超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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イーブン・ソウ・ディセプション

 

 

「パラスっ!」

 

 ヴィーテフロアは喉から血を流し倒れた騎士の名を叫び、しかし、彼女の下に駆け寄ることができなかった。

 

「っっ……!」

 

 ヘラの究極魔法に対する対処を行わなければ、自分も同じ目にあっていたからだ。

 先程までいたはずの王城の大広間、その全てが黒く塗り潰されている。

 自分とパラスの姿はしっかりと見えているが、前後左右足元さえも黒く、空間がどこまで広がっているかはわからない。

 ヴィーテフロアがわかっていたのは、ヘラの究極魔法。

 だが自分の知るものと違うのは、

 

「結界型……!?」

 

 ヘラの究極魔法は、指定とした対象の影に攻撃することで本体にもダメージを転写する対個人技だった。

 彼女のように過去の大戦で活躍した英雄たちの究極魔法は有名であり、ヘラと敵対するつもりだったヴィーテフロアも対抗策を考えてはいた。

 だが、今発動されたものは個人対象ではなく、空間に展開された結界型の魔法だった。

 ≪偽神兵装≫による強化と性質の拡張、と判断をしながらもヴィーテフロアは結界から身を守るのに必死だった。

 

「しかし、これは……っ」

 

 膝をついたままヴィーテフロアは、自身を囲むように三角錐の光が小さな結界として展開させていた。

 それによってヘラの究極魔法の影響を抑えているが、小結界は軋みを上げ、少しでも気を緩めば壊れてしまいそうだ。

 

「っ……≪偽神兵装≫と≪究極魔法≫の融合、ですかっ」

 

「何も不思議ではあるまい」

 

 真っ黒い世界の中、ヘラの黒い科装は闇に溶けているようだった。

 彼女は愉快そうに笑い、

 

「主が≪偽神兵装≫によって≪究極魔法≫の応用性を広げたのなら、妾とて同じことをしただけよ。対象を個人から空間にしたわけじゃな」

 

 言葉を続けた。

 

「切り札というものは、タイミングが肝要じゃ。ヴィーテフロア」

 

 今に至ってもなおヘラの言葉は、子供を諭す母親のような優しいものだった。

 

「城外の戦いで究極魔法を使うのはちと早かったな。≪偽神兵装≫との融合も、通常戦闘の手段として用いるのも良くはない。爆発力を持たないお主が妾に勝つには、あぁいった手札を効率的に切る必要があった」

 

 まぁ、と彼女は苦笑する。

 

「アレスと共闘してテンションが上がったとかそもそも自力が低すぎて温存できなかったというのもあったじゃろうしの。じゃが、戦力の逐次投入ならぬ逐次発動はどのアースにおいても愚策というものじゃ」

 

「くぅっ……! 正論すぎて言い返せないんですが……!」

 

「ようやってはいるが、やはり経験不足じゃの」

 

 わかっては、いるのだ。

 正直、城内に突入するとアルマに言った時はここまでしんどいとは思っていなかった。

 ヘラの経験値と≪偽神兵装≫、≪究極魔法≫を侮っていた。

 アルマからの魔力供給と≪一実恋愁(ウェヌス・リバース)≫があればどうにかなると思った。今この瞬間だって、その二つがなければヘラの影に抵抗できず呑まれていただろう。

 そもそも途中でパラスが乱入してきてくれなかったら、もう殺されていたかもしれない。いや、こうなることを見越してアルマには手心を加えるようにこっそり事前に頼んでいたし、城の外に運んでもらっていたりしたのだが。アルマ頼りが過ぎるか。それも仕方のない人ではある。

 そもそも城に突入するのは、それこそアルマやトリウィアに任せればよかっただろうか。

 だが、城外のゴーティアの外装と戦うにして、自分だったら火力不足であまり役に立たなかったとも思う。

 

「あぁっ……もう! 上手くいかないもんですね……!」

 

 一応、手札は残っているが、図星すぎて落ち込んでしまう。

 

「そんなもんじゃ。そもそも五年も自分の感情を押し殺していたのだから大したもんだとは思うがの。その忍耐力は褒めても良い」

 

「…………ちょっと、聞きたいことがあります」

 

「ふむ」

 

 ヘラが首を傾げた。

 

「まぁ良いが。お主の結界が保つ間だけじゃぞ?」

 

 自分で言い出してなんだが、良いのかと思った。

 ヘラの慢心、というよりも純粋な余裕なのだろう。

 

「ちょっと優しくしてくれると助かるんですけど? …………えぇと、実際私はちょっと勢いと調子に乗ってやらかしたかなって思います。そういう時、あなたはどうしてました?」

 

「お主……それ、敵に、それも今まさに死にかけている時に聞くことか?」

 

 フルフェイスの奥でヘラが半目になった気がした。

 

「いいじゃないですか」

 

「その胆力も褒め所に追加しておくか。……ふむ、そうさのぅ」

 

 ヘラは呆れながらも一息考え、

 

「別にそう珍しいことはせん。何が、どうして間違えたのかを精査し、それを訂正改善するだけじゃ。こればかりは普通じゃが、なるだけ感情を廃して客観的に自己を振り返るのが肝要じゃと妾は思うておる。まぁそれに関しては個人の適性にもよるが、妾やお主の場合は、やはり感情を抜いて合理的に考えたほうがよかろう」

 

「…………」

 

「なんじゃ」

 

 いえ、とヴィーテフロアはヘラから目線をそらした。

 

「言っていることを普通に受け入れてしまって、なんか気持ち悪いですね」

 

「お主が助言を求めたんじゃろがい!」

 

 それはそれ、これはこれだ。

 感情を配する、抜く、というよりは、まったく別物として扱う、というべきなのかもしれない。

 ヘラの言うことは正しい。

 だが、

 

「その振り返りをして、改善して、それでも足りない時はどうするんですか」

 

「二つじゃ」

 

 彼女は即答した。

 

「そもそも不可能だったと判断し、別の選択をする。あるいは、自分以外の誰かを頼る、じゃな。妾も大戦時代、どう考えても無理なことをゼウィスに無茶振りしまくって達成してもらって惚れ直したもんじゃ」

 

「いや、惚気聞かされても困るんで……」

 

 ドン引きをしつつ、ため息を吐き、

 

「なるほど、わかりました」

 

「冥土の土産にはなったかの?」

 

「いえ、私は今後アレスをからかいつつ、イチャラブしまくって、自分と彼の関係をテーマにした歌劇を主催する夢があってですね」

 

「お主、それでよく七主教の聖女なんて言われておったの……」

 

「周りが言い出したことですので。―――えぇ、ですので折角のアドバイスを実践させてもらいましょう」

 

 直後、ヘラの背後からパラスが斬撃を繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 ヘラは、パラスが起き上がっていたことには気づいていた。

 ≪カナートスの泉≫。

 まず自分の影を、対象に取った相手の影と同化。それによって自分だけではなく相手の影も媒介として拝借し、魔法の出力を上乗せ。相手の影を傷つけることで本体にそれを投影するという、それなりに複雑な手順を取った≪究極魔法≫だ。≪偽神兵装≫により結界として範囲を広げた故に、結界内を影で満たすことで自由自在かつノータイムで空間攻撃を可能としている。

 つまりは、自分の影を大きく広げたようなものだと、ヘラは思う。

 その結果、できることが増えたというだけの話。

 副次効果として、結界内では誰がどんな動きをしているのかを感知できる。

 だから、倒れたはずのパラスが音もなく立ち上がり、斬り掛かってきたのもわかっていた。

 

「ふむ」

 

 故に対応する。

 用いるのはそれまで使っていた影刃や影槍ではない。

 腰のドレス部分が伸び、刃渡り一メートル程度の鎌として形成。

 パラスの右剣による斬撃を迎撃した。

 

「っ……!?」

 

 ぶつかり合い、パラスの隻眼が驚きで見開かれる。

 

「驚くことはないぞ、騎士よ」

 

 それまでまともに打ち合えなかった剣聖の斬撃、それに拮抗出来た理由は当然≪究極魔法≫だ。

 

「結界の範囲をちょいと縮めての。その分の影を鎌として圧縮した。先ほどの影の武器とは強度は比べ物にならん」

 

「ちっ……!」

 

 パラスは悔しそうに左剣で無数の斬撃を放ってくるが、それもまた影鎌をもう一本追加。ヘラの知覚でも追い切るのは難しいので≪偽神兵装≫の演算機能によって自律稼働させることで対応する。

 ≪偽神兵装≫は魔法だけではなく科学との融合物なのでこういった応用も可能だった。

 ヘラとしては、≪カナートスの泉≫の範囲を縮めてやっと打ち合えるパラスの剣に恐れ入るというのが正直なところだが。

 そして、考えるのは、どうやって立ち上がったかという話。

 首を切断する、まではいかなくても、喉を穿ち、頚椎まで削って即死させたはずだった。

 答えは、知識の中にある。

 

「≪守節死義(ミネルヴァ・ロイヤリティ)≫―――己の精神力が尽きぬ限り傷を回復し続ける、だったか」

 

「否! 我が忠誠心だ!」

 

「違いがわからん」

 

 だが、能力としてはわかりやすい。

 パラスのヴィーテフロアに対する狂信は理解はできないが、強烈なのは間違いない。

 

「どぉれ」

 

 指を鳴らす。

 刹那、何の前触れもなくパラスの胴へと、賽の目状の切創が刻まれた。

 肉体をバラバラにしてやろうと思った≪カナートスの泉≫による攻撃だったのだが、ヘラが思うよりもダメージが少ない。

 もっとも、致命傷には変わりないのだが、

 

「痛くない痛くない痛くない! 姫様への忠義があればむしろ気持ち良い!」

 

「きっしょいのぉ」

 

 切創痕に明るい茶色の光が宿り、すぐに傷を塞いでしまう。

 

「めんどうじゃのー」

 

 思わず愚痴が溢れた。

 ≪偽神兵装≫はゴーティアが用意していたものをヘスティアが完成させたものだが、ヘラ自身も改良を手伝ってはいた。≪ディー・コンセンテンス≫の子らの能力も把握していたので、当然パラスの能力も知ってはいた。

 だが、単純な能力だからこそ実際に敵に回ると厄介極まる。

 やはり相性が良くない。

 ヴィーテフロアは放っておけば消耗して圧殺できるだろうから良いとして、この騎士を打倒するのは骨が折れる。

 そう思い、

 

「――――!?」

 

 横から、猛烈な勢いの拳が顔面に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

「なっ、にっ――――!?」

 

 衝撃が炸裂し、全身を打撃しながらヘラの体を吹き飛ばした。

 フルフェイスのヘルメットが破損し、破片が顔に傷を付ける。吹き飛ばしは十数メートル、結界の範囲内ギリギリで体制を立て直し、膝をつきながらヘラは驚愕に包まれていた。

 何が起きたのかは、結界探知が教えてくれてた。

 だが、理解が一瞬追いつかなかった。

 そして、見る。

 

「っ……なんじゃそれは……!」

 

 拳を振り抜いたヴィーテフロアの姿を。

 それは、変わっていた。

 乳白と黒紫、ツートンカラーの軽科装なのは変わらない。

 だが、全身の装甲が展開し、内部から露出されたクリアフレームと腰や肩から広がっていたベールからも乳白黒紫の粒子を放出していた。

 漆黒の世界で、2つの色が眩い光輝を放つ。

 ヴィーテフロアは全身にマーブルカラーを纏い、両の拳を胸の前で打ち合わせる。

 

「―――≪光と闇の境界(ツインカラー)其は混じり合い、重なり合うもの(フルリリース)≫」

 

 光と闇を纏う聖女はその名を口にした。

 

「最初と同じです。あなたが≪究極魔法≫を使うなら、私はあなたへとより特化させた≪究極魔法≫で対抗する。それが、この姿です」

 

「派手になった、だけではなさそうじゃの。微細に放出させた対消滅の波動を全身に纏っておるのか? 自傷ダメージとかないんかそれ」

 

「ありますよ?」

 

 ヴィーテフロアは肩をすくめ、

 

「ですが、それくらいなら≪一実恋愁(ウェヌス・リバース)≫で無効化できます」

 

「――――なるほど、の。加えて、その放出を制御すれば推進力代わりにもできるというわけか。考えたのぅ、速度の増減が激しくて感知が遅れたわい」

 

「さすがです、殿下……!」

 

「おほほ、そんなに褒められること―――ではありますね、えぇ。存分にどうぞ」

 

 万歳三唱し始めたパラスを、ヘラは無視した。

 

「はっ! 愚かじゃのう!」

 

 立ち上がり、ヘラは笑う。

 顔を軽く撫で血を拭いつつ、影を用い、顔に刺さった破片の除去と止血を同時に行った。

 それから整えた顔に浮かべたのは嘲りの笑みだ。

 

「逃したな、ヴィーテフロア! お主が妾を仕留める千載一遇の好機を!」

 

 先ほどの一撃は、十全に通った。

 だが、しかしその一撃ができたのはヘラの顔を少し傷つけるだけ。

 

「うるっさいですね。次は仕留めますよ。パラス」

 

「はっ」

 

「お主にはもう無理じゃよ……!」

 

 影の女に対し、聖女と騎士が並び相対する。

 ヘラはさらに頭部のベールから一対の影の鎌、両腕に影刃、腰の影鎌二本と合わせて合計六本を展開。

 パラスは両腕から力を抜いた自然体で双剣を握り、一歩前に出た。

 ヴィーテフロアは粒子を纏った拳を構え、

 

「決着をつけましょう、今度こそ」

 

 最後の攻防を開始した。

 

 

 

 

 

 

 ヘラは、前へと駆け出した。

 パラスは、依然変わらず脅威だ。

 影鎌四本を≪偽神兵装≫により自律迎撃させれば拮抗は可能だろう。実質的な不死を打倒するには、存在丸ごと影で飲み込んで消滅させる他ない。

 そうなると本来ならば圧倒できるヴィーテフロアが邪魔になる。自分の下位互換とはいえ、対消滅の波動はこれまで見た何種類の≪究極魔法≫の通り、応用性が高く、サポートに回られると面倒くさい。

 攻撃手段を影鎌と影刃に絞った分、攻撃の密度は濃くなるが、被弾の危険性は高まる。

 それでも、そうする必要があるとヘラは判断した。

 

「お主らは妾の全力で以て潰してくれる……!」

 

 パラスは相性が悪く、ヴィーテフロアもあの手のこの手で自分への対策を用意していた。

 それを改めて認識し、評価を改める。

 正直、ヴィーテフロアのことは舐めていた。

 能力的には自分の下位互換であり、経験は足りない。だが、頭は良い。ここに至って拳で挑んでくる度胸も認めて良い。

 ≪カナートスの泉≫による空間攻撃を、二人はそれぞれの方法で対抗を可能にしてもいるのも称賛に値する。

 そういうのはゼウィスたち男衆のノリのような気もするが、たまには悪くないだろう。

 思い、先んじて剣を振るおうとするパラスに到達する一瞬前。

 

「は?」

 

 ヘラの思考が止まった。

 パラスの背後のヴィーテフロア。

 彼女が、()()()()()()()()()()

 拳を構えていたのはなんだったのか。

 ≪偽神兵装≫は使用者の意図に応じてある程度武器が変形できるし、事前に用意しておけば大体の形成もできるとはいえ。

 いや、銃だけならまだよかった。

 使用者はほとんどいないし、≪二つ名≫持ち級で使っているのはそれこそトリウィア・フロネシスくらいだが、ヘラにとっては知らないわけではない。

 問題は、その銃の形状だった。

 

「――――なんじゃそりゃ」

 

 ()()()()()()()()()()

 ヘラをしてでも、これまで見たこともないもの。

 魔法を用いない火薬式の散弾銃は知っているが、無理やり銃身を六本束ねたものなんて見たことがないし、知識上の構造ではそんなことをしてまともに発砲できるはずもない。

 想定外の出現と想定外の形状に一瞬、思考が止まる。

 そもそも射線が完全に自分とパラスが被っている。

 仮にヴィーテフロアの切り札だとしても、撃てばパラスにも当たる。

 だが、

 

「ふふっ」

 

 ヴィーテフロアは、満面の笑みで浮かべ、

 

「いいでしょう、これ? アレスがよく行く店の店長が試作していた武器を真似たんです。えぇ、ストーカーとかではないですから」

 

 ぶっ放した。

 マーブルカラーの光、六つが影の世界を激震させる。

 

「おや、背中から圧が―――」

 

 それは曲線を描いてパラスを避け、

 

「貴様――――!!」

 

 ヘラへと直撃した。

 

 

 

 

 

 

「――――≪光と闇の境界(ツインカラー)其は六重の光となりて(ヘキサレイ)≫」

 

 ヴィーテフロアは銃の反動により一メートルほど下がった後、その名前を口にした。

 周囲、影の結界は急速に崩壊していく。

 パラスは足を止め、首をひねり、

 

「殿下。ひょっとして私は今、殿下に殺されかけましたか? いやまぁ私は死にませんが」

 

「気のせいですよ、私の騎士」

 

「なるほど」

 

 頷く彼女にニッコリと笑う。

 実際のところ、パラスごと吹き飛ばそうかとも思ったが、威力が減衰されそうだし、流石に酷いと思ってやめた。

 視線をずらす。

 その先にいるのは、

 

「痛覚とかあるんですか?」

 

 結界が消えたことにより、大広間の床に倒れるヘラだった。

 砲撃により胸から下が消滅しているが、血が流れているわけではない。

 ただ、ぼんやりとした瘴気が漂っている。

 

「…………なんじゃ、今のは」

 

 憮然とした表情のヘラは、質問には答えず、逆に問いを投げかけてきた。

 ヴィーテフロアは肩を竦め、応える。

 

「科装式の六連装散弾銃……ってことじゃないですよね。別に、武器の形状は何でも良かったんですよ。あなたがびっくりしてくれるのなら。この銃を選んだのは、形がどうかしてたのとかっこよかったからですね」

 

「…………………………最初の双剣も、妾の顔面にパンチ決めたのもブラフかえ」

 

「そうですね」

 

 頷き、ヴィーテフロアはため息を吐く。

 

「あなたは強い、私よりもずっと。だけど、私はずっと考えていました。あなたを倒すのにどうすればいいか。その結果がこれです。ま、ちょいちょいアドリブは有りましたけどね」

 

 実際のところ、八割ほどアドリブなのだがヴィーテフロアは適当に言っておいた。

 城外で≪究極魔法≫を使ったのは正直テンション。

 最初の攻防で思ったより追い詰められたり、ヘラの≪究極魔法≫が想像以上に強力だったのも焦った。

 パラスが来てくれなければ、やはり危なかっただろう。

 ヴィーテフロアが決めていたことは、たった一つだけ。

 

「あなたは私を舐めていました。油断、とは言いません。彼我の戦力差を考えれば当然です」

 

 だからこそ、

 

「あなたが本気で来てくれるその一瞬に、これまでとは違う手段で最大火力をぶち込む、ただそれだけに全てを賭けました」

 

 言って、もう一度肩を竦める。

 

「その最大火力……あ、それにあなたの≪究極魔法≫への対処はちょっと不安でしたけど、アルマさんによる魔力供給のおかげで解決できましたね。魔力使い放題、最高すぎます」

 

「なんというか……綱渡りにも程があるの」

 

 呆れながら言うヘラに、ヴィーテフロアも苦笑する。

 

「えぇ、自覚しています」

 

 けど、

 

「それくらいの賭けをしなければあなたには勝てませんし。あなたを倒したかったのは私のわがままなんで仕方ないでしょう」

 

「はんっ、満足したか?」

 

「えぇ、それはもう。六年分の恨みが晴れましたよ」

 

「ふん」

 

 徐々に体が崩壊していくヘラはつまらなさそうに鼻を鳴らす。

 

「無意味じゃよ、ヴィーテフロア。妾はゴーティアに取り込まれて一度死んだようなものじゃ。この体が滅んだとしても、時間さえあれば再構成できるじゃろうて」

 

「つまり、アレスやウィル先輩が勝てば良いだけという話ですね」

 

「――――カカッ、青いのぅ」

 

 ヘラは、笑った。

 その笑みに、どんな感情が込められているのか、ヴィーテフロアにはよくわからない。

 敵を憎むようでもあり、同時に、未だに娘を見守る母親のようでもあった。

 その内心を読み取るには、ヴィーテフロアはまだ若い。

 だから、頷いた。

 

「えぇ、私は若いですから。まだまだ未来があって成長します」

 

「そうか、好きにせい」

 

 言って、ヘラは苦笑した。

 崩壊はもう喉元まで及び、残すのは顔だけ。

 

「年じゃの。存外悔しくもない。むしろ、冗談みたいな賭けをしたお主を褒めてやりたいくらいだ」

 

「ではどうぞ。あと数秒で消えそうなんですから、褒めるならさっさとしてください」

 

 ヘラは、ヴィーテフロアにとっては鏡写し、あるいは自分の可能性の一つとも言える女は笑みを濃くした。

 

「お主、最高に性格が悪いのぅ」

 

 言って、彼女の全てが崩壊する。

 瘴気の残滓はあっけなく消え去った。

 しばしの間、ヴィーテフロアは何も無くなった空間を見つめ、

 

「はぁ」

 

 ため息を一つ。

 唇を尖らせた。

 反抗期の娘みたいに。

 

「どこかの誰かに似たんでしょ」

 

 

 

 

 




ヴィーテフロア
まぁ勝ったから良し!
出てきたバカのショットガンはいつかの脳髄記録でマキナが設計してたやつをパクったものですね。作中で一番バカっぽいのをチョイスしました。

ヘラ
最後までヴィーテフロアのことは嫌いでも憎んでもなかったし、娘だと思っていました。
勝手すぎる話ですけど、そこに嘘はなかった。

パラス
さらっと背中から撃たれかけたけど、たぶんそうなっても気にしなかった
怖いね☆



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  • ウィル
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  • トリウィア
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