超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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マイ・アーツ・ロード

 

「よぉーし」

 

 軽くステップを踏みながら、フォンは指を重ねた手の平を前方に押し出し、筋肉を伸ばす。

 足の裏から感じるのは砂だ。

 横目で見れば直径五十メートルほどの円形のプールがあり、その周囲をさらに砂浜が囲んでいる。

 人工的に再現されたビーチであり、波でさえも起こしているのだから驚いた。

 空に浮かぶ船の上に、さらにビーチまであるのだからアースの違いはすごいなぁ、とフォンは思う。

 そのくせ、この船の店で買った水着はアース111と似たようなものなのが不思議だ。

 王国の初代国王が転生者だったというが、それにしたって変にも感じる。

 どんだけ服にこだわっていたんだよ、と。

 今のフォンが着ているのは、昨日と同じ白黒のアシンメトリーのビキニ。

 そんなフォンの数メートル先で向かい合いってるのは、

 

「準備はいいかな、マリエル」

 

「勿論ですわ、フォンさん」

 

 サングラス、黒のビキニ、足全体を隠すパレオ姿のマリエルだ、

 赤い髪を普段のポニーテールとは違って、三つ編みに結い上げた彼女は無手。

 手足は長く、見て惚れ惚れするような、機能美を持つ筋肉。

 腹筋も綺麗に割れている彼女は、

 

「さぁ、一手お手合わせを願いましょうか」

 

 サングラスのブリッジを押し上げ、上品に微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「中々! 興味深い! マッチングである! な!」

 

 一つ一つの言葉の区切りに、筋肉をみなぎらせながらポーズを決めつつロック・アルカイオス三世は対峙する二人を見ていた。

 サンオイルを塗りたくり、テッカテカに輝く日焼けした肌、そして筋肉の張りの調子は良い。

 

「にゃー、こういう……模擬戦? 手合わせ? ってのも実際に顔を会わせたからこそだにゃー」

 

「鳥ちゃん、あんま殴り合いのイメージはネーけど、去年から練習してンだっけか」

 

「そうだな。人間と鳥人族では身体構造が微妙に違うが、それでも悪くないと思うぞ?」

 

 ロックの隣には、ナギサ、景、御影が並び同じようにフォンとマリエルを見守っていた。

 ナギサはオーバーサイズのパーカーとハイネックのラッシュガードで首元まで隠しており、膝下まで伸びるスカートタイプと露出の少ない水着姿。アイドルはむやみに肌を晒さない、という心情らしい。

 景は無難な黒のトランクスタイプの水着に派手なアロハシャツ。

 御影はクロスさせた布で胸を持ち上げるようホルターフロントクロスと呼ばれるタイプの水着だ。

 そしてロックは、

 

「ぬぅん……!」

 

「…………旦那、どうでもいいけどその水着、ちょっとキツくネ?」

 

「何を言うか、最も筋肉が映える水着こそこれ! ――――そう、ブーメラン!!」

 

 筋肉に埋もれる金色、局部を隠すためだけの最低限の布地のブーメランパンツ。

 

「…………きっついにゃあ」

 

「そうか? 私は悪くないと思うが。まぁウィルには合わんだろうがな」

 

「ぬはは! ウィルももう数年鍛えれば似合うようになるであろう!」

 

「いや、ウィルは今のままが一番エロい」

 

「ぬぅ! そう言われれば諦めるしかないか……!」

 

「諦めるンか……」

 

「エロは偉大だにゃー」

 

 ナギサはパーカーの首元の口を埋め、

 

「ともあれ、異世界交流ステゴロ戦、おもしろそうだにゃー」

 

「で、あるな。この観光船、見るところが多くてどうしたものかと逆に困ったり、どういう組み合わせにするかと思っていたものだが、個人的には修行もまた悪くないものである。景も来たのは意外ではあったが」

 

「いやぁ、俺は殴り合い自体は興味ねェけど、鳥ちゃん推しとしちゃあ気になンだろ」

 

「そういう意味ではウィルたちの方も気になるけど、流石に無粋だしにゃー」

 

「で、あるな」

 

 ウィル、それにロータスは、

 

「兄妹デートの時間。それも、転生して初めて過ごせる落ち着いた時間と状況である。楽しんでほしいものだ」

 

 二人は今頃、この観光地を散策しているのだろう。

 その時間を邪魔しようと思う者はおらず、二人以外の面子はそれぞれ思い思いに散らばり、この世界を楽しんでいるわけで、

 

「御影のねーさんは気にならネーのか?」

 

「ならないというと嘘になるが、気にしすぎては無粋だろう。ウィルが話したくなったら話を聞くさ」

 

「ひゅー、流石。男前だねェ」

 

「そこは姉御肌じゃないかにゃー」

 

「肌のハリは大事であるな!!」

 

「ちょっとそこのギャラリー、観戦するなら真面目に見てくださいましー!」

 

 

 

 

 

 

「全く……やかましい人たちですわね」

 

「そういう人たちって印象しかないかな」

 

 確かに、苦笑するマリエルにフォンは肩を竦める。

 

「ま、私達は私達で真面目にやりましょうか。準備は良いですね」

 

「良いっちゃいいけど、先に一個聞いて良い?」

 

「どうぞ」

 

「立ち会わないっていったの私だけど、なんで砂浜? すっごい歩きにくいんだけど」

 

「だから、ですわね」

 

 答え、マリエルは足元の砂を踏みしめる。

 

「歩きにくいのは砂で体重や踏み込みが分散されてしまうから。つまり、正しく歩かなければ、正しく立てず、動けません。古典的ですが、砂浜での修練は効果的ですわ。私も自分の友人を連れて合宿に行くなどしましたし」

 

「……マリエルはなんか、うちの学園みたいな魔法学園の、女子校版って言ってなかったけ……?」

 

「お嬢様とて、時には砂浜で重りを引きずって走ることも必要なのですわ」

 

「そうなんだ……」

 

 マルチバースは奥が深い。

 

「理由がちゃんとあるならいいや。それじゃあ、良いかな?」

 

「えぇ、どうぞ」

 

「それじゃあ」

 

 行った。

 

 

 

 

 

 フォンは、疾走の最中において翼を広げず、魔法も使わなかった。

 このアースは魔法が存在しない世界であるから、というわけではない。

 もとより、徒手空拳の修行のためにフォンはマリエルに立会いを申し込んだのだ。

 人族と身体構造も違い、飛行を前提にした戦闘技術を用いるフォンだが、人の用いる武術の重要性は十分に知っている。

 人が扱う体重移動を加速で補うことができるため、肉体稼働にそのまま活かせるのだ。

 普段は学園の教師であるドニーから教わっているが、マリエルも武術の達人らしい。

 二年前の建国祭の時にゴーティアの眷属を素手で殴ったり投げ飛ばしているのを空から見たりもした。

 だから、彼女を選んだ。

 だから、行く。

 普段からすれば欠伸が出るような、しかし五体で出しうる最速で距離を詰め、拳を打ち出し、

 

「――――あれ?」

 

 くるり、と視界が回った。

 そう思ったときには、砂浜に背中から激突していた。

 

「っづ……ぃって……!」

 

「あら、大丈夫ですの?」

 

「!」

 

 のんびりとしたマリエルの声に、

 

「っ、勿論!」

 

 飛び起き、拳を構え直す。

 マリエルの位置は変わっていない。

 左手を腰の後ろに添え、手の甲を向けた左手をこちらに掲げている。

 

「ふぅー……なるほど、やるね」

 

「ありがとうございます。フォンさんも流石の速度でしたわ」

 

「ありがとう――――なら、もう一度」

 

 行って。

 そして、再び砂浜に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

「おー、すっげェな。どうなってンの?」

 

 景は素直に感嘆の言葉を吐いていた。

 眼前、フォンが突っ込んで、気づいたら投げ飛ばされるという状況が何度も繰り返されている。

 その間、マリエルは動かず、投げ飛ばされたフォンと向き直るだけ、という状態だ。

 

「にゃ、追えてないのかにゃ?」

 

「ネオニウムの強化、今してないんだワ。パンピーと変わンないぜ、今の俺」

 

 外部からネオニウムを接種して各種身体能力を強化できる景だが、バカンス中なので今はそれを用いていない。

 

「だから全然何起きてるかわかンね。マリエルの嬢ちゃんがフォンをふっつーに投げ飛ばしているようにしか見えねェな」

 

「いや、それであっているぞ?」

 

「おん?」

 

 横目で、答えてくれた御影に視線を送る。

 大きな褐色の胸を持ち上げるように、腕を組む彼女は楽しそうにフォンを見ていた。

 本能でその胸に視線が行きそうになるが、ウィルの恋人という事実に推し応援魂をフル動員して顔を見る。

 魔法で認識阻害をしているが、景たちには普段を変わらず見える黒の片角の彼女は言葉を続けた。

 

「景の言う通り、マリエルは普通にフォンを投げ飛ばしているだけだ。特別な技を使ってるわけじゃない」

 

「まァジ?」

 

「マジだ」

 

 ただまぁ、と彼女は目を細め、息を吐く。

 

「極地とは時に陳腐に見えるものだ。普通の投げ技を、恐ろしく速く、正確に実行しているから、傍目には何をやっているかわからなくなる程にな。彼女、達人という他に無いぞ」

 

 

 

 

 

 

「すっごいね……!」

 

「ありがとうございます」

 

 砂浜に叩きつけられた回数が十に届き、フォンは思わず笑ってしまった。

 ただ単に、自分の勢いを利用して投げ飛ばされていることには二回目で気づいていた。

 一度目は、その投げがあまりにも見事すぎて呆けてしまった。

 そして二回目以降は、

 

「なにをやられているかはわかってるのに、どうすればいいのか、全然わっかんないや……!」

 

 単純に、対処方法が思いつかない。

 拳、足、肘、膝、それぞれ使っても、速度を変えても、フェイントを掛けても。

 受け止められ、受け流され、投げ飛ばされている。

 フォンには痛みが無いほど綺麗に。

 

「お、わっ!」

 

 また、同じように視界が回る。

 自分の攻撃が当たる、と思った時には天地がひっくり返っていた。

 

「そろそろ変化がほしいですわね」

 

「私もそう思っていたところだよ……!」

 

 変化は、フォンの動きだ。

 投げ飛ばされる中、体をひねり、両足で着地。

 砂に足が取られてスキッドしたが、態勢を整え直し、

 

「ふぅっ……!」

 

 全身を射出させた。

 姿勢は低く、スライディング気味に砂を滑り、マリエルへ足払いを打ち込み、

 

「はい、惜しいですわ」

 

「いぃ!?」

 

 受け止められた。

 マリエルの左足裏に、優しく、丁寧にだ。

 砂浜に着いた右足は、微動だにしていない。

 

「いや、ちょっとおかしくない!? 足元の砂は!? そこだけなかったりする!?」

 

「おほほ、勿論砂ですわよ、っと」

 

 マリエルが軽い仕草で左足を動かした。

 

「!?」

 

 かと思ったら、フォンの体が跳ねる。

 一回転し、足を起点にして勝手に体が起き上がったかと思えば、

 

「わっぷ」

 

「あら」

 

 顔面からマリエルの胸に飛び込んでいた。

 

「……………………」

 

 互いの動きが、一瞬停止する。

 

「――――新鮮なおっぱいクッション! 御影よりハリがある感じ!」

 

「セクハラですわよ、それ」

 

「私は柔らかさが売りだからなー!」

 

「張りなら余の筋肉も負けんぞ……!」

 

 観客が余計に張り合ってきたが無視をして、マリエルから距離を取ろうと、胸から顔を引き剥がし、

 

「良くないですわよ、そういうのは。フォンさんも、一応は氏族の代表のような立場でしょう?」

 

 すっ、とマリエルの人指し指が、フォンの顎に添えられていた。

 至近距離で、彼女の、位置が下がっていたサングラス越しに目が合う。

 微笑みは上品で、しかし瞳は笑っていない。

 アメジストに輝く眼は、その奥に、どこか凶暴性すらはらんだ妖しい光がある。

 

「うぇっ―――」

 

 光に飲まれ、思わず息を呑む。

 一瞬、確かに魅入られた。

 あまり意識していなかったけれど、もしかしてとんでもない美人さんなんじゃない? とフォンが思った瞬間、

 

「――――お仕置き、ですわ」

 

 囁くような優しい声と共に、

 

「!?」

 

 顎に衝撃が弾け、フォンの体が直上に跳ね上がった。

 

 

 

 

 

 

「にゃっ」

 

 ナギサは、足元から伝わってきた揺れに、思わず腰を低くした。

 ちょっとした地震のようなそれは、

 

「マリエルからかにゃー?」

 

 彼女の足元、半径一メートルの砂が円形に波打っている。

 マリエル自身は相変わらず動いていないが、彼女が何をしたのかは推測できた。

 

「寸勁、ってやつだにゃあ」

 

 踏み込みと体重移動、加えて衝撃伝達。

 

「カンフー映画とかで見るやつかァ? 俺の世界でもパワードスーツでそういう再現するやつがいるけどよォ。マリエルは今、踏み込みとかしていなかったぜェ?」

 

「達人ともなれば、無制動から衝撃を生むのも容易いにゃ。体重移動だけで衝撃を発生させられるわけだにゃ」

 

「詳しいじゃン」

 

「私のプロデューサーができるからにゃ」

 

 プロデューサー……? と景もロックも首を傾げていたが、ナギサのプロデューサー、大和猛はそういう男なので仕方がない。

 彼は発剄、寸勁といった類の達人で、だいたいなんでもそれで解決するのだ。

 ナギサ自身もあんまり理解できておらず、そういうものだと受け入れてるのだが、

 

「マリエルも、同じくらいの領域かにゃ。寸勁だけじゃなさそうだけど」

 

 三メートルほど跳ね上がった後、上半身から砂浜に突っ込んだフォンを見つつ、ナギサはマリエルについて言葉を零し、それに続いたのは御影だった。

 

「見た感じ、合気も極めていそうだな。合気、そっちにもあるよな? 相手の動きを利用する武芸だ」

 

「あるにゃ。柔とか流水って言ったりもするにゃ」

 

「ほう。皇国(うち)と同じだな、面白い。それはいいとして、打撃と合気も極めている、私達の世界にはまずいないタイプだ」

 

 御影は自らの角を軽く撫で、笑う。

 

「いつかアルマが言っていた。私達の世界は戦闘技術が魔法の存在を前提としているから、単純な肉体のみの武術は発展しきっていないとな。そんなことはないだろうと正直思ったが、アレを見せられると納得せざるをえんな」

 

「まー、あのレベル、マルチバース見渡してもそうそういるもんじゃない……と思いたいにゃあ」

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですの、フォンさん」

 

 マリエルは砂に埋もれていたフォンの足首を、無造作に引っ張った。

   

「うぅぅ……口の中がじゃりっじゃり……」

 

 ぺっぺっと砂を吐く彼女を立たせつつ、マリエルは彼女の髪の砂を払う。

 

「失礼しました、思っていたより跳んでしまって。本当に軽いんですわね」

 

「あー、うん。大体三十キロくらい」

 

「羨ましい……というわけでもないですね。人種だったら病気を疑いますし」

 

「そういうもんだね。……一応聞いておくけど、マリエルって体重めっちゃ重いわけじゃないよね……?」

 

「筋肉を点けている分、適正体重とは言えませんが。まぁ、普通の範囲ですわよ」

 

「じゃあなんで……?」

 

 問いの内容はわかる。

 なぜ、砂の上で足払いを受けて微動だにしなかったのか。

 加えて、それ以前の攻防でも動かなかったのか。

 それは、

 

「体幹ですわね」

 

「……?」

 

 何言ってんだこいつ、と言わんばかりにジト目で見られた。

 

「……ふふっ」

 

 思わず笑ってしまう。

 自分の世界でも、級友たちに似たような目で見られることが多い。

 なので、言葉を付け足す。

 

「私の武術は中国拳法の八極拳……えぇと、至近距離での重い一撃を主とする武術と合気道、相手の動きを利用するカウンターをごちゃ混ぜにしたものですわ」

 

「ふんふん。八天は私の世界にある概念だね。七属性に自分の肉体技術を合わせて八極、みたいな。連合の古い言葉にあったよ。合気は御影の皇国の武術として有名かな」

 

「おもしろいですわね。世界は違えど、収斂するものがあるということですか。ともあれ、私の武術はそういうもので、大地との繋がり、つまりは足腰の強靭さを何より重要視しますわ。つまりは、歩法とか立ち方ですわ」

 

「ほーう」

 

「ブレず歪まず間違わず。正しい立ち振舞いで正しい力を……失礼、手をよろしくて?」

 

「あ、うん」

 

 マリエルは差し出されたフォンの手を優しく握る。

 そのまま、

 

「私の流派は、蛟龍蓋世式八極道(コウリュウガイセイシキハッキョクドウ)と言いまして」

 

 全身に剄を巡らせ、フォンと握っている手へと集中させる。

 

「地に在りて広がり満ち溢れ――――」

 

「!?」

 

 フォンの小さな身体が僅かに跳ねた。

 それは驚きのせいだ。

 握手している手が異様に重く、しかし動かせないのだから。

 マリエルが全身の重心を、握る手に動かした結果だ。

 次に、マリエルが軽く右足を、フォンの左足に添え、優しく弾けば、

 

「――――溢れれば流れ出づる揺らぎとなれ」

 

「わっ!?」

 

 フォンの体が、握手を中心に一回転。

 マリエルはフォンの手首を傷めないように気をつけながら引き寄せ、

 

「それが理念。つまり、地面を上手く活用して戦いましょう、ということですわ」

 

 横抱きにして受け止める。

 つまりは、お姫様抱っこだ。

 

「…………びっくりした」

 

「失礼。体験していただいた方が早いかと思いまして」

 

「さっき投げ飛ばしてたのも同じようなもの、だよね」

 

「原理は同じですわね。受け止め、受け流し、投げ飛ばす。重心移動や体捌きを極限まで省略すると、一歩も動かずに相手を投げることができますわ」

 

「なるほどなぁ……」

 

 説明しつつ、優しく体を支えながらフォンを下ろす。

 いきなり投げてしまったので、乱れた髪を手櫛で直していたら、

 

「………………マリエルってさ」

 

「なんでしょう」

 

「めちゃくちゃモテない?」

 

「はい?」

 

 何故か、かすかに頬を染め、目線をそらすフォンに首を傾げる。

 

「婚約者とは良い関係ですけど……」

 

「婚約者いたんだ……」

 

「あとはまぁ、いつの間にか学校に妹を名乗る同い年や年上が大量発生したりもしましたが……」

 

「あぁ、うん、だろうね」

 

 フォンは呆れ気味に頷いていた。

 マリエルのクラスメイトや先輩後輩といった知人は大半が人間が出来ている。

 魔法がある世界で、魔法の使えないマリエルを気遣い、力を貸してくれるのだが、それはそれとしてたまに様子がおかしくなるから困ったものだ。

 

「ともあれ、私の武術は如何に地面と体を上手く使うか、というものです。ですので、フォンさんの参考にはあまりならないと思いますわね」

 

「やっぱり?」

 

「ただ、知っておくのは悪いことでは有りませんわ」

 

「だよねぇ。中々難しいよ」

 

「武とはそういうものです」

 

 マリエルは思わず苦笑する。

 恵まれた家。

 優しい友人。

 愛する婚約者。

 学生という身分の後、将来もある程度安泰が確立されている。

 大よそ第二の生として、必要なものは手に入れた。

 それでも、満たされないものがある。

 だから、歩き続けている。

 

「私は前世から武の道を歩んで、転生してまで臨んでいますが、それでも極めたとはまるで言えませんもの」

 

「マリエルの感じでそれかー」

 

「えぇ、未だ未熟ですわ」

 

 だからこそ、

 

「日々是鍛錬。命果つるまで拳を振るう。それが武芸者としての生き様ですのよ」

 

 

 

 




フォン
武術鍛錬中

マリエル
お嬢様、ただし達人
最後のセリフが全くお嬢様ではない
婚約者はなんか、この達人お嬢様を近づかせないマップ兵器みたいな魔法を使う人らしいです
戦場で命と血と恋の花を咲かせたとかなんとか




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