超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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トリウィア・フロネシス――類は愛を呼ぶ――

 

「はっ―――相変わらずの大口ねぇ!」

 

 吠えつつ、ヘファイストスは科装の機能を活性化させる。

 兼ねてより強化され続けた≪神性変生≫。

 ヘスティアにより最終アップグレートされ、科装(サイバーテック)として再構成された≪偽神兵装(デウス・テルム)≫。

 ヘファイストスの場合は全身を覆うボディスーツの上から最低限の補助端末を装備した軽装型だ。

 それぞれの持つ異能に応じて兵装の軽重は決定されているが、

 

「メタルアーム……!」

 

 ヘファイストスの場合は背の六本のメタルアームにリソースが割かれている。

 伸縮自在、先端は三本のマニピュレーター。それらがヘファイストスの首裏の脳波読み取り装置で意のままに動く。無論、マニピュレーターを介して分解と再構成の異能を発動も可能だ。

 何より、科装への進化による最も大きな変化は、

 

「前の時と、異能の強度を同じと思わないことね!」

 

 術式の最適化による異能を含めたあらゆる魔法の強化だ。

 魔法の構成をプログラムとして圧縮、コンピューターにより発動行うことで人間の脳を遥かに超える処理能力を誇る。

 結果的に純粋な身体能力から固有異能を含め、あらゆる要素が跳ねあがっている。

 見せた。

 メタルアームが伸び、マニピュレーターが掴んだのは手前の座席と落下していた瓦礫。

 それらが細かいキューブとなり、新たに形作ったのは、

 

「100mmガンランチャー……!」

 

 質量比を無視した大口径火力砲。

 砲身約一メートルのそれが六門。

 本来人に向けられるものではない兵器だ。

 それを未だ観客席に立つトリウィア・フロネシスと向けた。

 そして、向けられているのはそれだけではなく、

 

「前との違いを見せてやろう……!」

 

「こっちも覚えとけよ!」

 

 彼女の反対側、自分を含めば正三角形の頂点を描く位置にいるアポロンとアルテミスもだ。

 重型装甲を纏うアポロンは高速回転する丸鋸を十二枚射出した。

 以前はこの時代の様式だったが、やはり科装化されたことにより細かい刃超高温のビームエッジになっている。

 中型装甲を纏うアルテミスが構えていたのは機械弓だった。

 番える弓は一本だが魔力で構成された非実体系であり、曰く通常射撃がそれまでの大技のに匹敵するらしい。

 前後三方。

 アース111の基準を考えてもオーバーキルという攻撃が同時に放たれ、

 

「――――すぅ」

 

 トリウィアはただ、一つ煙を吸い、

 

「ふぅ―――」

 

 着弾の直前、彼女の姿が消えた。

 

 

 

 

 

 

「っ……どこへ行ったのだ!?」

 

 物理衝撃、高熱斬撃、魔力射撃。

 三つの破壊が弾ける中、しかしアポロンはトリウィアの姿を見失っていた。

 音も無く、何か魔法を発動したようにも見えなかった。

 すぐに探知術式を起動すれば、科装兜内のヘッドアップディスプレイが周囲のサーチを開始する。

 アポロンの鎧は全身に装甲を重ねた重装鎧。

 露出は無く、鋭角的な素体の上に日輪を模した円環装甲が所々にあり、別のアースならロボか何かにしか見えない外見だ。

 仮にこの世界の金属なら百キロ近い重量はありそうだが、どういうわけか非常に軽く動きはまるで阻害されない。

 頭部の兜にしても、通常のそれのような隙間や覗き穴から外部を見るのではなく、内部に展開されたHUDが周囲の状況を教えてくれる。

 これを作り出したが我が女神万歳。

 全てを終えたら改めて愛の告白をしよう。

 だが今は、

 

「上か……!」

 

 女神が与えてくれた≪偽神兵装(デウス・テルム)≫。

 それが見つけてくれた敵対者を見上げる。

 彼女は頭上にいた。

 崩壊した天蓋の内、まだ残っていた天井。

 外からの光によって生じた影の中、逆落としで天井に立っていた。

 

「むっ……?」

 

 その姿に、僅かな違和感。

 十字輪、軍帽、軍服、黒衣。 

 変身した時と同じように自然体で天井に立っている。

 冷めた表情で、何故か天蓋に空いた穴の外に視線を一瞬送っていた。

 覚えた違和感が喉元から上がってくる直前に、

 

「来るぞ!」

 

 アルテミスが腕を振り、視界に大量の半透明の線が浮かび上がる。

 

【『偽神兵装:流那帝苦』より『偽神兵装:我が女神より賜りし愛の賜物。あぁ、愛を、肌にっ、感じるぅっ……!』及び『偽神兵装:魅惑の蛸足アルケミスト』へ視界情報を同期します】

 

「きもっ!」

 

 何故か妹と同胞から声が上がった。

 『偽神兵装』の長所の一つ、それぞれの異能による予測範囲の同期だ。視界に薄く浮かぶ線は、本来肉眼では確認できないアルテミスの弦糸を視覚可能にしたもの。

 触れたら糸が切れてその挙動を伝える探知術式であるが、彼女の意思に応じて硬化も可能なもの。

 それにしても妹と同胞の名前が酷い。

 言っている間にトリウィアが天井を蹴り、

 

「あぁ―――!?」

 

 キレ気味の声はアルテミスから。

 視界の仮想弦色の悉くが一息に断ち切られたのだ。

 悪魔は既に両腕を広げ、膝をついた姿勢で地上にいる。

 一瞬のことだった。

 天井にいると思ったら地上にいるようなコマ送り。

 ≪龍の都≫で二種類の身体強化を見たが、そのどちらをも遥かに上回り≪偽神兵装≫の感覚素子の把握範囲すらも上回っている。

 速い。

 それも尋常ではない速度。

 そう思った時、

 

「―――では一刀ならぬ二刀」

 

「!?」

 

 目前、既にトリウィアが両刃銃を振るっていた。

 いくら何でも速すぎる。

 反応は思考よりも先に反射で行われた。

 『偽神兵装』にデフォルトで備わった位相空間(ハンマースペース)より円刃を射出。

 数は五。

 脇や肩越しから飛び出させる形だ。

 速度、温度としては甘いが、

 

「回せ、≪桂冠至迅(アポロ・ホイール)≫!」

 

 ≪桂冠至迅(アポロ・ホイール)≫の能力、受けたエネルギーの火力変換は健在だ。科装化により炎を纏うことがなくなったが、輪に生えるビームエッジは初期状態で鉄を溶かし裂く。

 勿論相手の攻撃を高熱斬撃で断てば、その分も熱量と強度を増すことになる。

 故に、

 

「種火は即座に日輪となるぞ……!」

 

 ぶつけて行きながら、アポロンは身を引いた。

 狙いは足止めだ。

 言葉で挑発しつつも、これで与えられるの良くて軽傷程度だろう。

 トリウィア・フロネシスはそういう女だ。

 だから一瞬でも足止めをし、ヘファイストスやアルテミスが攻撃する隙を作る。

 後退には脚部、その足裏のホイールと踵後ろに備えられた補助ローラーを用いた。

 同時に実行した。

 対しトリウィアは二色の目を細ませながら二振りの刃銃を振るい、

 

「―――っと」

 

 五つの刃輪が、その異能を発揮することなく両断された。

 

「これは―――」

 

 今度は動きを目で追えた。

 速いがしかし、十分理解できるレベル。

 問題は斬撃そのもの。

 本来であれば斬撃受け、炎刃にぶつかれば回転鋸である都合上他の刃が異能によって強化されるはずだ。科兵化によりその効率は上がっている。

 にもかかわらず、五輪の異能が意味を為さずに断ち切られた。

 知っている。

 この結果をアポロンは覚えていた。

 究極魔法。

 或いは魔導絢爛。

 その身で切り裂かれた敗北の円環を忘れることはできない。

 即ち、

 

「全系統の収束による破壊概念―――!?」

 

 

 

 

 

 

 

 トリウィアの次の動きを見てアルテミスは気づいた。

 悪魔の女が天井に立っていた時、アポロンだけではなくアルテミスも違和感を覚えていた。

 彼女の狙いが兄に行ったために、それに関する思考を挟むことができたからだ。

 違和感の正体。

 それは服や髪、軍帽だ。

 逆落としにコート姿で立っていたのなら、当然服は腕に引っかかって垂れさがる。軍帽なんて言うまでもないし、スカートなら捲れてしまうだろう。

 それがない。

 さらには、

 

「八艘ジャンプか……!」

 

 視界の中、トリウィアが跳んだ。

 両断したキモイ兄の円刃を足場にして、だ。

 切り飛ばされ、半円になった刃はトリウィアから弾かれたように飛び、そして道を作った。

 辿りつく終点は後退するアポロンへ。

 低速で宙に泳ぐはずの破片刃を足場にしながらの三次元軌道。

 目視可能故、網膜投影型の視界補助術式がそのからくりを看破する。

 もとよりアルテミスの≪偽神兵装≫は多くの概念・哲学を用いる術式型だ。手にした弓はそれを打ち出す媒介でしかない。 

 天地を無視し、足場にできるはずのない半円を宙に固定するその正体は、

 

「重力制御か!?」

 

 

 

 

 

 ヘファイストスは一つの確信を得ていた。

 破片を足場にして駆ける軍服姿の悪魔女。

 かつて敗北させられ、辛酸を舐めさせられ、屈辱を味合わされたこの女の挙動についてだ。

 おかしかったのはの三挙動。

 こちらの包囲攻撃からの天井への移動。

 不良月神の探知弦糸を殲滅しながらの着地。

 そこからのキモイロリコンへの接近。

 ≪偽神兵装≫の感覚素子を超過した速度、それにヘファイストスは覚えがあった。

 周囲メタルアームで座席や瓦礫から新たな兵器を作り、破片群を超えてアポロンへと迫るトリウィアを見て叫ぶ。

 

「――――時間加速ね!?」

 

 

 

 

 

 

 

「全系統の収束による破壊概念―――!?」

 

「重力制御か!?」

 

「――――時間加速ね!?」

 

 トリウィアは三つの問いを聞いた。

 重科兵装へと最後の半円刃を蹴り、

 

「―――――全部です」

 

 己の時間を加速させる。

 まず世界が色を失った。

 ついで引き延ばされるように自己時間が加速し、世界がゆっくりと流れる。

 第二魔導絢爛≪十字架の誓約(ヘカテイア・シュヴェーレン)≫。

 身体強化と思考速度の超加速による疑似時間加速、その発展形。

 真正の固有時間加速だ。

 闇系統には『時間』概念は存在するが、これをそのまま時間加速や停止を行える者はこの世界において未だ確認されていない。

 ことがことだけに極めて高度であり、アルマ曰くマルチバース全体で見ても時間干渉系はレアものだと言う。

 それをトリウィアは体現している。

 体感時間において5秒ほどの疑似時間停止世界での行動。

 疑似時間停止なのは、本当に時間を止めると範囲指定や対象干渉等で難易度が跳ね上がるから。

 それが≪十字架の祝福(ヘカテイア・ゼーゲン)≫による恩恵の一つ。

 

「さて――」

  

 その上で重力制御を肉体に駆けつつアポロンの前へと辿りつく。

 重力制御自体は、元から可能といえば可能だった。

 通常攻撃魔法として用いる≪魔弾の射手≫でも荷重重力弾は用いている。

 これはその範囲と制御をより高次元化したものだ。

 狙いは加速時間内も含めてあらゆる行動に重力補正を掛けることで自由度を跳ね上げる。

 直前、半円を足場にしたのも、それを空間に重力固定したことで可能にした。

 重力制御。

 全系統保有により、元々広かった魔法の選択肢はほぼ無限と言っていいものだったが、トリウィアがデフォルトに追加した魔法がそれだ。

 なぜなら、

 

「―――ぶっちゃけ、楽ですからね。重力」

 

 応用性が広い上に、実用性も高い。

 建国祭の時、新島巴が楽なんでありますよねぇとか言いながら周囲へ雑な荷重を掛けていたのも理解できる。彼女、本職は拳銃遣いというのだからそのあたりもいつか話し合って参考にしたいところだが。

 今は、

 

「おお神よ、告白しましょう」

 

 あまり信心深い方ではないトリウィアは、

 

「――――実はこの瞬間が、いつも快感なんですよえぇ」

 

 零距離で全系統による概念崩壊を、砲撃としてアポロンへぶち込んだ。

 

 

 

 

 

 全三十五系統。

 各五系統それぞれ織り上げ、七属性をさらに練り上げ、ただ一つ破壊の概念として具象化させる。

 破壊は銃口から刃の峰を通り、

 

「ッ――――」

 

 深淵は、貪るようにアポロンの重装に触れ、その概念を全うしていく。

 ≪魔導絢爛(ヴァルプルギス)境界超越(エクツェレントゥ)≫の発動により全ての攻撃に破壊概念が付与されるようなった。

 対処の物理的強度を無視し、それすらも概念的に破壊する防御不可の法則具現。

 そして、

 

「カァッ―――!」

 

 アポロンの動きを見た。

 全身にある日輪を模した装飾。そのうち、腹と胸にある大円が破壊が触れるのと同時に熱を灯す。

 炎輪だ。

 元よりアース111の基準を超越させるために作られた科兵化は、前提として概念的な強度を持つ。

 円環装飾の重装鎧の意味をトリウィアはすぐに察する。

 射出して来た円刃と同じように、装飾の円環もまたアポロンの日輪なのだ。

 それが、破壊に僅か遅れながら接触状態でも防御陣として展開された。

 

「おっ―――」

 

「ぬぅ―――」

 

 ぶつかり合う。

 回転する高熱の円環が破壊に砕かれながらも拮抗する。

 それはコンマ数秒以下の抵抗だ。

 一瞬で亀裂が入り、もう一瞬で重装ごとアポロンの体をぶち抜く直前、

 

「キモさ極めてるからってそのままにされたら困るぜ―――!」

 

 右から庇ってるのか庇ってないのかよく分らない一撃が来た。

 

 

 

 

 

 

 アルテミスはトリウィアへと蹴りを打ち込むと同時に脚部裏の加速器を稼働させた。

 バトルバニーのスタイルは変わっていない。

 意匠は同じく、科兵化によって構成パーツが変わっているのが大半だ。

 以前は『お前そのバニースタイルはもっと胸が大きい女が着るものではないか? その膨らみでは戦闘中ぽろ……るほどでもないか。ひょっこり? するんじゃないか? 視線誘導か?』などと兄に言われた――しっかり蹴り飛ばした――胸辺りも胸に張りつくボディスーツになっている。

 最大の変化は、脚部装甲だ。

 足先から膝までを覆う装甲の足裏と膝裏には加速器が備えられ、移動や蹴撃の加速を担う。

 そうした。

 

「オラぁッ――!」

 

 アポロンへと砲撃途中のトリウィアへ。

 横から加速の蹴りを叩き込み、

 

「ぬおっ!?」

 

 命中の寸前、空間の歪みに受け止められた。

 

「っ―――重力の盾か!?」

 

 重力操作によって歪められた空間が、障壁となって阻まれている。

 だったら、

 

「最・大・加・速……!」

 

 加速器が、轟という音を立てて瞬発した。

 魔力の噴出音と空間の破砕音。

 蹴りぬく。

 

「ちっ―――」

 

 悪魔の判断は即座だった。

 もう一瞬あればアポロンの重装を撃ち抜けただろうが中断し、右の刃銃を立てて一撃を受けた。

 軍服姿が跳ぶ。

 

「はっ……礼はいいぜ」

 

「くっ……妹よ、一体私のどこがキモイと言うのだ……! あぁっ、我が女神より賜った愛の鎧が砕けてしまった……!」

 

「そういうとこだよ!」

 

 脚部の副加速器で姿勢を修正し着地しながら蹴り飛ばしたトリウィアを見た。

 彼女は軍靴で観客席を蹴散らしながら十数メートル滑り、

 

「おや良い所に」

 

 丁度良い位置にあった席に座り、足を組み、

 

「―――ふぅ」

 

 煙を一息吐きだした。

 散らばった観客席、天上から差し込む光、長い脚を組みながら煙草を蒸かす軍服姿は腹が立つくらい様になる。

 

「無性に腹立つな」

 

「妹よ、そういうところがチンピラなのだ」

 

「うるせぇなぁ―――お前も思うだろ!?」

 

「当然ねぇ!」

 

 

 

 

 

 

 断続的な重力制御と時間加速、思ったより疲れるなぁ、なんてことを思いながらトリウィアは一息ついた。

 訓練は重ねていたが、それでもやはり実践となると負担の質が違う。

 重力制御はともかく、時間加速は自己感覚五秒以上は続かないし、連続使用も数回までだ。あまり考えずに重ねると早急に体力や魔力精神力を消耗しきってしまうだろう。

 盛大に格好つけたので、ちょっと派手にやり過ぎたかもしれない。

 まぁかっこいいのは大事なので必要経費だが。

 息を吐き、紫煙を吸い、

 

「ふむ」

 

 壇上、ヘファイストスが新たに構成した兵器を見た。

 右三本のメタルアームに六連連装砲。

 左のメタルアームは三本が一纏りとなって、掴むというより生えているのは、

 

「…………なんですかそれ」

 

「答えてあげましょう―――列車砲って言うのよ。魔力機関でちょっと省略と縮小してるけど」

 

 舞台の手前から奥まで一杯に使われた巨大な砲門。

 アースゼロは19世紀欧州にて生み出された列車と共に運用する巨大砲だ。

 目測、砲口が十五センチ丁度。

 現在アース111における銃器は精々10mmから30mm、トリウィアが普段使う変形二丁拳刃鞭銃≪エリーニュス≫の通常口径でも44mmだ。術式刻印による魔導大砲でも100mm前後までしか存在しないし、そもそもこれは魔法による補助具という性質が強いので銃火器としては扱われない。

 それが遥か未来の技術と異世界の魔導で作られたのなら、

 

「私も初めて使うけど―――射程、王都の外壁くらいは全然余裕で超えるからそのつもりでいなさい」

 

 あざけるような笑みが向けられて。

 連装砲の弾幕が斉射された一秒後、列車砲が発射された。

 

「――――!」

 

 故にトリウィアは、斉射と同時に加速の深淵に身を沈める。

 

 

 

 

 

 

 加速された世界で、千を超える細かい弾丸が迫るのをトリウィアは見た。

 それは良い。

 腕を振り、双刃銃の刀身を分解、刃鞭形態に移行。

 解析の魔眼にて銃弾の群れの軌道を計測、自分に当たるものを確認した。

 一秒。

 重力制御を以て両腕を振りぬいた。

 椅子から立ち上がる暇すら惜しい。

 連装砲の狙いは甘く、自分に当たるのは半分程度。刀身を重力加速させた上で重ねて纏わせた斥力で弾き飛ばせばいい。

 二秒。

 既に列車砲は放たれている。

 超加速の世界で尚、発射の魔力光が伝播し、衝撃は劇場全体を揺らして行く。連装砲の弾丸も押しのけるほど。

 トリウィアに届くまで実時間一秒もなく、今の加速内時間でも四秒後だ。

 動き続ける。

 

「―――散ってください!」

 

 魔力による刃鞭の接続を解除。

 それによって生まれたのは細かい刃が左右合わせて七十本。 

 一本幅二センチと少しの刃というよりは鋭利な鉄の破片。

 三秒。

 銃刀身を失い、柄だけを握る両腕を広げながら前に突き出す。 

 重力が伝播し、破片が形を生んだ。

 五本一組の円形。それが十四枚。

 それの内七枚を列車砲の軌道に並べ、残りの七枚を真上に向けた。

 天井の大穴を向く、L字型のレールだ。

 推測できる威力と射程的に、回避してしまえば王都をぶち抜くだろう。

 ただ

 四秒。

 

「歪め……!」

 

 円の内、さらに円同士の合間の空間に重力力場を展開。

 レール内に空間が歪むほどの荷重が生まれ、

 

「――――」

 

 五秒間の加速が終了した。

 

 

 

 

 

 

 列車砲の発射、その衝撃にヘファイストスはメタルアームで無理やり姿勢制御を行った。

 一瞬で舞台が砕け、木片が舞い、観客席を薙ぎ払う。

 ≪偽神兵装≫越しにロリコンとチンピラが文句が来たが今は無視。

 ただ、悪魔がどうなるかを見て、

 

「――――はぁ?」

 

 砲弾の軌道が曲がっていくのを見た。

 大気への打撃ごと、円陣のレールが押しとどめ、速度を落としていく。減速した砲弾はそのままL字型レールに乗り、

 

「!!」

 

 真上へ突き抜け――――遥か頭上で爆発する。

 

「こ、こいつ―――!」

 

 レールの出現は気づいたら行われていた。

 時間加速内で作りだし、対処をしていたのだ。

 加速が何秒間あるのかは知らないが、それでも初見の兵器を前に、この判断力とそれを実行する能力。

 なんというかもう、

 

「アンタの方がよっぽどチートじゃない……!」

 

「――――あぁ、そういえば」

 

 対するトリウィアは柄だけの銃を周囲に重力で浮かせながら、新しい煙草を口に着けていた。

 頭上に青黒の天輪を頂く軍服の女は、変わらずこちらに対して横向きで座席に腰かけたまま。

 そして周囲に浮かんでいるのは柄だけではない。

 数センチ程度の細かい破片が数十。

 トリウィアの周囲、中空に固定されている。

 彼女は右の二指で挟んだ煙草を吸いながら、足を組みなおした。

 

「ウィル君も、持ってるんですっけ。そのチート、世界に対する適正とかなんとか」

 

 左手を上げ、

 

「近しき者同士は共にあることを望む、なんて帝国の諺で言いますけど―――」

 

 振り下ろし、

 

「ふふっ――――私とウィル君、お揃いですね」

 

 笑っているのに全く笑顔に見えない惚気をしながら、全ての破片を重力操作により超音速で射出した。

 

 

 




トリウィア
重力操作
5秒間の超時間加速
究極魔法で付与されていた破壊概念の恒常化
このあたりがデフォルトでついてます。馬鹿。

アルマ
僕も! チートを! 持ってるんだが!!


ひゃっほう推しが自分の能力と同じものをおおおおお!!


偽神兵装(デウス・テルム)
電子化による術式の効率化、それによる強化。
兵装保有者同士の情報交換。無線通信。
それぞれに合わせた装甲の最適化等々、恩恵はいっぱいあります。
アポロンはほぼロボ
アルテミスとヘファイストスは近未来SF風のサイバースーツって感じですね。


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