超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

47 / 169
【脳髄転生推し活記録】 その3 -遭遇ー

 

 

「我が名は()()()()()……ふふふ……くくっ……よろしくな、少年!」

 

 趣味の悪いシャツの男は、何が面白いのか笑いながら名乗った。

 

「そして、この男は――――()()()()()()!」

 

「知っていますが。マックさん、大丈夫なんですか? この人」

 

「どうだろうなぁ」

 

 店の店主を紹介するように、アレスにとってはとっくに知っている男の名を教えてくれた。

 マクガフィン・バウチャー。通称マック。

 肩を竦める男は雑貨屋喫茶≪GBA(グッドアンドバッド・エンジェルズ)≫の店長であり、アレスの古馴染み。

 店の右半分に数席のカウンターとテーブル、もう左半分には生活雑貨や自家製パン。

 裏社会の親玉という風貌だが、手先は器用で口も堅い。

 

「くくく……ジョン・ドゥにマクガフィン……笑えるな全く……」

 

「ミスター・ドゥ。マックさんの名は彼の父母から授かったものです。それを笑うのはどうかと」

 

「あっ、はい」

 

 アレスの正論に、ジョンは何も言えなかった。

 名無しの権兵衛(ジョン・ドゥ)

 代替可能貴重品(マクガフィン)。 

 アース・ゼロやその他多くの世界ではそれなりに知られた意味の単語であるが、残念ながらアース111には存在しないため、誰にも通じない。

 

「すまぬな、マック」

 

「いいっすよもう」

 

「流石は我が親友」

 

「会って、というか王都に来てまだ2,3か月でしょ」

 

「十分では?」

 

「…………2,3か月? 僕と同じくらいにこっちに?」

 

 アレスはこの5年間≪共和国≫にいて、この春に≪アクシア魔法学園≫に入学するために王都に戻ってきた。週末にしか戻ってきていないにしても、同じタイミングで王都に引っ越したというのならどこかで会ってもおかしくないはずだが。

 それもこんな変なシャツを着た男なのに。

 

「ふむ、まぁそういうこともあるだろう。俺は休日は家に引きこもっているタイプだしな」

 

「………………はぁ」

 

 休日の過ごし方なんて人それぞれなのだが。なんか釈然としない。

 

「とにかくだ!」

 

 ジョンが手を叩く。 

 精悍な顔つきだが、致命的にシャツが合っていない。

 

「儲け話だ。何も、無為に日々家に引きこもっているわけではない」

 

 平日も引きこもっているのか……? とアレスは思ったが口にしなかった。

 正直、さっきのウィル・ストレイト一行で大分気疲れしたので早く帰りたい。

 朝食もまだなのだ。

 初対面の怪しい男の儲け話なんて詐欺の常套句。

 胡乱な目でマックを見るが、肩を竦めて終わり。

 話を遮ったりしないということは、そこまで悪い話ではないのかもしれない。

 それくらいの信用を、アレスは彼に置いている。

 

「ふっふっふ……俺の溢れる脳髄は日々、革新技術を生み出しているのだが」

 

「脳髄って溢れるんすか?」

 

「漲る、の間違いでは?」

 

「溢れる! 脳髄が! 思いついた! それは! 奇跡の調味料! メィヨー・ソース!!!」

 

 やたらめったら大きな声だった。

 無駄に両腕を広げて天を仰いでいるのが絶妙に鬱陶しい。

 それはそれとして、

 

「…………メイヨーソース?」

 

「ノン! メィヨー・ソース! 下唇を使え少年! メイヨーではない、ンメィヨォ、だ!」

 

 キレそう。

 マックの店に来るだけだったので愛刀はない。

 

「そのンメイヨォってのはなんなんすか? 奇跡の調味料、とは」

 

「うむ。何、量産は別に難しくない。だが同時に何と合わせても上手い優れモノだ。世にはあらゆる食事にメィヨーを懸けるマスター・メィヨラーなる者もいるという」

 

「失礼。ドゥさんが思いついたのでは?」

 

「そして作り方は!」

 

 刀が合ったら鯉口くらい切ってたかもしれない。

 

「鳥の卵黄をな? 食用油、酢と攪拌しまくるのだ。そうするとだんだん白っぽくなっていって、ねっとりとしたソースになる。もちろん、品種によって手順や量は要調整だが、十分可能な範囲だ。とりあえず一度作ってみたいので、材料を分けて欲しいのだが……」

 

 卵黄、油、酢を混ぜたソース。

 

「それは……」

 

「……………………マヨネーズでは?」

 

「マヨネーズあるのか!?」

 

 仰天したジョンにマックが店の左側、調味料の棚を指す。

 どたどたと足音を立てて、彼が掴んだのは黄色味を含む白の瓶詰ソース。貼り付けられたプリントにはデフォルメされた老人が満面の笑みでお茶碗に盛られた米にとぐろを巻いてかけていた。

 

「何者だこのジジイは! マヨラーではないか!」

 

「初代国王陛下です。不敬罪で通報しますか?」

 

「この人世間知らずだから大目に見てやろう」

 

「くっ……この……初代陛下様……! 貴殿は……!」

 

 敬意を見せたので通報はしないでおく。

 呻くジョンはマヨネーズを棚に戻し、マックとアレスの所まで戻って、

 

「ならば次だ!」

 

「切り替え速いっすねー」

 

「まだあるんですか……」

 

「飯の次は文化! 物語!」

 

「物語……本か何かですか?」

 

「うむ!」

 

 頷きは力強かった。

 アレスも勉強のために参考書は読むが、純粋な読書の習慣はあまりない。

 

「マックさんの店って本売ってましたっけ。見たことないで気がしますけど」

 

「あるよ。言ってくれれば出す」

 

「フハハ! ならばこれも加えてもらおう! タイトルは――――『モモ・タローと3人のお供』!」

 

「『モモタロウ』のパクりっすか?」

 

「『桃太郎』あるのか!?」

 

 デジャブを覚えた。

 そして『モモタロウ』はアレスも知っている。

 

「皇国と王国のハーフである桃太郎が魔族がはびこる島に向かって、龍と聖狼、神鳥共に旅し、魔族を島ごと消滅させる冒険譚でしょう。吹き飛ばした島の地下に金鉱があって大金持ちになる成功譚ですね。王国ではわりと人気の話です」

 

「えぇ……? なんかローカライズされてるし凄い派手ではないか……」

 

「これも初代国王陛下が自ら子供向けに書かれたお話っすね」

 

「Oh……国王陛下……」

 

 ジョンが天を仰ぐ。

 アクシオス王国初代国王。魔族大戦の際に小国をまとめ上げ統合し、王国を作り上げたカリスマは文化的な面でも現在の王国に多大な影響を与えている。ちなみに先ほどのマヨネーズに米、というのも初代国王の好物だったとされるもの。彼はこの地域の旧王国領出身にもかかわらず天津皇国の食べ物や調味料を好んだという。

 

「…………ならば! 次が本命だ!」

 

 脳髄の男―――なんだそれ―――は諦めなかった。

 その不屈の精神だけは見習ってもいいかもと思い。

 いや、やっぱいいやと思った。

 話半分に聞き流しつつ、パンコーナーに視線を向ける。いつも食べるものは大体決まっているが、無駄な時間を潰すにはちょうどいい。

 

「聞くがいい、マック。その名も≪ハーバー・ボッシュ法≫だ」

 

「はぁ。人の名前みたいっすね」

 

「フハハ! これはまさしく魔法の技術! ほんとに技術革新をしてしまうだろうなぁ!」

 

 パンコーナーに並んでいるのは主食にもなるバケットや食パン、おかずにもなる総菜パン、それに菓子パンの三種類。どれもマックの手作りなのだから恐れ入る。数としては多くはないのだが来るたびにバリエーションが変わる当たり、本人の細やかさと凝り具合が伺える。

 アレスのお気に入りはスコーンだった。

 

「これはだな、聊か専門的話になるので一先ずざっくり話し、詳細は後で実践する時に説明するが。あー……水と空気を特定の気体……石炭とかでもいい。これを上手いこと反応させてたな。アンモニア……さらに別の物質を生み出せる。これを基にすれば食物の肥料に加工できてだな」

 

 自慢ではないが、アレスは紅茶を淹れるのが得意だ。

 先ほどもウィルたちに褒められたのは、実は嬉しかった。

 何より≪アクシア魔法学園≫において完璧超人と謳われる天津院御影に褒められるというのは、ちょっとした勲章ものだ。

 少し迷って、やはりスコーンとバケットをトングでトレイに取る。

 ≪共和国≫の食事は全体的に味付けが淡いものが多かったので、完全にそれに慣れてしまっている。

 そのままマックたちの下へ持っていき、

 

「そうすればだな、空気から肥料を生み出し農業に転用する―――つまり『空気からパンを生む』ことができるわけだ!」

 

「次は錬金術の話ですか?」

 

「…………………………なんと?」

 

「マックさん、会計を。……いえ、だから今度は錬金術でしょう、それ」

 

「ほいほい。確かに、そういうの研究してる連中はもういますよ」

 

「……………………そうなのか?」

 

「魔法で物事を為すのではなく、魔法の結果からより大きな事を為す。或いは魔法を用いなくてもいい技術を生み出す、というものですね。歴史は古いですが、ここ20年の各国の技術交流の活性化により聊か先細りしていると聞きます。もちろん、無くなることはないでしょうが」

 

 魔法で炎を生み出すのは魔法学の分野だが、その炎で発生した灰から石鹸を作る。

 魔法で水を生み出すのは魔法学の分野だが、その水に酵母を混ぜて発酵し、酒を造る。

 魔法で植物を成長させるのは魔法学の分野だが、その植物から薬を作る。

 勿論、魔法を一切介さずともいい。

 個人の系統は完全に先天性故、どうしても手の届かない範囲がある。それを補うのが古来、錬金術の役目だった。

 

 言葉通り、王国を中心に技術交流が進み、各系統同士の代替・互換法が広く伝わっている故にかつてほどの需要は減っている―――というのが学園の錬金術の講義のガイダンスで聞いた話だ。

 

「空気から肥料を生む……というのは、悪くはないと思いますけどそもそも農業従事者の方は『活性』や『生命』は持っているのが基本ですし、やはりニッチでしょう。特に王国は土地が肥沃ですし、さらにいえばそうでない帝国にしても限られた系統でも大地を豊かにする魔法は流通しています」

 

「…………それも、初代国王陛下が?」

 

「いえ、トリウィア・フロネシスさんが」

 

「………………………………………………そっかぁ」

 

 ジョンがなんともいえない妙な顔になりながら頷いた。

 先ほどアレスの家で無表情でお茶を啜っていた―――少なくともアレスにはそう見えたし、そのドヤ顔は近しい者か、彼女をよく観察していないと分からない―――オッドアイの女性は紛れもなく歴史に名を残す才女なのだ。

 王国に来て4年目、在学中に発表された系統構築は数知れず。

 「各系統の応用・代替構築」というあまりにもおおざっぱなテーマで学園研究生として認められたのは彼女の有能性あってのことだ。

 

 ジョンの脳裏に無表情でどや顔ピースするトリウィアが思い浮かんだ。

 

「つーか、ジョンさん、それこそ錬金術師だと思ってましたわ」

 

「なんということだ。俺は脳髄の錬金術師だったのか……!?」

 

「その脳髄への執着は一体……」

 

 恐ろしさしかない。

 マックに勘定をしてもらい、スコーンとバケットの入った紙袋を受け取る。

 それならば、もはやこの場に用はない。そんな言い方はどうかと思うし、いつもならマックと軽く雑談するが今日は例外だ。

 

「難しいな、知識無双……アルマめ、これらを広めてもいいか確認したら何も言わなかったのはそういうことか……絶対ニヤケていただろうに

 

「それよりもジョンさん、いつものないんすか?」

 

「むっ、あぁ。それなら用意している」

 

「うっひょー! これですこれです!」

 

「……?」

 

 気配を消して去ろうと思った時だった。

 ジョンがポケットから折りたたんだ紙を渡し、マックが狂喜乱舞している。

 

「……」

 

 正直、気になってしまった。

 マックは冷静だし、大人だ。アレスが信頼する貴重な人物。

 父のことで色々ありながら、それでも昔と付き合い方を変えてくれない人でもある。

 そんな男が、声を上げて喜ぶものとは、

 

「………………銃の設計図、ですかこれは?」

 

「むっ。あぁ、そうだ」

 

「これは……ドゥさん、そういう設計士で? 専用の製図盤とか使ってとか、それこそ何か魔法で?」

 

「? 否、フリーハンドの手書きだ。頭の中の図を起こしただけだな」

 

「……」

 

 思わず息をのむ。

 ノートの切れ端に書かれたそれは極めて正確な銃の設計図だ。フリーハンド、ということは定規やコンパスといった製図機器を使っていない。にもかかわらず直線や円が一切のブレなく正確に描かれている。

 銃の三面図、内部構造、細かいパーツや火薬の調合方法。

 そういったものが印刷でもされたかのような緻密さを持つ。

 専門書のページを切り取ったと言われても納得するレベルだ。

 

 もしかして、高名な銃職人、或いはそれこそ錬金術師ではないかと思う。

 

「しかしその、これは一体」

 

「あぁ――――非魔法・火薬式六連装散弾銃だ」

 

「六連装散弾銃」

 

 思わず眉間を揉む。

 散弾銃、というのは知っている。

 銃と言うのは基本的に魔法の発動媒体だ。弾倉に魔力を込めて、発動を円滑に行うものであり概ね帝国では弾丸自体に固定化された魔法を用いることで戦力の均一化を行っているという。

 非魔法・火薬式は皇国で用いられることがあると聞くし、散弾銃というものは知っているが、

 

「六連って……」

 

 銃身六つが六角形で纏めて無理やり撃つ構造のようだが、それにしたって無駄ではないだろうか。殺傷力と言う点では確かに高まるが、普通に撃つには反動が尋常ではないだろうから何かしらの肉体強化が必要だが、敵を殺すならその強化した肉体で斧でも振り回した方がいいだろう。

 

「そもそも構造的に撃てるんですか?」

 

「設計図通りに作れば、だな。実際にできるかは知らん。ものがものだけに、ミリ単位でも設計とズレれば撃った瞬間に銃ごと撃った者がぶっ飛ぶ」

 

「欠陥品では……」

 

「暇つぶしで書いたものだしな」

 

「暇つぶしって」

 

「正直、俺は絶対に使わん。産廃だ産廃」

 

 そんなレベルではないのだが。

 何故そんなものをこんな精度の設計図で、と思うが、それこそ暇つぶしだからなのだろう。

 

「何言ってんすか! それが良いんじゃないっすか! ロマンっすよ、ロマン。いやー、ジョンさんが持ってきてくれる銃最高っすわ。最初これがなかったら秒で店追い出してましたもん。

そうじゃなくても出禁にしてた」

 

「ん? 友よ、今なにか厳しいこと言ってないか?」

 

「へっへっへ。こいつはちゃんと保管しておかねーとな……ちょいと裏に行ってきます。それとアレス、新しい紅茶の葉を仕入れて渡そうと思ってたんだ。それも取ってくるから待っといてくれ」

 

「えっ……」

 

 ウキウキと巨大な身体を揺らして店の奥にマックが消えてしまった。

 そうなると、この謎の、そして変な男と二人残されることになる。

 紅茶の葉をくれるというのなら欲しいし、そうでなくても店主が店頭にいないのもどうかと思う。

 溜息を吐きつつ、脳髄の男を見る。

 そして、思っていたものと違うのを見た。

 

「――――」

 

 ジョンは、マックの背中を目を細めて見つめていた。

 それまでのむやみにテンションの高い様子とはまるで違う、感情を込めた瞳だった。

 

 その時、アレスに電流が走る。

 アレスは雷属性5系統を網羅しているが、そういう意味ではなく。

 

「……ドゥさんは、帝国から来られたのですか」

 

「むっ? 何故」

 

 理由を聞かれ、垂れた前髪を弄りながら少し言いよどみ、

 

「帝国では、その手の……その、男性同士は基本禁じられていると聞きます。王国ではまだ少数派ですが法律としては認められていると言いますし……」

 

「……………………否、勘違いだ。そういうことではない。というか認められているのか王国。ジェンダーレスが進んでいるな……そういえばオカマもいたし……」

 

「初代国王陛下が解禁したそうです」

 

「先進的すぎる」

 

 こほんと、ジョンは咳払い。

 

「勘違いだ、少年。そういう話ではない。ただ……そうだな。マックは俺の昔の戦友によく似ている。あの手のロマン武器に目を輝かせるあたりな、だから懐かしくなっただけだ」

 

「…………貴方は、大戦の経験者で?」

 

「んん……ま、そんなところだ」

 

 苦笑しながら、彼は短い髪の頭を掻く。

 

()()あった……全くいろいろだ。何の因果か巡り巡ってこの街に来て、昔の連れのそっくりさんに出会うから人生とは何があるか分からんものだ」

 

 マックが入っていた店の奥を見る目を、アレスは知っていた。

 似たような目をしてる人を見たことがある。

 過去に失ったものを思い出し、偲ぶ者の目だ。

 父の友人のそういう目を何度か見たことがある。

 父は、一度もそんな目を見せなかったけれど。

 

 前向きな人だと尊敬していたが今思えば、そういうことなのだろう。

 

 失ったもの。

 その言葉を思い、記憶が昨夜に引き戻される。

 戦っていたウィルたちでもない。魔族信仰者たちでもない。懸命に使命を果たしていた近衛騎士でもない。

 

 5年ぶりにその姿を見た――――ヴィーテフロア・アクシオスを。

 

 自分が襲撃者を切り捨てた時にはもう、彼女は馬車から飛び出してきた。

 身長は記憶よりも高くなっていたが、年を考えればまだ低い方。厚手の修道服故に体のシルエットは解りにくいがそれでも随分と丸みを帯びて成長を感じられた。

 勢いがよかったせいか、外れたフードから零れる髪は夜明けの光に蜂蜜を溶かしたような黄金。

 瞳は海のような深い青。

 記憶よりもずっと、彼女は成長していた。

 無垢な少女でありながら、微かな色気を秘め、しかしそこにいるだけで空気が晴れやかになるような佇まい。

 

 アルマ・スぺイシアを見た時は正直驚いた。

 あんなにも造形が整った少女がこの世に―――――ヴィーテフロア以外に存在するなんて思わなかったから。

 超一流の職人が丹精込めて作った精巧な人形のような、或いは生物や性を超越した美がアルマならば。

 ヴィーテフロアは人としての、女としての、少女として、そういったものの究極、美の女神ともいえるのがヴィーテフロアだ。

 

 きっと、彼女がアレスの名を読んだ時他の者はその声から悲痛さを感じ取っていただろう。

 けれど、アレスにはわかる。

 そこに悲痛なものはなかった。

 そしてアレスは知っている。

 ヴィーテフロア・アクシオスがどういう少女なのか。

 

 彼女は笑っていたのだ。

 

 刺客に襲われる中、命の危機で。

 揺れる髪と夜の闇で正面から見ていた自分にしか気づかなかっただろうが。

 それでも彼女は薄く笑っていた。

 ゾクリと、背筋が震えたのをはっきりと覚えている。

 

 だから、自分は――――

 

「…………少年? 大丈夫か」

 

「………………はい。すみません、立ち入ったことを」

 

 店の奥から足音が聞こえる。マックが戻ってくるのだろう。

 戻ってきて変な空気にしたくないので、気持ちを切り替える。

 いずれにしても変な人であるが、悪い人でないかもしれない。

 週末だけとはいえ近所なのだから、付き合いは必要だ。

 

「失礼しました、ドゥさん」

 

「ジョンで良いぞ、少年」

 

「それでは、アレスと」

 

「うむ、アレス少年。―――――ちなみに紅茶と一緒に脳髄シャツはいるか?」

 

 やはり付き合いは考えるべきかもしれない。

 

 

 

 

 

 

                              

マキナ

質問する。何故マヨネーズやラーメンやHB法が既にある、ないし技術革新になると言わなかった????


アルマ  

これからこっちで生きようっていうのにあれこれ変な技術革新させるわけないだろ


マキナ 

ぐうの音も出ん


マキナ 

だがお父さんの収入のことも考えて欲しい


アルマ 

誰がお父さんだ! 身元のためと自分の世界帰れなかった君のためにとりあえず戸籍作っただけだろ!


マキナ 

指摘しよう。―――つまり俺がパパということだ。パパって呼んでも良いぞ


アルマ 

ぜってー嫌


アルマ 

…………それで?


マキナ 

俺から見ても、やはり問題ないと判断できる。体温、心音、声紋等観測していたが嘘をついたり隠し事をしようという意思は感じられなかった。若干の動揺はあったが……


アルマ 

あのくそダサキモイシャツ着てるやつに話しかけられたらそりゃそうなるだろ……


アルマ 

ふぅむ……そのあたりも含めてやっぱちゃんとしてるな……


マキナ 

それから……これは個人的な感想なのだが


アルマ 

うん?


マキナ 

どこか……ウィルに似ているな、彼は


 

 

 

 




マキナ/ジョン・ドゥ
クリスマス時点で脳髄本体から魂ごと分割されているので現在フリー。
ボディは変わらずナノマシン構築の強化人間。実質ターミネーター。
自分の世界には帰りたくないし、行くところもないので天才ちゃんと一緒にアース111に移住。
戸籍を得る為に天才ちゃんと義理の親子に。パパダヨ-
偽名に意味はあんまりない。ジョン・ドゥって言いたかっただけ。

GRADE2入ってからの彼の言動を見返すと、王国にいたから出たのでは?という発言が散見されますね

マクガフィン・バウチャー
強面のロマン兵器好き
料理も上手だが、店に大体なんでもある
確実にトリウィアと意気投合できる


「ジョン・ドゥ」
デウス・エクス・「マキナ」
「マクガフィン・バウチャー」
「グッド&バッドエンジェルズ」
物語の技巧関連の名前たち。
脳髄ニキの境遇思うと大した皮肉ですよね、ンハハ

アレス
影のあるイケメンが実際に変な相手との付き合いによる疲れの出るイケメンになってしまった
頑張れアレス君、君の先輩と隣人は変人だ!

アルマ
ぜってーパパとは呼ばない
連絡自体はそこそこ取りあっている

ヴィーテフロア・アクシオス
作中顔面偏差値は彼女とアルマがトップ。


■■■
アース1203において現在マキナ/ジョン・ドゥと名乗る男のかつての戦友であり、幼馴染であり、親友。
共に無機物生命体との戦争において類のリーダーである男を支え、戦い続けた。
最後まで。

ちなみにその1は天才ちゃんと脳髄ニキのドタバタ戸籍づくり
その2はマックとの出会い

次話から新展開

感想評価いただけるとモチベになります
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。