"二日目の放課後"
「今朝のあれ凄かったな。一匹残らず虫が窓に向かって…何だったんだ?」
「確かにあれは普通じゃあり得ないだろあの動きは」
「そんじゃあよ、ラーメン食いに行こうぜ?」
「まぁ今日は付き合ってやるよ。昼休みは食欲無かったしな。」
「あぁ、おかげで腹ペコだぜ。それと、あの虫籠持ってきた奴一週間は停学だとよ。まっつんにもしこたま怒られたらしいぜ。」
「まぁたしかに教室からも聞こえるくらい怒鳴られてたからな…」
「…そういやーよ、相棒何処行った?」
「もう帰ったんだろ」
ーー
《純喫茶 魔美》
ここは僕の行きつけの店だ。落ち着いた店内静かな客層。僕は時折り此処に来る。
やれやれ…今朝は大変な目にあった。ただでさえ僕が唯一苦手な虫が一匹…いや一羽か、いるだけでも嫌だというのに…まぁ元凶はしばらく学校にこれないようだが、次同じ事をしようものなら退学になる前に退界してもらおう。まぁ虫籠を破壊してしまったのは悪かったと思ってるが
しかし、あの虫の不可解な動き…学校の奴らは奇跡だと言っているが、僕は知っている。あの古明地から発せられたような電波のようなもの…まさか奴は虫とも意思疎通が可能だというのか?僕のテレパシーの上を行くという予想も間違いでは無いだろう。僕でも拾えない小さな生物の思考を奴は拾えるのだから…
考え込んでいると、ここでバイト中で同じクラスの目良千里が注文を取りに来た。
「あ、斉木君。今日店長が考えた新メニューがあるの。自家製のコーヒーを使ったコーヒーパンに生クリームを挟んだコーヒーサンドなんだけど…」
貰おう。それとコーヒーゼリーも付けてくれ
ここのコーヒーは絶品だ。コーヒーゼリーも市販のものとは比べ物にならない。それを使ったコーヒーサンドなんて、美味いに決まって…あ、しまった。コンビニの新発売スイーツを全種類買い占めて金が無いんだった。仕方がない、今日はコーヒーゼリーだけにしよう。
「はーい」
まぁいい、今日限定でも無いんだ。いつかは食せるだろう
「いらっしゃいませー!…あ、確か…えっと」
「古明地さとりです。よろしく目良千里さん」
「あ、そうそう古明地さん!ごめんね、古明地さん私の名前覚えてくれてたのに…」
「良いですよ。これで覚えてくれれば」
よし、コーヒーゼリーもキャンセルだ。
何故ここが分かった。相卜の占いじゃあるまいし。駄目だ、やはりノイズが邪魔で思考を拾えない。偶々来ただけで僕に気付いていない可能性に賭けて早くこの店から…
「じゃあ空いてる好きな席に…」
「あぁ、大丈夫です。そこの、今注文取り消して帰ろうとしている彼に用事がありまして」
!
「え?斉木君に?」
「ええ、それとついでに、新発売のコーヒーサンドお願いします。二つで」
!!
(本当にスイーツに弱いんですね…)
そして古明地は僕の席の向かい側に座った。
心を読めないから何を考えているか分からない。だが、こいつから見える微笑からは良く無いものを感じる
…で、何のようだ。僕を甘いもので釣ったからと言って、話を聞いてやることしかしないぞ
「話は聞いてくれるのですね…じゃあ担当直入に言います。斉木さん、貴方は…超能力者…ですか?」
…ほう、超能力者の部分を周りに聞こえないように小さく聞いてくる辺り、事情は解るようだな
「まぁ明らかに隠してる様でしたし、周りも知らない感じだったので…それにしても割とあっさり白状しましたね。惚け顔一つすると思っていたのに」
昨日と今日のお前の動きで隠すのは無理だと思ってな、もし聞いてきたら素直に白状した方が良いと思っただけだ。それに、お前も似たような能力を持っているだろ?心を読めるとかいう奴にお惚け顔を晒した所で意味は無いからな
「えぇ、その通りです。貴方と同じく、私に嘘は通じませんので。それにしても、私が心を読める力…貴方はテレパシーと読んでますが、いつから気付いてましたか?」
それは_
「成る程、最初の違和感は昨日私が教室に入った時、貴方のテレパシーが不調を起こしてそれの原因が私にある可能性があったと」
まぁ、そうだ。そしt_
「そして貴方の能力の一つである千里眼を使って私を観察していた所、あらゆる不審な言動や、貴方の協力者である占いのギャルさんからの情報から推測して私がテレパシーを使える可能性が出たと」
…
「そして決定的になったのは今朝の出来事、貴方はその姿を見ただけで気を失いかける程の重度な虫嫌いでもあり、そのショックで虫籠を…さいこきねしす?で破壊してしまいました。貴方は恐怖で身動きが取れない状況の中、私が虫と意思疎通を計り教室から追い出しているのを見て、と云うより感じ取って確信を得たと。まぁ流石の私でも精々指令を出すだけで虫の心は読めませんが。ですが感謝なら受け取ります。私の能力ならこれくらい…どうしました?今までにない嫌悪感を感じますが…」
お前、さては周りから嫌われてないか?
「あ、分かります?性分なもので」
そんな性分でよく今まで生きていたな
「これでもペ…家族に指摘されて改善はしているんですよ。でも生まれつきの癖というのは中々取れません」
生まれつきか…僕と同じだな
「同情の必要は無いですよ。こう見えて私はこの力を受け入れていますし、嫌われるのも慣れています。ただ一つ不満点があるとすれば、私の住んでいる所は私を本当に嫌がっているので、対峙してしまうと私を「倒すしかない」って極端な選択肢しか出て来ないんですよ。私はそんなの望まないで話し合いで解決したいのに」
お前一体どこに住んでたんだよ、世紀末?大体話が通じないからそういう選択しか出来ないんじゃないのか?
「でも、悪い事ばかりではありません。一緒に暮らしている家族やペット達とは仲が良いですし、周りから嫌われているからこそあまり周りを寄せ付けないので割と穏やかに過ごしてますよ。でも最近は家族の繋がりで知り合いも増えてきましたが」
要は引きこもりだろそれ
「インドアと言ってください」
届いたコーヒーサンドを食しながら整理する。
話していて分かった。この女…想像を絶するメンタルを持っている。でなければ不可能な考え方をしているのだ。テレパシー能力を受け入れ、余人から嫌われる事も受け入れ、それでいて裕福な環境が整っている。
ふっ、コイツのメンタルは理解が出来ないが、こればっかりは尊敬に値するな。
…いや待て、おかしくないか?だとしたら何故古明地はここに転校してきたんだ?それに今の所学校内で嫌われる言動を取ってはいない。寧ろ嫌われない様にしている節があった。それに相卜が言っていた、僕を探しているという転校理由…なんだ?恐らく僕の考えている事を読み取ったようだが、何故切なそうな顔をしているんだ?
「いえ、実は私の家族の友達の友達の腐れ縁の知り合いから、貴方に会うように命令されて…家ごと追い出されました…」
どういう状況だ。少なくとも、自分の意志ではないという事と、その家族の友達の友達の腐れ縁の知り合いを嫌っているという事はよく分かった。やめろ詳しく話そうとするな。余計に疑問が深まる。とにかく何故そいつはお前を通して僕に会う必要があるのかそれを知りたい。…なんだ?何故そんな地獄の底みたいな顔をしている?
「…その…今は言えなく…まだ言うなって言われているんですごめんなさい…!」
正直だな。まぁそれなら無理には聞かないが、僕はお前の心を読めないのだから嘘で誤魔化す事も出来るのでは?…全てを諦めたような顔になってるのは何故だ?
「斉木さんは分かりませんが、私は心を読めるのですよ?つまり嘘も見えます。そして嘘をついた時のリスクも嫌というほど…」
あ、ごめんなさい。嘘をついた事がないから失念していた。
「でも嘘はつけませんが、本当の事を言わないのは出来ますので、斉木さんの事を秘密にしておく事も出来ます。」
あぁ、頼む。今の言葉でお前を信用出来るか色んな意味で怪しくなったがそこだけは本当に頼む!
まぁ理由は気になるが、疾しい事でないなら別に良い。
少なくともテレパシー以外にも扱える超能力者である僕の存在を幽霊から聞き出して弟子入りする為にここに引っ越して来た訳じゃないなら
「いや何ですかそれ。そんな阿呆らしい人間がいる訳…いるんですか?マジで?」
僕はお前の心は読めないが本心で引いているという事は分かるし気持ちも分かる。うっ…次いでにだが、その阿呆らしい人間がオマケ付きで此処に来る。
「え?頭痛?予知?(斉木さん誰ですかその女の子新しい彼女すか!?楠雄!なんでさぽりんりんと一緒にいるんだよ愛の誓いは!?)!?」
「あ、みこちゃんいらっしゃうわぁ!?」
「ちさぽよごめん!」「お邪魔するっす!」
嫌な展開だ…この喫茶店に相応しくない騒がしい同じ制服の男女が強引に店内に入って来た。
言うまでもない。相卜とクズだ
「いや何で俺の紹介クズなんすか!?いやそんなことよりも、斉木さん誰ですかその女の子新しい彼女すか!?」
「楠雄!なんでさぽりんりんと一緒にいるんだよ愛の誓いは!?」
黙れ
「「ムゴッ!?」」
「え?今何しました?」
別に、手拭いを瞬間移動でコイツらの口の中に詰めただけだ
「いやクズって紹介してた方だけ多くないですか?それに貴方さっきは秘密にって…」
大丈夫だ。心の底から不愉快だがこの二人は僕の正体も知っている。さて、いい機会だ。コイツらにも自己紹介してもらおうか。
「ちょっと待ってください整理が追いつかないのですが?」
大丈夫だ説明する。そして古明地、お前に一言伝えておく。この名を言うのは癪だがな
「…え?」
ようこそ。超能力者達の集い、『PKサイキッカーズ』へ
この世界に来て平常運転(相手の言いたい事を先に言う)のさとり様を書けたのが嬉しく思います…これには楠雄君もさとり様に対する好感度ストップ安