超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
さて、どうしたものかと御影は息を吐いた。
三鬼子は不動を与えられ、自分もそれは同じ。
甘楽、クリスティーン、いばら、マクリアの視線を受けつつ御影は考える。
良い状況ではない。
クリスティーンの究極魔法により、場の停滞が生まれているがそれも長くは続かないもの。
そしてその彼女が示した。
自分が、自分で抑えているものが勝機だと。
「――――ふむ」
吐いた息には力が抜けていた。
不動のせいで、体に力を入れなくても立てるのだ。
だからリラックスして考えることにする。
思い当たることは、ある。
いばらに言われたことだそうだ。
「確かになぁ」
学園に来て、温くなっていると言われれば否定できない。
肉欲的には燃え広がるどころか爆散している自覚があるが、それまで命題として掲げて来た自己の証明、その全てをウィルにぶつけて来たのだ。
結果、一歩引いた一年間があり、その半年後に結ばれた。
そう思うと自分の肉欲大爆発を一歩引いて一年半受け続けていたウィルは凄いんじゃないだろうか。
「……うぅむ」
こういう思考が、いけないのだろうか。
身を引いてた。
力量的にアルマ、トリウィア、フォンに劣るために結婚は考えていたが四番目だと思っていた。
今更思えば入学直後、ねじ込まれたウィルの主席に殴りこんだ自分と比べれば甘いということもできるだろう。
何故、そうなってしまったかといえば。
「――――」
苦笑してしまう。
きっと、ウィルだけではなくアルマも、トリウィアも、フォンも。
自分の身内として、好きになったからだ。
だからこれは悪いことではない。
いばらもそう言っていた。
言っていた本人は膝をついた角晒しから地面に激突したので土下座体勢が固定になっているがまぁ良いだろう。
だったら、
「―――難しいな」
悪いことは、なんだろうか。
●
「第一皇女殿下、貴女の妹御はどうにかできると思いますか?」
「そうですねぇ」
甘楽は右に土下座を置き、左のクリスティーンの声に首を傾けた。
視線は、小さく息を吐いたり、言葉を漏らす妹に向けて。
珍しい様子だ。
彼女が生まれてからの付き合いだが、あぁして悩む様子は見たことが無い。
即決即断、ないし精々が一呼吸で決断を出すのが妹だ。
それがあぁしているということは、思う所が多々あるのだろう。
「クリスティーン様は、どう思われます? そのエレガントスカウター的に」
「生憎、私が分かっているのは秘めたエレガンスだけです。それがどのようなものかは私には分かりませんわ」
「なるほど」
「甘楽様、何故そちらの方と意思疎通できているのでござるか……?」
「大事なのは本質ですよ、いばら」
「えぇ……?」
「ふふ」
笑みを扇子で押さえ
「少し、そちらの貴女」
「え、あ、はい!」
妹の傍にいた少女を呼ぶ。
制服らしき姿を見るに、逃げ遅れたこの学校の生徒だろう。
絵本を抱えた少女は可愛らしい小走りでこちらの元に来て、
「プリンセスのお姉様!」
「あら」
呼び方に意外を感じた。
「私も、一応皇国の姫になるんですよ」
「え、あ、す、すみません! 失礼をしました! ――――セープックします! 皇国では、そうするんですよね!?」
「まあまあまあまあ」
開いた扇子を上下に仰いで諌め、覚悟決まってるでござるな……! とか感心しているいばらには軽い蹴りを入れておく。
「ぐあっ」
「おぉ、五センチ真横スキッド―――エレガンスワン!」
隣、モノクルの美人は一体の不動による負担が強烈なはずだが楽しそうだ。
独自理論で生きているタイプの変人は色んな意味で強い。
なので、目の前で慌てた様子の少女に改めて声を掛ける。
「お名前は?」
「ま、マクリアです!」
「マクリアさん。んー」
ぱちんと、音を鳴らして畳んだ扇子を顎に当てて、身を小さく屈める。
新鮮な気持ちだ。
鬼種の男衆は大柄だし、女性として甘楽は平均的だ。
第一皇女という立場上、大人と接することが多いので子供相手に視線を合わせるの久しぶりで、
「妹を、御影を知っていたのですか?」
「え?」
「プリンセスの姉、と呼んでくれたでしょう? ということは御影を知ってるのかなと」
「あ、はい! プリンセスのことは前から知っていました!」
「へぇ、それはどうしてですか」
聞いた答えに、甘楽は笑みを深めた。
●
「先ほどの質問にお答えしましょう、クリスティーン様」
濃くした笑みを隠さず、御影の元へ行く少女の背中を見つめていた甘楽は言う。
「大丈夫ですよ、あの子は」
「その心は?」
えぇ、と頷き、
「皇位継承権を掛けて彼女が私たち兄弟姉妹に戦いを挑んだ時、誰も侮りはせずとも負けるつもりはありませんでした。ですが―――負けたんですよね。正面から、一切の言い訳もできぬ敗北を彼女は与えました」
くすりと笑う。
「その最後に負けたのが私だったんです。あの子の証明が何に対してなのかを見ました―――えぇ、あの子は、天津院御影ですからね。大丈夫ですよ」
●
「プリンセス!」
「ん?」
御影は声を聴いた。
それはマクリアのものであり、彼女は不動の自分の正面に笑顔で来て、
「私、プリンセスが憧れだったんです!」
「………………んん? どうした、急に。私のこと……知ってたな、そういえば」
嬉しいことを言われたが、しかしピンとは来ない。
今が初顔合わせのはずだ。
だが彼女は初見で自分が皇国の姫であるということを知っていた。
皇国皇女として、或いは学園の二年次席として一般市民にも知られているからそのあたりは流したが、
「この学校は、貴族向けの学校です! だから色々、算数とか、語学とか、礼儀作法とかそういうの、たくさん勉強します! 男の子なら紳士らしく、女の子なら淑女らしく! みたいな」
確かに今の言葉からも彼女の教養の高さは伺えた。
そして彼女の言葉は笑顔と共に続き、
「それで―――私の目標はプリンセス、貴女なんです!」
「―――」
「プリンセスはうちの学校じゃ有名なんです! 毎年、魔法学園の生徒会の人の話は沢山来ます! 『貴風園』じゃ魔法学園への入学を目指している子も沢山いますので! 私もそうです!」
理解できる。
アクシア魔法学園は世界最高学府であり、入学して卒業すれば将来は引く手数多だ。当然、王国貴族にとっては子供が入学するだけでかなりのステータスだろう。
溌剌した声で彼女は語る。
「私はいつか、魔法学園に入学します! それで、プリンセスになります!」
それは。
「強く、優しく、美しく!」
少女の夢だ。
「お仕事もできて、みんなの模範になって、旦那様になる人も支えてて、戦っても強くて! 私はそんなプリンセスになります!」
彼女が両手で差し出したのは、抱えていた絵本だ。
マクリアがあの物置で読んでいたのは、
「血蹴りの王女様か……」
確か、王国、というか初代国王由来の子供向けおとぎ話だ。
内容は確か、
「はい! 平民の女の子が継母の意地悪で世界一王女決闘回に出場して、伝説の達人老人から貰ったガラスブーツのキックで沢山勝ってついでに王子様も張り倒したらプロポーズされて、プリンセスになるお話です! 私はこれが大好きで、このプリンセスが大好きで、プリンセスは元々プリンセスだけど、かっこいいのは同じで……えぇと……はい!」
自分で言っていて、内容が荒れ始めたのに気づいたのだろうか。
まだ子供のようで、敏い。
マクリアは笑っていた。
春に咲く、花のように。
「――――プリンセス、貴女は私の夢なんです!」
少女は夢を語る。
「――――っ」
御影は、息を飲んだ。
あまりにも真っすぐで、無垢な、澄んだ祈り。
なりたいものになると、誰に恥じるでもない宣言。
それは。
それは。
まるで。
「……って言っても、周りには笑われちゃって。だからあの物置で読んでたんですけど……えへへ、やっぱりおかしいですよね。私、王族ではないですし」
「………………あぁ、確かにおかしい」
「ぁ―――」
声を漏らした少女に自分は、
「おかしくて、素敵だ」
不動だったはずの手を頭に乗せる。
動きは、当たり前の様に取り戻し、
「私もな、初めて皇位を求めた時笑われたよ。お前には無理だとな。混血で、さらに遥か異国の血を引き、体も鬼種の女らしくなかったからな」
まぁ、と苦笑する。
「連中も悪気はなかったんだろうな。そういうものだと思っていた。当然だ、私は何も示していなかったからな。―――だから、私は自分の力を示した。お前はどうだ? マクリア」
「えっ……えっと! お勉強、頑張ってます! 入学した時はクラスでドベあたりだったんですけど、最近は半分より上の成績になりました!」
「素晴らしい。半分超えたな、他には?」
「運動も頑張ってます! 戦闘訓練は、私はまだ解禁されてない年齢なんですけど、魔法の扱いは取り組んでます! 筋トレもします! プリンセスみたいに大きな武器振り回したいので! あとキックの練習も!」
「うむ、良い心がけだ。お前くらいの年頃の人種が無理に筋トレとかすると背が伸びないらしいから無理はするなよ?」
「はい! 先生にも言われました! 無理なく頑張ります!」
「作法はどうだ?」
「それも頑張ってる最中です! どれも、あんまり得意ではないですけど、上手な人に教えてもらっています! 最近は先生にも同級生にも上達したねって褒められるようになりました!」
「最高だな、向上心があり、少しづつでも前に進んでいるのだから」
「ありがとうございます!」
「あぁ――」
息を漏らす。
最早惑いは無かった。
膝を折って、少女に目線を合わせる。
綺麗な空の色をしていた。
「――――ありがとう、私に憧れてくれて。焦がれた先に向かって全力で駆け抜けることができるならお前と私にそう違いはない。先か後かというだけだ」
「……え、えっと」
少し難しい言い方だったか。
ならもっと分かりやすく、頭に乗せた手を引き寄せて、彼女の額と自分の額を重ね―――――片角で彼女の額に触れながら言った。
「マクリア、お前はプリンセスになれるということだ」
「ほんとですか!?」
「あぁ、私が保証しよう。私も今のお前と同じように立場を得たからな」
にやりと、口端を歪めて笑う。
すると少女も同じような笑みを頑張って真似してくれた。
かなり嬉しい。
「ようし。それじゃあこれからあっちの土下座かましてる私の忍者とその隣の綺麗な私のお姉様に守ってもらうと良い」
今は。
そう、今は。
「未来のプリンセスが夢を叶える為に―――――私が良い所を見せよう」
●
「――――全く、我ながら鈍かったな」
苦笑しつつ、動きを取り戻した体で角に触れた。
大戦斧は地面に突き刺し、空の手。
マクリアが姉の元に辿りついたのを確認して、
「さて」
軽い動きで一歩前に出て、
「クリスティーン殿!」
「なんでしょう?」
振り返らない。
視線は真っすぐに、不動、しかし僅かに動きを取り戻そうとする三鬼子を見据えながら吠えた。
「時間稼ぎと忠言、天津院御影が感謝する! その礼に」
右の五指を開き、呪いが刻まれた腹を叩くように指を食い込ませ、
「――――見たいと言ったものを見せよう!」
封じていたものを解き放った。
●
「――――姫様!?」
その気配に、いばらは顔を上げた、
不動は掛からない。
忍が、主を想った故の行動だったからだ。
だがその事実は気にならなかった。
気になったのは御影から溢れ出したもの。
ここ一月、主を苦しめたそれの正体はもう見当が付いている。
それは、
「三鬼子の呪いと、同質のもの―――――!」
●
御影の腹部、どころか全身から溢れ出した赤黒の、炎のような呪いが三鬼子の断片だと、御影は直感した。
本体ではない。
おそらく≪ディー・コンセンテス≫が聖国や≪龍の都≫で暗躍したように皇国の聖域からその呪いの一部なりを奪うなりしたのだろう。
三鬼子。
古くから皇国に伝わる伝説。
神代の時代、鬼種と共にあった三つ柱の鬼神は、しかし鬼と道違えて自ら眠りについたという。
簡単に言えばこういう話で、皇国内の地域によっては当時の鬼に封印されたとか、殺されて遺骸が収められたなどのバリエーションがある。
エウリディーチェの話を聞く限りは自らの封印だったのだろう。
その理由が、今御影から溢れ出したもの。
感情だ。
「――――!」
怨念。
情念。
想念。
愛しい。
憎らしい。
認めたい。
許せない。
それらはこれまで感じ、しかし抑えていたものだ。
押さえなかった。
「ハッ―――!」
笑みが溢れ、歯がむき出しになる。
そして。
炎が御影を飲み込み、意識が別の位相へ飛んだ。
●
――――これは
御影は見ていた。
感情のさらに奥で、流れて行く光景を。
それは過去だ。
かつて三鬼子たちが見て来たもの。
「――――神が生まれた時代の頃からか」
遥か遠い昔、人の祈りが神を生み出した。
概念に対して名付けることで形を得て、神となり人の上に君臨した。
三鬼子もそうだった。
彼ら、或いは彼女らもまた人に崇められ、人の上に立つことになった。
大陸の東、山脈に囲まれた刃のように細長く突き出た半島。
一つ目の鬼神を長とした鬼の国。
三つ柱の鬼にはその配下として国を治めていたのだ。
だけど。
時は流れ、世界は変わっていく。
人の文明が発展し、神が人と交わり始めたのだ。
崇められていたものと崇めていたものが同じものになり、繁栄していく。
『――――どうして?』
彼らは、その変化を見ていた。
『――――お前たちが、私たちを作ったのに』
声が、どこからともなく聞こえてくる。
『――――お前たちが、私たちを殺すのか?』
感情だ。
怨念。
情念。
想念。
彼らはそれが理解できなかった。
神と交わる様な人も。人と交わる様な神も。
人によって緩やかに絶滅していく神々を。
「あぁ―――」
御影は見ていた。
三鬼子が世界から取り残されていくのを。
御影は感じていた。
三鬼子が世界に対して抱いた想いを。
『――――何故だ』
『――――何故、私たちを否定する』
『――――何故、私たちが消えて行く』
『――――その繁栄が憎らしい』
『――――その慕情を認められない』
『――――その未来を見ていられない』
反響する慟哭。
交差する悲嘆。
燃え上がる憤怒。
「―――あぁ」
気づけば、御影はどこかに立っていた。
『貴風館』ではない。
霧に包まれた白い世界。
自分の正面に、赤黒く燃える三つの火。
繁栄を、慕情を、未来を拒絶した神。
「そうか」
息を吸った。
吐き、言う。
微笑む御影には、彼らに対する非難は無かった。
だって、
「お前たちは、誰もを愛していたんだな」
そうだ。
「愛しているから離れたくなかった」
人とも、神とも。
『―――』
「そうじゃなかったら。人とも神ともあり方を違えたのに眠ることを選ばないはずだろう? 憎くて、認められなくて、それでも愛して、寿いだからお前たちはただ眠ることを選んだんだ」
そうだ。
人を愛し、憎み、寿ぎ、許せなかった。
片方だけだったら、簡単だっただろう。
知識としてエウリディーチェから聞いているから知っているし、感情を身に宿知りて理解する。
「優しすぎて、真面目過ぎだったんだなお前たちは。変わりゆく世界に対して目を背けられる矛盾を抱えて、それを受け止めきれなかった。人と神が交わる世界に自らの居場所が無いと判断して、身を引いたわけか」
微笑む。
「……どこかで聞いた話だ。私よりも、よっぽど慎ましいが」
強さに序列をつけて控えていた自分よりよほど真面目だ。
結局肉欲大爆発してしまったし。
まぁアレはウィルが反則だったので仕方ない。
仕方ない。
だから。
「なぁ、おい」
目前の想念たちに声を掛ける。
それは断片といえど、三鬼子そのもの。
彼らに手を伸ばす。
「―――私と行こう」
『―――――?』
炎が揺らめいた。
首を傾げる様にも見えて笑みが深まる。
「世界は変わった。確かに神の時代は終わり、人の世だ。だからこそ、お前たちがあれこれ悩む必要はきっとないぞ? むしろ、見届けると良い。かつて、お前たちの同胞の、創造主たちの選択がどのような結果を生んだのか」
『――――何故、お前に?』
「私も、半端者だからだ」
即答した。
「私は人間と鬼の混血で、皇国と聖国の混血だ。それでもまぁ、皇国の皇位継承権第一位を勝ち取って、この王国に来た」
だけど。
「どうにも愛を知ってな」
苦笑して、
「色ボケ……というか肉欲ボケして、どうにも私は熱を失っていたらしい。私の従者にさっき教えてもらった。だけど、だけどな」
聞いて欲しいんだ。
「そんな私を夢と言ってくれる少女と出会ったんだ。私が自分の理想だと。私の様になりたいと。なぁ、おい、どう思う?」
『――――どちらが、本当のお前なの?』
「どっちもだ。或いはどっちでもない」
もう一度、即答する。
「本当の私なんて、無いんだよ。正しいあり方なんて私には無いんだ。半端者で、混ざり者で、感情に振り回されて、そのくせ理性でふるまって」
良いも悪いも無いのだ。
いばらが熱を失ったという自分も。
マクリアが夢だと言ってくれた自分も。
ウィルを愛している自分も。
アルマを揶揄う自分も。
トリウィアと色ボケている自分も。
フォンの姉である自分も。
変化したしてない、なんて悩むのがそもそも違うのだ。
だって。
「あらゆる全てが、私なんだ」
そして。
「それはお前たちも同じさ、三鬼子。人を憎んでいるのも、人を愛しているのもお前たちなんだ。だったら矛盾を抱えて行こう。私と一緒に」
手を伸ばしたまま、一歩踏み出す。
炎が揺れる。
構わなかった。
「行こう」
三つの炎に。
「一緒に」
その果てに、何があるのかは分からないけれど。
それでも一つ確かなことがある。
「―――――きっと、楽しいぞ?」
●
「――――!」
クリスティーンは見た。
甘楽は見た。
いばらは見た。
マクリアも見た。
御影の体から、吹き上がる様に炎が溢れ出すのを。
けれどそれは、もう黒ではない。
鮮やかな赤。
燃えるような橙を含む真紅の炎。
火の粉は瞬く間に広がり、
「おぉ……! おぉ……! エレガントオブエレガント……! EVが……計測不能……!」
同時、クリスティーンの究極魔法による結界が限界を迎えた『貴風館』に舞う。
「―――綺麗」
夢見る少女が息を漏らした。
『オォォォォォ……!』
三鬼子が警戒するように、恐怖するように唸りを上げた。
舞い散る火の粉は花吹雪のようであり、三鬼子が広げていた汚染を焼き払う。
「――――はっ、全く簡単な話だったんだ」
その中で。
あらゆる全ての中心に、炎を纏う御影は笑う。
「全てが私だ。悉くが私だ。良いも悪いも無い。正しいも間違いもない」
フォンが、己の存在を定める為に正しい名を世界に告げたのとは違う。
トリウィアが、他の世界から欠落を埋め、それまでの己を超越するのとも違う。
或いはアルマやウィルのように、その万能を以て世界を為すのではない。
己がやることはずっと同じだ。
悩む必要はない。
そんな時間すらもったいない。
あらゆるものが己だと思うのなら。
「それを自らを以て世界へと証明する―――これが、天津院御影だとな!」
吹き上がる炎が、御影の背後に形を得た。
獣だ。
狗、狐、蛇。
本体の断片であるが故に精々三十センチ程度の大きさ。
大きな力を持たず顕現すら曖昧でデフォルメされた二頭身のような彼らに対して、
「誓おう!」
琥珀が輝き、声が轟く。
「あらゆる矛盾を、あらゆる半端を抱えて!」
それは熱だ。
それは夢だ。
それは己だ。
「――――私は私であり続ける!」
片角が炎を宿す。
それこそが天津院御影の証明。
『――――!』
三頭が吠え、宙を駆ける。
御影を中心に軌跡を描いて巡り、
『≪祈りて舞い、誓いて夢に―――我示さん!≫』
紅蓮が吹き荒れた。
『しゃしゃー!』
まず蛇が、背後にあった大戦斧と合一し、片刃だったそれに刃を追加した。
左右対称となり、さらに同じものが柄の反対側にも展開。
都合、巨大刃四つを持つ両刃斧となる。
『こーん!』
狐は、御影を包むように衣となって自ら纏われた。
袷に重なる羽織のように。炎の意匠を残しながら朱と橙を彩る。
腰に巻き付いた炎は巻き布となり、右が長く、左が短い左右非対称。
足先はハイヒール、首元の狐毛のファーはどこか王国風の王皇折衷スタイル。
広がる炎が連続して衣装となり、変身を完了。
狗は最後だった。
頭上に跳ねた狗は形を失い、すぐに新しい形を得た。
「―――ふっ」
「あっ―――」
一瞬、マクリアに視線を送り。
手にしたのはティアラだ。
自ら手に取り、角に嵌める様に頂く。
狗耳を模した姫冠はぴたりと収まり、
『わふっ!』
銀の髪が炎を宿した。
髪を炎の赤としつつ、毛先は元の銀を残して広がる。
輝くティアラと燃えるドレスは、まさしく少女が夢見たプリンセスのように。
「――――」
カツンと、高らかな靴音が響いた。
腕を振れば長く広い袖が翻り、右の腰布が棚引く。
琥珀の両目が爛々と輝いている。
伸ばした手へと、両刃斧が当然のように自ら浮遊して握られに行った。
振った。
豪と、熱が舞う。
「ハッ!」
変身を完了した御影は息を吐いた。
物理的な高温を発する熱を以て、己の名を証明として告げる。
『――――――≪征花繚乱・朱天ノ焔≫』
世界が圧倒される。
あらゆる矛盾を受け止め、それでも尚己であろうとする女を。
神の力を宿す混血を、きっと誰もが目を背けられない。
「三鬼子よ」
『オォォ……!」
低く慄く獣に対して。
自らに宿ったものと同じように、御影は手を伸ばした。
笑みと共に五指を開いて差し出した。
「お前が抱えた絶望も、私が解き放ってやる」
強く。
優しく。
美しく。
真紅に燃え、神を纏う半人半鬼のプリンセス。
「さぁ――――覚悟は良いか?」
御影
プリンセスエンゲージ!
呪いは受け入れば祝いに。
御覚悟は、よろしくて?
これで全員強化形態持ちってわけですね
三鬼子(デフォルメ)
妖精ポジション
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ウィル
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アルマ
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御影
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トリウィア
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フォン
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マキナ
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掲示板勢
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カルメン
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トリシラ
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アレス
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バルマク
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ディートハリス