超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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G3 BoH ≪十三の総首長≫討伐編
連なる者たち


 

 広い、小洒落た雰囲気のラウンジがある。

 落ち着いた音楽が流れ、その場にいる者の心を穏やかにするような空間。

 中央には大きなローテーブルがあり、周囲を心地よさそうなカウチソファが囲んでいる。

 壁際にはバーカウンターがあり、色とりどりのボトルが並んでおり、それ自体がインテリアのようになっていた。

 そんな空間に、

 

「ーーーーよし、話をしようか」

 

 そんな空間で、アルマはソファやカウンターにいる仲間たちを見回し、そう宣言した。

 

 

 

 

 

 アース814の戦闘から数時間後、アルマたちは『ノーチラス』へと乗り込み、別の次元へと移動していた。

 旅館の荷物を回収したり、『ノーチラス』内の医療設備で傷を治療したりするなどし、やっと一息付いたところだった。

 

「とにかく情報量が多すぎて、話さないといけないことが山程ある」

 

「気になるのは、私達のそっくりさんのことですね」

 

 アルマの右隣で、長い脚を組んだトリウィアが紫煙を吐き出しながら言う。

 それにアルマは頷き、ローテーブルを指で軽く叩く。

 すると、机上にアイコンが浮かび上がり、アルマがそれを弾き、

 

「そうだね。見ての通り、御影、トリィ、フォンにやたらよく似ていた」

 

 ローテーブルの上に空中投影されたウィンドウが展開し、数人の顔写真が投影される。

 アース814で戦った真砂、クロイツ、クーフェイ、ルクレツィア、ウィリアムの五人。

 おぉ、と何人かから驚きの声が上がった。

 問いを発したのはバーカウンターにいる御影だった。

 バーテンダー役を買って出た景からウィスキーのグラスを受け取りつつ、

 

「アルマ? 魔法は使えないんじゃなかったか?」

 

「これは魔法じゃなくて、この『ノーチラス』の機能、純粋な科学だよ。空中投影ディスプレイね。みんなも使えるから後で教えよう」

 

「ふーむ、何言ってるか全然わからんな……。……うおっ、これ美味いな。景、おかわりを頼む」

 

「あいヨ」

 

「良い酒が並んでおるな……」

 

「これ、ただ酒でありますよね? 気分がいいですなぁ」

 

「私もワインを頂けますか? お嬢様として楽しんでおきたいところですし」

 

「見たことねェのもあるし、色々試していこうゼ」

 

「そこのチーム酒飲み、飲むのはいいけど、ちゃんと話を聞いておいてくれよ」

 

 うぇーい、という雑な返しが帰ってきた。

 御影、ロック、巴、景、それにマリエルはラウンジに入って早々にバーカウンターに陣取っていた。

 まぁ、あれくらい気負いないほうがアルマとしてもありがたい。

 どうせ、艦長の酒だ。

 

「ドッペルゲンガー、というやつですかね? 僕の世界でも景さんが遭遇していたじゃないですか」

 

 アルカが背後にいるクロノが小さく手を挙げ、アルマはその言葉に首を横に振った。

 

「いや、並行同位体(ドッペルゲンガー)には似てないかな。あれは、文字通り別の世界の自分で、年齢や性別の違いはあれども、魂が同じなんだ。IFの自分、という感じだ。彼女たちの場合とはちょっと違う。彼らの結界やらが邪魔をして、僕も魂をちゃんと見れなかったから詳しくはわからないけど、御影たちのドッペルゲンガーならすぐに分かるはずだし」

 

「にしても、無関係ってことはないよね?」

 

 フォンがローテーブルの上に置かれたお菓子をつまみつつ、首を傾ける。

 

「似てる似てない置いておいて、私のことよく知っていたぽいし。クーフェイは科装とは私みたいな鳥だったし」

 

「クロイツも私の魔眼と同じものを持っていました。フロネシス家の血縁にしか発現しないはずのものを、です」

 

「真砂も、私の三貴子のそれと同類だったな。あれもアース111では私しか持ち得ないはずのものだ」

 

「そうなんだよなぁ」

 

「あのルクレツィアは、どうなんでしょう」

 

 言葉を続けたのはアレスだ。

 自分の相対した相手を思い浮かべつつ、眉を顰めている。

 

「彼女は俺によく似ていました。髪の色や戦い方が。雷も使っていたし」

 

 彼の言葉に、隣に座るヴィーテフロアが嫌そうに顔を顰めた。

 

「でもなんか影使いでもありましたね。それも虚数によって生まれた影でしたよ、あれ。私の≪究極魔法≫とぶつかった感じに覚えがありました。こう、空間がたわむというが歪んだ感じ」

 

 彼女が思い出しているのはヘラのことだろう。

 確かに、影から現れたルクレツィアはヘラとアレスを足して二で割ったような力を使っていた。

 

「僕が気になるのはその……僕と名前が似ているのに、別にそれ以外は全然似ていない人が……」

 

「兄さんがウィルで、向こうがウィリアム、ですもんねぇ」

 

 アルマの左隣、ウィルは小さく首を傾げ、そのさらに隣、膝上にユーマを乗せたロータスが同じように首を傾ける。

 改めてアルマが投影されたウィリアムを見るが、ウィルの言う通り、二人の顔は別に全く似ていない。

 

「そうだね。それで言うと能力に関しては僕のと似ている……というか、昔の敵が使っていた魔法を改竄していた」

 

 千年前、アルマが斃した≪創世記の四騎士≫。

 彼はそれらを改竄した魔法を使っていた。

 アルマにとってそこが大きな謎だった。

 彼女の世界、アース666ではとっくに失われた技術なのだから。

 

「つまり……ウィルちたちによく似ているけど、同じってほどでもなくて、でも無関係っていうには似すぎてるって感じかにゃあ」

 

「そういうことだね」

 

 ナギサのまとめにアルマは頷いた。

 ウィリアムの展開していた結界の精度が高かったのが痛かった。

 アルマでも解析に阻害されていたことを考えると、改めて彼の魔術の腕の高さがよく分かる。

 

「…………よく、わからないな」

 

 みんなから少し離れた椅子で腕を組んでいたソウジがぽつりと呟くがそれは誰もが同じだった。

 全員で首をひねり、一部はグラスを傾けたところで、

 

「これは思いつきレベルなのだが」

 

 静かに口を開いたのはマキナだった。

 

「ナギサの言った通り、連中は似ているが違う。だが、その類似性は無視できない。無関係というのはありえず、本来であれば御影やトリウィア個人の資質に依存する力も持っているわけだ」

 

 彼の言葉に、みんなはうんうんと頷いた。

 

「その上で、俺達が生きるマルチバースでは何でも起きる、ということと、並行同位体(ドッペルゲンガー)ではないという前提を踏まえた上で言わせてもらうんだが」

 

 一拍置き、

 

「あいつらーーーーウィルたちの子どもじゃないか? 未来から来た、とか」

 

 

 

 

 

 

 その場に沈黙がおり、それぞれの視線がウィル、アルマ、御影、トリウィア、フォン、アレス、ヴィーテフロアを順番に移動した。

 

「あの」

 

 ヴィーテフロアが小さく手を挙げる。

 

「一応言っておきますがーーーーまだ処女です」

 

 視線がアレスに集中し、彼はソファに座りながら椅子の上で本当にひっくり返るという実に奇妙な芸当を見せた。

 

 

 

 

 

 

「こほん。えー、この場合未来の話だから今がどうこうは関係ないとして」

 

 何度か咳払いをし、アルマは注目を集めた。

 放置しておくと話が進まないからだ。

 ひっくり返っているアレスは置いておいて、

 

「マキナの可能性も、なくはない。時間移動によって縁者が現れるというのは、あり得る話だ」

 

 細かいことを指摘するなら、その縁者に時間関係の能力者がいると可能性は跳ね上がる。

 ただし、ウィルたちの中にそれに該当するものはいない。 

 フォンは加速と減速の概念を操るが、それは時間能力とはまた違うもの。

 

「確かに未来から来た子ども、あるいはそれに類する何か、だと思うんだけど。どうかな、真砂たち女性組はそう考えると自然だけど、そうなるとわからないことがある」

 

 それは、

 

「ウィリアムだ」

 

 灰色の髪の少年。

 アルマの魔法を封印した彼に対する疑問がアルマの中にある。

 

「彼はむしろ、過去の力を使っていた。マルチバースでも残ってもいない、僕でさえ、自分の知識の奥底に閉まっていたもの。彼は妙に浮いている。それに……」

 

 アルマは、マキナを見据えた。

 彼は、彼女の視線を受け止めた。

 

()()()()()()()()、マキナ。子ども説はちょっと無理がある」

 

()()()()()()()()。その上で可能性があるんじゃないかと言っているんだ」

 

 場に奇妙な空気が訪れた。

 二人の視線の交わりは、敵愾心に満ちているわけでも、剣呑というほどでもなかった。

 ただ、真剣味だけがあり、その意味を二人以外のほとんどのメンツが理解できていなかった。

 

「……」

 

 唯一、ウィルだけが悲しそうに目を伏せ、

 

「やあやあやあ、妙な空気だねぇ」

 

 間の抜けた声が雰囲気を変えた。

 

 

 

 

 

 

「これはあれかな、またぞろ≪天才≫が傲慢さと嫌がらせに満ちた、そのくせ否定も出来ない腹の立つ正論を言ってみんなをいらつかせたりしたのかな? いやぁ、よくないと思うよ、僕は」

 

 ラウンジに足を踏み入れたのは青年だった。

 白い詰襟とアシンメトリーの銀髪、男にしては華奢な体躯。

 中性的で、右目元の泣き黒子が艶めかしい、美青年だ。

 

「そんなことはしていないよ、≪艦長≫。そういうのは君たち専用だ」

 

「やれやれ、酷い話だね」

 

 大げさに肩をすくめた彼は、ウィルたちを見回し、優雅に一礼する。

 

「改めて、はじめまして、と言っておこうかな。掲示板では何度か会話をしているけれど。僕はネモ、八代目ネモ艦長だ。この『ノーチラス』のキャプテンであり、今では『ネクサス』のまとめ役をやらせてもらっている」

 

 彼はそのまま優雅にソファに腰掛け、足を組んだ。

 そんな彼の名乗りの中にあった、ネモ、ノーチラスという言葉に転生者組の何人かが反応し、巴が手を上げ、彼に問う。

 

「『海底二万里』でありますか?」

 

「さすがは転生者組、反応が早いね。その通り、僕のご先祖様が、それこそその小説の並行同位体(ドッペルゲンガー)でね。あるアースでは架空でも、あるアースでは実在人物って場合もある」

 

「彼の八代前のキャプテン・ネモは、次元渡航技術を持つアース1231の人間でね。アース1231はマルチバース内でもトップクラスの科学力があるんだが、三百年くらい前、ゴーティアが出現して派手に暴れていてね。当時、僕一人ではかなり手こずっていたから助けを求めて、仲間を集めたのが≪ネクサス≫の始まりだ。それから、彼ら一族は代々≪D・E≫と戦う使命を担い、『ネモ』の名を受け継いでいるというわけだ」

 

「というわけで、キャプテンでもネモでも艦長でも好きに呼んで欲しい。そっちの≪天才≫とはそれこそ赤ちゃんの頃からの付き合いで、彼女がわざわざこの船に転移してきて、大好きなウィルくんが心配でたまらないから自分が作ったネクサスを放り投げて助けに行くとか言い出した時は驚いたものだよ」

 

「おいそこまで言ってないだろ!」

 

「間違っていないだろう?」

 

 顔をしかめつつ、否定をしなかったアルマにネモは声を上げて笑い、その場を見回す。

 

「ロータスとはここ一年ほどの付き合いだし、君たちのことも掲示板を通して知っている。だから、自己紹介はこれくらいにするとして、だ。君たちの子どもだかなんだかよくわからない相手よりも、説明をしないと行けない話があるだろう、≪天才≫?」

 

「………………わかっている」

 

 ネモの言葉に苦虫を噛み潰したような顔をした後、アルマは一度目を伏せた。

 瞼を開き、

 

「正直、君たちにこの話をするつもりはなかった」

 

 言う。

 

「ゴーティアを斃したとは言え、あれは状況によるものが大きい。≪D・E≫の殲滅を手伝ってもらうつもりではいたが、それは普通の下位種の話でしかなかった。それなら、何かあっても僕が守りきれるから」

 

 だが、とアルマは続ける。

 

「状況が変わった。さっきのラーヴァナとの遭遇で全てがひっくり返された。今から説明するけれど、君たちももう無関係ではいられない」

 

 彼女はローテーブルに五指を置き、何度か指でタップ。

 そうして現れたアイコンを指で弾いた。

 

「僕が千年かけてやっと半分にした≪D・E≫上位種との戦いに、君たちは巻き込まれたんだ」

 

 そして、十三枚のウィンドウが展開される。

 そのうち六枚はモノクロで討伐済みを示されているが、残りの七枚は色を宿している。

 先ほどのウィリアムたちのように人物が映っているのもあれば、どこかの街の夜景や風景を映っただけのものがある。

 それぞれのウィンドウには、名前が表示されていた。

 ≪偏在魔軍≫ゴーティア。

 ≪トリックスター≫ロキ。

 ≪大蛇狩り≫素戔嗚。 

 ≪五兵制覇≫蚩尤

 ≪光の簒奪者≫アジ・ダカーハ。 

 ≪膨張聖体≫ネフィリム。 

 ≪審判の書≫アメミット。 

 ≪螺旋常勝戦神≫ラーヴァナ。 

 ≪極限征伐龍王≫ファブニール。 

 ≪法楽解脱≫他化自在天。  

 ≪伝承王≫ドラクロワ。

 ≪泥母≫ティアマト。 

 ≪絶望世紀≫ツィツィミトル。 

 ≪夜の卵≫ヘクセンナハト。 

 

「≪D・E≫上位種十三体ーーーー古い言い方をすれば≪十三の総首長(ダレット・テト・ツヴァ)≫が、僕達の敵だ」

 





ヴィーテフロア
まだ処女です

アレス
横転


艦長ネモ
本名は持たず、ずっと初代の名を引き継ぎ続けている。
≪D・E≫を倒すために全てを捧げた一族






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