超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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ガール・ウェイツ・ボーイ

 

 

 燃えている。

 燃えている。

 燃えている。

 

 人の形をした炎が。

 鬼の形をした炎が。

 

 理不尽に対する怒りを燃料とし、大切なものを守るために心を燃やす紅蓮の戦鬼。

 

「―――」

 

 黒鉄が驚きに揺れる。

 魔法の使用により外見が変わることはアース111でも珍しいが存在する。だがここまで明確に外見と衣服まで変貌するものをバルマクでさえ初めて見た。

 警戒するように二刀を十字に構える。

 全身の『硬化』及び強靭な『鉱物』強度へ、『生命』の強化、自らの肉体の密度を『圧縮』し、『耐熱』を上掛け。双刃にも同じく『硬化』、『鉱物』、『耐熱』、『圧縮』した上で『振動』と『崩壊』の付与。極めて固く、熱に強く、超振動し、斬ったものを崩壊させる刃となる。

 土属性を基軸とした肉体・武器強化は速度面での恩恵は薄いが耐久性に極めて優れるが上、その速度面をバルマクは自らの技量で補い、完成度を高めている。

 それ故に、男は聖国において最強の一人と称される。

 加えてその肉体強度を維持したままで全く逆の円運動を軸として武術も使いこなす。

 黒鉄や蛇と称されることは単なる人格的な比喩ではなく、文字通りそれだけの強度の柔軟性を有しているのだ。

 

「グッ―――!?」

 

 その男が、爆炎を纏った拳にぶっ飛ばされた。

 強く握っていた柄に伝わる衝撃と熱。手放しはしなかったが、体ごと後方へ弾かれる。

 一瞬で距離を詰められた。

 それは加速というにはあまりにも荒々しい。

 炎鬼は足裏で炎を爆発させて、そのまま噴出。その推進力を乗せたまま正面から拳を叩きつけ、着弾と同時に爆炎が上がったのだ。

 火属性の使い方としてはあまりにもシンプル。

 炎にて加速し、一撃を高める、ただそれだけ。

 

 だがそれまでカウンター主体だったウィルが一転して攻勢に出たことに反応が遅れた。

 そして、彼は止まらない。

 

「鬼炎万丈……!」

 

 爆炎と共に飛び出す。

 踏み出し共に足裏で爆ぜる炎は真紅の花が咲き―――その加速を乗せた拳がバルマクの剣とぶつかり合うたびに、もう一度花が咲く。

 

「……!」

 

 双剣が咲き誇りと激突し、しかし確実に押し込まれる。

 膂力ではバルマクが勝るが、連続する爆発は彼我の身体能力差を補って余りある。

 爆進による加速、着弾時の爆発、生じる爆炎。

 三つの炎撃が一つとなって黒鉄を焼き焦がす。

 

「この、荒ぶり方は……!」

 

 それは凡そ、人種の戦い方ではない。

 

 純粋膂力に炎を纏わせるか炎によって結果的に膂力を生み出すかという違いはあれど、荒ぶる火炎を纏い剛力を怒涛に繰り出すそれは――

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや。()()()のようですね」

 

 ころころと、扇子を口元に当てつつ甘楽は笑う。

 横目で妹を見ながら。

 

 

 

 

 

 

「オオオオオ――――!」

 

 裂帛の咆哮。

 赤と黒の双瞳を爛々と輝かせ、燃え盛る隻角はまさしく鬼種のそれだ。

 天津院御影をこの一年見続け、彼女の動きを焼き付けたウィルは属性特化によりついに種族特性すらも模倣し再現するに至った。

 

 灼熱と剛力。

 戦場にて吠える益荒男。

 鬼種において、それは最も尊ばれる姿に他ならない。

 

「……!」

 

 何度目かの爆炎の花。

 ついに完全にバルマクが押し負け、体勢を崩す。

 『耐熱』付与しているはずの刀身が焼けこげ、肉体にも火傷を負うほど。直線斬撃による迎撃を繰り返したが、それでも限界があった。

 爆発に両腕が弾かれ、体が流れることによって明確な隙が生まれる。

 当然、ウィルはその隙を逃さず、追撃の炎拳を叩き込み、

 

「――――シィィィッ!」

 

 流れた体が、そのままぐるりと回る。

 回転中に双剣が揃えられ、遠心力を乗せた斬撃がウィルの拳に叩きつけられた。

 

「大したものだが―――単調だ」

 

「っ」

 

 爆発加速が乗り切る直前に横合いから止められた拳が中空に紅蓮を咲かせる。

 

「人間離れしている。鬼種どころか、高位の魔獣のそれだが―――私の専門はその魔獣狩り故に」

 

 追撃はなかった。

 代わりにその体からは想像でできない身軽さでウィルを飛び越え大きく距離を取る。

 跳躍中にも体を回し、着地時にも踊る様に回転。

 そして、その螺旋の終着点として、

 

「――――ハァ!!」

 

 石畳を踏みしめ、大地から衝撃がウィルへと迫った。

 それは指向性を持った局地的な地震だ。

 轟音と共に中庭全体が揺れ、石畳をひっくり返しながら衝撃波の津波となって襲い掛かる。

 届くまでほんの数秒。

 ウィルが体勢を立て直すのには間に合わず、しかし爆発跳躍を行う頃には到達しているという絶妙な時間管理。

 

 10になるかならないかで第一次魔族侵攻を経験し、己の部族を失いながらも、聖国の魔獣狩りの頂点に立った男の歴戦経験がそこにはある。

 

 それは、ウィルにはないものだ。

 この一年で重ねた実戦経験は濃密ではあったが、細やかな所ではバルマクには決して届かない。

 

 故に少年は、

 

『アッセンブル―――()()()()()・エッセンス!』

 

 開いた掌を、茶色五輪のダイヤル式魔法陣を握りしめた。

 瞬間、彼の周囲、石畳を突き破りながら何本もの石柱が覆い、衝撃波と相殺する。

 

『――――ガーネット!』

 

 砕けた石柱が現れたウィルは、姿を変えていた。

 服は変貌前の黒のズボンに真紅の腰巻。

 赤い片目は、明るい茶色。

 

「っ……土属性特化―――?」

 

 色合いと生じた石柱から見て、明らかにそうだ。

 鬼種の角や皇国装束のような分かりやすい変化はないが、変化時の余波が顕著だ。

 だがそれは、ある意味バルマクにとっては良く知った属性だ。

 聖国は土属性系統を持つものが多い。バルマクも五系統網羅しているし、むしろ戦いやすいと言える。

 そう、判断した時、

 

『アッセンブル。コンバート・エッセンス―――』

 

 ウィルが右手を真っすぐにバルマクに向け、拳を握りしめた。

 瞬間、彼を覆うブラックホールの如き闇の波動。

 一瞬見えなくなったと思った時、茶の瞳は黒紫へ。

 

『――――オブシディアン』

 

 宣言は静謐さすら伴って。

 バルマクに焦点を合わせた拳を腕ごと引き寄せた。

 

「!?」

 

 ぐん、とウィルの腕と対応するようにバルマクの体がウィルへと飛ぶ―――否、引き寄せられた。

 唐突のことで踏ん張りも効かず、彼我の距離が一瞬で埋まる。

 何がと思い。闇属性による『斥力』を用いた引力操作? と判断した時、ウィルは既に戦鬼形態へと移行していた。

 

 今度は、鬼の拳は避けられない。

 

「――――」

 

 引力による接近と爆裂加速。

 二つの速度を合わせた拳がバルマクの腹部で爆裂した。

 

 

 

 

 

 

「――――なるほど、考えたな!」

 

 パチンと、アルマは指を鳴らす。

 頬には明らかに上機嫌だと解る笑みが浮かんでいる。

 

「形態変化による状況に応じた戦闘スタイルの切り替えかと思ったが、()()()()()()!」

 

 虚空へと呟く言葉は音声入力により自動的に掲示板に書き込まれている。

 それは転生者の間では別に珍しくもない。

 ある程度高い応用性を持った特権があれば、特定の目的に特化した形態を用意し切り替えることはむしろ自然と言っていい。

 アルマにしても御影を模した火属性特化状態を見た時はそれだと思った。

 だが、彼のそれは似ているが違う。

 

「ワンアクションごとの属性の切り替え! ≪全ての鍵≫をうまく使ったじゃあないか!」

 

 アルマがウィルに与えたダイヤル式魔法陣術式≪全ての鍵≫。

 ウィルが使う魔法は基本的にアルマが考案し、登録した術式を即座に使用できるというもの。

 即ち、事前に登録さえしていれば拳を握るというワンアクションで使用可能ということ。

 勿論その登録はウィル自身でもできる。

 というか、彼の成長を考えてオリジナルの登録前提で作られているのだ。

 7属性35系統をそれぞれ使うのは難しい。

 それでも1属性5系統はウィルならば可能だし、登録さえしてしまえば即座に属性変換可能。

 

「御影を模した火は火力、土は防御で、闇は引力使ってたし中距離か? 色々想像できるし……ふむ、その先の応用力も高そうだ。なにより、相手はこんなのやられると最悪だな」

 

 つまり、ウィルは行動の度に最も適した属性を選択できるし、相手からすれば行動の度に別人と戦うのと同じ状況を強いられるということ。

 

「属性の切り替えは予想してたけど、ここまで詰めるとは思わなかった……うむうむ、やるじゃあないか」

 

 数度頷き、ふと虚空に視線を向けて、

 

「あぁ……うん」

 

 バルマクをぶっ飛ばし、追撃の為に白い閃光に包まれたウィルを確認して言葉を漏らす。

 

「…………変換時のエフェクトが派手なせいで、あのくそださネームは周りには聞こえてないみたいだな……?」

 

 

 

 

 

 

『――――ムーンストーン!』

 

 四度、色が変わる。

 乳白の片目。

 背後に同色の魔法陣が四つ。

 腕を振ればそれぞれの魔法陣から光線が放たれた。

 吹き飛び中庭の壁に激突したバルマクへの追撃。

 閃光は王宮の壁をぶち抜き、

 

「っ―――オオオオオオ!!」

 

 衝撃波が光をぶっ散らした。

 バルマクは全身から超振動を発し、指向性を持った光線をかき消したのだ。

 腹部に重度の火傷を負い、口から血を零した男の表情は険しい。

 何か言おうと、口を開き、

 

「――――」

 

 しかし、何も言わなかった。

 彼の意志はもう聞いたから。

 一度聞けばもう十分だし、重ねるのはあまりにも無粋だと男は思う。

 女の為に自らと戦う少年。

 全く絵物語のようだ。

 自分とは正反対の生き方に、ほんの微かに苦笑する。

 

「それでも」

 

 声は小さく。

 ウィルに対してではなく、自らに誓う様に。

 

「私はもう決めている」

 

 蛇のようにしつこく、黒鉄のように曲がらない。

 外法を用いたとしても、国を変えると決めたから。

 それがこの国の在り方を根底から変えてしまうとしても。

 ただ愚直に二刀を構えるだけ。

 

「―――」

 

 ウィルも何も言わない。

 右手をバルマクに合わせる動きは先ほどの引き寄せと同じように。

 故に今度は動かぬと男は力強く腰を落とし、

 

『トパーズッッ!』

 

 轟音、雷鳴。

 気づいた時には既に、ウィルはバルマクの背後。

 一閃、足刀。

 

「ッッ……!」

 

 直前、引き寄せを警戒して踏ん張っていなかったら意識が飛んでいた。

 認識を超えた超高速の蹴撃は最早斬撃に等しい。背中が焼き裂け、

 

「止ま、らん……!」

 

 男は止まらない。

 ウィルの高速属性変化にはついていけない。

 歴戦の強者であったとしても、ここまで細かく連続して別人のように変わる相手に対して初見で反応するのは不可能だ。

 故に、止まらないのだ。

 愚直に男はダメージを無視して刃を振るう。

 直線斬撃、滅びた部族の一閃。

 背後へと放つのならば円運動の方が適していたかもしれないが、それを選択したのは―――或いは、極めて聖国らしい部族への誇り故か。

 

 音すら置き去りにした一閃。

 

「―――――」

 

 その動きを、ウィル・ストレイトは目視の紙一重にて回避する。 

 刃が頬を通り過ぎ、文字通り紙一重のみ首を傾けたギリギリの回避。

 雷属性により肉体駆動を思考を加速していたというのもある。

 

 だが―――何より、ウィルは目が良いのだ。

 

 ここにきて、ついにその瞳が黒鉄の剣撃を掌握し、最小動作の回避を可能としていた。

 そして、

 

『アッセンブル―――コンバート・エッセンス』

 

 炎が巻き起こる。

 意志が燃えて、怒りが滾って。 

 国の為に手段を選ばずに力を借りた男へ。

 女の為に希望をくれた相手から託され、高めた力を握りしめて。

 鬼の角を宿し、灼熱を解き放つ。

 

 

『――――――ルビーッッッ!!』

 

 

 紅玉の如き拳が、黒鉄をぶち抜いた。

 

 

 

 

 

 

「……はぁっ……はぁっ……っ……」

 

 誰も、何も言わなかった。

 倒れて動かなくなったバルマク。

 ふら付きながら荒い息を吐くウィル。

 ただ、二人を見ている。

 信じらないと目を見開く者も、安堵の息を吐く者も、信じていたと笑う者もいた。

 けれど、まず言葉を交わすのが誰であるべきなのかは、誰もが理解していた。

 

「ふぅっ……ふぅっ……………ふぅ」

 

 注目を浴びながら、構わずにウィルはしばらく息を整える。

 そして、真っすぐに向かう。

 彼女の下へ。

 中庭の最奥、噴水の前に彼女はいる。

 隣にいた甘楽が――既に罅が入っていたとはいえ――素手で鎖を握りつぶして彼女を開放し、去っていく。

 

 彼女は動かなかった。

 薄い笑みを浮かべて、ウィルを待っている。

 

「……はは」

 

 そんな姿を見て、思わず笑ってしまった。

 出会ってからずっと、ウィルは彼女を待たせ続けて来た。

 しばらくは自分自身の過去のせいで目をそらし続けて。

 最近は――やっぱり、アルマに悪いかなと思って先送りにしていた。

 

 でもやっぱり。

 ずるいとは思うけれど。

 ウィルの求める幸福に、どうしたって彼女は必要なのだ。

 

 見惚れるような綺麗な琥珀の瞳。

 艶やかな浅い褐色の肌。

 ついつい視線を向けてしまう豊満な肢体。

 強く、優しく、美しく。

 囚われていたしても、やっぱり彼女は天津院御影だ。

 

「…………」

 

 彼女は笑みと共に待っている。

 多分、ウィルが最初になんて言うか楽しみにしているのだろう。

 息を吐きながら、どうしようかなと少し思った。

 首を傾げて考えて、すぐに答えは出る。

 

「――――御影さん」

 

「婿ど――――!?」

 

 名前を呼んで。

 彼女が何か言う前に抱きしめて。

 

 ――――半ば無理やりに唇を奪った。

 

 腕の中で彼女の体が跳ねる。

 一瞬硬直した後、すぐに力は抜かれてウィルを抱きしめ返した。

 この1年と少し、耳元で囁かれたり、体を押し付けられたり、舐められたり、胸とか太ももとか触られたり、触らされたりしたけれど。

 自分からこうして彼女に触れて、抱きしめるなんて初めてだ。

 

 柔らかい唇に触れていたのはほんの数秒。

 

 もう一度彼女を抱きしめれば、当然ウィルの顔の横に彼女の耳が。

 小さな声で、はっきりと、世界中の誰にも聞こえないように、けれど彼女にだけは届くように。

 ありったけの想いを込めて、囁いた。

 

 

「――――お待たせ、しました」

 

 

 

 

 

―――≪ウィル・ストレイト&天津院御影―――ボーイ・アンサーズ・ガール―――≫―――

 

 

 

 

 





地『グランドブラウングレイトアースマザーダイナミックダイレクトマキシマムガーネット』
闇『ブラックホールダークネスダークカオスティックリバースグラビティオブシディアン』
光『ミステリアスホーリィーシャイングレイスミラクルスーパーライトムーンストーン』
雷『ライトニングソニックサンダーボルトハイパークイックムービングトパーズ』

正気か?????
正気なんだワ
一人でウッキウキで考えてた
ガーネットは赤い奴じゃなくて、スペサタナイトっていうオレンジがかったやつ

水と風はいつか。


ウィル
お待たせしました
お返しの囁きASMR

天津院御影
【放送禁止用語が乱立している】


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