超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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GRADE 3 Boy open Heart
アフター・ウォー


 

 空に浮かぶ巨大な建造物がある。

 よく晴れた青空の中に静止した巨影は、全長三.五キロ、横幅三百メートル、高さ百メートルほどの長方形の街だった。

 一つの街が、船の形をして浮かんでいるのだ。

 飛行都市()艦『地獄府』。

 その表層部の高級旅館街の、さらに最も高級旅館『すすびかり』。

 広く明るい、木造の空間の受付に立つ若い女将はコンソールを操作し、フロアの奥から歩いてくる集団を視界に収める。

 総勢十八人が共にゆっくりと歩みを進み、

 

『ーーーーー』

 

 壮大な音楽がどこからともなく流れ、背中を押していた。

 彼らは揃いの浴衣を着ているが、その様子は多種多様だった。

 十代の少年もいれば背の低い少女に筋骨隆々の初老の男もいるし、浴衣の着こなしにしても普通に着ている者も胸元を大きくはだけさせた銀髪褐色の少女や浴衣の上から可愛らしいカーディガンを羽織り、ハイネックのインナー、猫耳のようなヘッドホンで着飾っている少女もいる。

 他の宿泊客も思わず目を向けてしまっている。

 統一性のない彼らは、しかし並んでフロアを横切っていき、

 

「ちょっと、そこの君」

 

 ひと際目立つ、銀髪と赤い目の少女が若女将に声を掛けた。

 

「はい、お客様」

 

 相手は子供と言って良い見た目だが、雰囲気は妙に落ち着いているし、十八人分の宿泊費を支払ったのは彼女だった。

 何より、この()艦で最も高く、一泊だけで一般的な会社員の年収に匹敵するだけの金額を要求する宿の女将として、彼女は客に失礼な態度を取ることは有り得なかった。

 

「いかがされましたでしょうか。なにかご要望があれば、如何様にもお応えさせていただきたいと思います」

 

「いや、ただ聞きたいことがあるんだが……」

 

 少女は細い人差し指で、天井を指差した。

 

「この音楽、僕らが来てから急に流れ出したけど、何かな? あんまり宿の雰囲気に似合っているようには思えないが」

 

「えぇ、はい。ーーーー皆様がこう、今から世界を救いに行くかのような雰囲気を漂わせていたので。盛り上がるかと思いまして勝手ながらBGMを流させていただきました」

 

 一礼と共に応え、顔を上げれば少女に半目を向けられていた。

 

「……まぁいいや。見ての通り、みんなで出かけてくる。夕食時には戻って来るから、そっちは頼むよ」

 

「かしこまりまいた。どうか、ごゆるりと休暇をお楽しみくださいませ」

 

「ありがとう」

 

 彼女は歩き出し、しかし数歩で振り返って笑った。

 

「それと、世界を救いに行くんじゃなくて、もう救った後さ。ーーーーこれは、そのための休暇でね」

 

 

 

 

 

 

「んっーーーー! 最っ高! 温泉が魂に染みるっ!」

 

 全身を包む湯の温かさに、ロータス・ストラスフィアは歓喜の声を上げた。

 石造りの露天風呂だった。

 四方五メートルほどの湯船には白濁した湯に満ちており、温泉独特の香りが鼻に届く。

 

「あぁ……良い……」

 

 体中が溶けていくような感覚に、ロータスは呆けた声を上げ、

 

「わかります……わかりますわ……! 温泉……! 素晴らしい……! 元日本人ならば、どれだけ時を経ても魂が忘れぬもの……!」

 

 その隣で、赤い髪を手ぬぐいで纏めた少女が噛みしめるように同意した。

 アメジスト色の瞳を持つ彼女、マリエル・デュ・アルトーネ(ステゴロお嬢様)

 さらに、

 

「いやぁ実際たまらんでありますなぁ。自分も最近は家族で旅行、というのも中々行けてないでありました」

 

「御主人様が湯船をこよなく愛するのは知っていましたが、なるほど。皆様にとっては故郷の行楽地だったというわけですね」

 

「実に良い。皇国にも温泉はあるが、王国にはなかったから久しぶりだ。まさか別の世界で楽しめるとは思っていなかった。……まぁこの世界の飲酒可能年齢が二十歳というのだけ、頂けないが」

 

 茶、金の女と銀の少女が同じ様に湯を噛み締めた。

 新島巴(冒険者公務員)

 アルカ(自動人形嫁)

 そして、天津院御影。

 彼女たちは、揃って温泉を堪能していた。

 御影はふと、虚空に視線を向けて口端を釣り上げる。

 

【鬼姫様:打ち上げの休暇にしてもスケールがデカイ。ーーー流石()()()だ】

 

 

 

 

 

 

「ま、実際アース111を救って、ゴーティアも倒したわけだからね。これくらいの特典があって良いという話さ」

 

 念話(DM)での呼称を強調するような御影の言葉に、アルマは苦笑しつつ言葉を返す。

 黒のビキニに、腰には赤のパレオを巻いた姿。

 彼女は御影たちとはまた別の施設、屋外の温泉プールにいた。

 広く浅い円形のプールにはアルマたち以外の客、家族連れや恋人、友人同士といった様々な人たちが遊んでいる。

 アルマはプールサイドに置かれたビーチチェアでくつろぎつつ、正面のプールに目を向ければ

 

「にゃははは! 猫だからって温泉嫌いと思われたら大間違いにゃー!」

 

「あはははは! 鳥だって水浴びは大好きさ!」

 

 ラッシュガードで全身を覆う天音ナギサ(アイドル無双覇者)に黒と白でアシンメトリーの色合いのビキニ水着で、普段とは違い髪を下ろしたフォンが、結構な量の水を徒手空拳の空振りと共に打ち出し合っていた。

 

「美味しい……謎に美味しすぎますねこれ……! なんとなく王国のお祖父様料理に似てますし! なんかこの焼きそばとかやたらチープなのに妙に美味しく感じますし! 雰囲気補正というやつでしょうか!」

 

 アルマの隣では、近くの売店で買ってきた焼きそばに大量のマヨネーズをかけたものをヴィーテフロアがはしゃいでいる。

 彼女の方は紺色のシンプルなーーーアース・ゼロではスクール水着と呼ばれているものを着て、金色の挑発をおさげにしてまとめている。

 そんなヴィーテフロアを微笑ましく思いつつ、アルマは再び念話へと意識を向けた。

 

【天才:ゴーティアとの戦いから三ヶ月、王都の問題も一段楽したんだし。御影もヴィーテも……というか、僕たち全員ずっと忙しかったからねぇ】

 

 

 

⚫︎

 

 

 

【鬼姫様:まったくだ。あのオクタヴィアス事変の後始末、大変というには大変すぎた】

 

 久方ぶりの温泉を味わいつつ、マリエルはアルマと御影の会話を聞いていた。

 三ヶ月前、マリエルたちが掲示板越しで見ていたあの戦いは『オクタヴィアス事変』と呼ばれているらしい。

 ヘラことルキア・オクタヴィアスの反乱という話らしいが、ウィルたちも色々忙しかったらしく掲示板に顔を出す頻度も落ちていた。

 マリエルもマリエルで、自分の世界は先輩の卒業式があったり、隣国のお嬢様学校と『令嬢一武道会』なんかをして、級友たちを鍛えたり、自分も超必殺技を編み出したりするなど、自分のことに集中していたりもした。

 

【鬼姫様:うちを含めて各国の王族がずっと自国を開けるわけにもいかんから、現地の指揮として私やトリィ、フォンなんかも任されたし、アレスやヴィーテは事情聴取やら裁判やらで拘束されたし。アルマだって、あの時やりたい放題やってたから、何者だっていう追求も多かったしな】

 

【天才:ま、そういうのは慣れたものだ。僕としてはヴィーテやアレスの扱いがどうなるか不安だったが、無事に落ち着いたようで何よりだよ】

 

【病ん姫:なんだかんだといい感じに落ち着きました、えぇ。そういうことにしておいてくださいだって今日はバカンスですから……!】

 

「確かに休暇中に仕事のやらかしの話をすると落ち着くでありますな。自分も去年の家族旅行先で、自分を庇って死んだ先輩の妹さんと遭遇して、かなり修羅場ったでありますよ、ガハハ」

 

「巴様? それは笑って良いのでしょうか?」

 

 絶対に笑って良いことではないと思うのだが、巴は笑っているのでスルーをしておく。

 この公務員、ちょいちょい倫理観がおかしいというのをマリエルは気づいていた。

 

「ヴィーテさんの気持ちがわかるのも確かですわね」

 

 なので、念話に参加し、

 

【ステゴロお嬢様:大変だった話は置いておいて、これだけの大人数で休暇も景気の良い話ですわね、実際】

 

【天才:いや、休暇を取るって言ったら君たちも参加したいってそれぞれ喚いたんだろ。……まぁ、一回くらいみんなで集まるのも良いと思っていたから、連れてきたけどさ】

 

【冒険者公務員:そのノリでさっきみたいな豪華な宿取れるだけ、流石でありますなぁ】

 

【天才:僕、資金ほぼ無限だし】

 

【冒険者公務員:う、羨ましい……!】

 

【天才:世界に影響を及ぼさない範囲で、他の世界から珍しい物質とかを持ち込んで換金したり、技術特許取ったりとかいくらでもできるからね。このアース291は他のアースと比べて平和だから、こういう休暇にも使ったりするんだよね。≪ネクサス≫とかのバカンスにも】

 

【妹勇者ちゃん:あれ、私は知らないんですが……?】

 

【天才:君が参加する前の話だからね。ハブられたわけじゃないから安心したまえ。そういう話が無いのは艦長の甲斐性の無さだよ】

 

【妹勇者ちゃん:あぁ…………いえ! 艦長は良い人だと思いますが!】

 

【鬼姫様:わはは、その物言いは掘り下げるとボロが出るやつだな。なにはともあれ、アルマは私たちと休暇を過ごしたかったという話だ。そうだろう? 勿論、私達もそうだ】

 

【天才:……………………まぁ、それでいいよ】

 

「つっよいですわね……」

 

「流石でありますなぁ」

 

 からからと笑う御影に、マリエルは巴と共に視線を注いだ。

 このアース291には亜人や異形種がいないということで、アルマの魔法で角を隠している彼女は、しかしその在り方に陰りは無い。

 あのアルマに対して精神的優位に立てるのはマルチバース広しといえど、彼女くらいだろう。

 

「……おっぱいも凄いですわねぇ」

 

「マリエル様、何故私を見るのでしょうか」

 

「自分も乳は自慢だったんでありますがなー」

 

 アルカも巴の胸は豊満だし、自分だって普段はさらしで抑えているが大きさには自信があった。

 が、御影のそれは今回の休暇勢でもダントツだ。

 流石鬼姫様、と思わざるを得なかった。

 そんな彼女に対し、ロータスは自分の胸元に視線を落とし、

 

「……………………急に場違いな気がしてきました」

 

「はははは! 何言ってるんだロータス、女の価値は胸じゃないぞ? ん? それにお前は形がとても綺麗だしな。中々唆る」

 

「うわっ! あ、ありがとうございます御影さ……え? 唆る? はい?」

 

「そこはお義姉様と呼んでくれてもいいぞ? ん?」

 

「あー……それは……どうなんですかね? ほら、私のほうが年上ですし……兄のお嫁さんが年下の場合はなんと呼べば……?」

 

「だったら御影、と呼び捨てくれ。なんだったら私が敬語になりましょうか?」

 

「い、いえ。あなた相手だとそれもなんか変な気が……」

 

「おほほ……あの勇者さんがウィルさんの妹さんというには驚き通り越して私達も発狂しましたが、冷静になるとここの絡みもいいものですわね……」

 

「ぐへへ……ひとまずは兄妹仲良くできてるようで何よりでありますな……」

 

「お二人方、お優しいことを言っていますが、そんなだらしない笑みでよろしいのでしょうか」

 

 基本的にマリエルはウィル達全員箱推しなので良しとする。

 

「っと、箱といえば……男性陣が会話に参加してきませんわね。それに、こういう話ならトリウィアさんが上手く説明してくれそうですけど」

 

【鳥ちゃん:トリィなら、喫煙所に行ったよ。なんかすっごい遠いところにあるらしいし】

 

「………………禁煙ブームはどこの世界にもあるんでありますなぁ」

 

【悪魔先輩:ほんとにめちゃくちゃ遠くてちょっとキレてます。なんでプールの中に喫煙所置いてないんですか】

 

【天才:そりゃあプールでタバコ吸う人なんていないし……】

 

【泥の子:ちなみに男性陣は今サウナで耐久してるよ。僕は体質的に暑さ耐性あるから参加してないけど】

 

【暗殺王:マキナ、ソウジ、景、クロノはもう伸びておって、今はウィルとアレスが一騎打ちをしておるな。余はサウナ暗殺経験済みなので二人のジャッジをしておる】

 

【Every Girls:サウナ暗殺……?】

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ふぅ……アレス……もうそろそろ……限界なんじゃ、ない、かな……?」

 

「なにを……っ……言って……あんたにだけは……もう負けないぞ俺は……!」

 

 

 




というわけでグレード3開幕です。


何とは言いませんが
御影>アルカ・巴≧マリエル>ロータス>ナギサ≧フォン≧トリウィア≧ヴィーテ>アルマ


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