超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
ゼウィスは正面から二人を迎え撃った。
低い姿勢で打ち出されたように彼らは迫り、抜刀する。
稲妻の速度を宿した動き。
雷属性の魔法、それも抜刀術を使う場合、用いられるのは電磁力を核とした魔法だ。
足元や後方の大気に磁力を付与し、その反発による高速移動。
抜刀においては鞘をレール代わりにして電磁力で射出し、高速斬撃。
基本的にはこの二つで、これ自体は他の属性系統でも大体可能だが、実践で運用しようとなれば相応の速度が求められるために実践は難しい。
今の自分達のように雷速を前提とした高速戦闘ならば尚更だ。
それを実行した二人の攻撃を、ゼウィスは受け流す。
悪くない動きだ、と思う。
というか、そういうことができて羨ましい。
ゼウィスが雷速を体現出来ているのは、『帯電』系統を何十年も突き詰めた結果、肉体を雷と同化させるにまで至ったからだ。
それによって単なる移動や攻撃速度だけではなく、全身の肉体を雷速可動できるようにもなった。
ただ、それは、
「できるのは超速く精密に動けるだけなんだよなぁ」
ぼやきつつ、ウィルとアレスの同時抜刀斬撃を弾き飛ばす。
「範囲技も気合で帯電量増やしてその余剰分を槍の動きに合わせてぶつけてるだけだしさぁ」
「いや、十分すぎますけどね!?」
「それで世界最強になったからおかしいんだよ!」
まぁそうなんだが。
褒められると照れてしまう。
弾かれたウィルとアレスはそのままゼウィスの前後に離れ、再度納刀し、突撃の構えを取る。
「よぅし、何回だって付き合ってやるぞぉ?」
笑いつつ言えば、彼らはすぐに来た。
全く同時に雷光が弾け、虹混じりの黄と真紅の稲妻が疾走する。
前後から挟み込めば片方の対応に隙ができる、と判断しているのなら甘い。
英雄の槍術はそんな条理が通じるものではない。
剣聖が前後左右上下、あらゆる方向に対し、常に最速、最善、最強の剣撃を放てるように、英雄もまた同じことができる。
パラス・パラディウムが二十歳程度で到達した領域に、自分は何十年も掛かったと思うと切ないが、アース111では二人しかいない神域の武芸だ。
ゆえに彼は笑みと共に挟撃を迎え撃ち、
「―――おっと?」
雷閃二撃が、英雄に到達した。
右肩と左脇腹。浅いが、初めてゼウィスの体から血が流れる。
「おいおい、何をしたんだよ」
笑みを濃くし、再度迫る彼らを迎え撃つ。
先ほどと同じように僅かに位置はズレているが、挟撃も、初速も同じ。
だから、今度は防御を意識しつ、二人が何をしたのかを確かめるために待ち構え、
「おっ」
到達直前。
斬撃範囲一歩手前で、二人の速度が急激に上昇し、抜刀が行われる。
「なるほどねぇ!」
刀と槍が、雷鳴と共に交差した。
「っ!」
漏れた声は、駆け抜けたアレスとウィル、どちらのものだったのか。おそらくどっちも。
再びゼウィスから血が流れている。
だが、右肩と左腕に先ほどよりもさらに浅い小さな傷だけ。
ウィルとアレスにも似たような度合いの軽症が増えていた。
「なるほどな」
頷き、
「電磁力による引力と斥力、それを使った超加速ってわけだ」
雷属性に用いられる電磁加速。
加えてお互いがSN極となり、接近の際は引き寄せ、離脱する時は弾かれあっている。
「やっぱいいなぁおい。磁力操作。それがあるとできることの幅が超増える。俺も何度夢見たことか」
しかし、とゼウィスは首を捻る。
「お互いが磁極になって加速するってなると、今のお前らの速度域だとだいぶ危なくねぇの? どうしてんだ」
「これです」
背後のウィルが声を上げ、振り返れば右手を掲げていた。
その甲に浮かぶ虹色の紋章。
それを見て、ゼウィスは子どもみたいに唇を尖らせる。
「≪
「そうは言われても。これは、僕がこの世界に生きている証ですからね」
「ふむ……ま、それもそうか」
ゼウィスは素直に頷き、納得もする。
ウィルの≪我ら、七つの音階を調べ合おう≫。
振り返れば何故か憮然とした顔のアレスが掲げた右手にも、ウィルと同じ紋章が浮かんでいる。
『調和』と『共鳴』の固有系統よる意識共有。
それを用いれば電磁加速による完璧な連携が可能となる。
「つまり、あれか?」
ゼウィスは笑った。
歯をむき出しにし、頬を釣り上げた、獰猛な笑みだ。
「俺を超えろとは言ったけどよ。よりもよって、マジで正面から、小細工抜きの刀で超えてくる気か?」
「勿論。今の僕とアレスなら、それが一番強い」
「……なんだこれ、気持ち悪すぎる。先輩がマジでそう言ってるのがわかってしまうんだが?」
「わはは」
三度、英雄は笑い、
「いいね。男だな、お前ら」
バチリと、全身からスパークが弾ける。
「だけどお前ら、あんま俺のテンション上げすぎんなよ? 勝てなくなっちゃうゾ」
ウィンクをし、初めてゼウィスの方から攻撃を開始した。
●
稲光が、中庭に迸った。
壁面や天井を覆う黒い管をも足場とし、空間を三次元的、縦横無尽に彼らは疾走する。
引力斥力による急加速と急停止、抜刀タイミングによる緩急とフェイント、それらを同時、あるいは時間差で行うことにより攻撃の密度を増していた。
ウィルとアレスの電磁加速はゼウィスの最高速を超え、しかし英雄は揺るがない。
彼がやることは変わらなかった。
全身の雷速駆動により、常に最善最高の行動を選択し、ウィルとアレスの電磁抜刀を捌き、受け流し、反撃し、時に先制を仕掛ける。
「わははは! いいねぇ! 楽しいなぁおい!」
英雄は笑っている。
豪快に、獰猛に、けれど、ウィルとアレスの全てを受け止めてやると言わんばかりに。
「――父さん」
高速化された思考の下でアレスは思う。
自分が憧れた英雄が此処にいる、と。
●
アレスは戦災後の生まれた孤児だった。
戦災によって荒廃し、復興が間に合っていないアクシオス王国のある街で生みの親に棄てられた。
一人だった頃のことを、アレスはあまり覚えていない。
ただ、いつだったか食べ物が手に入らない日々が続いて、飢え死に仕掛けていた時だったと思う。
『おい、そこのガキ、腹減ってるなら飯付き合えよ。一人で飯食うとつまんねぇからさ』
そんな乱暴なことを言って、アレスを食堂に連れて行って、お腹いっぱいご飯を食べさせてくれた。
そこからあれよあれよ気づいたら養子になっていたのだが、その時は彼が英雄だなんて知らなかった。
王都に移り、今でも週末は帰っている小さな家で暮らすようになった。
彼に戦い方を教わり、ヴィーテフロアと出会い、別れ、共和国で過ごし、父が死んだと聞き、学園に入学し、ウィルたちとも出会った。
そして、アレスにとっての苦難の日々が始まった。
「アレス!? ほんとは楽しかったって話してたよね!?」
「うるさいな! 人の心を読むな! 最悪だなこれ!」
「そんなこと言わないで! こういう仕様なんだよ! それに評判良いんだよこの能力!」
「いいか覚えておけ! 俺だけは! 何があっても! アンタを甘やかさない!」
意識共有の弊害が出ている。
雷速の攻防を繰り広げながらこんな会話をしているのもどうかと思った。
「楽しそうだな、アレス」
だがぶつかり合いながら、ゼウィスはそんなことを、彼も楽しそうに言う。
「っ……!」
そんな風に、昔は笑いかけてくれた。
「俺は……っ」
自分を育ててくれた父はゴーティアの擬態だった。
だが、アルマの話やゼウィス自身の話からすれば、彼が彼であったことには変わりない。
たとえそれが、自分がゼウィスに代わる依代を育てるためだとしても。
それでも。
「俺は、父さんに憧れていたんだ……!」
叫び、刀を抜き放つ。
自分の人生を変えてくれたから。
ヴィーテフロアと巡り合わせてくれたから。
英雄だったから。
息子は、父に憧れたのだ。
ゼウィスは苦笑気味に捌き、反撃してきた。それを回避し駆け抜ける。
卓越した槍捌き。
本当は、槍を使いたかった。だが、父は雷属性の魔法が色々使えるんだったらもっと色々試せと言ってくれて、電磁抜刀を初めて成立させた時は自分のことのように喜んでくれた。
だから、アレスは槍ではなく刀を握った。
「あぁ、知っているよ」
秒間、何十回も繰り返される交差の中、彼の言葉は静かだった。
「息子ってのは父親の背中を見て走るもんだ。ま、お前の親父は世界の敵だったけどな」
「だとしても……!」
アレスにとって、ゼウィスは父だった。
「だからこそ……!」
彼を世界の敵ではなく。
ただ、眼の前の超えるべき背中として弔うために。
「俺は父さんを超える……!」
●
アレスの猛りを、ウィルは感じている。
息子としての矜持。憧れた人を超えたいという願い。
自分はどうだろうかと、ウィルは考える。
ダンテを超えたいかと言われると、あまりそういうことを思ったことはない。
ウィルの父は剣術の基礎を教えてくれたが、戦闘においてあまり積極的ではなかった。
彼はいつも、ウィルを見守ってくれていた。
学園に入学すると決めた時も、一度里帰りした時も、ただ微笑み背中を押してくれた。
穏やかな人だった。
まぁ、かと思えば若い頃はモテすぎてて気まずい時が多いが。
ゼウィスとアレスとは関係のあり方が違う。
だから、今のウィルのモチベーションは別のものだ。
それは、
「――アルマさん」
ウィルにとって最愛の少女。
そして、一番近くにいるはずなのに、どこか遠くを見ている人。
自分は、アルマのことを何も分かっていないと思う。
アルマは自分と生きようとしてくれているけど、ウィルが知らない、知り得ない何かがある。
彼女が隠したいのなら、無理に暴こうとは思わない。
だが、
「ゴーティアはアルマさんの―――」
「そう。因縁の宿敵だぜ、色男」
ウィルの斬撃を受け止め、ゼウィスは笑う。
「≪天才≫とは数百年も決着つかず。今は正直ピンチだが、こうなるまでそれだけの時間が掛かった。そして俺みたいなのがあと七体いる」
「っ!」
「おっと、知らなかったか?」
【天才:ウィル、聞かなくて良い】
会話に割り込むようにアルマの念話が届いた。
だが、何かを言う前にゼウィスが言葉を続けた。
「ついでに言えば、その七体の上にまだ大ボスがいる。そいつを倒さない限り≪天才≫の戦いは終わらない」
刹那、空間に激震が走った。
ウィルもアレスもゼウィスも思わず足を止めてしまうほどの衝撃だ。
「怖い怖い。今ので羽化外装が五体分消し飛んだな。もうそろそろ半分行きそうだ。ま、これ以上は本人から聞けよ。あいつはお前には絶対言わないだろうけど、≪天才≫と生きたいと願うなら知っておくべきだ」
「えっと……ありがとうございます? ゴーティアでもあるあなたに、こんなことを言うのは複雑ですけど」
「ま、意識はゼウィス・オリンフォスのだからな。≪天才≫に対する敵愾心はゴーティア共通だけど、ダンテとベアトリスの息子の恋路を応援したいつーのは俺個人のパーソナリティってことだ」
「なるほど……では、改めてありがとうございます」
「いいっていいって。≪天才≫が死んでくれって思うの同じくらい、アレとラブコメできるお前には尊敬の念を覚える。あ、これはゴーティアとしてな」
「素敵な人ですよ」
心からウィルはそう言った。
「だからこそ」
アレスが息子として、父ゼウィスを越えようとするように。
「僕がアルマさんの隣に立つために。僕のわがままでゴーティア、あなたを倒します」
●
ままならねぇなぁ、とゼウィスは思った。
稲妻の交差は再開し、苛烈さを増していく。
一分にも満たないが、しかし交わされた斬撃は千にも届こうとしている。
互いに手傷を負い、終わりが近いことを感じる。
「ハッ」
どこかで、終わってほしくないと英雄は思った。
ウィルとアレスのことを、好きになってしまったから。
殺したくないと、変わらず思う。
だが、ゴーティアの再現体としての使命感が体を突き動かし、加減をさせてくれない。
さらには自分を倒そうとする方法が正面からの電磁加速連携ということでテンションも上がってしまう。
「ったくよぉ」
つくづく、ゴーティアを恨む。
後悔は、多い。
こんな形で、自分の次の世代を見たくはなかった。
こんな形で、息子やその友人と戦いたくはなかった。
ルキアのこともそうだ。
あれはいい女だった。
自分にずっと付き添ってくれた。
いい女過ぎて、自分のことを愛しすぎたがゆえに、世界の敵に回ってしまったことも申し訳ないと思う。
ゴーティアが悪い。
つまりは、自分が悪い。
ひどい話だ。
体を乗っ取られもしなかったら、もっと別の未来があったかもしれない。
いや、ゼウィスの前のゴーティアの依代は最上位魔族で、自分はそれと相打ったのでどっちにしろ死んでいた。
そうじゃなかったら、アレスと出会わなかったかもしれない。
けれど、もしかしたら。
ルキアがアレスを拾って、ダンテやベアトリスを通してウィルと幼馴染という可能性もなくはない。
そんなことを想像して、自嘲する。
ありえない。
マルチバースはあらゆる可能性を持つが起きた事実は変えられない。
ただ、そう、
「なぁ、アレス、ウィル」
彼らに聞いてほしい。
「俺は、ゼウィス・オリンフォスはな。笑って死んだんだぜ?」
魔族の親玉と相打ちとなり、自らの死を受け入れる瞬間、自分が笑っていたことを覚えている。
だって、
「俺には、未来を任せられる仲間がいたからな」
秘書だったルキア、あちこちでフラグを立てまくりながらも頼れる部下だったダンテ、国のため、人類のために国を飛び出したベアトリス、後のアクシア王国の国王、その息子でいつの間にか変装して仲間になっていたユリウス。
他にも、多くの戦友がいた。
多くの出会い、多くの喪失、多くの戦い。
走馬灯によって振り返った人生を踏まえて、彼は笑ったのだ。
結果的にゴーティアに蝕まれたのはともかくとして。
あの瞬間、ゼウィスは未来を信じた。
「だから、なぁおいお前ら! どうだよ!」
英雄は、槍を握る手に力を込める。
同時、雷光は勢いを増し、雷を纏う槍というより、槍の形をした稲妻となった。
唯一使える『帯電』、それを極限まで高め、収束しただけ。
「俺を超えなきゃ世界は滅ぶ! だがその時、俺は笑っていられるか……!?」
それを以てただ、突く。
ゼウィス・オリンフォス、究極の一。
ただそれだけの行為を以て、ゼウィス・オリンフォスは英雄と、世界最強と言われたのだ。
「オリンフォス式戦神術・一式―――≪至高なる雷霆≫……!」
世界を稲妻が貫いていく。
かつて相打った最上位魔族。それはル・トやエウリディーチェ、テュポーンのような神性の生き残りだった。
その上位存在を撃ち抜いた、ただの雷撃刺突。
だがそれは、この世界の何より速く、鋭く、凄まじい。
「アレス!」
「先輩!」
対し、ウィルとアレスは既に立ち向かう準備を終えていた。
ゼウィスの正面にて、鏡写しでの抜刀体勢。
『嘶く雷鳴! 輝く雷光!』
黄と赤のスパークが、虹色に束ねられ二つの鞘に集い、
『
電磁加速。
抜刀射出。
『≪双璧雷霆・十文字≫―――――!』
ウィルは縦に、アレスは横に放つ雷光斬撃は名の通りに十字となり、
「―――――!!」
二つの雷霆が、激突した。
●
「っ……!」
激突の際に生じた衝撃と雷撃は、中庭の全てを蹂躙する。
地面は砕け、壁は崩れ、黒い血管が焼き焦がされる。
全身全霊で放った≪共鳴魔法≫は、その威力ゆえにウィルとアレスの視界を潰し、復帰するまで数秒を有し、
「やるねぇ。だが、まだだぜ?」
「!!」
目前、英雄が到達していた。
彼も、無事ではなかった。
槍は持っていなかった。
片腕を失っており、全身も焼け焦げている。
それでも、彼は止まらなかった。
「お、らっ!」
「がっ!?」
乱雑な、しかし雷光を纏う蹴りがウィルを吹き飛ばす。
壁面に亀裂を入れながらめり込んだウィルには、もう立ち上がる力すらなかった。
「これで終わりかぁ!?」
続けて振るわれた隻腕の拳に、アレスの防御は間に合った。
納刀状態の刀を拳に、合わせ、
「っ……!?」
科装の鞘が砕かれる。
刀身は無事だったが、鞘を使って加速する電磁抜刀はもう使えない。
アレスの体勢も大きく崩れた。
それを見て、ゼウィスは吠えた。
「どうなんだ!?」
●
ゼウィスは泣きそうになった。
ウィルはもう動けない。
アレスの反撃は間に合わない。
これで終わりだ。
二人を殺したら、次は外にいるアルマたち。
馬鹿野郎、と彼はアルマに対して思った。
彼女は、マルチバースに対して気を使いすぎる。
その気になれば、星ごと己を消滅させられるのに、世界を気遣ってそうしない。そんなことをすれば生じるエネルギーが他のアースにも悪影響を与えると知っているから。
だから、アルマは手段を選ぶ。
マルチバースに、アース一つ一つになるべく影響を及ぼさないように。
それによって余計な手間や戦い、自らに我慢を強いられるとしても、そうしてしまう。
自分の下にウィルやアレスを送ったのも、彼らの思いを汲んだからだろう。
だが、それも無意味になった。
ゼウィス自身、ここまで大きな損傷を負ったが、それは羽化外装の一つでも取り込めば修復できる。
だがその時に再構成されるのがゼウィスの意識を持っているかはわからない。
だから、これで終わってしまう。
全部アルマがやっておけば、違う結果になった。
ただ、敵として戦い、敵として決着を付けられた。
息子を、この手で殺すこともなかった。
それは、嫌だ。
勝手だが、ゼウィスとアルマは面識はないし、ゴーティアとしては不倶戴天なので好き勝手思わせてもらう。
年の差考えないショタコンロリババアが。
「くそったれ……!」
吐き捨てつつ、振りかぶった拳を強く握る。
あとは稲妻を纏えば即座に打ち出し、アレスを殺せるだろう。
躊躇うことはできず、体は勝手に動いて。
「――あ?」
カチン、と。その音を聞いた。
そして、見た。
体制を崩しながらも握られているアレスの刀。
それが、鞘に収まっているのを。
アレスの鞘はさっき砕いた。
だから、それは、
「ウィルの鞘か……!?」
視線をズラせば、壁にめり込みながらもウィルは手を掲げていた。
ウィルの意思に従い、自ら飛翔し、姿を変える≪極虹鍵ビフレスト≫。
今は、アレスとの絆を下に抜刀術のための刀となっていた。
だから、その鞘は主の願う通りに、アレスの下へと届いていたのだ。
「頑張れ、兄弟」
「ありがとう…………兄弟」
彼らは言葉を交わし、
「――――!」
抜刀が敢行された。
この戦いで、何度も何度も繰り返された行為。
アレス・オリンフォスが突き詰め、ウィル・ストレイトに背中を押された究極の一。
「さようなら、父さん」
赤、黄、虹、三色混ざった斬撃は確かにゼウィスを両断する。
そして英雄は、父親は、己の敗北を受け入れて、
「良くやったぜ! 俺の息子ッ!」
その最後、安らかに笑っていた。
ウィル
アルマと幸福になるために
アレス
父を弔うために
ゼウィス
最高だったぜ
次回、GRADE2最終話です
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トリシラ
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アレス
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バルマク
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ディートハリス