可哀想なのは抜けないので転生したら、俺が忌子だった。   作:胡椒こしょこしょ

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オラは忌子だゾ

可哀想なのは好きじゃない。

世の中にはリョナやらキメセクやらで抜くイカレた人種も存在しているが、俺はとにかくそんなのは好きじゃないのだ。

だって考えてみなよ、大体そういうので対象になるのって可愛い女の子でしょ?

可愛い女の子には....笑っていてもらいたいじゃない。

 

だから俺はエロゲの中でもバカゲー、設定のぶっ飛んだヌキゲーが一番好きなんだ。

なんか辛い過去とか御涙頂戴とかの重い話もなくて、ただノルマのようにやってくるエロに対してすっきりとした心で向き合うことが出来る。

追加で言うなら女の子も楽しいとベネなので、ビッチ系だったらよっぽど良い。

 

そんでもって?まったく良いことをした覚えもないのに、なんか異世界転生できる機会をもらった。

そうなると、やっぱり頼んでみたくなるじゃん。

エロゲの世界に転生させてください。

そしたら、言ってみるもんで神様にOKをもらったんだ。

ただ....。

 

「その『少女抜刀錬金』ってどういうエロゲなんすか?」

 

「ルートに入った女の子達が酷い目にあって最終的にヤバいことになる様で抜くエロゲーだよ。」

 

「えっ....嫌なんですけど。出来ればビッチ系のヌキゲーが良いんですけど。貞操観念が男女共にゆるキャラな世界が良いんですけど。」

 

なんかすっごい重たい世界を提案されてしまった。

そういうの一番抜けなくて、キツイ。

つーかそういう世界っておのずと世界観的にもハードモードだよね?

そんな世界に誰が行きたいと思うんだよ!

人と笑い合って生きていきたいよねぇ!?

 

そんなこんなで言い争いを続けて、数分。

神様が話を切るように、叫んだ。

 

「そんなにギャグエロが良いなら、おめぇが頑張ってシリアス展開潰して来いよ。俺はよぉ、自分で頑張ろうとせずに文句ばかり言って何かもらおうとする人間が一番嫌いなんだよぉ!もう怒った、テメェにはもう何も聞いてやらねぇ!!さっさと行けやぁ!!」

 

「えっ?ちょまっ....はっ?なんやこの穴!!ダム穴!?ちょっ...身体が引きずり込まれ...あぁぁああああ!!!もう滅茶苦茶だわぁぁぁああああ!!!!」

 

背後にまるでダムの穴のような底の見えない暗い闇の中へと引きずり込まれていく。

 

死んで一つ分かったこと。

神様っていうのは案外、情緒が不安定らしい。

そりゃ聖書とかで悪魔よりも断然多く人間に対してのキルレが高いわけですわ。

そんでもって結局無茶苦茶なこと言われた上に、特典あるのかすら分からないよね。

もう、ダメかもわからねぇわ。

 

 

 

 

 

 

次に意識がはっきりしたのは、誰かの腕の中。

どうやら俺は無事に生まれ出ることが出来たらしい。

なんか周りの情景的にかなり古い日本家屋だし、時代は昔の戦国時代?とか平安時代?...とにかく古い日本だ。

やべぇなぁ....原作の世界観全然知らんから早くも時代背景を把握してないわ。

 

そんでもって、俺を抱いているのは黒髪の美人さん。

俺の母親であるということは言動を鑑みるに理解できる。

それにしたって、こんな美人な人妻に可愛がられながらこれから乳を飲むことが出来るなんて夢みたいだな。

家の様子から見ても使用人とか居て結構良い家柄っぽいし、一時はどうなるかと思っていたけど存外なんでもうまく行くものなんだなぁ。

 

そう思っていると、襖が突然開く。

そして、かなりのなんか人一人殺しているであろう目つきのおっさんが入ってくる。

まぁ、おっさんというのは言い過ぎか。

だって俺の親父みたいだし。

腰に帯刀していることから、侍であるんだろう...多分。

 

父さんと母さん、どちらにも共通していることだが左右の目が違う。

黒と金、オッドアイという奴だろう。

こんな派手なデザイン、モブキャラなわけがないので俺はもしかすればその『少女抜刀錬金』のメインキャラクターの誰かの家に生まれたのだろうか?

だとすれば、かなり良いスタートダッシュと言えるよな!

 

それにしても、普段は顔を見せないのにどうしたんだろうか?

取り敢えず突然襖開いたのに泣かなかったら不自然だし、一発オギャッとくか。

 

「ふぇぇ..おぎゃぁぁあああほんぎゃぁぁああああ!!!!」

 

「あらあら...よしよし。どうなされたのですか貴方?この子も驚いて泣いてしまっているし....」

 

マッマは俺をあやしながらも、パッパにそう尋ねる。

しかし、パッパはそんな自分の妻の問いかけに表情を変えることなく口を開いた。

 

「...お前、何をしている?」

 

「何をって....あやしているに決まっているでしょう?母親として当然の務めじゃない....。」

 

そーだそーだ!

母親として赤ちゃんの世話するのは当たり前でしょ!

改めて聞かなくても見たらわかるだろ!

ほら!そんなところ突っ立ってないでいないいないばぁでもやってみな!

めちゃくちゃ可愛く笑うから!

俺を溺愛してみろ!!

 

しかし、パッパはさらに目つきを鋭くする。

そしてゆっくりと二の句を継いだ。

 

「再度、問う。貴様は、その千眼を持たない男児の赤子をなぜ可愛がっているのか。」

 

そう言うと、マッマの肩がぴくんと跳ねた。

千眼...ってなんや?

よく分からないワードが出て来て戸惑いはするが、唯一分かることが一つある。

...なんか、流れ変わったな。

 

「それは.....。」

 

「刹那の家の女として為すべきこと。それは我が血統における特異...千眼を遺伝した子供代々残していくことだ。そして、その子は千眼を持っていない。つまりは、間引くべき忌子....。であれば貴様がこの世に産み落とした母親として為すべきことは一つだろう?」

 

...ん?え??

な、なんだぁ...雲行きが悪いぞ...。

え?俺...忌子なんすか?

間引くとか言っちゃってるんですけど.....。

 

ちょっ、おたくの夫乱心してんよ!!

なんとか言ってやってよママぁ~。

そんなこと出来るわけないだろ!いい加減にしろっ!!って。

 

「そんなっ!....この子は...この子にだって...私の初めて抱いた赤子なのよ?私たちの初めての赤ちゃん....。ね、ねっ、お願い!この子だけでも見逃して!まだ名前だって決まって....!!」

 

マッマは必死にパッパに頼み込む。

はえ~、下手に頼み込むってことはこの場ではパッパの言っていることに軍配が上がっているってことかな?

終わってんだろ、なんだこの家。

 

しかし、パッパは縋りつく勢いで頼み込むマッマの頼みにも表情一つ変えなかった。

 

「名前は既に私が決めた。その子の名前は刹那無用。刹那家に生まれながら千眼を持たぬ目抜けの出来損ない。そして表向きは流行り病で衰弱死ということにする子だ。...赤子など、これから千眼を持つものを生めばまた抱く機会がある。私は逆束姫ではなく君を選んだ。その決断を間違いなどと思わせないでくれ。」

 

「そんな.....っ.....。」

 

うわぁ....言っていること外道なんですけど....。

え?こんなのが俺の父親なんですか??

子供の名前に無用と付けるとか....。

やっば....価値観について行けねぇよ....。

アレか?昔の日本でよくあるお家至上主義みたいなものだろうか。

 

えーと、つまりなんですか?

僕はこの家で行われている子供ガチャにおいて即分解が選択されるくらいのハズレって...コトぉ!?

えぇ....生まれからしてハードすぎないそれ?

子供ガチャなんかすんなよ、人の命なんだと思ってんだ。

 

「...君が出来ないのであれば、致し方ない。親として私が引導を渡す。」

 

そんでもってマッマも激昂するでもなく、思い詰めた様子で黙りこくっている。

するとパッパはそんなマッマの様子を見て、溜息を吐くとゆっくりと腰の真剣を抜いた...真剣ッ!?

えっ....ここで死ぬんですか僕?

生まれてすぐに死ぬの!?なんで生まれたの僕!?

それはあんまりにもあんまりすぎるだろ!!

 

「ま、待ってください!私が!!私がちゃんと、母としてやりますっ!刹那の女として役目を果たしますから!!私にっ!私にやらせてください!!!」

 

すると、流石にそれは看過できなかったのかマッマがパッパの足元に縋りつく。

暫しの沈黙。

パッパと目が合う。

パッパの目には感情が伺えなかった。

こえぇ.....やべーよやべーよ....。

 

どうにも話の流れ的に俺死ぬの確定してるっぽいし....。

どうなってんのこれ。

転生させる家間違ってんだろ。

親が子供ガチャ爆死したんなら、俺も親ガチャ爆死してるわ。

なんなら親側はいくらでも子供作れば引き直せるから良いけど、こちら一度きりの命ですよ?

 

あーあ、こんなことなら神とか怒らせるべきじゃなかったな....。

こちらとしては怒らせるつもりなんか毛頭なくて向こうが勝手に怒った形だけど。

 

するとパッパはゆっくりと刀を納刀する。

ゆっくりと襖へと歩みを進める。

そしてこちらを振り返ることなく言葉を残す。

 

「...であれば、後は何も言わん。しっかりと、役目を果たしてくれ。」

 

そう言ってパッパはその場を去ってしまう。

後に残されたのは俺とマッマのみ。

マッマは俺を見つめて、愛おしそうな表情をする。

 

そ、そうだよね!

可愛い我が子のことなんか、殺せるわけないよねっ!?

そーそー、普通そうだよ!

おしっ!家出よう!

こんなイカレた家から実家に帰らせていただこう!

我が子と二人で支え合って暮らしていくのも、悪くないと思うよ!!

なっ!なっ!?殺さないよな!?なっ!!?

 

「ごめんね....ごめん....ごめんね......千眼を持った子に産んであげられなくて...本当にごめんね....。」

 

しかし現実は非情。

マッマはただ謝るだけ。

あーあ、こりゃダメだわ。

これはもう死確定ですわ。

またあの場所に逆戻りって感じですかね?

どうせ死ぬんだったら苦しまずに死にたいけど、この世界じゃそんな人道的で便利な品物ないんだよなぁ。

 

もはや俺の命も残り幾何。

助かる術は赤子の俺にはなしww

クッソ~~~、こうなったら最後にマッマの乳首エッチな吸い方してこの世界に生きていたって爪痕残してやんよ!!

....やけになって内心ふざけてみたけど、正直泣きそう。

畜生、俺が何したってんだよぉ.....。

 

 

 

 

 

 

 

真夜中。

既に屋敷には光がなく、誰しもが寝静まっている。

そんな屋敷が離れに見える中、中庭。

 

俺はそんな外に母に抱かれている。

そして、その中庭には外の塀から入ってきた一人の男。

黒ずくめの装束に男の癖におかめの面を付けている。

そんな相手に、母は真剣な表情で相対していた。

 

「よろしいのですか姫様?こんなことが露見しては貴方の命はないでしょう。そして...我ら庭先衆に子供を引き渡したとて、私達がまともに育てるとお思いで?」

 

その男は傍目の面を外す。

軽薄そうな、それでいて人を人とも思っていないような目つき。

まるで全てを軽んじて見ているかのような瞳だった。

そしてその瞳に相応しく、口元には三日月を薄く伸ばしたかのような歪み切った笑みが刻まれていた。

 

そいつは音もなく、いつの間にかマッマの目と鼻の先にまで接近していた。

こんなことが出来る人間がこの世界に居るのだな。

ソイツはマッマに顔を近づけて悪い顔で嗤った。

 

「千眼流の血を継いだ忌子?そんなもの、申し分無い程の交渉材料だ。人質にしたり、解体して送り付けて出方を見たりと。少なくとも人間的な扱いはされませんし、するつもりはない....と言ったら?」

 

「....囀らないでください、庭先赤松。それに、その子にそんな価値はありません。だって...あの人は、無駄のない人なんです。その子のことで何をされても...たとえ惨殺されても心動かすことはないでしょう。その子に何か起きて悲しむのは私だけ。」

 

マッマはそう言って寂しそうに笑いながら、俺の頭を撫でる。

あれ....これ、なんかまた流れ変わってないか?

今日までずっといつ死ぬのかビクビクしてたけど、もしかして死ななくて済むんじゃないか!?

その庭先衆とやらに送られるだけなんじゃ!?

 

そんなマッマの答えを聞いて、庭先赤松さんとやらはつまらなそうに鼻を鳴らす。

 

「だとしたら本当にただの負担だ。それこそ面倒を見てやる必要が見出せん。」

 

「えぇ...そうですね。だからこそ....これは刹那狼藉...刹那家の女としてではなく、遷宮狼藉...私個人として遷宮家に繋がりがある貴方方庭先衆に頼み込んでいます。どうか...私の息子を助けてください....。」

 

マッマは赤松さんに俺を手渡すと、そのまま土下座した。

俺を受け取って抱いた赤松さんはただただ地面に頭を擦り付ける母を無言で眺めている。

 

「お願い...松衛門....。」

 

無言でただマッマを眺めている赤松さん。

頼む...頼む.....!

マジで首を縦に振ってくれ....!!

じゃないと俺、死んでしまうぅぅ!!

 

必死に祈ること暫く。

赤松さんが俺を抱いたまま、マッマに背を向けた。

これは....どっちだ.....?

 

「...この子供、名前がないんだったな。」

 

「...ええ。」

 

マッマは首を縦に振る。

どうやら刹那無用という名前は俺の名前としてはカウントしてないらしい。

まぁ、そりゃそうよね。

自分の産んだ子供に無用と名付けられて是とするマッマがどこに居るんだって話ですわ。

あの父親頭おかしいでしょ。

マッマが答えると、彼はまた嗤う。

軽薄な笑みを浮かべて、口を開いた。

 

「だとしたら命名については期待するな。俺達庭先衆としては外部から入った子供などには良い名前を付けてやるわけにはいかない。まぁ、面子の問題ってわけだな。そしてもう一つ....俺は、コレが使えるかある程度育てて判断する。使えないのであれば放り捨てるだけだ。お前はそれでも臆面もなく俺達に頼めるのか?息子の身柄を。」

 

そ、育てるって言ったか今?

ま、マジで!?

まだ生きられるんですか俺!?やったー!!!

 

 

喜ぶ俺を他所に赤松さんは問いながらもマッマの方へ向き直る。

するとマッマは嬉しそうに笑いながらも、胸を張った。

まるで何も問題がないと言わんばかりに自信満々に。

 

「当たり前じゃない!だってその子は私とあの人の息子ですもの。」

 

普段の屋敷での様子を知っている俺には、そんなマッマがまるで別人のようにも思えた。

そんなマッマを見て、彼の頬はほどける。

そして穏やかに笑った。

嗤いではなく、笑い。

底意地の悪そうな顔に一瞬ではあるが暖かな表情が浮かんだのだった。

 

「そっか....ならば庭先衆頭領が一人、庭先赤松。主命に応じ、稚児の命承る。」

 

彼は俺を抱いたまま、またマッマに背を向ける。

そして、視線だけ背後へと向けた。

 

「さようなら、ろーちゃん。息災で。」

 

「えぇ。元気でね、新しい場所でも...どうか元気で。」

 

赤松さんは俺を肩へと持っていく。

すると、マッマが俺を見てどこか寂しそうに笑うと手を小さく振るう。

そして、赤松さんが俺をまたしっかりと抱き直すとしっかりと地面を踏みしめて跳躍した。

 

空へと躍り出る感覚。

頬に当たる風。

ここまで飛べるとか超人としか思えないが、案外この世界の人間の感覚では普通なのだろうか?

まぁ、なんにせよ...俺はマッマのおかげで現状は生き延びることが出来た。

良かったという言葉以外ないだろう。

なんか良い立場じゃないっぽいのに最後まで俺の味方であろうとしてくれてありがとうマッマ...ちなみにパッパのことは嫌いだよ...!

 

風に吹かれる中、赤松さんは俺を包み込むようにして衣を掛ける。

 

「...小僧、俺にあの人の子供であるお前を捨てさせるなよ。」

 

顔は見えないが、確かに赤松さんが呟いた言葉。

そうだ。

現状は助かってはいるし、育ててもらえることは確定した。

でも、庭先衆?として無能であれば放り捨てられると明言しているのだ。

こんな原作の内容すらも知らない、なんかハードっぽい世界に身一つで放られるなんて考えたくもない。

 

だからこそ、無能と思われないように頑張んないとな。

俺は将来への覚悟を新たにすると、襲ってくる睡魔に身を任せるのであった。




次回「無能は追放だゾ」お楽しみに!
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