超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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スモーク・アンド・グラフティ

 

「喫煙所が、遠い……!」

 

 トリウィアは早足で歩きながら、怨嗟の声を吐き出した。

 飛行旅艦の甲板上は、それ自体が一つの街になっていて、巨大な物体が空を飛んでいるとは思えない。

 今、彼女が歩いている道も木造ながら五階前後の大きな建物の合間にある路地だった。

 別のアース、別の文化、別の技術なんてものはトリウィアにとってごちそうのようなものだが、しかし今はとにかく喫煙所にたどり着くのが最優先だった。

 

「なんで分煙なんかしてるんですかね……!」

 

【天才:ある程度医療と科学が発達して、さらに平和だったら嫌煙思想は進むもんだよ。単純に、健康に害を及ぼすからね】

 

【悪魔先輩:そんなもの、お酒だって同じ……いや、どんな食べ物飲み物だってそうでしょう……!】

 

【鬼姫様:いや、酒はどんな病にも聞く無量大数薬の長と言われていてな……】

 

【冒険者公務員:百薬の長じゃないでありますか……?】

 

【鬼姫様:皇国では無量大数薬だが……?】

 

【鳥ちゃん:そもそも鬼種の飲酒量、当てになんないよ】

 

【病ン姫:マヨネーズはセーフですよね?】

 

【アイドル無双覇者:にゃはははは! ――――アウトに決まってるんだにゃ!】

 

「えーい! おのれ、マルチバース……!」

 

 念話で気を紛らわせながらも、路地裏に入る。

 温水プール施設で聞いた話では、屋外の喫煙所はこの広い旅艦でも数えるほどしか無く、それぞれの宿にあったりなかったりする程度らしい。さらにはそのどれもが主要な施設から遠く配置されている。

 そもそも喫煙者自体もほとんどいないという話。

 

【悪魔先輩:喫煙者が少ないのもこのアースの特徴だったりするんですか……?】

 

【ステゴロお嬢様:まさかそんなアースの特徴なんて……】

 

【天才:いや、わりとそれもあるよ】

 

【EveryGirls:まじで!?】

 

【天才:気づいてると思うけど、この世界の建物ってほとんど木造だろ? 材質、なにかわかる?】

 

【悪魔先輩:全部竹でしょう?】

 

 アルマの問いに対し、トリウィアは足を止めずに即答する。

 それくらいはこのアースに足を踏み入れた時点で気づいていた。

 アース111でも、天津皇国や亜人連合の一部でも自生している植物。トリウィアの生まれたヴィンター帝国では見ることのないものだが、数度見たことはあった。

 

【妹勇者ちゃん:竹って……あの竹ですか? パンダが食べる?】

 

【鬼姫様:うちの国でも良く使われてるし、建物の材料として植林もしているな。まぁ管理を怠ると一瞬で広がってえらいことになるんだが。……だが、全部? 種類まではわからんが普通の木材もないか?】

 

【天才:それがこの世界のおもしろいところで、このアース814で一番栄えた生命体は竹だったりするんだよね。竹っていったら生命力が強くて、御影の言う通り竹害なんかも生まれたりするんだけど、ここの竹は、成長する過程でほぼあらゆる物質を栄養素に出来たりするんだ】

 

「ほう……?」

 

 その解説に、トリウィアの知識欲が疼いた。

 

【天才:そもそもあらゆるところに植生しているから、古代から人類は竹を使っていったんだよね。で、言ったようにあらゆる物質を栄養として取り込んで、その性質も再現するんだけど、その中で一番便利だったのが蓄電性を持つ種類」

 

【悪魔先輩:蓄電性、雷属性……とは違うんでしたね?】

 

 アース111における七属性の一つ、誘導、帯電、落下、発電 電熱の雷属性。

 トリウィアはその内、誘導以外の四系統を保有し、御影やフォンもサブで持っている。

 もっと言えば、

 

【病ン姫:うちのアレス………………うちの! えぇ! うちのアレスが雷属性メインですね】

 

【天才:うちのをそんなに強調するんじゃないよ。間違いじゃないけどアース111だと高速機動や攻撃に使われることが多いね】

 

【悪魔先輩:それこそゼウィス・オリンフォスがそういった使い方をしていたので大戦後の雷属性はそういう使い方が主流になったということがあります。ですが、このアースではそうじゃないんですね】

 

【天才:うむ。というか、魔法や特別なリソースが無い限り、電気というのは人類に大きく貢献するものだ】

 

【冒険者公務員:電気のない生活とか考えられないでありますしなぁ】

 

【スデゴロお嬢様:転生してみると慣れますけどね】

 

【天才:ともあれ、この世界は電力、電磁力の技術発展が速くて、僕らが今いる空を飛ぶ船みたいなのが出来ているわけだ。そこそこSF世界……というより独自発展した近未来って感じの世界だね。ちなみにこの場合、転生者が一番多いアースゼロの2000年代前後を基準とした近未来ってことね】

 

 一拍、アルマは置いて、

 

【天才:まぁ細かい話は置いておいて、物を燃やすって方向性にならず、万能竹でなんでもやってきたから煙草みたいに燃やした嗜好品ってのがあんまり普及しなかったわけだ。ないわけじゃないけど。性質はどうあれ、何でもかんでも竹でできてる観念的に火を忌避する文化ってこと】

 

【悪魔先輩:なるほど……?】

 

 文化の基盤が違いすぎて、正直理解が難しい。

 周囲にあるもののが植物だから火を使わない、というのはわからなくもない。

 少し、そういう世界を思案し、

 

【悪魔先輩:例えば鉱物の性質を取り込んでも可燃性は残るんですか?】

 

【天才:いや、ちゃんと消えるよ】

 

【悪魔先輩:それでは嗜好品として火を使うことを忌避する理由にならないのでは……?】

 

【鬼姫様:確かに。というか竹炭とか便利だしな】

 

【悪魔先輩:そもそもあらゆる物質を再現できるなら、結果的にそれははもう竹と言っていいんです? 電気技術とやらが発展しやすいのはわかりますが】

 

【天才:バレたか】

 

【悪魔先輩:アルマさん……!】

 

【スデゴロお嬢様:おハーブ生えますわ】

 

【アイドル無双覇者:普通にはえーって聞いてたけど、言われてみればそうだにゃー】

 

【冒険者公務員:確かにほぼ鉄の竹ってもうそれ鉄でありますしなぁ】

 

【鳥ちゃん:アルマにしては珍しいね、そういうひっかけ】

 

【悪魔先輩:苦しんでいる私をさらに追い詰めるとは……!】

 

【天才:まぁいいじゃん。気になるならまた後で詳しく話すよ。それより、そろそろ喫煙所も近いんじゃない?】

 

【悪魔先輩:……】

 

 言われ、足を止める。

 トリウィアの視界の先にあるのは路地裏の突き当りにひっそりと置かれた喫煙所。

 

【悪魔先輩:……なるほど。ありがとうございます、かなり気が紛れました】

 

【天才:いいさ。……というか、今更すぎるけど君、煙草の量控えたほうが良いんじゃない? 健康に悪いし、その感じだとだいぶ依存症でしょ】

 

【悪魔先輩:いえ、私は浄化系統で煙草の有害成分はすべて浄化して健康被害が出ないようにしたり、風属性で匂いが回りに行かないようにしているので。ただまぁ気分的に煙草を咥えて煙を吸い込んでいないと落ち着かないというだけです、はい】

 

【EveryGirls:それが依存症だよ!】

 

 

 

 

 

 

「ふぅぅぅぅぅぅ…………」

 

 煙が空に吸い込まれていく。

 数時間ぶりの煙草に没頭し、背を路地の壁に預ける。

 

「これでコーヒーと、ウィル君がいれば完璧なんですけど」

 

 この街には自動販売機という、トリウィアからすれば驚愕するしかないものがあり、使い方や使うために電子マネーがチャージされた電子端末もアルマから貰っているが、ここまで来る途中は思いつかなかった。

 そしてウィルに関して言えば、サウナバトルから復帰したらしく念話でアレスとどっちが勝ったかで意地を張り合っている。

 

「くすっ」

 

 アレスが絡んだ時の彼は、子供っぽくて可愛らしい。

 この三ヶ月、トリウィア自身も含め、彼らもオクタヴィアス事変の後、戦後処理や復興の指揮で忙しく、のんびりと話す暇は無かった。

 

「学園は復興拠点に使われて、しばらくの間は休校。三ヶ月忙しかった、ってほんとに休み無しだったから困りましたねぇ」

 

 ふぅ、と息を吐きつつ一人呟く。

 あの戦いが王都に残した爪痕は大きかった。

 無数の死者、破壊された街、サンドワームが掘り起こした大地、一時は制圧された王城。

 宣戦布告した共和国と二重スパイの王女。

 物理的にも政治的にも様々な要因が絡み合っていた。

 死者数を調べ、弔い、生存者に仮設住宅と生活のサポートを整え、国家間でどう落とし所をつけるか話し合う。

 それだけでとんでもない労力だ。

 アルマ曰く、魔族という共通の敵への協力認識は確固たるものだからまだマシ、という話らしいが。

 

「学校が再開して、私達が卒業するまでに落ち着いてくれるといいんですけどねぇ。……ま、今は休暇ですけど」

 

 置かれていたゴミ箱に吸い殻を捨てつつ、トリウィアは息を吐いて、

 

「ん……?」

 

 路地裏に脚を踏み入れる者を見た。

 

「ひゅーひゅひゅーひゅっひゅー」

 

 掠れた口笛を吹く少女だ。

 トリウィアと同年代か少し下だろう、大人と子供のちょうど中間ほどの年頃。

 明るい青の長髪に、赤緑黄色とグラデーションが掛かった毛先。

 大きな胸と臍を強調するような、丈の短い黒のスポーツ用タンクトップ、グレーのオーバーサイズパーカーとタイトなスキニーパンツ、足元は足首まで覆うバッシュスニーカー。

 肩には大きなボストンバックを抱え、顔の半分はやたら大きなサングラスで覆われている。

 ピアスや指輪、ネックレスも身体中のあちこちに身につけつつも、特に目を引いたのは全身のあちらこちらが塗料で濡れていることだった。

 

「……ふむ?」

 

 この世界で初めてみる喫煙者ーーー同志かと思ったが、彼女はこちらに目もくれず、路地裏の入り口の壁に視線を向けている。

 こちらに気づいていない彼女が、壁に向かって何をするのかと好奇心を擽られ、気配を消してみれば、

 

「ふひゅーすぅー」

 

 彼女はボストンバックからいくつかの筒を取り出し、カラカラと音を立てて振っている。

 

「……?」

 

 服装に関しては王国風のそれに似ているが、金属製らしき筒は初めて見るものだった。

 彼女が筒を壁に向ければ、

 

「おぉ」

 

 それから霧のようなものが噴出し、壁に色を塗り始める。

 

「絵の具……? 的な……? ふむ……この世界特有のものですかね……魔物とかのブレスの小型版ぽいですけど、面白いですね……風魔法使えば似たようなこともできそうですね」

 

 アース111に帰ったらまた特許でも取れるかと思いつつ、新しい煙草を吸い、観察してみる。

 少女はいくつかの金属筒を使い分け、壁に色を塗っていく。

 描かれていたものがなんだったのか、しばらく間、トリウィアにはわからなかった。

 だが、五分ほど眺め、

 

「あっ」

 

 船だ。

 それも、今自分たちが乗っている空を飛ぶ船だろう。

 本来のカラーリングとは違って、カラフルで派手なものとなっているが、間違いない。

 アース111では基本的に植物や鉱物から作った顔料を専用の油と混ぜる油絵がメジャーな絵画だ。

 帝国では風景や肖像画など、専属絵師は貴族には欠かせない存在でもある。

 一方王国では漫画だったりやたらデフォルメしたり肌色が多い美少女イラストが多かったりもする。

 そして、少女が壁に描いたそれは、トリウィアが知る絵画とは大きく違ったものだった。

 霧状に噴射された塗料だからというものがあるだろうが、壁を一枚のキャンパスとして見立てるというのは、アース111には無い考え方。

 それをこんな人がほとんど来ないであろう場所に描くというのは、

 

「興味深いですねぇ」

 

 気づけば、トリウィアの脚は動いていた。

 金属筒をバッグにしまい、壁画を眺めていた彼女の下まで近づき、

 

「お見事ですねぇ」

 

「わっ!? えっ――――どわぁーっ?」

 

 少女がその場で飛び上がった。

 中々の跳躍力で、身長はさほど変わらないだろうに、トリウィアの目の前を大きな胸が上方向にスライドし、また下がっていった。

 

「……ふっ、御影さんで慣れていなかったら大変なことになっていましたよ」

 

「ちょ、えーっと、あのぉー、ごめんなさぃ、おねーさん、どうしてここにー?」

 

 少女は目に見えて焦りつつ、腕を広げ、閉じステップを踏み、一回転。

 どこか間延びした喋り方だが、身振り手振りはオーバーだった。

 今回バカンスに誘ったが、聖国でバルマクと忙しくて来られなかったパールのことを思い出しつつ、

 

「いえ、そっちの喫煙所に一服していただけですが」

 

「あぁー……ああぁー……そっかぁ……」

 

「ふぅむ?」

 

 あからさまに慌てている彼女に、なぜそこまで慌てるのかとトリウィアは考え、

 

【悪魔先輩:ここって、無許可で建物の壁とかに絵を書いたら犯罪だったりします?】

 

【天才:そりゃそうだよ。この旅艦、この世界でもトップクラスの観光名所で、乗艦するのだって本当なら抽選なんだから】

 

【妹勇者ちゃん:どうやってアルマさんはこのバカンスをセッティングしたんですか……?】

 

【天才:昔ちょっとこの世界を救ったんだよ。そのコネでね】

 

【ステゴロ令嬢:当たり前のように言いますわね!】

 

 アルマの発言は驚かないが、納得もあった。

 

「もし、お嬢さん」

 

「おじょっ……年齢はあんまり変わらなそうだけどぉ……」

 

「安心してください。別に衛兵……警察? に突き出したりなんてしませんから。地元ならともかく、今はバカンスなんでセーフとしておきましょう。それに」

 

「そ、それにぃ?」

 

「良い絵ですね」

 

 率直な感想に、彼女は動きを止めた。

 

「絵画専門ではないですが、良いものだと思います。情熱と努力とロックを感じますね。素晴らしい」

 

「――――」

 

「……もし、私、変なことを言いましたか?」

 

「あ、いやぁ、えぇとぉ…………ありがとうなんだよぅ、おねーさん」

 

「いえ」

 

 大きなサングラスで顔を隠した少女は、笑って、

 

「それじゃあ私は行かないとだぁ。―――――またねぇ」

 

「また……はい?」

 

 トリウィアが首を傾けつつも、少女は軽い足取りで去っていった。

 同じ宿の客だったのだろうかと思いつつ、吸い殻になった煙草を捨てに灰皿の下に戻り、

 

【鳥ちゃん:トリィー? いつまで煙草吸ってんの? そろそろ戻ってきなよ】

 

【悪魔先輩:待ってください、もう二、三本吸って吸い溜めをしておかないとですね……】

 

【鳥ちゃん:えー? ―――――今なら、サウナ上がりでまだ体が火照ったウィルさんが見れるよ?】

 

【病ン姫:おほほほほ、アレスを視姦してますけど大変良いですよぉ……!】

 

【悪魔先輩:今すぐ行きますよえぇ転移門を開けてでも……!】

 

 

 




トリウィア
ドカ吸いダイスキ! トリウィア先輩
おほっ、良い後輩

落書きギャル
グラフティアートの巨乳ギャル

アース814
ほとんどものが様々な性質を持つ竹で作られたバンブーワールド
電気・電磁力関連の技術の成長度合いが高い近未来世界
全体的に和風要素が強め






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