようだがのぅ!」

 

「じ、ジジイ……!」

 

「ふぉ、フォン! 落ち着いて! 王城、王城だからここ!」

 

「くっ……!」

 

 ウィルに背中から抱かれ、心をどうにか落ち着かせる。

 部屋の中には今の4人だけだが、外には王国の使用人もいれば別の部屋にはリウとエウリディーチェの付き添いも待機しているのだ。

 確かに暴れていい場ではない。

 息を整え、

 

「ふぅっー……ふぅっー…………ありがと、ウィルさん。大丈夫、落ち着いたよ」

 

「ほほほ、見せつけてくれるのぅ」

 

「…………!」

 

「どうどう」

 

 背後からウィルが抱きしめてくれているので落ち着けた。

 そうでなければ翼を広げていただろう。

 

「ふ」

 

 そんな自分たちにエウリディーチェは口元に手を当てながら三度笑った。

 

「悪い。揶揄うつもりはないがな。仲が良くて何よりだ」

 

「いえ、こうしてフォンといられるのもエウリディーチェ様のおかげです」

 

「余は何もしておらんよ。言葉足らずで困惑させていたようだしな」

 

「…………エウリディーチェ様はどっちかって言うと言葉が多いような」

 

「フォン!?」

 

「わははははは! これは一本取られたな!」

 

 大ウケだった。

 未だにウィルに対してとんでもない好きバレをされたことは感謝していいのか怒っていいのか分からない所である。

 結果的には良かったけれど。

 純情乙女の心は複雑なのだ。

 

「……あの、リウさん。僕からよろしいですか?」

 

「はいはい。なんでしょうか、ウィル様。ウィル様は我等が鳥人族の恩人、なんでも言ってくだされ」

 

「こほん、では」

 

 不思議に思ってみたウィルの表情は緊張していた。

 息を吸い、しかし真っすぐにリウを見つめ、

 

「――――お孫さんを僕にください!」

 

「ウィルさん!?」

 

「いいですとも!!」

 

「あれ!? 即答ですか!?」

 

 直角に腰を曲げて皇国式の――無意識なのかウィルはたまに皇国式の仕草が多い――お辞儀と共に叫んだが、リウの即答により微妙な角度で止まった。

 驚くウィルに対して祖父は髭を撫でる。

 

「ほっほっほ。既にフォンはウィル様のものですしのぅ。貴方が悪い人間ではないことは我等を助けてくれた時から知っておりましたし、エウリディーチェ様やシュークェから≪龍の都≫の話も聞いております。で、あれば。貴方様が我が孫娘の比翼であることに、なんと止めることがありましょうか」

 

「じーちゃん……」

 

「発育は足りませんが、どうかこの子をお願いします」

 

「ジジイーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

「父上、母上、お久しぶりです。おや、甘楽お姉様までいらっしゃるとは」

 

 久しぶりの両親にウィルを紹介しようと思ったら、思いがけなかった姉の姿に目を丸くした。

 

「お久しぶりですね、御影、ウィルさん」

 

 ころころと控えめな笑みの口元を扇子で抑える鬼の少女。

 いつか見た若草色の着物に、金細工が彩られたほっそりとした美しい白い角。

 野に咲く可憐な草花のような愛らしい鬼の娘。

 御影の姉である天津院甘楽だ。

 

「お久しぶりです、甘楽さん」

 

「まぁウィルさん。そんな仰々しい、お義姉様でも、お義姉さんでも、お義姉ちゃんでも。好きに読んでいただいていいんですよ? そうでしょう、お父様、サーリヤ様」

 

「うむ! 俺のことも是非義父上と呼んでくれていいぞ婿殿! わはは!」

 

「あぁ、君の話は手紙を通してだがよく聞いている。どうか固くならず、家族と思ってくれていい」

 

 甘楽に続いたのは大きな笑い声と静かな言葉だった。

 黒い瞳と黒の総髪と黒の剛毅な二本角。

 赤や緑、青が混じった黒と金のカラフルな袴羽織姿の父は身長にして二メートル半という巨漢だ。

 鬼種の男は人種に比べても大柄だが、彼はその中でも大きく、そして巌のような筋肉を袴姿に押し込めている。

 我が父ながら厳つい強面だが、口を大きく開けて笑い声を上げていた。

 父が広いソファを二人分占領し、その隣には母が背筋を伸ばして座っている。

 三つ編みにし、胸元に垂らされた髪は御影にも受け継がれた銀の色。

 聖国出身故の自分よりも濃い褐色の肌に、柔和な顔立ち以外はよく似ている。

 母は父とは対照的に白を基調とした着物姿だ。

 もうすぐ四十に近いが、それでもまだ若々しさを保っている。

 天津皇国の皇王、天津院玄武。

 その側室である天津院サーリヤだ。

 

「お元気そうでなによりです。父上、母上」

 

「無論だとも!」

 

「御影も変わりはないか?」

 

「はっ! この通り元気溌剌です! ……ん、どうした、ウィル?」

 

「ううん」

 

 自分と両親を苦笑気味に見ていた彼は首を傾げ、

 

「御影が3人いるみたいだな……って。お父さんにもお母さんにもそっくりだね」

 

「ふふん、そうだろう?」

 

「わはは! 分かっているではないか婿殿よ!」

 

「良い目をしている。御影が惚れこむだけはあるな」

 

 両親に似ている、というのは自分にとって褒め言葉に他ならない。

 相変わらずウィルはツボを突いてくる。

 

「ふふっ。こうするとウィルさんには御影が3人いるみたいでしょう? この子は兄弟姉妹で一番お父様に似ていますしね」

 

「へぇ、そうなんですね」

 

「あぁ! もっとも、だから御影を皇位継承第一位に指名したわけではないぞ婿殿。全てこの子の実力だ」

 

「――――はい、それは勿論」

 

「わはは! 流石だな!」

 

 よく笑う父だがいつもよりも笑っている。

 いばらを通して、ウィルとの間にあったことは――異世界のことは伏せて――大体全て報告している。去年の時点で皇国では既に彼の存在は受け入れられていたし、夏の聖国の一件に関しては言わずもがなだ。

 既に次代の女皇として認められている御影を倒したウィルはその実績とその後の御影自身の詳細な惚気文によりある意味アイドル的な人気を博している。

 勿論、ウィル本人は知らないのだが。

 

「玄武様、よろしいでしょうか」

 

 そのウィルが一歩前に出た。

 

「よろしくない!」

 

「あ、すみません……」

 

「義父上と呼ぶがいい! 或いは! 王国流にパパ上でもいいぞ!」

 

「えーと、いえ、王国でもそんな呼び方はしませんが……そう呼ぶために一言良いでしょうか」

 

「ほう! 良いだろう、何でも言うが良い!」

 

「ありがとうございます。……玄武様、サーリヤ様、甘楽さんも。――――どうか、娘さんをください!」

 

「―――――ほーう」

 

 ウィルが腰を直角に曲げたのに対し、玄武が口端を歪めたのを見た。

 立ち上がった父を改めて見るとやはり大きい。

 肩幅だけでウィルの倍はあり、組んだ腕は御影の腰よりもよっぽど太いだろう。

 

「顔を上げるがいい、ウィル・ストレイト」

 

 声には重みがあった。

 言われた通りウィルはゆっくりと顔を上げ、

 

「――――!」

 

 尋常ならざる重圧が彼を押しつぶそうとする。

 それは魔法ではないし、仙術でもない。

 単なる視線であり、しかしそれは時に凡百の魔法を上回る威圧になる。

 ウィルの隣にいるだけで、背筋に嫌な汗が浮かぶほどだ。

 御影の父、天津院玄武とはそれを為す男である。

 魔族大戦において皇国軍の最前線で戦い、王になった鬼種最強の男。

 皇位継承を決定づける午前試合で御影は他の継承候補者を倒したが、それでも父に勝てたことはない。

 トリウィア・フロネシスを知るまで、御影にとって『最強』とは父を指す言葉だった。

 そして状況によっては、叡智の悪魔にも劣らぬとも思っている。

 

「――」

 

 しかし、自分の倍近い大きさの鬼種の王を見上げながらもウィルはその重圧に一歩も引かなかった。

 人の黒い瞳が鬼の黒い瞳を真っすぐに貫き返す。

 いつか、御影が興味を持った視線。

 その時よりもずっと強くなったもの。

 空気が軋むほどの沈黙は僅か数秒で、

 

「わっはっはっは! 流石いい目をしている! あぁ持っていけもっていけ!」

 

「あ、り、が、と、う、ご、ざ、い、ま、す!」

 

 バンバンと猛烈な音を生み出しながら玄武が両手が両肩を叩き、それに揺らされながらウィルが感謝の声を上げていた。

 

「俺のガン飛ばしに正面から返してくるやつなんぞ、そうはおらん! 御影が認めただけはある! わはは! 御影が気に入っていたからではなく、俺も気に入ったぞウィルよ!」

 

「あ、り、が、と、う、ご、ざ、い、ま、す!」

 

「玄武さん、そこまでにしておかないとウィルさんの肩が壊れますよ」

 

「おぉ! 悪い悪いガハハ!」

 

「あ、あはは……」

 

「御影、御影」

 

「はい?」

 

 笑い合うウィルや両親を見ていたら、甘楽に呼ばれたのでそちらに寄ってみる。

 姉は少し声を落とし、

 

「今の気持ちは?」

 

「あぁ――――父上に正面からガン飛ばすウィル見てだいぶ角がふやけてる!」

 

「こら御影! 父親の前でそんなことを言うものではないぞ!!」

 

「はしたないな。……それに、鬼種は結婚の際に両親に許可を貰う習慣はないが、教えなかったのか?」

 

「えっ!? 御影そうなの!?」

 

「あぁ! ウィルがだいぶ前に両親に挨拶を……とか言ってたがこういう光景見たかったから黙っておいたし方々にも口止めを頼んでいた!」

 

「わはは! 流石我が娘、欲望に素直すぎるな!」

 

「母親からしたら心配しかないが……鬼種とはそういうものだ。ウィル、娘をよろしく頼む」

 

「私からもお願いしますね、自慢の妹です。次は皇国にいらしてもらって他の兄妹姉妹も紹介したいです」

 

「―――はい。必ず幸せにします。お義父さん、お義母さん、お義姉さん」

 

 両親や姉に囲まれながらにっこりと笑うウィルを見て。

 御影はたまらなく嬉しかった。

 かつて、ずっと一線引いていた彼を、家族という内側に引き込めたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと私の番だよ……!」

 

「あはは、待たせたね。……でも、帝国の皇帝陛下とは接点ないけど、大丈夫なの?」

 

 王城の廊下をウィルと二人で歩きながらトリウィアは彼の疑問に答えた。

 

「全然。むしろ皇帝陛下は喜ぶよ」

 

 廊下には幾つかの扉があり、それぞれ使用人たちがいつ中から呼ばれてもいいように控えている。トリウィアにとっては慣れた光景ながら、ウィルはどこか居心地が悪そうではある。

 

「陛下は有能マニアみたいなところあるからね。ウィルくんも気に入られると思う。年齢も近いし」

 

「へぇ……」

 

「だから気楽にね。私にもやってほしいな、娘さんをくださいってやつ」

 

「…………皇帝陛下と血縁があるの?」

 

「無いけど」

 

「無いんだ……」

 

 何代かに一度は皇帝の一族にフロネシス家の血が入っているのである意味遠縁ではあるかもしれないが。

 言われたいものは言われたいのだ。

 

「さてと……失礼します、皇帝陛下。トリウィア・フロネシスです」

 

 辿りついた皇帝に宛がわれた部屋の扉をノックする。

 こんこん、という音が響き、

 

「…………ふむ?」

 

「反応が無いね、いないとか?」

 

「そんなはずはないと思うけど……おや、空いてる」

 

 手を掛けたドアの取っ手には鍵が掛かってない。

 少し迷い、控えていた使用人に視線を向けたが肩を竦められただけ。

 なので、

 

「失礼します」

 

 扉を開けて中に踏み込んだ。

 流石にこれで不敬罪になることはないだろう。

 そんなことを考え、見たのは、

 

「うおおおおおおお! ふっ! はっ! 流石は陛下、見事ですなぁ!」

 

「ふっ……! 卿こそ流石の動きだ、アンドレイアは安泰と見える!」

 

 オールバックにした灰色の髪の美青年と長い金髪の青年が、それぞれの髪を乱しながら、珠のような汗を輝かして。

 卓球をしている姿だった。

 

「あ、ディートさん!」

 

「むっ!? ―――おぉ! 我が親愛なる従弟殿! 会えて嬉し―――あぁ、陛下!? 私がウィルと感動の再会とハグをする時間くらい待ってくれてもいいのでは!?」

 

「甘いなディートハリス。勝負の世界は非情なのだ、例え遊戯であってもな。……しかし、隣にいるのはフロネシスか。久しいな、お前もやるか。卓球」

 

「…………………………うぅぅ」

 

 思っていたのと違う。

 アレスが良く呻く気持ちが、今更になって分かるトリウィア・フロネシスだった。

 

 

 

 




ウィル
娘さんを僕にください!!

御影
1年の時、ウィルがずっと自分たちから一歩引いていた、そういうメンタルだったことをずっと気にしていた

ディートハリス
ついに帰ってきた男


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