火牙刀太陽(アポロ)とノインが神羅万象チョコの世界で成長していく話 作:不知火勇翔
どうやら俺は、戦国BASARAの世界にやって来たらしい。
しんげん、けんしんと出てきたし、俺の体からは火が出るのだ。絶対そうだ。
戦国BASARAぐらいなら俺も知っている。
六刀流は有名だし、映画の最後で足軽が踊り狂うのは見たことがある。
しかし何なんだろう。戦国BASARAに邪神群は出なかったと思うが。
面倒だし考えても仕方がないので考えるのを止めると、俺はノインの手を引いて真幻の領地に足を踏み入れた。
どこかに移動するたびに、いつもノインは俺と手を握るように要求してくる。寄る辺無さによる不安感からなのだろうが、少し可愛く思う。
「ノイン、もう少しだね」
俺が背後を歩くノインに振り返って言うと、ノインは頷いた。
何も言わないが、俺にとっては十分だった。
しばらくすると、山城が見えてきた。
あれが真幻とやらの城だろうか。天守閣のあるお城なんかよりはずっと小さい。少し大きめの高校くらいだろうか。盆地に面した山城だからもう少し大きくてもいいと思うが、時代が少し前なのだろうか。
田んぼだらけの道を歩き、信玄堤らしき川の堤防を歩き、ようやく山城の手前にある集落に俺達は到着した。
「おい!貴様、止まれ!」
集落の入口で警備をしていた足軽の格好をした男が、俺達を呼び止めた。
「異国の者だな!何をしに来た!」
俺とノインの服から察したのだろう。門番は凄く警戒していた。
どうしようかなと少し考えていると、背後から大きな声がした。
「どけどけどけ~い!進助様のお通りだ~!」
聞き覚えのある声のした方向に振り向くと、飛脚の進助がドタドタと門に駆け寄ってきた。そして俺達を見つけると、足を止めた。
「ん!?アポロとノインさんじゃないっすか!真幻様に会いに来たんすね!誰も見てないって聞いて心配してたっすけど、安心したっす!」
さてはお前いい奴だな……。
進助の言葉に、門番も「進助の知り合いか?」と緊張を緩め出した。
「あー、久し振り、進助。それから門番さん、俺達がここに住むことってできるのか?」
門番は首を傾げた。
「流れ者か?ならばお館様の許可が必要だ!」
「許可?」
「そうだ!流れ者はスパイみたいな怪しい奴が沢山混じっているからな!お館様が直々に見定めるのだ!!」
へー。時代が戦国前期ぐらいだから中世の騎士の人数くらいというか、姫路の城下町の流れ者を1人1人とかは無理だけど、見たかんじ城も狭いし人数も少ないからこそのやり方なのかな?
「じゃあお館様がここに来るまで待とうかな。ノインもそれでいい?」
握る手を意識しながらノインに聞くと、ノインは頷いた。
「それでいいって、門番さん。じゃあ俺達は待つよ」
「その必要はないぞ」
腹に響く声がしたかと思ったら、進助と門番さんは素早い動きで頭を垂れた。
進助の頭の向き、声のした方向を向くと、武田信玄のイメージがそのまんま歩いているような男がやって来た。思ってたより少し若いな…。40ぐらいだと思ってた。
「また流れ者か!!最近は宣教師が大量に来るから困っていたんだがな!!ハッハッハ!!!」
声がとにかくうるさい。
それが良いと言う人もいるだろうが、俺は少し苦手に感じた。
「武神真幻さんですか?はじめまして。アポロです。こっちはノイン」
一礼して挨拶すると、頭を下げた状態のままの進助が信じられないものを見る目で俺を見てきた。
なに?
「ハッハッハ!!!そうか、異国はまた違う文化なんだな!面白い!」
異国、文化?違う。あー…。
「もしかして、挨拶ってもっと丁寧にするもんで、したね本当にすみません目上の相手に…」
言いながら気づいて、俺はまた頭を下げた。土下座は、何というかしたくなかった。
学生のノリで普通に頭を上げて挨拶したが、この時代の普通は頭をこすりつけるものだったのかもしれない。
将軍ぐらい酷いと勝手に顔を見るだけで打ち首だっけ。
ノインも分かっていなさそうにしているが俺に真似て頭を下げる。
「ほーう。結局異国も頭は下げるんだな」
「異国に興味があるんですか?」
「ちょっ、おい!?」
思わず聞いた俺に、進助が再び睨む。
だってさー、俺も気になるし異国に対してのイメージも聞いておきたいし。
「あぁ。この鬼龍が統一できたって、戦は終わらない。この島国の外、異国にも国はあるからな!」
つまり、世界征服をしたいのかこの人は。
野望と言えば聞こえはいいが、俺の趣味じゃない。ノインのこともあるし。
「警戒しているな?そこの、ノインだったか?その女が大切か?」
大切って言うか、儚いかんじだから守ってあげたいというか…。
「…まぁ、はい。」
「そうか。話は聞いていたぞ。ここに住みたいんだってな」
「はい」
「それは、住む所が無いからか?」
「はい」
「しかしだな、俺は鬼龍の天下を目指してる。戦もする。武神は基本的に侵略戦争ばかりだ。このにいたら戦にも巻き込まれるだろう。それでも、このに住みたいか?」
知ってる。合戦に行かなければいけないことも。
だが、俺は強くなりたい。
あの邪神群を退けられるくらいには強く。
「…戦うのは、俺だけです」
俺は一歩真幻さんに歩み寄って、言った。
「俺は、怖いんです。だから、俺は逃げない」
逃げたら一生このまま怯えて過ごすことになる。
全世の学生生活は平和だった。平和すぎた。平和すぎたから、初めて見た邪神群の恐怖は今も鮮明に思い出せる。
「ダメだ」
何となくで意思を発表した俺だが、真幻さんは普通にNOを突きつけてきた。
「マジっすか」
「あぁ。お前はあまちゃん過ぎるな。戦じゃやってはいけない。今日は遅いから今晩は俺の屋敷に泊めてやるが、明日には出て行け」
沈みかけてオレンジ色になった太陽を指差して、真幻さんは言った。
この時の俺は、ノインを忘れて自分のことを語っていることに気づかなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
真幻さんは普通に良い人だった。
皆からは好かれているし、人当たりもいい。
常に笑みを絶やさず、王者の貫禄があった。
包容力もあるみたいで、子供が進路を遮っても笑って頭を撫でていた。親は平謝りしていたが。
真幻さんの後ろを歩く俺とノインへの視線は少し嫌なものだった。
スパイとかを疑っているのだろうか。人間に向けていいものでは無いと思う。
とりあえず記憶喪失でまだ初体験が多いノインには見せないように、俺はノインに話しかけ続けた。
しばらくすると山城まで来ていて、真幻さんは城門をくぐって中に入った。
一応大名らしく、城の中に住んでいるらしい。
しばらく坂を登ると、今までで一番大きな屋敷が見えてきた。
あれが真幻さんの住む屋敷だろうか。ちょっと古いように感じるが。
真幻さんが戸を動かして中に入ると、女中みたいな家事担当の女の人ってかんじの人が出てきて真幻さんに何も無かったことと、お帰りなさい、を言った。
奥さんなのだろうか。真幻さんも少し表情を緩めていた。
「あら、あなた達は誰なのです?」
俺達か。
「あ、俺はアポロです。初めまして。それでコッチが…」
「それはいいわ。本人の口から聞きたいの」
「あ、はい」
本人の口からだってさ。ノイン。
「…ノインです…。」
ノインの返しに満足したのか、女の人は頷いた。
「はい、はじめまして。真幻の妻の、諏訪です。よろしくね」
いい所の出なのか、座ったまま礼儀正しく指先まで揃えて頭を下げてきたので、俺は焦った。
「えっと、どうも…」「(ペコリ)」
「それより諏訪、飯はできてるか?」
真幻さんが聞くと、諏訪さんは笑った。
「できてますよ。サッサと食べて下さいね?あと、酒も程々に」
「酒は武士の嗜みではないか!俺は止めんぞ!」
「量を控えるだけでいいのです。心配してるのですから、受け止めて下さいな」
「ハッ!無理だな!」
「真幻様、」
「うっ!!!でも無理っす諏訪団長!!酒は、酒だけは!!!」
なんということでしょう。完全に尻に敷かれているではないか。アレだな。完全に異世界の真幻だな。多分戦国BASARAの…(勘違い)。
「はぁ…。それで、アポロくんとノインちゃんは今日食べていくのよね。泊まりかしら」
「ああ。明日追い出すけどな」
「真幻様、まだ2人は子供ですよ?どうしてそんなに酷いことができるのですか?」
「問いで分かった。少なくともアポロと俺は同じ方向を向いていない。だから無理なんだ」
「そんなこと…」
「そんなことではない」
同じ方向を向く人だけ集めても、だよな。信長みたいに意見が違っても力でねじ伏せる方が仲間は多くなると俺は思う。よくは無いか。ややこしいな。とにかく、狭くなるだろうと言いたい。
「とにかく、2人は今晩までだ」
諏訪さんは何も言わず、諦めたのかそれ以上は何も言わなかった。
諏訪さんはあらかじめ多く食材に用意していたのか、テキパキと動く諏訪さんは4人分のご飯をサラッと作ってしまった。
大名みたいに品数が多い訳ではなかったが、おいしかった。
少なくとも憑依から数日、ようやくマトモな人間の食事を久し振りに食べたのだ。美味しくない筈がない。ノインもこれ以上ないくらい幸せそうな顔をしている。かわいい。
「アポロ、風呂沸かしてこい」
「へーい」
真幻さんが言ってきた。まぁご飯の恩があるしやるけど。
火を点けて、フーフーするだけだよね?違う?大丈夫だよね?あ、、水張らないと。
風呂は、へいへいほ~う、と言いたくなる風呂だった(テルマエロマエ2より)。五右衛門風呂の竹バージョンと言えば伝わるだろうか。名称は『据え風呂』とかいうやつなんだろう。多分。
竹筒にフーフーして息を吹き込んで、俺はひたすら火を強める努力をした。
能力を使えば山火事くらいの炎は出せるが、出した炎は回復しないのがネックだった。
魔力みたいに自然回復しないから、あの炎は魔力てきなもの以外の何かを燃料にしているのかもしれない。
では何だろか。
薄々感づいてはいる。
俺は人の魂が炎として見える。そして回復しない俺の炎のエネルギー。
多分、俺の炎は人の魂を燃やしているんだ。
邪神群に殺された人達があの時沢山いたから大量のエネルギーを蓄えられたんだと思うが、最近までは森に住んで採集の生活をしていたため死が身近になくて検証できなかったが。というか検証とかはしたくない。
そんな後ろ向きなことを考えていると、爆発音がして無理矢理思考を停止させられた。
結構デカい。ガス爆発かってぐらい。
フーフーするのを止めて立ち上がると、ここからは見えないが屋敷の奥から煙が上がってるのが分かった。風呂がある反対側なので、恐らくノインがいる所だ。
竹筒は捨てて屋敷の中に入ると、壁の一部がなくなっていた。
「なっ!?」
そして、吹き飛んだ壁があった場所には、忘れもしない、あの赤い頭をした黒い人骨が佇んでいた。
「邪神群!来てたのかよ!」
状況を確認しようと見回すと、真幻さんが諏訪さんを庇うように立ちふさがっているのは分かったが、ノインの姿が見当たらなかった。
「真幻さん!ノインは!!!」
「アポロか!ノインは連れ去られた!すまねぇ俺がついていながら!」
連れ去られた?すぐに見た者を殺していた邪神群が、攫ったのか?
分からないが、とりあえず怒りが湧き出してきた。
イライラする。目の前の赤い邪神群を燃やしてしまいたくなった。
邪神群の魂を探ると、異様な炎が見えた。
炎が、消えかけていた。
邪神群の魂の筈なのに、今にも消えそうだった。
一定以上には燃え上がらないように抑えつけられているような、狭苦しい場所で燃えているような、そんなかんじだった。
「まぁいいや」
俺は赤い邪神群に近づくと、邪神群の拳を避けてからろっ骨の辺りに手を触れた。
「その炎で、消えろ」
俺は内側にある魂の炎を無理矢理爆発させ、邪神群を内側から燃やし尽くした。邪神群は悲鳴1つ上げず、燃え尽きた。
死ぬ間際になっても、本当に邪神群はロボットみたいだった。
ただ殺戮のために作られたロボットなんじゃないかと、俺は思えてしまう。
「その炎…」
「真幻さん、ノインってどっちに連れていかれました?」
俺が振り返って真幻さんに聞くと、真幻さんはなくなった壁の方向を指さした。
「そこを真っ直ぐだ!!まだ遠くには行ってねぇ!早く行け!俺もすぐ行く!」
「はい、分かりました」
俺は足元に炎を生み出すと、空を駆けて邪神群を追った。
身体が軽い。さっき燃やした炎のエネルギーが俺に力を貸しているのが分かる。
「本当に、他人の魂のエネルギーを奪う能力なんだな」
思わず自嘲してしまったが、今はノインだ。
全力でスピードを上げて空を駆けると、ある程度して青い邪神群が空を飛行しながら逃走しているのを見つけた。よく見れば、ノインをお姫様抱っこしていた。
青い奴は、赤い奴より少しゴツゴツしたやつだった。もっとトゲトゲしている。
そしてノインを大切に扱っているのか、そのスピードは本当に遅かった。
すぐに追いついた俺は、いつの間にか握っていた槍の形をした赤い不思議武器を振り、ノインに当たらないよう丁寧に邪神群の頭を横薙にして殴りつけた。
ひしゃげる音がして、それだけで死んだのか青い奴は抱えられているノインもろとも落下を始めた。
「ちょっ、ノイン!」
慌ててノインを空中で抱き止めると、青い奴を蹴飛ばしてノインから引き剥がし、そのままノインを抱えて空中を駆け上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目標は何だ。
邪神群2体を退けた俺は、ノインと一緒に武神家の会議に強制参加させられていた。
上座に座った真幻さんのそばに座る家臣数名が、俺とノインを睨みつけている。
邪神群を持ち込んだと思っているらしい。
そして重苦しい空気の中で、真幻さんが口を開いた。そして出てきた言葉が、目標は何だ、だった。
「目標、ですか?」
俺が聞くと、真幻さんは頷いた。
「ノインがあの骸骨に狙われているのは分かった。奴らは何だ?」
「…邪神群です。俺の祖国で破壊を尽くしたバケモノ。それ以外は俺も知りません」
「つまり明確な意志を持って行った破壊活動を行ったが生き残りがいたから追って来たって所ですか?」
真幻さんの隣に座る軍師面した男、男か?とにかくソイツがトゲのある言い方をしてきた。
「誰ですか?」
「これは失礼。武神家『風林火山』の風、閑那(しずな)です。以後、お見知り置きを」
「…どうも。アポロです」「…ノインです」
緑色の着物を来た閑那さんは、戦国時代の筈なのにメガネをしていた。
「それで、あなた達は生き残りということなのでしょう?ノインさんだけを狙ったのは腑に落ちませんが、少なくとも邪神群を招いたのはあなた達です。お館様、鬼龍の西南を治める大名として、今すぐにでも彼らは離しておくべきでは?」
「離す、か。追い出すって意味だよな。アポロ、それからノイン。お前らは邪神群が追ってくると分かっていて俺の領地に踏み入ったのか?」
分かる訳ないじゃん。邪神群が何かも分かってないのに。というか、俺はまだ祖国の名前も知らないんだけど…。
「いえ」
「……そうか。なら最初の質問に戻るが、お前達2人の目標は何だ」
また問いかけか。もう明日には追い出すって言ったのに…。再チャレンジってことなのだろうか。なら上手いのを考えないとな。
「この場で嘘をついた場合、俺はお前達2人の首を斬る」
気迫に押され、俺は言葉を失った。
この時代は殺し殺されの時代。
実力主義は理想的に見えるが、多くが淘汰される時代なのだ。
そんな時代の大名なのだから、迫が違った。
思わず、呟いていた。
「『俺は』、今の所無いです。ノインのためにできる事があったらいいなー、ぐらいで」
本心を呟いていた。
右も左も東も西も分からない戦国時代らしき所に、俺とノインは放り出された。
正直怖かった。
邪神群、食料の枯渇、初めて森で見た夜盗、どれもこれもが怖かった。
怖かったから、ひたすらノインを見ていた。
ノインのことしか明るいことが無かったからもあるだろうが、今の俺の根底にはノインがいた。
ノインがいたから、俺はノインが楽して生きれるようにさせてあげたかった。
大切な人が苦しむのは見たくない、ただそれだけだ。
…ノインノイン言いすぎだな…。反省しよう。
「……そうか。ノインは、何か目標はあるか」
真幻さんがノインにも聞く。
真幻さんの家臣達は、真幻さんの問いかけを黙って聞いていた。恐らく彼らが問い詰めるより手っ取り早いのだろう。
ノインは言った。
「…私には、記憶が無いから。判断できない」
これには真幻さんも家臣達も首をひねった。
「…ただ、生きようとは思う…。」
ノインの本当の気持ちなのだろう。
俺にとっては前を向けてるだけで万々歳だ。
概ねを把握した真幻さんは、ノインに優しく語った。
「……誰かに手を引かれるのは考えなくていいから楽なんだろう。求めらていることが嬉しそうなのも見てて分かる。だが、もう少し自分でも考えられるようになるべきだな」
ノインは目を丸くした後、小さな声で「…分かった…。」と言った。
それに対して頷いた真幻さんは、左に座る軍師面の閑那さんに言った。
「俺は争いの無い世を作るために、戦っている」
「はい。存じております」
「俺の望む世は、争いが無いだけではない。子供が笑える世だ。だからこそ、この2人は領地に留まらせる。それでいいな」
「……それは…」
口下手なんだろうが、俺にも言いたいことは分かった。
「いいな?」
「………仰せのままに」
真幻さんが決めたのならと、閑那は反論しなかった。
「そういうことだ。アポロ、ノイン。今日からここが、お前達の家だ」
★彼こそが鬼龍王『猛虎魔将真幻』となる男であることは、今のアポロとノインは想像もしていなかったらしいゾ!