超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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ウィル・ストレイト――僕は君の――

「えぇ、お待たせしました。アレス・オリンフォス」

 

 静謐すら伴った彼の言葉を聞いた瞬間、アレスは飛び出していた。

 ≪第二・進軍戦型≫移行により巨大化した二刀はフレームが分離し、刀を佩くように腰にジョイント。

 刃渡り一メートル程度、対人用の機械二刀に変形する。

 脚部装甲の足裏から赤雷を放出する加速器の速度に乗り、彼我の距離を一瞬で詰め、

 

「……!」

 

 ×の字に振り下ろす。

 言葉は、作れなかった。

 だが言語化できない激情は斬撃となり、

 

「――――」

 

 ウィルの虹刀が正面から受け止める。

 激突による衝撃は、周囲の瓦礫らを吹き飛ばす。

 それでも。

 

「アレス君」

 

 細められた黒い瞳は何かを言いたげながらも、静かだ。

 二刀を押し込み、一刀に押し返され、

 

「言いたいことがあるなら言えよ、ウィル・ストレイト……!」

 

「―――」

 

 赤雷のスパークが二人を中心に弾ける。

 

「……分かりました。君の事情は、マキナさんから聞いたんですが」

 

 彼は息を吸い、小さく首を傾げた。

 

「――――――それはそうと、なんでそんなに僕に対してキレてるんですか? 会話から始めようと思ってたんですけど」

 

 怒りのあまり、二刀を力任せに振りぬいた。

 

 

 

3966:二年主席転生者

めっちゃキレゲージ振り切れたんですけど、僕なにかしました!?

 

3967:ステゴロお嬢様

言いたくないけどそう言う所ですわよー!?

 

 

 

「アンタの、そういうところが……!」

 

 吹き飛ばしたあと、地面を削り滑るウィルを追って飛び出しながら、体を回す。

 二刀を地面と平行に揃えれば、刀同士が合一。

 刃渡りは倍に、刃幅は三倍の巨大刀になったそれをぶち込んむ。

 横一文字の大斬撃。

 赤の斬撃は体勢を立て直していたウィルへ放たれ、

 

「――――≪ルビー≫!」

 

「!」

 

 赤の魔法陣がそれを受け止める。

 斬撃は回転から放った都合、ウィルから見れば右斜め前から差し込まれていた。

 それに対し刀を握ったままに掲げた右手の先に展開された魔法陣。

 受け止めたのは一瞬だ。

 防御というよりも瞬間的な間を生んだだけ。

 その間の間に、魔法陣は斬撃よりも早くウィルを通過し、

 

『≪光彩流転(カレイドスコープ)≫―――≪花紅(グラニット)≫!』

 

 刀から大戦斧に、黒の戦装束から赤の鬼装に。

 武器と姿を変化させるのと大斬撃が受け止められた。

 

「天津院先輩の……!」

 

 言うまでもなく知っている。

 ウィルの固有魔法による能力、武装、姿の変身。

 天津院御影との絆の発露。

 それを初めて見せた時、アレスもまたその場に立ち会っていた。

 そうだ。

 ずっと、アレスはウィルの足跡を見ていた。

 だからこそ。

 

「俺は、アンタが……!」

 

「アンタが……って、僕がなんですか!?」

 

 少年が問いかけ、

 

「――――知るか!」

 

 少年は答えなかった。

 

「なら―――」

 

 そして。

 

「聞かせてもらいます……!」

 

 真っすぐに、彼は来た。

 

 

 

 

 ウィルは自らの力を振り絞った。

 二色の赤が激突し合い、衝撃の花を咲かせる。

 片や灼熱の戦斧であり、片や雷撃の大刀だ。

 灼熱が守り、雷撃が攻める。

 ウィルは向上した膂力によって、アレスは全身の加速器の補助によって大振りながら高速でぶつかり合う。

 

「っ……!」

 

 対峙するアレスの目元はバイザーで覆われていて見えない。

 分かるのは固く結ばれた口元だけ。

 今分かっていること、つまりはマキナを通してアルマから念話で送られたことは限られている。

 アレスが洗脳されたのか、或いはこれまでの鬱憤が爆発したのか―――或いは、元々裏切っていたのか。

 最後のそれは可能性としては存在しているが、元よりウィルは信じていない。

 分かっているのはただの事実と結果。

 そこに込められたものを、自分はまだ知りえてない。

 だから、

 

「知るために……!」

 

 燃え盛る力を振るう。

 動きを変える。

 防御主体から攻撃主体に。

 前に出る際、足裏で爆発を起こして加速。

 既に放たれていたアレスの斬撃に合わせ、

 

「爆ぜろ……!」

 

 力任せに押し込み気味に振りぬいた。

 想いを、心を、希望を咲かせるように。

 この赤は、それができる色だ。

 

「はっ……!」

 

 大刀が跳ね上げられ、しかしアレスは笑った。

 それでこそだと言わんばかりに。

 後ろに大きく後退しつつ、しかし体勢は崩さず、

 

「あぁ、それでいい! 俺は、アンタを斃さないと駄目なんだ……!」

 

 大刀を手を離した。

 

「!」

 

「オリンフォス式戦神術――――」

 

 新たに手にしたのは両腰にジョイントしていたフレーム。

 アレスが逆手で握れば、展開し小太刀サイズの二刀になる。

 抜刀と同時に、振りぬいた。

 

「―――十式・移ろい風息!」

 

 逆手抜刀から放たれたのは乱斬撃六閃。

 迫るそれに対しウィルはほとんど反射で動いた。

 

『≪サファイア≫――――≪光彩流転(カレイドスコープ)・フューリーズ≫!』

 

 右手を握ると同時に体を回しながら跳んだ。

 それを迎える様に青の魔法陣が展開、くぐり抜けて変身が完了する。

 青のコート姿、アンダーフレーム眼鏡、右目には青く浮かぶ十字架。

 さらに赤い大戦斧もまた青の二丁拳銃として姿を変える。

 かつてトリウィアと戦った時は魔法による武装形成だったが、≪極虹鍵ビフレスト≫の形状変化により実体を得ている。

 それを、回転と共に振った。

 アクロバットな側宙でアレスの乱斬撃にあった隙間に飛び込みつつ、二丁拳銃と両足で打撃。

 砕いた。

 着地し、

 

「――――!」

 

 迫るアレスの二刀斬撃を迎撃する。

 

「おぉ……!」

 

 逆手二刀の速度は高速の一言だ。

 もとより普段から雷魔法による移動と抜刀術による高速斬撃を得意としていたアレスだが、≪偽神兵装≫による補助もあり、その速度はさらに上がっていた。

 今のウィルを完全に上回っている。

 

「フッ―――」

 

 それでもウィルは焦らない。

 迎撃と同時に展開した水の衣を防御手段として増やし、超高速の動きを観察、理解、先読みすることで速度差を穴埋めしていく。

 もとより目は良く、この姿はそういった分析と対処に適した姿だ。

 深淵に沈みながら己のものとする叡智。

 即ち、

 

「愛しき祝福よ……!」

 

 数秒間に交わされた攻防は百に届いた。

 その全てをウィルは完全に捌き切り、

 

「アンタは……!」

 

「―――?」

 

 アレスは表情を歪める。

 何故かは分からない。

 だが疑問について考える暇はなかった。

 

第一(ファースト)開戦戦型(マーク・ボレアス)!』

 

 重装を纏う騎士が空へと飛びあがったからだ。

 

 

 

 

 

 

『≪ペリドット≫―――≪光彩流転(カレイドスコープ)・エアリアルプリズム≫!』

 

 薄緑の魔法陣を通り、また姿を変える。

 鳥人族のような黒い袖無しと臍出しの戦闘着。

 首元には風に吹かれて棚引く濃い黄色のマフラー、露出した腕や腹筋にはそれぞれに流線形の刺青がある。

 青かった右目は、やはり薄緑に。

 変身と同時に空に上がり、

 

「拙い……!」

 

 しかし、気持ちは穏やかではない。

 先ほど戦っていた闘技場の跡地はまだよかった。

 上空の戦いもまだいい。

 だが、この後またどこか学園内の別の場所に降り立ったら良くない。 

 現在の学園は人々の避難場所になっており、そんなところで戦うわけにはいかないのだ。

 地上で戦えるとしたら、人々の避難所になっていない場所。

 幸いと言うべきか、来るまでに確認した限りでは屋内や地下の空間が使われているようなので、場所がないわけではない。

 それでも今の自分とアレスがやりすぎれば余波でどんな被害が出るのか。

 彼は分かっているのかいないのか。

 

「分からない君ではないでしょう……!」

 

「っ……!」

 

 一瞬、その声は迷いを見せ、

 

「――――俺にはもう、関係ない……!」

 

 次の瞬間、その迷いは切り捨てられ、両肩の砲口が光を放つ。

 赤雷砲撃を避けるのは、今の姿なら容易い。

 だがそうすれば地上に着弾することもある。

 なら、

 

「速く、高く、強く……!」

 

 飛んだ。

 

 

 

 

 

 

「あれは――」

 

 学園に避難している誰かが、空を見上げて呟いた。

 薄緑の翼と黄色の尾を靡かせ、赤雷を砕いていく。

 彼らは少し前のマキナとアレスの戦いも見ていた。

 だが、上空で行われていたこと速度域、さらには一部目で追えたものもどちらも全身を覆う科装故に誰なのかは分からない。

 敵味方なのかも判断できず、怯えることしかできなかった。

 だが、

 

「―――生徒会長だ」

 

「ウィル・ストレイト……!」

 

 誰かがその名を呼び、空を見上げた。

 地上に向けられる光を砕き、学園全体を守っている彼の姿を。

 空において、緑は時に赤になり、青になりながら、落ちてくる赤雷の砲撃の全てをカバーする。

 

「おぉ……!」

 

 ある人は水の槍から守ってくれた少女を思い返した。

 ある人は劇場から逃がしてくれた少女を思い出した。

 ある人は絶望を燃やして夢に舞う少女を思い出した。

 誰もが知っている。

 彼女たちと彼の繋がりの深さ。

 もとより二年前に王都に彼が現れてから、その全系統保有ということで噂で持ち切りだったし、それ以降も話は終わらなかった。

 今年一年、街は彼の話で持ち切りだ。

 夏には聖国を救い、皇国の王女と婚約。

 秋には帝国の大貴族と友誼を結び、世界一の才女との婚約。

 冬には≪龍の都≫を守り、鳥人族代表とも婚約をした。

 栄光とロマンスに溢れ、学園での人望は言うまでもない。

 そのことを多くの人が知っている。

 だから、どんな状況なのか分からなくても信じれることがある。

 それは。

 

「彼が―――戦ってくれている」

 

 どうして? 

 そんなの簡単だ。

 

「僕たちを―――誰かを守るために……!」

 

 誰かが、或いは誰もが叫んだ瞬間に。

 赤が緑に追いつき、二つの色は大地へ落下した。

 

 

 

 

 落下した先は、学園にある時計塔の正面だった。

 開けた場所ではあるが故に、人影はない。

 だから止まらなかった。

 

「あぁ……そうだ! そうだよなぁ、アンタは!」

 

 ≪第二・進軍戦型≫と変化、一刀を握りしめながらもアレスは叫ぶ。

 

「なんのことですか!?」

 

 ウィルもまた、属性特化の姿ではない黒衣と虹刀を以て答えた。

 

「教えてください! どうして……どうして僕を憎むんですか!? 僕を苦手と思っていたのは知っています! なんなら嫌われているとも思っていました! だけど! だけどどうして!?」

 

 斬撃が高速で交わされ合う。

 アレスの一刀は正確にウィルの命を狙い、ウィルはアレスの動きを止めようと刀を振るう。

 属性変身をしていなくても、もはや技量は互角に近い。

 

「っ……!」

 

 その動きに、アレスは思わず歯噛みした。

 ちょっと前まで刀という武器での戦いなら、アレスが勝っていた。

 なのに、ほんの少しの時間ぶつかり合っただけでこれだ。

 己の動きを見取り、自分のものとする。

 ウィル・ストレイトにはそれができる。

 

「ぁ……のっ……!」

 

 喉から叫びが漏れそうになった。 

 胸の奥に溜めていた暗い感情。

 この一年ずっと蓋を閉じていた闇。

 言ってはいけないと、叫ぶにはあまりにもみっともないと思っていたものをなんとか抑え、

 

『――――言ってやると良い。お主はもはや、何も抑えなく良いのだからのぅ』

 

「―――どうしても何もあるか!」

 

 気づいた時には叫んでいた。

 

「アンタはそうだ! いつだって! どんな時だって! 何もかもを手に入れている!」

 

「何を―――」

 

「俺はずっと見て来たんだ!」

 

 握る刃には過剰な力がこもり、しかし≪偽神兵装≫がそれをアジャスト。

 最適な行動として、ウィルを殺害するために実行させる。

 身体はもう勝手に動き、故にアレスは全てを吐き出した。

 

「愛しい人と結ばれ!」

 

 春にアルマと。

 夏に御影と。

 秋にトリウィアと。

 冬にフォンと。

 

「敵とさえも、分かり合って!」

 

 バルマクとは奇妙にかみ合った会話をしたり。

 ディートハリスとは親戚として。

 シュークェとは彼の一族の恩人として。

 本来恋敵であるはずの彼らとも、最終的には良好な関係になっていた。

 

「多くの人がアンタを応援して!」

 

 学園の生徒も教師も。

 王都の人々も。

 ウィルを応援していたし、今まさに背中を押している。

 

「アンタはずっと―――光の中を歩んできた!」

 

「だから何だって言うんですか!」

 

「――――()()()()!」

 

 叫びは引き裂く様なものだった。

 言っていることが情けなさすぎるのに、体は止まらない。

 むしろ、赤雷は勢いを増していく。

 

「俺は違う! 俺は違う! 俺は……違うんだ! 誰も俺の背中なんて押してくれない!」

 

 世界に対する背反者の息子だから。

 それを自分は理解している。

 だから誰とも距離を取るようにした。

 

「俺のことを知れば、誰もが敵になる!」

 

 魔族に乗っ取られた英雄の息子だと知られたなら。

 ほんの少しだけ繋がりがある人にも、見放されるかもしれない。

 それが、ずっと怖かった。

 

「誰よりも、愛しい人とも―――彼女にも会えやしない……っ!

 

 ヴィーテフロア・アクシオス。

 ずっと離れていたけれど。

 幼い日々、彼女と過ごしたことは忘れていない。

 彼女と交わした約束を。

 彼女だけの騎士になるという誓いを。

 それはもう、果たされることはない。

 果たされてはいけないのだ。

 

『そうじゃのう。仕方ないのぅ。だったらどうするべきか今のお主には分かるじゃろう?』

 

「―――だからこの世界を、壊さないといけないんだ……!」

 

 自分は何を言っているのか。

 八つ当たりだ。

 あまりにも醜い嫉妬だ。

 ずっと心の奥底で淀んでいたものだ。

 それを今、止められない。

 

「だから……!」

 

 叫び、刀を振るう。

 刃が、稲妻が。

 アレス・オリンフォスの感情が、

 

「アンタのことがずっと嫌いだったんだ―――――!」

 

 ウィル・ストレイトへと到達した。

 

 

 

 

 

 

「――――!」

 

 ウィルがまず感じたのは、ぞっととするような冷たさだった。

 すぐにそれは熱になり、左鎖骨から右脇腹に刻まれた線から血が噴き出す。

 瞬間的な失血と呼吸の静止に、一瞬意識が遠くなりかけ、

 

「っ……ぁ……!」

 

 精神力で無理やり己の意識を繋ぎとめる。

 

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!」

 

「っ……はっ……はっ……!」

 

 荒い息は、自分だけでは無かった。

 思わず膝をついてしまった自分とは違い、アレスは両足で立っているが呼吸は乱れ、科装のあちこちからは蒸気が噴出している。

 王都での戦闘が始まって数時間分の疲労が、一気に襲い掛かって来た。

 激痛と倦怠感はこれまで感じたものの中で、最も強烈だ。

 今すぐにでも倒れたくなる。

 だけど、そんなことはできない。

 

「っ……それが……君の、本音ですか……?」

 

 やっと彼の言葉を聞けたから。

 

「あぁそうだ! アンタのことが大嫌いだ!」

 

 赤毛の少年は、これまで見たことのない様子だった。

 あまりにも荒々しく。

 あまりにも悲痛に。

 

「何もかも、俺が手に入れなかったものを持っている! アンタはずっと自由で、俺は運命に縛られて! 何も手に入れられなかった! なぁ、おい。分かるかよ、アンタには!」

 

 見つめても、彼の目は隠されて見えなかった。

 だけど。

 ウィルはまるで、彼が泣き叫んでいる子供のように見えた。

 

「何もない自分が……アンタが何もかも手にするのを見せつけられるのを! 打ちのめされた! 見せつけられた! 俺じゃあダメだって! 俺はアンタには絶対に届かないんだって! 俺には……俺には……彼女と会えないんだって! アンタがいる限り、俺はずっと負け犬なんだって」

 

「…………だから、僕を殺すんですか?」

 

「そうだ!」

 

 アレスは表情を歪め叫ぶ。

 

「――――」

 

 対して、ウィルは顔を落とし、ただ一度息を吸った。

 長く吐き出し、顔を上げ、

 

「それでも――――僕は君のことが好きですよ」

 

 首を小さく傾けて、笑いかけた。

 

「――――」

 

「君が僕のことを嫌いでも、僕が君のことを好きだということも、友人だと思っていることも、大切な後輩であることは何一つ変わりません」

 

 ふらつきながらも立ち上がる。

 止まるわけにはいかないから。

 

「だから、君を止めるよ―――()()()

 

「…………せん、ぱい」

 

「うん。僕は君の先輩だからね」

 

 彼の話は聞けた。

 悪意を以て吐き出されたものだとしても、彼の言葉であることは変わりない。

 だったら、今度は自分の番だ。

 我ながら悪い癖だとは思うけれど

 彼が止まれないのと同じように、自分だって止まれない。

 

「我がままだけどね」

 

 苦笑し、

 

「僕の幸福には、君もいて欲しいんだ。だから、うん。乱暴な言い方だけど……張り倒してでも、君を止めるよ」

 

「…………俺は、アンタを殺す」

 

「ダメだよ。殺させないし、殺されない」

 

「アンタの幸福に、俺はいない」

 

「それを決めるのは僕だから」

 

「アンタの近くにいたくないんだ」

 

「僕は君にいて欲しいんだ」

 

「俺がこんなことをしても?」

 

「マキナさんには後で謝りに行こう」

 

「あいつも嫌いだ」

 

「えーと……それは……悪い人じゃないよ?」

 

「鬱陶しいだろ」

 

「まぁそういう時があるかもだけど。頼りになるでしょ」

 

「……アンタには、もう沢山の人がいる」

 

「君も必要だ」

 

「俺に必要なのは、一人だけだ」

 

「なら、その人も一緒に」

 

「………………話し合おうとか最初に言ったが、聞く気ないだろ」

 

「話し合うなら、ここじゃなかったね」

 

 きっと。

 相応しい場所がある。

 それは御影やトリウィア、フォンにアルマ、パールやイザベラもいる場所で。

 彼が淹れてくれたお茶なんかを飲みながらがいい。

 

「だから今は、全部ぶつけて良い。僕は全部受け止めるよ」

 

 ウィルは笑って、右手を横に突き出し、

 

「――――あぁ、本当に。アンタのそういう所が大嫌いだ」

 

 アレスは吐き捨てながら、刀を軽く振って。

 二人は自らの力を行使する。

 

『アッセンブル―――――()()()()()()()()()()!』

 

 ウィルが右手を握りしめた瞬間、周囲に三枚の魔法陣が発生。

 赤、青、緑。

 三方向から彼を包み、光に包まれる。

 

『≪一意戦神(マルス・ディスティニー)≫――――――』

 

 アレスが自らの神の名を告げた瞬間、纏うフレームの全てが分離して周囲に展開。

 赤黒い稲妻で繋がり合い、雷光が迸った。

 そして。

 

『―――――≪トリニティダイヤ≫ッッ!』

 

『≪第三(サード)決戦戦型(マーク・テレフォテウス)≫――――!』

 

 ウィル・ストレイトとアレス・オリンフォスは、今の己における最高の姿を持って相対した。

 

「きっと、君のことが好きなのは僕だけじゃないよ」

 

 ウィルはこれまでとは違い白を纏っていた。

 握る刀は変わらず、戦闘装束だった黒の胴着の色違いだが、肩幕は腰に広がる短いマントとして移動。

 白の衣には所々に赤、青、緑の金属パーツが張り巡らされている。

 大きな違いは彼の背後だった。

 紋様剣だ。

 燃える炎のような。

 深い水の流れのような。

 羽ばたく翼のような。

 それらを模した三色三種の紋様剣が片翼のように左肩の後ろに広がっている。

 それまでの変身は単一属性の特化だった。

 これは違う。

 御影の炎、トリウィアの水、フォンの風。

 三つの姿、三つの属性を融合させた今の彼にとって最大最高。

 

「アンタは惚気ないと戦えないのか?」

 

 アレスはこれまでと同じ黒を纏っていた。

 変化は体に装着されたフレームの大半が外され、軽装になっていたこと。

 両手両足や関節部保護の最低限の装甲以外は体に張り付く様なアンダースーツであり、両腰には機械刀を佩いている。

 大きな違いは二つ。

 目元を覆っていたバイザーが外れ、赤い瞳が露わになっていたこと。 

 そして彼の背後二本三対、計六本のフレームが翼のように広がっていたことだ。

 赤雷の双翼。

 それぞれ左右三本同士の間には薄い光の膜が張られて、スパークを弾けさせていた。

 

「まだ、足りないくらいだけどね」

 

「……そう言う所も嫌いだ」

 

 やっと二人の視線が交わる。

 黒は真っすぐに見据え、赤はうんざりするように見返す。

 ウィルは苦笑し、刀を構えた。

 アレスは何も言わず、右刀の柄に手を添えた。

 

「それじゃあ」 

 

「あぁ?」

 

「もっと君のことを教えて欲しい」

 

「言ったら何か変わるのか?」

 

「君がすっきりするよ、多分」

 

「…………あぁもう、勝手な人だなアンタは」

 

「よく言われる」

 

「ちょっとは直す気になれ――――!」

 

 そうして。

 二人の少年は、己が全ての激突を開始した。

 




ウィル
君が嫌いでも僕は君のこと好きですよ

アレス
そういう所だぞほんと


GRADE2はウィルが多くのものを手に入れる物語でもありました。
同時に、アレスがそれを影から見せつけられている物語でもありました。

次回、W最強形態バトルです

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