「この世界」の日常   作:黒ピ

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お手伝いが大好きなポッパラムちゃんの話。


#1 はじめまして!わたし、ポッパラムと言います!

「ふぅ、今日の試合もなかなか楽しかったな!」

「ピカピーカ♪」

「ねえねえ、もし良かったらこの後お買い物に行かない?」

「…ふむ、悪くはないな」

 

眩いほどの光と活力とエネルギーに満ちた多くの歓声の溢れる場所から

和気あいあいとした会話と共に出てくる3人と1匹の影。

 

「お父様、お帰りなさいませ!今日もお疲れさまでした!」

「メタナイトー、きょうもすごかったねー♪」

 

つい先ほどまで光の向こう側で競い合っていたそのひと達の周りは

今ではお互いの健闘を称えるように和やかな雰囲気に包まれていました。

 

「この世界」で一番人気といっても過言ではない競技――「大乱闘」。

 

その試合に参加する「ファイター」と呼ばれるひと達が

ステージから戻ってきたことに気づいた『わたし』は、いつものように自分のお仕事を始めるのです。

 

「皆さーん、今回もお疲れ様ですー♪」

 

 

あ、自己紹介がまだでしたね。はじめまして、こんにちは。『わたし』の名前は「ポップ」と言います。

 

元々は「ポッパラム」という、「この世界」の敵である「亜空軍」の一員でしたが、

ひょんなことからマスターハンド様から人間の姿を頂いて、

現在は「大乱闘」に参加する「ファイター」の皆さんの身の回りのお世話や試合の準備などのお手伝いをしています。

 

 

「はい、飲み物をお持ちしましたよ♪」

 

「ぷはー!いつもありがとー、ポップ♪」

「…いつも恩に着る」

「ピカピカ♪」

「いえいえ♪あ、あと、お菓子も作ってきたので、良かったら召し上がってください♪」

「いえーい!お菓子きたー!」

「お、今日のもなかなか美味しそうだな」

「ピカピカー♪」

「…では、遠慮なく頂こう」

「どうぞどうぞ♪」

 

着用しているエプロンのポケットから予めお家で作っておいた袋入りクッキーを取り出して、

わたしはいつも通りにファイターの4人に一袋ずつ手渡していきます。

 

大乱闘というのは、各々の持つ技で戦い合う競技なので、体力の消耗が激しいそうで…、

だから、試合での疲れを甘くて美味しいもので癒してもらえたらいいなって思い、毎日の習慣として続けていたりします。

 

「んー♪今日のもすごく甘々でおいしー♪」

「…良い味だな。」

「はうう、それなら良かったです~♪」

 

…皆さんの美味しそうで幸せそうな顔を見ていると、わたしまた嬉しくなりますしね。

 

「ピッカー!」

「ぼくもぼくもー!」

「はいはい、おかわりですね。でも、あんまり食べ過ぎると晩ごはん食べれなくなっちゃいますから、これで最後ですよ?」

「わーい!」

「ピカ!」

 

「今日の試合はこれで終わりだから…、あ、そうだ!マスターハンド様にスタジアム弁当の売上報告と…、

あ、あと、ハトの巣さんとこへお手伝いしに行かなきゃ!」

「…いつも忙しそうだな」

「そうですねえ。だけど、皆さんのお役に立てることがわたしにとっての幸せですから♪」

「…そうか。」

「それじゃあ、行ってきますねー♪」

「「行ってらっしゃーい!」」

「ピッカー!」

 

 

 

 

 

 

――そんなわけで、次にわたしが向かったのは、「すま村」にある純喫茶「ハトの巣」でした。

 

「お待たせしましたー」

「いえ…、では、よろしくお願いします…」

「はいっ!」

 

いつも通りこのお店のご主人にご挨拶をして、こちらの制服に着替えたわたしは、お客様のいるカウンターの方へ向かいます。

 

 

「あ、ポップ♪ボクはお砂糖とミルクたっぷりで!」

「オレはブラック」

「えー、今日も?あんまり無理しない方が良いんじゃ…」

「うるさい、今日こそは飲めるはずだ」

「ハイハイ…」

「あはは…。じゃあ、ブラックとお砂糖ミルクたっぷりのやつ用意しますね」

 

 

『もっとファイターの皆さんのお役に立てるには、どうしたらいいのだろう』

そんな悩みを抱えていた頃にマスターハンド様から紹介されたのが、こちらでのお仕事でした。

というのも『ハトの巣』には、試合が終わった後のファイター達がよく集まっているからです。

わたしもそれはとても良い考えだと思い、すぐに承諾しました。

 

 

「ンゴォ…、やっぱ苦い…」

「ほらー、言わんこっちゃない」

「はいはい、今お砂糖とミルク持ってきますねー」

 

カランコロン

 

おっと、こうしてる間にも新たなお客様が。

 

「いらっしゃいませ…。おっと、これはこれは」

「こんにちは、いつものを一杯お願いします」

「私は、機械オイルに砂糖を少し」

「おっと、マスターハンドにマスターロボット。」

「おや、貴方がたも来ていたのですか、ピットにブラピ。」

 

白く長い髪と眼鏡、柔らかな笑顔が特徴的な男性と、その隣で一見無機質にわたしを見つめる、双眼鏡に似た頭部と水平に突き出たメカニカルな腕を持つ機械の人形さん。

 

ほどなくして注文された飲み物を差し出したわたしに、

『かつて』とある島に住まうロボット達のリーダーだった方はこのようにたずねてきました。

 

「…『あの子』は、息災にやってるか?」

 

いつもと同じ温かさを感じるその質問に、わたしも口元の綻ぶままに返しました。

 

「『彼』のことなら大丈夫ですよ。

わたしのお仕事や家事とかも時々手伝ってくれてて、

最近じゃ、お料理も作ってくれるようになりましたし」

「…そうか、それなら良かった」

 

…だけど、安堵したように両目を瞑るマスターロボット様は、わたしには何処か寂しそうにも見えました。

 

「…会わなくて良いんですか?」

「あの子自身が『会いたくない』というなら、私とて無理強いは出来ないさ。

そもそもあの子がああなってしまったのは、私が不甲斐無かったせいなのだから…」

「そんなこと…」

 

 

「…さて、そろそろお暇しましょう。

私はショッピング中の弟を連れ戻さなければなりませんし、

マスターロボットも『お子さん達』が家で待っているでしょう?」

「…そうだな。では、失礼する」

「…ポップも、あまり働き過ぎないようにしてくださいね?」

「あ、はい!またどうぞー♪」

 

 

…と、マスターハンド様には忠告されていたのにもかかわらず、わたしったらまた周りが見えなくなってしまったようで、

その後も張り切ってお手伝いを続けていたら、いつの間にやら夜も遅い時間になっていました…。

 

「…そろそろ、お帰りになられた方がよろしいのでは?」

「ふぇっ!?もうこんな時間ですか!?」

 

時計を見てようやく働き過ぎに気づいたわたしは、慌てて自宅に戻る準備を始めました…。

 

……というか、こないだ働き過ぎは良くないって『彼』に怒られたばかりなのに、私ったらもう…

 

「…ああ、そうそう。実は裏の方で『彼』が待っていますよ」

「あうう、やっぱり…」

 

 

 

 

 

 

「…遅え」

「ほ、ホントにごめんなさい、ガレオムさん…」

 

店主さんに言われて店の裏側へ回ってみれば、

案の定そこには仏頂面で仁王立ちしている『彼』ーーガレオムさんの姿がありました…。

 

「夢中になんのはしょうがねえけど、もうちょい区切りつけることを覚えた方が良いと思うぞ、マジで」

「うう、おっしゃる通りです…」

 

ガレオムさんは昔エインシャント島で造られたロボットで、わたしと同じく亜空軍のメンバーだったんですけど、今はマスターハンド様から賜った人の姿で生活しているんです。

元々がかなり大っきかったからか、人の姿でもかなり背が高くて(確か190cm以上だったと思います)、

鋭い目つきや頭部のツノも相まって、なんというか、こう…、ものすごい迫力があります…。

 

ですがガレオムさんは、それ以上は怒ったりせずに、代わりに一回大きく溜め息を吐いた後、

 

ひょいっ、と

 

唐突にわたしの身体を持ち上げて、…まぁその、所謂お姫様抱っこの形にした後、

 

「…とりあえず、さっさと帰るぞ」

 

ぎゅおおおん…、ひゅんっ!

 

…次の瞬間には、高速で夜の世界を駆け抜けていました…。

 

「ひゃあああああっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元々は戦地に素早く辿り着くように設計されたガレオムさんが

わたしを連れてお家まで到着するのにそう時間は掛からなくて、正直とても助かりました。

 

ただ、ちょっとだけくらくらしますけど…。

 

「はぁ、ただいまです…」

 

マスターハンド様から頂いた小さな一軒家の扉を開け、部屋の明かりを点けたら、なんだかホッとした気分になります…。

 

「今日はメシ、オレが作るから。お前はソファで休んでろ」

 

扉の上縁に頭をぶつけないように少し屈みながら入ってきたガレオムさんは、

冷蔵庫のすぐそばに掛けてあったエプロンをあっという間に着けたかと思うと、卵を2個ほど取り出してボウルに割り入れていました。

 

「え、でも…」

「いいから休んでろ。こないだみてえにぶっ倒れられるとこっちだって困る」

「あ、はい…。じゃあ、お言葉に甘えて」

 

…そんな訳で、フライパンの上で食材の焼ける音と菜箸の動く音を聞きながら、しばしゆっくりすることにしました。

しかし、何もしてないとやっぱりちょっと落ち着かないですね…。

 

…とりあえず、通信端末の方でも見てみましょうか。

 

ポケットの中から薄い板状の通信端末を取り出して画面を点けると、通知が沢山溜まっているのが見てとれました。

 

そういえば、ずっとマナーモードにしてましたもんね…。ガレオムさんからも着信何回か来てますし…。

あ、カービィちゃんやコトノハちゃん達からもメッセージ来てたんですね。早速読んでみなくちゃ。

 

ふむふむ…、カービィちゃんはメタナイトさんに沢山お菓子を買ってもらったんですね。

添付された写真には両手に持ちきれないぐらいのお菓子が映ってますが、どれもすごく美味しそうです…♪

 

次にコトノハちゃんのメッセージ欄を、と…、

あうう、私ってコトノハちゃん達にも心配掛けてたのですね…。

曰く、『ポップ、また張り切って働きすぎたんだって?

僕もパパ様も、ポップがまた倒れちゃうんじゃないかってすっごく心配したんだからね?

ガレオムだって落ち着かなくなっちゃうし…』とのことで、本当にもう、ものすごく申し訳ない気持ちになります…。

 

ガレオムさんやマスターハンド様からも同じようなメッセージ届いてるし(ガレオムさんからに至っては何度も)、

明日からは時間とかちゃんと考えてお仕事しなくちゃ…。

 

 

 

…それにしても、

 

ガレオムさん、出会った時に比べると本当に随分と変わりましたね…。

 

 

ーー彼と出会ったのは、光の化身であるキーラ様と混沌と闇の化身であるダーズ様が「この世界」を巻き込んで争っていた時のこと。

 

かつて亜空軍の兵器としてファイターの皆さんと戦った末に亜空間に飲まれて消えたガレオムさんでしたが、キーラ様の手によってファイターを迎え撃つための傀儡として復活させられたんです。

 

…激戦の末再びファイター達に倒された後、突然現れた眩い光がその残骸に当たって、次の瞬間に彼は人の姿になっていました…。

 

『……オレ、なんで…?』

 

マスターハンド様が、キーラ様に囚われる前に放った最後の力の結晶。

 

それに選ばれて再度蘇ったガレオムさんでしたが、彼にとってこの『再生』は、あまり喜ばしいことではなかったんです…。

 

 

あの頃の彼は、事あるごとに癇癪を起こしていました。

その度にわたしはどうにかして止めようとしましたし、ファイターの皆さんも手伝って下さいました。

 

『殺せ、さっさと殺せよ!てめえらなら容易くできんだろうがっ!!』

…そんな言葉を口にすることも日常茶飯事でした。

 

ガレオムさんの心の中は恐らく、辛さや悲しさ、それから苦しさでいっぱいいっぱいだったんだと思います。

そしてきっと…、楽になってしまいたかったんでしょう。

 

…それでもわたしは、彼に生きていて欲しかった。

 

だって、嬉しい事や楽しい事ととか、あと何よりも生きてることで感じられる色んな幸せとか、

そういうのを知らないまま「この世界」から消えてしまうのは、あまりにも悲しすぎるって、そう思ったから…。

 

 

「ーーおい、出来たぞ」

「あ、はい!今行きますねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、いただきます♪」

「いただきます」

 

今夜のメニューは大きなオムライス。

 

見た目だけでも美味しそうなそれを、わたしはすぐにお口に入れました。

 

「…美味しい。すごく、美味しいです…!

ガレオムさん、また少し上手になりましたね…!」

「だろ?今日もカワサキんとこでいっぱい練習してきたからな」

 

お料理を作ったご本人の表情も、心なしか誇らしげな感じに見えます。

 

「…けど、」

「ん?」

「…やっぱ、お前の作ったのの方が一番美味い…」

「えへへ、そう言われるとなんだか照れちゃいますね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ご飯を食べ終わって、順番にお風呂に入った後は、ようやくベッドへと入ります。

 

「はぁ、お布団ふかふか…」

「そりゃそうだろ。今朝洗濯して干しといたんだから」

「そ、そこまでしてくれてたんですね…」

 

ガレオムさん、今日は一日お休み貰ってたのに…。

 

「…まぁ、暇だったからな」

 

ベッドの下の床で敷いたお布団の上で、何故か壁の方を向きながら横になっているガレオムさん。

 

まぁ彼の場合、わたし用のシングルベッドだと一緒に寝づらいでしょうし…。

…お金が貯まったら、カイゾーさんに大きめのベッド頼んでみようかな…。

 

「…なぁ」

「ん、どうしました?」

「…明日は、早く帰ってこいよ?」

「あ、はい…!」

 

 

ーー出会った頃と比べると、だいぶ大人しくなったように見えるガレオムさん。

けれど、心まで平穏になったかというと、恐らくそうじゃないと思う…。

 

彼が心に負った傷は、きっとそう簡単に消えるものじゃない…。

 

それでも…、

 

 

「明日は、帰ったら一緒にお買い物行きましょうか。食材も足りなくなってるの色々ありますし」

「…ああ、約束な」

 

 

…わたしは、ガレオムさんが「この世界」で生きていけるお手伝いがしたいです。

いつの日か、彼が心の底から笑顔になれるように…

 

 

「それでは、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ…」

 

明日へと向かうための挨拶を交わし、部屋の明かりを消したわたしは、

その後すぐに意識を夢の世界へと溶け込ませていくのでした…。

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