超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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ザ・アドベント

 

 新たなる姿に変身したアルマに、皆一様に驚き、最も早く立ち直ったのはアレスだった。

 

「な、なるほど! 魔法が使えないスペイシアさんの代わりに、マキナのナノマテリアルで科装を作ってたのか! スペイシアさんの演算能力とナノマテリアルの応用性なら、大体の魔法が再現できる……!」

 

 得心が言ったと言わんばかりに叫ぶアレスに、ヴィーテフロアとルクレツィアが視線を向けた。

 

「な、なんだ?」

 

「いえ……詳しいですね、アレス?」

 

「あぁ、うん。まぁなんのかんの最近もマキナのうざ絡みされて科装だかあいつの言うSFだかを色々聞かされてきたから……」

 

「…………」

 

「なんだ、その目は」

 

「アレスはなんというか……ツンデレという言葉すら生易しいですね」

 

「あぁ!?」

 

「つまり――――誘い受け?」

 

「おい! ……そっちのあんたも納得したように頷くな!」

 

 顎に手を当て頷いているルクレツィアにアレスは叫んだ。

 変わらず目を伏せた彼女はにこりと笑いつつ、右の掌を前に差し出した。

 

「お構いなく、という感じですねぇ」

 

「構う! というか喋ってる場合か! いくら再現出来ても魔法が封印されてるらしいのは同じだ、この人も倒して加勢に行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

「≪ファウンテンビット≫、展開」

 

 両腕を広げたアルマの背後に、緑の粒子が集まり、形を生む。

 それは筆の形を模した自律稼働科装剣。

 大中小それぞれ二本、さらに片手には長筆剣。

 筆剣六本がアルマの周囲を舞い、翼を背負うようになり、

 

『脳波コントロール良好。タイムラグ、ゼロコンマ二秒』

 

 彼女の肩に浮遊するマスコット状態のマキナが報告を行う。

 

「まだ遅いなぁ。完全に無しか、コンマ一以下にしてくれ」

 

「無理を言うな。実戦では初使用だ、実際試して術式の効率化を図るしかないだろう。俺の方から動かして操作補助を行う」

 

「ま、そんなもんか」

 

 彼女は科装の長剣を振るい、

 

「それじゃあ試してみよう」

 

 ウィリアムへと、行く。

 

 

 

 

 

 

「そんなんありかよ……!」

 

 科装版魔法少女とでも言わんばかりのアルマに毒づきつつ、ウィリアムは腕を交差し、印を組んだ。

 腕を勢いよく広げれば周囲に無数の小さな魔法陣が展開され、光弾が大量に吐き出された。

 人が通り抜ける隙間もない高密度の光弾はあらゆるものを飲み込む大瀑布だ。

 対し、

 

「≪ファウンテン≫!」

 

 アルマは避けず、防御もせず、ただ叫ぶ。

 動いたのは彼女の周囲に浮かんでいた六本の筆剣。

 中空を突き進む彼女の前に出て、筆先から緑色、極細の光線を射出した。

 その光線は、単発ではなかった。

 持続して放出した上で、筆剣は踊り、空に六条で複雑な模様を描き、光弾一つ一つを丁寧に両断し、

 

「行け……!」

 

 数百による瀑布を、六つの閃光が穿ち貫いた。

 超絶技巧と言っても相応しい筆剣操作を敢行し、光弾を抜けたアルマはしかし顔をしかめて叫んだ。

 

「修正!」

 

『修正術式受諾、反映』

 

 筆剣が目に見えて加速した。

 アルマの脳内で打ち出したプログラムをマキナが受け取り、筆剣の駆動を効率化させたのだろう。 

 

「誰だよ封印したとか言ったやつは!」

 

「君だが!」

 

 逆手に持った筆剣を構え、接近しつつ、同時に再び周囲の筆剣から光線が放たれた。

 だが、ウィリアムも次の行動に写っている。

 彼女が光弾を抜ける間に組んでいた術式。

 腕の振りや指の組み方で長時間の詠唱や儀式を代替わりさせる発動方法はアルマが得意とするものであり、ウィリアムもまた同等のものを身に着けている。

 故に、本来なら数日掛かるような魔法を発動するまでに掛かった時間は一瞬だった。

 

「割れろ!」

 

 掲げた両手の先の空間が、言葉通りになった。

 空間に亀裂が入り、ガラスのように砕け散った。

 空間片は数十に及び、その内の六つが筆剣の光線を受け止め、

 

「鏡よ、鏡、ってな!」

 

 六つの空間片に光線は吸い込まれ、他の全ての空間片から光線が吐き出された。

 

『なんだ!?』

 

「空間ループだ!」

 

 脳髄が疑問を叫び、SF魔法少女が答えた。

 彼女の言う通りだ。

 空間を切り出し、それぞれをループさせている。

 だからたった六つの空間片を通過した光線が他の空間片を通過し、現実に吐き出された。

 

「≪ファウンテン≫!」

 

 対し、アルマは手にしていた長剣を真上に投げる。

 数メートル程度でそれは空中に静止。他の六本もまたアルマの足元で円状に並び、

 

『シールド展開!』

 

 それぞれの筆先が光線で結ばれ、六角錐の結界が作り出された。

 ループ反射で放たれた大量の光線をその結界は完全に防ぎきった。

 だが、それによって生じる数秒間はウィリアムにとって十分すぎる。

 

「な、に、が、で、る、か、な!?」

 

 彼が勢いよく突き出した五指は、眼前の空間の亀裂に向けられていた。

 空間片を作り出したことにとって生まれたもの。

 手首を捻り、拳を握り込む。

 そうして、空間の亀裂から吐き出されたのは、局所的な砂嵐だった。

 砂嵐、と言っても通常のそれではない。

 竜巻の中に大量の砂が高速振動することにより鋼鉄だろうが人の体だろうが問答無用で削り切るサンドブラストだ。

 

『おい! なんか観測次元周波数がおかしいぞ!』

 

「アース65、その人類到達不可能領域の特級災害を引っ張ってきたのか!?」

 

「ご名答! 俺の得意技、確殺天災ガチャだ!」

 

『消費者庁に訴えられろ……!』

 

「この場合、取り締まる消費者庁枠が僕なんだけどなぁ」

 

 アルマはぼやくのと同時、結界が解除された。

 当然、ただ受けるわけではない。

 

「集まれ、≪ファウンテン≫」

 

 頭上に掲げていた長筆剣を握り、同時に他の六本の筆剣が刀身に集まり、

 

「マキナ!」

 

『All Combine Overlord!』

 

 一本の巨大剣として合一し、煌々と輝きを放った。

 彼女の身の丈をも超えるそれを、アルマは振りかぶり、

 

「ッ――――!」

 

 振り抜いた。

 翡翠の大斬撃が、砂嵐を一息に両断する。

 

 

 

 

 

 アルマ・スペイシアは、自らが無敵でないことを知っている。

 マルチバース最高の魔術師という自負はあるが、しかし最強ではない。

 例えばロータスと正面からよーいドンで戦えばアルマは勝てないだろう。

 それ以外にも≪ネクサス≫にはロータスに近い、アルマ以上の戦闘力を持つメンバーもいるし、そうでなくても≪ネクサス≫のメンツと複数人に襲われたら負ける確率の方が高い。

 あるいは、≪D・E≫の上位種にはまともに戦闘にならないことも多いし、広いマルチバースでは単体でアルマを超えうる存在も僅かではあるが存在していた。

 おまけにマルチバースをまたいで活動する者の間ではアルマの名は知られすぎている。

 仮に次元間の陰謀を企む場合、その下手人がまず気にしなければならないのは、如何にアルマを対処するかという問題である。

 そもそも気取られないようにするのか、気取られた上で手出しをされないようにするのか、足止めできる人材を用意するのか、何かしらのカウンターが必要になる。

 アース111でも次元封鎖による締め出し、ル・トとのマッチング、次元からの隔離等様々な手段を講じられてきた。

 マルチバースの敵対種≪D・E≫との戦いにおいて千年も最前線に立ち、次元世界を守ってきたのは伊達ではない。

 だからこそ。

 アルマは、自らの強みを手段の多さだと思っている。

 あらゆるアースの概念法則を記録し、他の世界に影響を与えないギリギリの力で状況を打破することができる。

 そして、仮に自らの魔法が封じられたとしても、代替手段を用意しているのだ。

 その一つが、オクタヴィア事変でのマキナとル・トとの合体に可能性を見出した結果生まれた科装形態≪イミテーション・エメラルド≫。

 ちなみにデザインはクロノによるものである。

 DMでこっそり彼にデザインを依頼したら、

 

『なるほどSF魔法少女……………………SF魔法少女!? SF! 魔法少女!?!?!?!?』

 

 絶叫しつつ一晩で武装含めたデザインと設定を仕上げてきてくれた。

 出来が良かったのでそのまま使っている。

 のだが、

 

「制御が甘いよ、マキナ」

 

 巨大剣の合体を解除し、筆剣を周囲に漂わせながらアルマは苦言を呈した。

 眼前、煙が視界を遮る中、船首が斜めに大きく切り落とされていた。

 アルマたちがいるのは隔離された結界なので現実に影響はないが、彼女としては足場となる船を切り落とすつもりはなかった。

 だが、こうなっているということは、アルマの意思が反映されきっていないということだ。

 

『文句ばっかり言って! パパも頑張ってるんですよ! 改善点はもっと具体的に言いなさい!』

 

「さっきも言ったけど思考伝達のタイムラグ除去。あとビームが持続するのはいいけど、照射距離と時間をどっちもマイクロ単位で設定できるようにしてほしいな。それだけあれば大体の儀式魔術は再現できるから」

 

『…………明日まで待っていなさい! 完璧な調整を見せてやりますわ!』

 

「なんでオネエなんだよ。明日までにできるのは凄いけどさ」

 

 結構な無茶振りをしているが、流石は惑星管制をやっていただけはあるということだろう。

 ただまぁ、

 

「明日で間に合うかって話だけどね」

 

「いやぁ、余裕だねぇ天才さん」

 

 風が吹き、煙が晴れる。

 船首が切り落とされて生じた空間に、ウィリアムが浮遊していた。

 無傷だ。

 

「ふむ、今のじゃダメか。さっきの魔法といい、中々やるね」

 

「そいつはどうも。……あんたにそう言われると、染みるものがある。いや、だいぶビビったけどさ。魔法さえ封じれば楽勝だと思ってたのは舐めてたぜ」

 

「学べて良かったね。それじゃあ続きといくか? 僕もまだ試したいことが色々あるんだ」

 

「いや、止めておこう」

 

「は?」

 

『何?』

 

 眉とデフォルメ眼球を同じ動きで潜めるアルマとマキナにウィリアムは苦笑し、肩をすくめた。

 

「あんた、思ったより強いしあんまりこっちの手のうちも晒したくないしさ。なんかこのまま戦い続けたらこっちがジリ貧になりそうなんだよね」

 

 からからと彼は笑い、

 

「それに、あんたは正しい」

 

「何が……」

 

「切り札は、取っておくもんだ」

 

 両手を≪流れ出づる瞳≫に掲げた。

 それは緑の輝きを放ち、その光は線となって中空に伸び、

 

「この場合―――――()()って意味のジョーカーだけどな」

 

 彼の頭上に、曼荼羅の如き複雑かつ多重構造の魔法陣を作り出した。

 

「――――」

 

 アルマの目が、その術式を読み取り解析するのは反射的な行動だった。

 魂魄レベルでの解析魔法は使えなくても、魔力の糸で術式を編むのならば、単なる知識と経験から内容を察することができる。

 そして。

 アルマの全身から汗が吹き出し、血の気が消え去った。

 ()()()()()()()()()

 

 

 

● 

 

 

 

「マキナッッッ!」

 

 その叫びがアルマのものであるとマキナが気付くのに数瞬を要した。

 それは悲鳴だった。

 

「掲示板で艦長に救援を求めろ! それからウィルとロータスの護衛をしているクロノとアルカにこの船から離れさせて―――いや、ウィルには今すぐポータルをどこでも良いから開かせろ、この次元に残るよりマシだ!」

 

 顔を真っ青にし、普段の余裕が全く無い。

 体は強張り、彼女を纏う科装のバイタルチェッカーからは精神状態が極めて不安定な計測を叩き出している。

 

『なにを―――』

 

 そんな姿を見たことがなかった。

 

「いいからやれ! 間に合わなくなる!」

 

『―――――』

 

 見たことはなかった。

 だが、彼は既視感を覚えた。

 直接目にはしていないが、アルマがここまで動揺している様。

 先ほど、ウィリアムの入れ墨を目にし、魔法を封印された時?

 否、驚愕はあったが恐怖と焦燥はなかった。

 ならば、どこで?

 刹那にも満たない時間、マキナは彼女と出会ってから全ての記憶を閲覧し、該当する事象を検索し、

 

『―――――!』

 

 答えに至った瞬間、アルマの指示を同時並行で言われた通りにした。

 クロノへの連絡は推測込みで、危険性が彼に伝わるように過剰に話を盛っておく。

 さらにはマルチタスクで何度も観てきた転移門を科学的に再現を挑戦。

 これまで何度か試したが不可能だったものは失敗したが、再挑戦し、そのトライ&エラーをルーチーンとして構築した。

 

「くそっ……()()()()()()()()()()()()()()()()()!? ウィリアム、君は一体何を……!」

 

 アルマが叫び、ウィリアムは破顔した。

 

「―――――()()()()

 

 そして、彼の作り出した魔法がその役目を果たして。

 空が割れた。

 

 

 

 

 

 

 航空旅艦の上空に亀裂が入る。

 つい先程、ウィリアムが作り出したものとよく似ているが、しかしより広く、深い割れ方だった。

 全長にすれば数キロほどの割れは、しかしその時点では視覚的な異変以外何も起きなかった。

 亀裂の中身は漆黒にも似た虚無が広がっている。

 

 ―――――そこに小さな光が出現した。

 

 金色の輝き。

 それは人の形をしていた。

 男だ。

 髪は黄金のように輝き、獅子の鬣のように乱れる。

 褐色の肌は彫像のように隆起し、見る者が涙さえ流すような完璧な均衡を宿していた。

 上半身に衣類は纏わず、黄金の腕輪やネックレスの装飾。下半身は足首は細いがそれより上はゆったりとした白の長袴。

 顔立ちは理知を秘めながら獣の如き荒々しさを秘めている。

 凶暴な怪物性を完璧な人間性で形作られたその姿は、性別を問わず他者を魅了するカリスマを秘めていた。

 

「――――」

 

 それは、空に浮かびながら黄金の瞳で世界を睥睨する。

 彼の前にウィリアムが現れた。

 そのまま彼は、

 

「―――――尊顔を拝し、光栄の至りに御座います」

 

 中空に跪いた。

 彼だけではない。

 ウィリアムの背後、真砂、クロイツ、クーフェイ、ルクレツィアもまた同じように転移で現れ、すぐに黄金へと恭順の姿勢を示す。

 車椅子のクーフェイだけは体を深く曲げ、他の三人はウィリアムと同じように跪いていた。

 四人とも少なくない手傷を負っているが、構う様子もない。

 そんな彼らに対し、

 

「ふん」

 

 それは不機嫌そうにただ鼻を鳴らし、

 

「っ…………!」

 

 ウィリアムたちは、全身に尋常ではない重圧を感じた。

 攻撃をされたわけではない。

 それの存在強度があまりにも強すぎるせいで、向けられた意識でさ物理的な圧力を生んでいただけだ。

 それでも、彼らは揺らがない。

 姿勢は変わらず、

 

「―――よい、顔を上げろ」

 

 黄金は重圧を解いた。

 

「貴様らか、わざわざ我をこの次元に呼び出したのは」

 

「えぇ」

 

 問いに、ウィリアムは顔を上げ、静かにそれの名を読んだ。

 

「≪D()E()()()()……いいえ、≪天才≫たちが定めた名ではなく、こう呼ぶべきでしょう」

 

 ≪ディメンション・イーター≫という名ではなく。

 彼ら自身が自らに定めた名を。

 

「≪界壁の破壊者(ゴグ・マゴク)≫が将、≪十三の総首長(ダレット・テト・ツヴァ)≫の一柱―――――≪螺旋常勝戦神≫ラーヴァナよ」

 

 




ラーヴァナ
螺旋常勝戦神
十三体いるD・E上位種、その一体
千年かけてもアルマが倒せない存在の一つ


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