火牙刀太陽(アポロ)とノインが神羅万象チョコの世界で成長していく話 作:不知火勇翔
『水晶の塔』。
ヒカリの住んでいるという塔は陸の孤島の真ん中にあった。
バベルの塔を思わせるくらいにその塔は高く、そして神が作り出したのだと確信できる程綺麗だった。
水晶の塔と名前が付くくらいには壁の所々が水晶で作られていて、ちょっとした窓みたいになっていた。
ヒカリの転移魔法によってやって来た俺とノインは、ただただ見上げて塔の外観に圧倒された。
「ふふふ。ここに招いたのはお父様以来ですから、ちょっと緊張しますね…。」
「ヒカリって、本当に神様だったんだな」
「…すごい」
「そうですか?ありがとうございます」
そうなのだ。
半壊した真幻さんと諏訪さんの屋敷の取り壊しと立て直しを手伝っていたらヒカリがやって来て、俺とノインを家に招待すると言い出した。
俺は忙しいからと言ってやんわり断るが、ヒカリは急ぎの話があるからと聞かない。
しばらく色々話していると、じれたのかヒカリが魔法でチャチャっと建物を直してしまったのだ。
これには工事をする気満々だった大工達も呆然としていた。
そしてヒカリは自分が神であることを俺とノインだけに言い、そして俺とノインを『水晶の塔』に招待したのだった。
中に上がると、中には階段以外に何も無かった。
そして少女1人が住んでいるにしては、埃1つ落ちていない。
というか、塔なだけで生活スペースは1階のみらしい。
「いちいち塔の階段を上り下りなんて大変じゃないですか」
塔の外観と実態のギャップに、俺は塔が可哀想に思えてきた。
「座って下さい。お茶、出しますね」
ヒカリがスタスタと歩き去る。俺とノインが畳の上に座ると、すぐにヒカリがペットボトル入りのジュースを持って来た。
普通に手渡された後、俺はようやくペットボトルのジュースを渡されたことに気づいた。
「ちょっ、時代がおかしくない!?」
思わず声を荒げて聞くと、ヒカリさんは子供っぽくドヤ顔をした。
「ふふん。神様はこんなものだって取り寄せることができるのですよねっ☆」
取り寄せられるからって客に出すなよ……。ノインなんてペットボトル持って固まってるぞ。あ、おい、ぶち破るなって…。
「あ、ノインさん。ペットボトルはこうやってキャップの所を回すんです」
ノインの手からペットボトルを奪い取ったヒカリは、開けてからノインに返した。
俺も何となく慣れた動作でペットボトルのフタを開けると、目ざとく見ていたヒカリが言った。
「慣れてますねー。普通なら右回りかとか確認するのに」
「………カマかけたのか?やられたな」
素直に降参すると、ヒカリが笑った。
「半信半疑だったんですけどね。本当に『アポロ王子』はあの場で燃え尽きたのか確信が持てませんでしたから」
「あの場?」
「邪神群がソロモン王国を滅ぼした時です」
憑依した時か。
「あの日『アポロ王子』は己の魂を燃やして戦い、結局は『火のセラフ』に負けて敗走。自分の魂を燃やし尽くして魂が消滅。そこにアナタが入ったみたいですね」
元の持ち主は死んだってことか。
ずっと助けを呼ばれていたし、いい王子だったんだろうな。
「俺を憑依させた奴はどんな奴なんだ?」
「『調和神バランシール』様ですね。そういう波動が天界から感じられましたし」
「調和神?」
「昔は破壊神と創造神がいたんですけど、破壊神に問題がありまして。それで合体して調和神となられたんです。今では天界の主、世界の全てを司る絶対神です」
「へー。」
全然スケールが分からなかった。
多分次元領域みたいな意味不明な概念を扱う生物なんだろうということは分かった。
とにかくバランシールとやらは後だ。
「じゃあさ、ついでに俺が見えている『炎』につちて何か知らない?少しだけでもいいからさ」
俺が真剣に聞くと、ヒカリは微笑んだ。
「ちゃんと全部を教えるつもりですよ。アナタを先駆者のことを何も知らないまま邪神群と戦わせる訳にはいきませんから」
ヒカリは座を正すと、さっきのような軽いイメージは全て置き去ったような顔をした。
「アナタの能力は、ソロモン王国の王族だけに伝わる秘術です。名前は『魂合』(ネクタール)」
「『魂合』(ネクタール)…」
「邪神に殺された者の魂は『天使の卵』として邪神の体内に蓄積され、未来永劫苦しみ続けます」
いきなり鬱設定が飛んできた。
「死者の魂を吸収して己の力に変換するオリンポスの秘術が「魂合」(ネクタール)。魂合によって得た力は、使う度に消費されていき、いずれは消えてなくなってしまう使い捨ての炎です」
少し長めに説明したヒカリは一息つくと、言った。
「ここが重要なのですが、魂合によって吸収した魂は、その力を使い切る事によって解放され、天に昇華されます。『天使の卵』となった死者の魂は、『魂合』によってのみ呪縛から解放されます。だから力を卑下しないで下さい。アナタの力は、
『救い』なのですから」
言い切ったヒカリは、女神のような微笑みをしていた。あ、そういえば女神なんだっけ。
とにかく、ヒカリの言葉に、俺はもう少し向き合う勇気が出てきた。
「あと、聞かれていませんが邪神群の話をしますね。
下級第三位、あの赤いのが『邪神アンヘル』。最下級の邪神です。
下級第二位『大邪神アーケイン』。青い奴です。
下級第一位『権邪神アルヒャイン』。オレンジ。
中級第三位『能邪神エクソーシア』。緑です。
中級第二位『力邪神デュナメール』。赤。
中級第一位『主邪神キュリオテラス』。
上級第三位『座邪神オファニウム』。
上級第二位『智邪神ケルヴィウム』」
「………そんなにいるのか?」
「そして、最上位『熾邪神セラフ』の4体。
『火のベシュ・テルス』。
『地のアウ・リエル』。
『風のラファ・エール』。
『水のジブ・リール』。
セラフに関しては私でもどうこうできる相手ではありません」
「神様なのに?」
「私は世界の敵から生み出された、神としての役割だけの神様です。まぁ、神様にも色々あるのです」
「へぇ~。よく分からないな」
「そして邪神は上位になる程多くの『天使の卵』を持っています。最下級なら最大で1つ。セラフなら999個。つまり上位の邪神と戦うほどアナタの炎は強まる仕組みです。言わばアナタの家系は邪神群の天敵ですね。だからこそ滅ぼされたのですが、生き残りがいる以上は邪神群も目的が達成されていませんから、必ず狙ってきますよ」
「その邪神群が全部来るのか?」
だとしたら無理だろ。最下位のアンヘルにも苦戦してるのに。
「あ、ついでに言うならアンヘルが16としたらセラフは50ですね。青色だと18です」
「俺は?」
「素なら18くらいですね」
「わお………」