超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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クローンシスター

 

「この度はクソ兄貴が迷惑をかけて悪かったわね……! この屑に代わって、雪・T・黒鉄が詫びるわ……!」

 

「おイ、雪ィ? なんで迷惑かけてる前提なンだ?」

 

 コークスクリュードロップキックで可愛らしいピンク色のパンツを丸出しで登場した景の妹という雪。

 彼女は景に土下座させ、その背中に右足を乗せたまま巴たちに頭を下げた。

 強気だが、可愛らしい少女だと思った。

 そして派手だ。

 蛍光グリーンに蛍光ブルーが混じったツインテール。

 瞳は明るい金色。

 着ているのは巴から見てもさほど奇抜さはない現代的なセーラー服。

 ヴィーテフロアよりは身長が少し高いが、アルマとさほど変わらないくらい。

 スレンダーで小柄な、十代半ばの少女。

 だが、よくよく見ればうなじや手首の内側にUSBか何かの端子を挿入できるコネクタのようなものがあった。

 サイバーパンク世界らしいといえばらしい。

 そんな景と雪を前に、巴は新しいビールの缶を空け、トリウィアとヴィーテフロアは買ってきたハンバーガーに舌鼓を打っている。

 二人からしたら珍しいものかと思ったが、そうでもなかったらしく、

 

「お祖父様が発案してもうありますね」

 

 流石はアース111、大体なんでもあるらしい。

 それでも細かい味付けは違うようで、興味深そうにトリウィアがモキュモキュ食べ、ヴィーテフロアはこの世界のマヨネーズを四つほど並べてそれぞれ試していた。

 

「えーと、雪さん、でよいでありますか。まぁ、景さんはいかにもなチンピラであることは一目瞭然ではあるものの」

 

「あレ? 姐サん? フォローしてるカ?」

 

「しかし、我々には特に害はないであります。そこだけは一応」

 

「あレれ? 姐サん? そこダけ? 大の大人が強制ゲザさせられてる現状を助けてはくれないノか?」

 

「そこはまぁ範囲外でありますので」

 

「……本当に、兄貴はあんたたちに手を出してないの?」

 

 雪は怪訝そうな表情を浮かべ、巴たちを見回す。

 対し、トリウィアは肩を竦めた。

 

「さほど長い付き合いではないですが、失礼をされたことはありません」

 

「はい。むしろ、景さんは街の流儀に詳しく、いろいろ親切に教えてくださいますよ?」

 

「ほラ! 雪、聞いたカ? お兄ちゃんはこいつらの前では気の良い近所のお兄ちゃンしてるんだぜ?」

 

「は? あんた、私の兄貴でしょうがクソ兄貴」

 

「うっス……」

 

 ギンッ、と効果音が付きそうな眼光で景を睨みつける雪とそれに圧倒される景に、巴は思った。

 おもろ。

 パワーバランスと関係が色々見えてきた。

 人間関係の複雑さというものは、自分が関わらない限り巴は好きだ。

 休日は子どもの世話をしつつ、人間関係が二転三転どころか百転くらいしている海外ドラマを見るのが好きだし。

 冒険者たちの人間関係が複雑骨折しているのもおもしろい。

 ウィルを中心としたトリウィアたちのハーレム展開も最高だった。

 そのトリウィアといえば、

 

「……」

 

 あいも変わらずの無表情で、ハンバーガーを食べつつ、景と雪の漫才を眺めている。

 

「ほう……今の返しはいいですね……」

 

 ヴィーテフロアの方はなにやら感心していたが、大丈夫なのだろうか。

 大丈夫か。

 大変なのはアレスだ。

 巴はそれを眺めて楽しむだけだし、アレスは困っているのがおもしろい。

 

「……はぁ。身内の恥を晒して悪かったわね。どうやらこいつは大人しくしてるみたいだけど、兄貴には色々前科があってね……今後も気をつけてほしいわ」

 

「大丈夫でありますよ。そんなことがないと思っているくらいには信頼しているでありますし」

 

「姐さん……!」

 

「そんなことがあったら自分らはねじ切るだけであります」

 

「姐さん……」

 

「へぇ……頼りになりそうな人ね……」

 

 雪はじろじろと、巴、トリウィア、ヴィーテフロアの順に視線を移し、

 

「それで、兄貴」

 

「おン?」

 

「手ぇ出してるってわけでもないなら――――面倒事ね」

 

 問いかけではなく、確認だった。

 彼女は腕を組み、鼻を鳴らし、

 

「見覚えのない顔を三人連れ込んで、武装の準備もしてる。兄貴」

 

「あァ」

 

「私の力は不要なわけ?」

 

「そうダ」

 

 景の返事は即座だった。

 彼は顔を腫らしつつ、土下座から起き上がってあぐらをかいている。

 その視線には強い意思を込めていた。

 

「今回はお前の専門外ダ。だから、もうちょイ休暇続けててくれ。こっちはこっちでなんとかすルからよ」

 

 雪は数秒の間、腕を組んで景を睨みつける。

 だが、

 

「……そう。分かったわ」

 

 その場で身を翻した。

 

「それじゃあ、終わったら連絡しなさい」

 

「あいヨ」

 

「じゃあね」

 

 そして、彼女は部屋を後にした。

 

「………………」

 

 残された巴は、思わず首を捻る。

 

「嵐のような人でありましたなぁ」

 

 派手に登場し、颯爽と去っていった。

 景の妹というのは分かったが、まともな会話もしていない。

 細かい話も聞かずに納得してくれたというのは話が早いが、

 

「関わらせたくないんでありますか、オニイチャン?」

 

 揶揄するように巴が笑い、

 

「アルマさん曰く」

 

 トリウィアが食事を終え、咥えたタバコに火を着けた。

 

「ん」

 

 吸い込んだ煙に一度声を漏らしたのは、その煙草が自分のものではなくこの街で買ったものだからだろう。

 

「場合によっては現地世界の人に、力を借りるのも有りという話でしたね。先程の物言いだと、妹さんも何かしらの特技があるようでしたが」

 

「雪は、まずハッカーなんだヨな」

 

「はっかぁ?」

 

 聞き慣れない言葉を鸚鵡返しするトリウィアが可愛かった。

 巴からすれば聞き慣れた言葉だが、確かにアース111では存在しない言葉だろう。

 

「アー、聞かれるとなんて説明すりゃいいか困ルな? まぁ、科装とか電子機器とかに色々ちょっかい掛けて、サポートできるってわけダ。この世界のインフラを大体操作でキる。実際、俺が街に出る時は色々ナビゲートしてくれてたリするしな」

 

 彼女がどれだけのスキルがあるのかは分からないが、ナビゲーターがいるかどうかでは大きく変わる。

 巴からすると迷宮の攻略ではマッピング役が不可欠だったからその有り難みよく分かる。

 それでも、景が雪の力を借りない理由。

 ヴィーテフロアがゆっくりと頷いた。

 

「――――愛、ですか」

 

「………………」

 

 景がなんとも言えない微妙な顔をした。

 

「複雑な関係なンだよな」

 

 景はため息を一つ吐き、

 

「ともかく、俺はあいつを今回のに巻き込みたくねーンだよな。中途半端に関わらせて、あいつが≪夜の母≫になるのが最悪ダ。そもそもあいツ、色々ワケありでさァ」

 

 白と黒の斑髪をくしゃくしゃと掻いた。

 

「あいつハ、体内でネオニウムを生み出す特異体質なンだ」

 

 

 

 

 

 

「ネオニウムというのは鉱石ではなかったのですか? それを体内で生み出すというのはどういう理屈でしょうか」

 

 トリウィアの問いに、景は立ち上がりならが返事をした。

 

「正確に言うならネオニウムに性質が酷似した液体金属だかなんとかっテやつだ」

 

 自分も自分も椅子に座ってビールを手に取り、腫れた頬に押し付ける。

 

「この世界はネオニウムが全てだかンな。色々実験もされテる。雪はその実験体の一つで、デザインベイビーかツ、サイボーグ化もしてル。高純度のネオニウムを生み出せる文字通り金の卵ってわケだ」

 

 ネオニウムはこの街の至るところにある。

 だが、その純度は玉石混交。

『薬座』として生き延びるためにはより純度の高いネオニウムが必要になる。

 そして純度の高いネオニウムは明光グループとギャングたちが躍起になって集めており、価値が非常に高い。

 今、景が手にしている缶サイズでも膨大な金が動くほどだ。

 それを雪は簡単に生み出すことができる。

 実際、景が戦闘で使うネオニウムは彼女から貰っているものだ。

 

「三年前、明光の実験体になってるところを俺が保護シて、面倒を見てル。どこの勢力に奪われないように守ってンだ」

 

 景がダークヒーローと言っている活動も、言ってしまえばそのためだ。

 

「ふむ。特異体質の要護衛人物というわけでありますか。今回は大丈夫でありますか?」

 

「休暇もあったかラ、信頼できるサイバー剣豪に任せテる。だからまァ大丈夫だ」

 

 サイバー剣豪……? と巴は首を傾けた。

 

「ともあれそういうことだかラ、あんま余計な問題に首突っ込ませたくねぇわけだ」

 

「それだけですか?」

 

 しかし、言葉を挟んだのはヴィーテフロアだ。

 

「こういう世界でハッカーがいるというのは大きいでしょう? ヘラが見せてくれた他の世界のアニメでもヒーローものでは椅子に座って主人公をサポートするハッカーは必須でしたし」

 

 何見せてたんだ。

 何見てたんだ。

 

「失礼ですが、景さんはそのあたりの優位性を、危ないからで使わせないというタイプのお方だとは思いませんけれど。危ないなら危ないなりにでも働かせるのかと」

 

 にこにこと微笑みながら、刺さることを言ってくる。

 

「……」

 

 否定は、できない。

 確かに自分はそういうタイプだ。

 それでも、だ。

 景は今回のようなマルチバースという大規模すぎる任務に雪を関わらせたくなかった。

 

「…………あいツは、俺の師匠の忘れ形見なんダよ」

 

「師匠?」

 

「あァ。元カノ」

 

「………………おぉ、つまりは元カノの娘で義理の妹で親子ど……こほん、失礼」

 

 思わず半目で巴を見据えたがスルーされた。

 

「まぁ義理の妹で娘くらいならセーフでは……? うちの国ではたまにありますし」

 

「先輩さン? 流石にお貴族様とは話がちげーんダわ」

 

 それに、

 

「娘つーかクローンなんだよなぁ」

 

「ははぁ。なるホど」

 

 雪・T・黒鉄。

 ミドルネームはトワイライト。

 景がかつて愛した女の遺伝子を使ったデザインベイビーで、サイボーグで、義理の妹。

 妹として見るのは距離感が近く。

 女として愛するにはややこしすぎる。

 

「複雑ですなぁ」

 

「複雑なんだヨ」

 

 

 

 

 

 

≪夜の母≫を見つけること自体は、さほど難しくない。

 儀式というプロセスを踏むため、アルマが既に解析済みだからだ。

 アカシックライトが使えるという前提があるがそれを満たしているトリウィアがいる。

 この街に来て早速≪夜の母≫を二人見つけられたのはそういうこと。

≪夜の母≫に目覚めること自体にはそれぞれでタイムラグがあるらしく、

 

 そして、トリウィアは今夜も新たな≪夜の母≫を見つけていた。

 街の外縁部にある工場ビルだった。

 景曰く、金属の精製工場らしく高さ二百メートルのビル全体で金属加工を行っているらしい。

 トリウィアが知らない金属も多くあり、興味を唆られるが今は後回し。

 ビルの内部は様々な階層やブロックに分かれ、複雑な構造となっていた。

 その一角に≪夜の母≫の反応があった。

 先日は偶然≪夜の母≫が対峙した状態だったが、今回は一人分だ。

 時刻は深夜、工場自体は自動化されているらしく、

 

【病ん姫:深夜の工場で一人残っているというわけでしょうか?】

 

【ヤクザい師:自動化工場つっテも、無人ってわけじゃねーかラな】

 

 煙草を咥えたトリウィアの歩いている通路は狭い。

 ベルトコンベアやプレス機が所狭しに並び、稼働しており、音もうるさかった。

 機械の向こう側も満足に覗けず、中々見慣れないネオンライトがあちこちで発光しているが、室内全体の照明は落とされているので視界は悪い。

 それでも迷いなく進み、ある一点で彼女は足を止める。

 

【先輩さん:配置につきました】

 

【病ん姫:私もです】

 

【ヤクザい師:おーケー。それジゃあ、やるカぁ。姐さん? 準備はいいカ?】

 

【元軍人公務員:えぇ。問題ないであります】

 

≪夜の母≫がいる場所を四人で四方から囲む。

 前回は様子見のためにトリウィアが単騎で突っ込んだが、戦力的にはさほど問題ないことがわかった。

 だから今回は巴が行って、他の三人はバックアップという形だ。

 トリウィアは待機のため、煙草を吸うのを控えながらも、若干の口寂しさを感じ、

 

「――――」

 

 つんっ、と鼻に付く匂いに目を見開いた。

 

【元軍人公務員:トリウィアさん?】

 

【病ん姫:先輩?】

 

【ヤクザい師:なんカあったか?】

 

 トリウィアは無造作に足を進める。

 その先は少し広い空間となっている。

 中央で足を止め、魔法で光の球体を作り、その場を照らす。

 そこに≪夜の母≫らしき人間はいなかった。

 あったのは絵だ。

 ()()()()()()()()()

 

「これは……」

 

 夜空の下、十字架に掛けられ、燃やされる七人の少女。

 中央には漆黒の卵。

 まだ乾燥しきってないのか、周囲に塗料の刺激臭が漂っている。

 そして、

 

魔女の宴(ヴァルプルギスナハト)

 

 アース111の帝国語でそう書かれていた。

 帝国における究極魔法であり、ヘクセンナハトによく似た言葉。

 ずいぶんと癖が強い字だが、間違いない。

 このアース984であるはずのない文字。

 それが意味することは、一つだ。

 

「どぉう? 結構いい感じに描けたでしょぅ?」

 

 背後から掛けられた声に、トリウィアはゆっくりと振り返る。

 暗闇から、トリィの作った光源に照らされて現れる少女。

 明るい青と赤緑黄色とグラデーションが掛かったの長髪。

 見覚えのあるカラフルな髪はサイドテールに。

 以前のストリートスタイルとは違い、白のセーラー服、同色の厚手のタクティカルジャケットを袖を通さず肩に乗せている。。

 サングラスは鋭いスポーツタイプのもの。

 ただし、それらの服も様々な色のペンキを被ったように汚れていた。

 両手には以前と同じグレネードランチャー。

 彼女を目にし、トリウィアは煙草を指で挟み、煙を吐き出し、

 

「クロイツ」

 

「はぁい、どうもぉ。トリウィアさぁん」

 

 サングラスを押し上げながらクロイツがにへらと笑った。

 

「ここにいるということは――」

 

「――――言うまでもないよねぇ?」

 

 クロイツがグレネードランチャーを握った手を頭上に掲げ、

 

「『正義の斬柱』、『異端の三叉』、『鋼鉄の乙女』」

 

 彼女の周囲に、ギロチンの刃、両端がフォーク状となった鉄器、内部に大量の針が張り巡らされた棺が出現した。

 つまり、それが意味することは、

 

「あなたも……!」

 

「そぉーうだよぉ? 私は三つぅ――――トリウィアさんたちは何個集めたぁかな?」

 

 




雪・トワイライト・黒鉄
景の元カノのクローン娘の義理の妹のツンデレ(デレ済み)ハッカーヒロイン


流石に苦笑い


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