「友達になってください」
そんな言葉を、赤と黄色のボーダーシャツを着た金髪のガキにかけられたのは、
二足歩行のオオカミとの勝ち上がり乱闘を終えたすぐ後のことだった。
「……お前さ、誰に対してそれ言ってんのか分かってんのか?」
「そりゃあ、そうだけど…」
そいつは、オレにとってあまり良くない因縁のある相手。
だからなのか、オレをじっと見上げてた小さなガキの方も、
やっぱりほんの少しだけビビってたようだった。
…けど、そいつは、考え自体は全然曲げなかったみてえで、
オレの目を真っ直ぐに見ながら、はっきりとした声で自分の想いを届けてくる。
「……それでもぼくは、君と友達になりたいんだ」
「……マジかよ」
「あら、それは良いじゃないですか♪」
「お前、ヒトの話聞いてた?」
それからしばらく経って、オレはアイスのお店に行って、そこで待ってたポップにさっきのことを話していた。
結局のところ答えなんてオレ一人じゃなかなか出せそうになかったから、
あのガキには『ちょっと考えさせろ』っつって、あの場じゃ返事をしないでおいたワケだけど…
「……だってアイツ、あの時オレが亜空間爆弾で道連れにしようとしたヤツなんだぞ?」
――亜空軍が『この世界』を亜空間に飲み込むためにファイター共と争っていた頃、オレも亜空軍の兵器として奴らと戦った。
その際に相手した赤い帽子かぶったポケモン使いのガキとそいつよりも小さな金髪のガキ。
そいつら二人に負けた後、オレは頭に装備してあった亜空間爆弾を起動させ、その道連れにしちまうためにそいつらを捕まえた。
……後になってそれに失敗したことを知ったけど、それでもあのガキどもはてっきりトラウマになってるかオレを恨んでるもんだと思ったから…
「……まさか、あいつからあんな風に言われるなんて思わなかった」
「それで、どうします?話聞いた限りだとリュカちゃんはそんなに気にしてないみたいですが…」
「そりゃあ…、そうなんだけど…」
「だったら、ガレオムちゃんもお友達になっちゃえばいいじゃないの。」
「いや、そうは言っても…」
「って、左手!?お前いつの間に…」
「あらぁ、アタシなら『だってアイツ、あの時オレが』ぐらいからいたわよぉ♪ねぇ、ポッパラムちゃん?」
「ですねぇ」
「えぇ…?」
会話の途中でいきなり現れた左手ーー『クレイジーハンド』と名乗る『破壊欲の化身』は、さも当然のようにポップとオレの間にあった椅子に座ると、
チョコミントのアイスを頬張りながら遠慮なんて一切せずにオレに話しかけてくる。
「せっかくリュカちゃんの方から積極的にお友達申請されてるんだし、ガレオムちゃんもここは思い切ってお友達になってみれば良いんじゃないの?」
右手の弟であり、破壊の力を持つというこの男は、見た目『だけ』ならすごい爽やかな感じのイケメンなんだけど、
着ている立派な服はだらしなく着崩してるし(オレもあんま他の奴のことは言えねえが)、なんでか口調が女みてえな感じなんだよな…。
「いや、けどよう…、オレ、アイツにひでえことしちまったわけだし…、……そもそも、オレなんかでいいのかよってハナシだし」
『だからダチになるなんてぜってー無理だろ』って言おうとしたところで、
左手は『お前バカなの?』とでも言わんばかりの呆れたようなため息を吐いてから、ゆっくりと言葉を投げつけてきた。
「はぁ…、そんなのもちろん『いい』に決まってるじゃない。
リュカちゃんがわざわざガレオムちゃんのとこに来てそう言ってきたってんなら、つまりはそういうこと。あの子はちゃんとアナタを選んだのよ。
そもそもイヤだったら、自分から友達になりになんてこないわよ」
「そ、そう、か…?」
「そうですよ!リュカちゃん、強くて優しくて良い子ですし、頑張り屋さんのガレオムさんとならきっと良いお友達になれるはずですっ!」
「そうそう♪だからさ、ガレオムちゃんも、少し勇気を出してみたら?」
「お、おう…」
……そんなわけで翌日、どうにかオレもリュカに返事を返すことができた。
初めて出来た『友達』の最初に見せてくれた顔は、お天道サマみてえに明るくて、なんだか眩しかった…。