超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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それではこちらをご覧ください

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天才ちゃんに引き続き、ひふみつかさ先生@Aitrust2517より頂きました!!
でっっっっっっっ!!!!
えっっっっっっっっ!!!!
この乳を押し付けてきてウィスパーボイスとかえっちすぎるでしょ。

オリジナルキャラのイラスト化・支援絵は本当に幸いなことです、本当にありがとうございます。
これはメイン4人が揃ったりとかも次の夢ですね。

というわけで先輩回です


トリウィア・フロネシスー1つの灯ー

 ふと目を開けた時、トリウィアは喉の渇きと軽い頭痛を感じた。

 

「……?」

 

 状況がつかめず、頭がぼーっとしていた上に片目の視界がぼやけている。

 

「――――ふむ?」

 

 眼鏡がずれているなと、判断し手を動かそうとしたら両腕に重みを感じて動きが止まる。体に意識を向ければ何故か倒れているようで、おまけに上下に妙な異物感や重みや鈍痛やらがある。

 半分ぼやけた視界で視線をずらせば、

 

「…………なるほど」

 

 自分の研究室に倒れた上に、本や書類が雪崩を起こしてそれに飲み込まれていた。

 状況を把握し、長く息を吐く。

 少し無理をしていたなと、思った。

 壁の3辺は本棚が天井まで並んでおり、ソファやいくつかの机には書類や魔導書、文献が散乱している。窓際には簡易キッチンがあり、ちょっとしたお茶を淹れるくらいの設備がそろっている。

 床は石畳に絨毯を敷いているが、そこから伝わる気温は少々肌寒い。

 大きな窓から差してくる夕日は黄金色で、もう夕方なのだろう。

 夏が終わり、秋になった。

 少しずつ、気温が下がってきている。

 

 つまり、卒業が近づいてきているということだ。

 学園は3年制であり、卒業試験もある。

 加え、トリウィアの場合はさらにやることがあるので最近はそれの準備で徹夜をすることが多かった。

 徹夜自体は慣れている。

 元々ショートスリーパー気味な上に、寝ずに勉強というのは幼いころから自分にとっては当然だった。

 だがここ数日、研究だけではなく教師陣との打ち合わせ、通常授業やフィールドワーク課題、学校行事、主席業務も相まって純粋な作業数が多かった。

 夜明けあたりに軽食を取ったのは覚えているが、それ以降の記憶がないのでそこから眠っていたのだろう。

 眠ったというか、気絶していたというか。

 

「ふわぁ……」

 

 欠伸をしながら、息を吐く。

 脳みそがふやけている。

 気絶前に作業は一段落していたのでまぁいいなとも思う。

 椅子で座ってそのまま眠ることも多いし、本や書類の山の中でも眠れなくはない。むしろ、本の匂いが心地良いくらいだ。

 

 もう夕方だし、このまま眠ろうかなと思った所で――――ドアがノックされた。

 

「あ」

 

 先輩? とたずねてくる声は「彼」のもの。

 大丈夫ですか? 入りますよ、といつもならノックを待っているはずだが、

 

「あ」

 

 そういえば夕方前くらいに主席関連の相談を受ける予定だった。

 そして時刻は夕方。自分で言うのもなんだが時間は守るタイプだ。だから、心配してきてくれたのだろうと思う。

 そして、自分の状況を再度確認して起き上がろうとして――――ふと、ちょっとした欲望が湧いてきた。

 なのでそのまま視線だけ扉に向けて、

 

「―――どうぞ」

 

 そして、入ってきた「彼」の驚いた顔と声が部屋に響き渡った。

 こういう時、どんな顔をするのか「知りたい」と思ったので、満足である。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、ごめんなさい。反省しています、いやほんとほんと」

 

 「彼」の半目を受けながら、窓際で煙草に火をつけ煙を吸い込む。

 

「―――ふぅぅぅ」

 

 煙を肺へ送り込んでから、軽く唇を突き出しながら煙をゆっくりと吐き出した。

 開け放った窓から秋の風が入り込み、代わりに紫煙が外へと吸い込まれていく。

 少しまえまでぼやけていた頭に、少し冷たい風は心地いい。

 窓の外からはいくつかの校舎と運動場が見えて、この時間でも熱心な生徒が訓練を行っていた。

 というか、大きな翼を生やした一人が大地の十数人に向かって絨毯爆撃を行っている。

 それなりに離れているが、それでも高笑いが聞こえ、ちょっと焦げ臭い匂いも感じた。

 二年主席の龍人族だ。

 何をしているのか……とまでは思わない。

 3年の自分もこの時間まで寝ぼけていたし、2年主席が魔力と種族特性任せに同級生や下級生を戦闘訓練と言いつつも蹂躙していても何も言えないだろう。

 そう思うと、まともなのは1年主席の「彼」だけかもしれない。

 

「ふっ……流石は私の後輩君」

 

 なぜか背後からの視線が強まった。

 それにしても高笑いと爆撃音は聊かうるさい。

 なので、太もものホルスターから銃を抜き放ち、トリプルアクセル決めて翼から火炎弾を飛ばしていた二年主席を撃墜させた。

 一瞬、運動場が静寂になり、地に足を着けていた生徒たちがこちらを向く。

 彼らに向けて人差し指を口元に当てて「静かにするように」と口だけで伝える。彼らの中に獣人族が何人かいたので、視力が良い彼らにはこれで伝わるだろう。

 実際、何人かは頷き、何人かはおじぎをし、何人かは親指を立てて笑っていた。

 そのまま無言で、上半身から地面に突き刺さった二年主席を囲み始めている。

 

 ちょっとしたサバトみたいだな、と思う。

 獣人やらエルフや、南方の≪聖国≫の儀礼服を着ているものが何人かいるので余計にそれっぽい。

 あぁいう光景も学園の良さの一つだなと、トリウィアは思った。

 

「さてと……後輩君」

 

 振り返った先、「彼」は少し怒ったような顔で書類を突き付けてくる。

 そういえばこういう顔は初めて見たかもしれない。

 心配したんですからね、なんてことを言ってくるのが可愛い。

 

「分かっていますよ。……そうだ、珈琲淹れましょうか。心配させたお詫びです」

 

 ポットに湯を張って火にかける。

 青と白のマグカップを二つ用意し、珈琲豆をミルで細かく挽いていく。

 お茶や珈琲は集中力を高めるのに助けになるので、色々な地方のものを取り揃えている。嗜好品が概ね高価な≪帝国≫では贅沢の代名詞だったが、≪王国≫ではそこまで高いわけではない。

 夏の遠征の際にエルフ族からハーブティーをいくつか貰ったし、珈琲は≪聖国≫から生豆ごと取り寄せたもの。

 ドワーフ製のガラスポットにフィルターを張り、豆を入れて、

 

「この瞬間が好きなんですよ、私」

 

 お湯をほんの少し入れて、豆を蒸らすことで香りや旨味を抽出する。

 部屋の中に香ばしい珈琲の香りが一気に漂いだした。

 ぼやけていた意識が完全に覚醒する。

 何度か分けてお湯を注げば完成だ。ガラスポットからマグカップに移し、青のマグカップには何も入れず、白のマグカップには角砂糖を二つ。

 

 自分はブラックが好きだが、「彼」は甘い方が好きだと知っている。

 

「はい、どうぞ」

 

 これで誤魔化せませんよ、という顔をしながらも「彼」は両手で受け取ってくれる。それに微かに笑みを浮かべながら、自分も向かいのソファに座り足を組む。

 

「さてと……前回のフィールドワークのフィードバックですね?」

 

 四日ほど前、「彼」と自分、そして今頃サバトの生け贄になっているであろう龍人族主席、それに各学年の成績上位者数人が行ったものだ。無論御影もフォンも一緒だった。

 王国の北の方で繁殖期に入った魔獣の群れが人里を襲うという事件があった。

 数年に一度起きることがある魔獣災害の一つ。しかしかなり大規模なものだった。

 王国の対魔獣組織である≪不死鳥騎士団≫も出動し、トリウィアたちも魔獣を撃退した。

 それに関するレポートである。

 たかがレポート一つではあるが、それでも主席である以上は一定のクオリティが求められるし「彼」自身そうであるように心がけている。

 なので、「彼」が書いたものをトリウィアが添削することはさほど珍しくはなかった。

 

「……ふむ」

 

 片手で煙草を、片手でマグカップを持っているので書類を魔法で浮かす。単純な浮遊魔法だが、書類や本に目を通す際は便利で有用性が高い。

 紫煙を燻らせながら一通り最後まで目を通し、

 

「えぇ、これなら問題ないでしょう。後輩君も随分この手の課題が上手になりましたね」

 

 書類を纏めて「彼」に返すとわかりやすくほっとしていた。

 が、すぐに顔を引き締めて、まだ怒っていますよ、と言わんばかり。

 思わず苦笑してしまう。

 

「……えぇ、ちゃんと反省します。流石に根を詰め込みました。ほら、卒業試験だけではなく私は研究員試験もありますからね」

 

 基本的に学園は3年制だが、成績優秀者且希望者は卒業後も学園に残り研究生として在籍が可能となる。かなり難易度が高く、数年に1人2人程度いるかどうかの珍しいものだ。

 そもそも学園に来るのは卒業後の進路の為という理由が多いので、卒業できるなら卒業していく。

 トリウィアのようにずっと研究室に籠りたがる方が稀なのだ。

 基本的に研究員試験は年末前にあり、年明けには合否が決まる。

 故に秋は大詰めの季節だ。

 大丈夫ですかと、「彼」が首をかしげながら問いかける。

 「彼」の癖だ。

 御影はその首筋にむしゃぶりつきたいとか、その仕草だけで酒が飲めるとかよく言っているが、ちょっと分からない。

 鬼は性欲の発現の仕方がワイルドすぎる。

 同意を求められても困るのだ、あの肉食系お姫様は。

 まぁ、可愛いことは間違いないと思う。

 

「えぇ。大枠はそれこそ気絶するまで時間を掛けたので終わりました。後は細部の調整くらいですね。この手の作業は得意だったし、時間の余裕はそれなりに」

 

 あまりこういう課題で追い込まれるのは好きじゃない。

 というか、時間に余裕があると「知りたい」欲が暴走して、結局時間が足りなくなるのだ。

 

「なので、私の方は心配いりませんよ。……えぇ、はい。体調も気を付けます」

 

 中々信じてくれない。

 わりとかっこいい先輩をしているはずなのだけど。

 なぜか分からないが、何かイベントを熟すたびに「彼」からの尊敬度が減っていき、むしろ仕方ないなぁというかお世話されることが多くなっている気がする。

 そういえばこの前は碌に使っていない自室の掃除をしてくれた。

 概ね携帯食料や高カロリーのエネルギーバーで食事を済ますことが多いが、何かと食堂に連れて行ってくれたり、夜食を作ってくれたりもする。

 研究者の誇りたる白衣に珈琲をうっかり零した時も、妙に慣れた様子で染み抜きをしてくれた。

 

「おや……?」

 

 わりと先輩らしいことをできていない……?

 否、とトリウィアは短くなった煙草を灰皿に押し付け、新しいものを咥えて火をつける。

 火をつけようとしたら、パチンと「彼」が指を鳴らして火をつけてくれた。

 初歩的な「加熱」単一系統使用で、トリウィアが着火の際に口に咥えたまま行うもの。

 

「…………すぅ――」

 

 煙を吸い込み、

 

「―――ふぅ」

 

 吐き出し、思った。

 おやおや……? この後輩君、完璧か……? 

 いや、良くない。かっこいい先輩として、してもらっているばかりでは決して良くない。

 今しがたレポートを見たばかり。そのレポートは特に修正することはなかったけれど。

 であれば、先輩としてそれっぽいことを言うのならば、

 

「後輩君は、卒業後の進路とか考えていますか? 君の場合、引く手数多でしょう?」

 

 おそらく史上初の全属性全系統持ちだ。

 その上でこのまま学園主席で卒業すれば王国だろうとどこだろうと食事には困らないだろう。

 

「それに、君の場合≪皇国≫の王族や鳥人族という手もありますしね」

 

 途端に「彼」が何とも言えない表情をした。

 原因は当然御影のことだろう。

 あのスーパーアグレッシブ皇女は着々と「彼」を攻略している。

 最近、一緒に風呂に入るまでいったとか聞かされた。

 一線を越えにいくつもりはないらしいが、越えなければ何しても良いと思っている節がある。

 彼女が「彼」をあの手この手で攻めるかはもはや学園の名物になりつつあり、一部ではいつ一線を越えるか賭けにもなっている。

 「彼」もまんざらではないが、その好意を直接受け入れる様子がない。

 同性が好きなのかとか、恋愛に興味がないのかとか、そもそも性欲が無いのかと思ったことはあるがそんな様子はない。

 御影は勿論、自分やフォンにもたまに視線が行ったり、赤くなったりしているのは知っている。

 

 ただ―――それは彼の根幹に関わる問題だと、トリウィアは思う。

 それはきっと、簡単には解決しないものだ。だからこそ御影は3年かけてどうにかしようと思っている。

 或いは、これはトリウィア自身のただの所見だが―――踏み出すことそのものを恐れているようにも見えた。

 

「ま、あと2年少しありますし、君の可能性は沢山ありますからね」

 

 例えば、

 

「私も研究員は2年ほどの予定ですし―――一緒に、帝国に来るとか」

 

 ぽつりと、よく考えずに漏れた言葉を呟いた。

 えっ? と彼が目を丸くして、

 

「……」

 

 自分も漏らした言葉を振り返り。

 あれ、わりと凄いことを言ってしまったのではと今更ながらに思った。

 

「……」

 

 しばらく秋の夜の風と妙に気まずい、けれど頭の先がムズムズするような空気が流れて、

 

「……あー、一本吸います?」

 

 誤魔化すように煙草を一本差し出して、慌てた動きで「彼」も受け取った。

 意外だったが、「彼」も煙草は吸える。といっても好きというわけではなく、たまに自分の付き合いで一服する程度だ。

 「彼」も浄化系統持ちなので体に悪影響が出ないので安心だし。

 煙草を咥えた「彼」は立ち上がり窓際に移動して、さっきの要領で火をつける。風属性の魔法を使えば匂いや煙は他人に及ぼさなかったり、匂いを付けずに吸えるのだが彼はそのあたり気にして、外か窓際かでしか吸わない。

 悪いことではない。

 折角なので同じように窓際へ。

 日が沈み、もう夜だ。

 一服したら明かりをつけないといけない時間帯だ。

 運動場に目を向ければ、2年主席の龍人が十字架に掛けられて周囲を松明で囲っていた。 

 やはりサバトだ。

 

「…………後輩君、火、いいですか」

 

 「彼」は指を鳴らそうとして、しかし身体を寄せて来たトリウィアの意図に気づいたのか手を止め、「彼」も少し体を屈める。

 じりりと、「彼」とトリウィアの煙草が触れ合い、火が移る。

 

 2人は真っ暗な部屋に包まれて―――明かりが一つ灯っていた。

 

 

 

 

 

  




「彼」
煙草は生前、付き合いでたまに吸う程度。
先輩がわりとずぼらなので面倒を見がち

先輩
ぱっと見完璧美人だけど私生活がずぼらなお姉さんって最高じゃないですか?
そんなお姉さんとシガーキスって最高じゃないですか?
雰囲気とかっこよさで生きているので、勉強や研究以外はだらしない。
気づいたら「彼」から衣食住サポートを受けていた。

2年主席龍人さん
レアな龍人種。主席なので滅茶苦茶優秀……が、なんかアレな気配



天才ちゃん
まぁそういう未来の方が、彼は幸せになるのかなと思ってしまう


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