超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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ナイス・トゥ・ミーツ・ドラゴン

 

「…………ほど。どうやら余のせいで迷惑をかけたようだ」

 

「いいや。押しかけたのはこちらだからね。むしろ申し訳ない」

 

「気にしないで欲しい、魔術師殿。客人は歓迎したいと余は常々思っている。このような僻地故、中々ないことではあるが。それもそなたのような偉大な方にまみえるとは。長く生きたが、己よりも巨大な存在を見るのは久しぶりだ」

 

 話し声が聞こえてきてウィルは目を覚ましたことを自覚した。

 

「――――ぅんん?」

 

 目を見開けば視界が揺れている。

 広大な空間にウィルは仰向けで倒れていた。

 天井は鍾乳洞かなにかなのか多くのつらら石が伸びており、表面に苔らしきものがびっしりと生え発光していた。少し薄暗い気もするが問題になるほどでもない。 

 

「―――はっ、く」

 

 息を吐き、頭と胸の奥に不快感と微かな痛み。

 乗り物酔いの感覚に近いものがこびりついている。

 呼吸を繰り返しながら、記憶を辿る。

 

 そう、確か。

 宣言通り、アルマの転移で≪龍の都≫に行こうとした。

 あの後、急いで荷物を纏めた。学校が再開するまで一週間あり、数日分の用意や冬服の準備をした。

 カルメン曰く≪龍の都≫は1年の半分は暑く、4分の1は暖かく、もう4分の1は厳しい冬。そして今はその厳しい冬の時期だという。

 そのあたりは手早く熟した。

 

 向かうのはパール以外の生徒会面子だ。

 彼女も同行したがったが、流石に始業直前に生徒会が1人もいないのはよろしくない。誰かは残らないといけなかったので、彼女から自ら名乗り出た。

 カルメンがウィルたちの旅の案内をするなら、自分はみんなを待つというのが自分のできることだと笑っていた。

 尚この場合、生徒会面子というのはアレスも含めて、だ。

 彼を軽い気持ちで誘ってみたら、存外乗り気だった。

 ≪龍の都≫というのはそれくらい、この世界では伝説的である場所なんだなと、ウィルは思った。

 

 それで―――そう、アルマの魔法陣で転移を行った。

 いつもの別空間に直結する空間の門ではない。

 長距離かつ他人の記憶を媒介にしている故に、集まったウィルたちの足元に広がった魔法陣が光り、転移が行われて、

 

「ウィル、目を覚ましたかい?」

 

「…………アルマさん。えぇと……ここは?」

 

 朦朧としている間に、いつの間にかこちらに来ていたアルマに助けられながら体を起こす。

 制服に赤いコートの彼女が背中をさすってくれる。

 その優しさを感じながら周りを見回した。

 

「………………神殿、ですか?」

 

 広大な空間にあるのは石造りの神殿だった。

 太い柱に囲まれた広場があり、その中央に同じく石の円卓がある。

 そこに見知らぬ女性が座っていた。

 視線をずらせば、

 

「みんな……!」

 

「大丈夫、ちょっと酔って気を失っただけだ。いくつか想定外があって……一先ずみんなを起こしてくれるかい?」

 

「……分かりました」

 

 頭を振りつつ立ち上がり、服の埃を払う。

 冬用の私服、ズボンやシャツの上に着ていた上着はほとんどダウンジャケットに近いもの。魔物からとれる表皮を素材としその中に羽毛を詰めた防寒具。

 その羽毛はフォンから抜けた羽根を加工したものであり、温かい。

 誕生日にフォンから貰った上着で、1年半分の抜け羽根を集めて贈ってくれた大事なものだ。

 そのフォンは近くに倒れていた。

 御影やトリウィアたちも広場に倒れている。

 みんな寝起きのような様子で起こされ、それからそれぞれ最後に目を覚ましたカルメンとシュークェは、揃って同じところに目を向けた。

 

「おーん?」

 

「むっ……」

 

 視線の先。

 石の円卓に座る女性。

 藍色の髪を高い位置で結び、伏せた目でウィルたちを見ていた。

 身に着けているのは古い形の皮鎧だった。

 魔法による防護に加えて服飾文化も発達し、部分的にアースゼロに近いこのアース111でも珍しい古典的な、動きを阻害せず体の各部位を守る武骨なレザーアーマー。

 円卓にやはり古い長剣を立てかけている。

 

 不思議な雰囲気の女性だと、ウィルは思った。

 同時に僅かな既視感。

 若い女性だ。二十代半ばかそれくらいだ。

 眼は閉じられているが造形は整っており、右の目元の泣き黒子が目に留まる。

 身長はトリウィアと同じくらいだろうか。

 ただ、そう。

 彼女は、

 

「……アルマさん?」

 

 ウィルにとって最愛の人に雰囲気が似ている。

 そんなことを思っていたら動きがあった。

 

「おー、お久じゃー」

 

「―――再びお目に掛かれて光栄です」

 

 カルメンが女性に向かって手を振り、シュークェは膝をついた。

 そして言った。

 

「―――()()()!」

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

「うむ。久しいな、二人とも」

 

 静かに女性――――エウリディーチェは目を伏せたままに頷いた。

 

 

 

 

 

 

「え、えぇと……貴女が、エウリディーチェ様……でいいんですよね」

 

 アルマは彼女に問いかけるウィルの様子に内心苦笑した。

 円卓の奥にエウリディーチェが座り、対面を他の8人で半円状に囲む形だ。

 それぞれの前には眠気覚ましにアルマが出したそれぞれの好みに合わせたお茶やコーヒーが。

 エウリディーチェも果物の果汁を混ぜたワインのグラスを片手にしつつ答えた。

 

「いかにも。余が龍人の祖にして長、エウリディーチェである」

 

 なにせ、静かに頷く彼女はどう見ても人間のそれだ。

 カルメンのように角や鱗があるわけでもない。

 一見、ただの女性にしか見えないだろう。

 

 だが、アルマには分かる。

 ≪天宮龍≫エウリディーチェ。

 なるほど―――()()()()()

 彼女をして思わず目を見張るほどの存在強度を持つ。

 だが、初見のウィルたちは困惑の色の方が強いだろう。

 

「……えぇと。お爺様と聞いていたのでてっきり男性かと……」

 

「うん? 何を言うてるかウィル。お爺様はどう見てもお爺様じゃろ」

 

「いや、どう見ても女性ですが?」

 

「はぁ? そりゃどう見ても女じゃろ、今のお爺様」

 

「……」

 

 ウィルは黙り、アレスから呻き声が上がった。

 

「こほん……カルメンさん。親類の方がいる前で言うのもなんですが、何も知らない我々と既に知っている貴女とでは認識の差異があります」

 

 トリウィアは眼鏡を抑えながらカルメンを制止、しかしその眼はエウリディーチェに向けられ、輝いている。

 未知の欲求が止まらないのだろう。

 無理もない。

 

「質問をよろしいでしょうか、エウリディーチェ様」

 

「許そう」

 

 尊大な物言いだが、しかし彼女はにっこりとほほ笑んだ。

 

「貴方はカルメンさんの祖父と伺いました。ですが、貴方は女性に見えますが……」

 

「時間の流れは余にとっても残酷であり無慈悲だ」

 

「……」

 

 問いに対する答えにトリウィアも、他のみんなも面を食らったが、エウリディーチェは流暢に言葉を紡いだ。

 

「余は悠久の時を生きている。故に多くを知りながら、多くを忘却した。それは万物に対する妙薬であり、同時に猛毒でもある。それは余にとって最愛を記憶から摩耗してしまうほどだ。幾星霜の月日が流れ、新たなる愛を得ることもあるが、原初の喪失は受け入れがたい。故に余は我が愛を忘却に流さぬよう、こうして名を借り、己が身で姿かたちを体現しているのだ」

 

「………………」

 

「…………ふむ? 少し分かりにくかったかな」

 

「そうだね。簡単に言うと」

 

 アルマは首を傾げエウリディーチェから言葉を引継ぎ、

 

「彼女はかつて愛した女性を忘れないように、その名前と姿を借りているということだ。そうだろう?」

 

「左様。流石であるな、魔術師殿」

 

「どうも」

 

 

 

 

 

 

2799:ノーズイマン

つまり過去嫁姿のTSってこと!?

やべーじゃん、ただでさえ天才ちゃんはTS(笑)なのにキャラ被ってるって!!

 

2800:名無しの>1天推し

マジで黙れ

 

 

【『ノーズイマン』さんがスレッドから強制退出されました】

 

2801:名無しの自動暗殺童貞サイバーステゴロ公務覇者>1天推し

そんなことできるの!?!?!

 

 

 

【『ノーズイマン』さんがスレッドに入室しました】

 

2802:ノーズイマン

滅茶苦茶びっくりしたぞ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「こほん。それからまだみんな困惑が抜けていないだろうし説明するが、転移に関しては成功したが、ちょっとトラブルがあってね」

 

「うむ。余はこの都に外敵に対する結界を張っている。それと魔術師殿の転移が反応し、そなたらは意識を失ったのだろう。申し訳ないことをした」

 

「いや、手順を省いて乗り込んだのは僕たちだしね。快く受け入れてくれた君には感謝をしたい」

 

「先ほども言ったが客人は歓迎している。このような形で訪れたのは魔術師殿たちが初めてだったからむしろ喜ばしいことだとも」

 

 エウリディーチェはその客人たちを見回しにっこりと笑っていた。

 

「魔術師殿たちからそなたらの事情も聴いた。そこの鳥の娘よ」

 

「は、はい!」

 

 呼ばれたフォンの体が跳ねる。

 明らかに困惑し、緊張していた。

 髪を下ろし、コートを羽織った彼女に対してエウリディーチェは微笑みかける。

 

「飛べなくなったと聞く。そしてその解決のために、余の下に訪れたと」

 

「ぁ……は、はい」

 

「安心するといい。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「!」

 

 今度はフォンだけではなく、シュークェとカルメン、アルマ以外が体を微かに震わせた。

 あからさまな反応をしなかった3人も安堵の息を吐く。

 

「――――ん?」

 

 その瞬間、空気が弛緩した中でアルマはふと奇妙なものを見た。

 フォンの表情だ。

 彼女のそれは驚きでも喜びでもない。

 困惑。

 何に対してかは分からなかったが、確かな戸惑いの色がある。

 気になり、中止するよりも先に思わずという様子でウィルが立ち上がった。

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「うむ。……ふむ? ……ふむ」

 

 頷き、エウリディーチェは眉をひそめてからもう一度頷き、

 

「何故そうなったは、長い話になる。老人の昔話に付き合って欲しい。これはカルメンやシュークェにもまだ話していないことだったが良い機会であろう。お前たちも聞いておけ」

 

「はっ! ありがとうございます!」

 

「マジですじゃ?」

 

「マジだ。…………というかカルメン、なんだその話し方は」

 

「ははーん、これが人里の流行ですぞ?」

 

「……」

 

 エウリディーチェは黙ってアルマを見た。

 アルマは無言で首を振った。

 

「…………………………はぁ」

 

「な、なんですじゃその重苦しい溜息は!?」

 

「いや、態々口に出すまい。そんなことより」

 

「そんなこと!?」

 

「諸君」

 

 カルメンの叫びは完全に無視された。

 

「長い話になる。魔術師殿が茶を出してくれた。だが……その前に、そなたたちの名前を聞いておきたいな」

 

「―――――あっ!」

 

 反応はそれぞれだった。

 ウィルは赤面し、御影は何故気づかなかったのかと髪を掻き、トリウィアは己の失態から癖によるのか煙草を取り出そうとして流石に失礼かと手を止め、フォンは慌てて、アレスもまた僅かに赤面。

 エウリディーチェとアルマはそんな様子を見守っていた。

 転移による意識の混濁と状況に対する戸惑いのせいだ。

 無理もないとアルマは思ったし、エウリディーチェも同じように思っていた。

 それぞれ立ち上がりかけ、

 

「あぁいや。なるべく気楽に話したい。立ち上がらなくてもいい。それとそちらの人間の娘、煙草を吸っても良い。気にするな、余はその程度で怒ったり気分を害したりなどせん。ただ、名前を教えてくれると嬉しい」

 

「だ、そうだ」

 

 言葉に彼らは一度顔を見合い、最初に口を開いたのは御影だった。

 彼女はエウリディーチェの意を汲んで座ったまま、しかし頭は下げる。

 

「……天津皇国第一皇女、天津院御影です。偉大なる≪天宮龍≫エウリディーチェ様。お会いできたこと我が片角の下に感謝を。それから名乗らずの不敬にお詫びを申し上げます」

 

「良い良い、気にするな。鬼の姫か、良い角と覇者の気概を感じる。鬼の国の未来は明るいようだ」

 

「ヴィンダー帝国、フロネシス家長女トリウィア・フロネシスです。伝説に対しご尊顔を拝す光栄を」

 

「北の国の娘、言ったようにかしこまるな。余は所詮時代から取り残され、たまに顔を出す歴史の部外者よ。歴史を紡ぐであろうそなたに会えて私も嬉しい。どれ、煙草の火は余が付けてしんぜよう」

 

「えっ……あ……ど、どうも」

 

 そこまで言われて断ると失礼になるかと思い、トリウィアが煙草を咥えれば勝手に火が付き、何とも言えない表情で煙を吸って吐きだした。

 あれは多分味が分かっていないだろう。

 珍しい様子にアルマは噴出さないよう我慢するのにわりと苦労した。

 

「えと……フォンです。私の為に、ありがとうございます」

 

「その言葉はそなたの友人たちに言うと良い、鳥の娘。そなたからは懐かしい風を感じる。それゆえに、今のそなたがあるのだろうが」

 

「……?」

 

「そこも含めて、これから話すとしよう。よろしく、フォン」

 

「は、はい!」

 

「はいはーい! ワシ、カルメン・アルカラ! お爺様の孫娘じゃ」

 

「それはもう知っている。黙っておれ」

 

「ではこのシュークェが!」

 

「それも知っている。一人称で落ちているではないか。黙っておれ」

 

 龍の娘と鳥の男が揃って項垂れた。

 アルマはもう名乗ったので残ったのは二人だ。

 黒髪と赤髪の少年はそれぞれ互いに顔を見合わせ、

 

「…………アレス・オリンフォスです、エウリディーチェ様」

 

 先にアレスが名乗った。

 おそらく、話の張本人であるウィルを最後に回そうという配慮だ。

 

「ふむ」

 

 彼女は彼の名前に小さく首を傾げた。

 

「ゼウィスの息子か?」

 

「―――はい」

 

「そうか……歓迎しよう、偉大なる英雄の息子。結末がどうあれ、そなたの父には大戦時、世話になった」

 

「……そう、なのですか?」

 

「うむ。余も時として、この都を離れることがある。そして大戦時、我ら龍人族もまた人類として共に戦った故にな。今代のカルメンを始め、里の者を学園に送り出している以上、面識があっても不思議ではあるまい」

 

「………………なるほど。ありがとうございます」

 

「うむ」

 

 アレスは言葉を重ねなかった。

 ただ小さく頭を下げ、それをエウリディーチェも受け入れる。

 そして彼女は、真っすぐに正面に座っていたウィルを見る。

 それを彼も見返した。

 ウィルは名乗るために口を開き、

 

「――――()()()()()()()?」

 

「――――――――えっ?」

 

 問いに、息を漏らした。

 そして見る、彼女の右目が僅かに見開かれていることを。

 黒と白の目だった。

 それを斜めから見てアルマは皆既日食を思い出した。

 黒の中に白く輝く真円の輪郭が揺らめき、さらにその中漆黒の瞳孔が縦に割れている。

 人の目ではない。

 龍の目だ。

 

「父を知っているのですか?」

 

「如何にも。名は?」

 

「ウィルです。ウィル・ストレイト」

 

「ウィル。良い名だ。顔立ちはベアトリスに似ているが髪や目はダンテのものか。同時にアンドレイアの血が目覚めているのも感じる。さらには……ふむ。ここまで世界に愛された者を見るのは余も初めてだな」

 

「あ、ありがとうございます。え、えぇと……」

 

「ダンテについてか」

 

「は、はい。大戦に参加していたということでしたが……」

 

「うむ」

 

 彼女は目を閉じ、頷き、にっこりとほほ笑んだ。

 

 

 

「余は―――――ダンテに子を孕ませてくれと頼んだがフラれたのだ」

 

 

 

 ウィルは椅子に座りながら椅子の上で本当にひっくり返るという実に奇妙な芸当を見せた。

 

 

 




エウリディーチェ
最初の恋人の姿でTSしたドラゴンかつパパ世代ヒロインの一人。
つまり、元間女。
間男三銃士番外編。
いやこうするともう6人くらいいるんですが。
パパ世代敗北者七本槍の一人


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