星を追いかけ、朝日は昇る   作:それおすとろ

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お久しぶりです。楽しみにしていただいている方、お待たせしました。
今から興味をもった方も、1話から順に読んでいただければ幸いです。


友達として

「デイブレイクちゃん! 一緒に併走しませんか!?」

 

「……」

 

「え、何ですか? 私、変なこと言いました!?」

 

「……しない」

 

「ええー! 何でですかー!」

 

 トレセン学園での生活も少し勝手がわかってきたころ。放課後いつものように自主トレへ向かおうとしたところスペシャルウィークに声をかけられた。

 ……こいつは何故、未だに俺に話しかけてくるのだろうか。自分で言うのもなんだが愛想なんて全くないぞ、俺。入学してすぐならまだしも、ある程度人間関係を築くことができたら真っ先に捨てられてもおかしくない人物だ。そうしないのは、彼女の優しさゆえだろうか。だとしたら余計なお世話というやつだ。

 

「はぁ…… そもそも俺とお前らとじゃ併走になんないだろ。すぐ置いてかれる自信あるぜ、俺」

 

 そう。みんな俺とは比べ物にならないくらい速い。というか俺の体力が無さすぎる。今の俺じゃ相手にもならないだろう。

 

「うーん、じゃあ一周だけ!一周だけでも!」

 

「だからやらねぇって!エルコンドルパサーとかグラスワンダーとかいるだろ!」

 

「もちろんグラスちゃん達も誘いますよ! だからほら、一緒にやりましょうよー!」

 

「もう、しつこいなお前!? とにかく俺は行かないからな!」

 

 これ以上スペシャルウィークが何か言う前にさっさと教室を出る。とんでもない速度でバッドコミュニケーションを重ねている気がするがそんなことは気にしていられない。最優先はレースに耐えられる体づくりだ。

 

ーーーーー

 

 教室を出てから十数分。俺はジャージに着替えて練習グラウンドへ来ていた。

 空は快晴。地面には良馬場の芝。そして横を見れば——

 

「えへへ。頑張りましょうね、デイブレイクちゃん!」

 

「……何でいるんだよ、スペシャルウィーク」

 

「いやー、エルちゃんもグラスちゃんも今日は予定が合わないみたいで。せっかくだからデイブレイクちゃんと同じ練習しようかなーって」

 

「いやなんでだよ。自分のメニューやれよ」

 

「でも、1人でやるよりも楽しいじゃないですか! ああ、もちろん邪魔はしないですから!」

 

 そういえばスペシャルウィークはここに来る前まで他のウマ娘とろくに関わったことがないとか言っていたか。もしかしたら友人というのに憧れていたのかもしれない。……なおさら、俺を選ぶのは間違いだと思うが。

 

「……勝手にしろ」

 

「やったー! よろしくお願いします、デイブレイクちゃん!」

 

 まったく、一緒にいると調子狂うやつだ。まあ誰が隣にいようがメニューを変えるわけでもない。いつものようにこなすだけだ。

 

 一通りのアップをこなす。今日も今日とて持久力を鍛えるためのメニューだ。レース後半にバテないよう、またより長い距離を最高速度で走れるようにするための練習。

 最初はゆっくり、余裕のあるペースで走り始める。そしてある程度の距離で、少しペースを上げる。ひたすらそれの繰り返しだ。最後の方はもう全速力で走らないと間に合わないくらいの設定タイムになっている。

 最初は笑顔だったスペシャルウィークも、次第に口数が少なくなってくる。それでもペースが落ちる気配がないのはさすがと言うべきか。

 

ーーーーー

 

「ふぅー……終わり! ほらスペシャルウィーク、水」

 

「はあっ、はあ…… ありがとう、デイブレイクちゃん」

 

「あと10分したら次行くぞ」

 

「ええー! これで終わりじゃないんですか!?」

 

 ……こいつ息の入り早いな。もうある程度まで整っている。さっきの練習でも難なく俺に着いてきていたし、こいつはとんでもないポテンシャルを秘めているのかも知れない。もし、これが中央の普通というのならちょっと自信を無くすレベルだ。

 

「デイブレイクちゃん…… 練習、キツくないんですか?」

 

「あ? キツいに決まってんだろ……脚だってもうガクガクだよ」

 

「それでまだやるんですか!?……すごいですね……」

 

「疲れてからが本番みてぇなメニューもあるからな。こっからはパワー鍛えるぞ」

 

 俺も水を飲んで息を整える。……ちょっとは体力ついただろうか。トレーニングを始めた初日よりは確実に成長しているのを感じる。この調子ならそう遠くないうちに併走に付き合えるようになるかも知れない……出来るからといってやるかどうかは別問題だが。

 スペシャルウィークの返事が聞こえないのでそちらを向くと、俺の顔をじっと見つめるスペシャルウィークと目があった。

 

「あ?何だよ」

 

「ああっ、いえ…… デイブレイクちゃん、こんなの毎日やってるんですか……?」

 

「ああ、そうだな…… 足に疲労は溜まるし、別に毎日ってわけじゃないが……だいたいはこんな感じだな」

 

「どうして、そんなに頑張れるんですか?」

 

「前に言わなかったか?強くなるためだよ」

 

「へぇー…… 私たち、似てますね!」

 

「は?なんでだよ。俺とお前じゃ似ても似つかないだろ」

 

「持ってる夢が、ですよ! 私、日本一のウマ娘になるのが夢なんです! ……私を産んでくれたお母ちゃんのためにも、私を育ててくれたお母ちゃんのためにも!」

 

「ああ……そういやそんなこと言ってたな。ま、頑張れよ」

 

「はい! 一緒に頑張りましょう!」

 

 ……やっぱり、こいつらはキラキラしてるな……

 この身体になって、ウマ娘と関わるようになったからだろうか。克服とまでは行かないが、以前よりは苦手意識は薄れてきた。それに伴って、ウマ娘というのは輝かしいものだというのも改めて感じる。

 

 だから、俺とあいつらは違うのだ。何をしたって、何を目標に持ってたって所詮は偽物。キラキラした本物になんてなれるはずもない。

 

「……やっぱり、似てねぇよ……」

 

「? 何か言いました?」

 

「いや、何でもない。そろそろ時間だ、行くぞ」

 

「え?あ、ちょ、ちょっと待ってください〜!」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 その夜、自室にて。シャワーを浴び、寝る前に過去のレースの動画で走り方を学んでいると、スマホからメッセージが届いたことを知らせる音が鳴り響いた。

 

『今日はありがとうございました! デイブレイクちゃんと練習できて楽しかったです! 毎日は勘弁してほしいですけど……』

 

 見れば、それはスペシャルウィークからのものだった。まったく、つくづく律儀なやつだ。

 

『足のマッサージしとけよ』

 

 結局あのあとも限界ギリギリまで追い込んだので足には相当の負担がかかっているはずだ。少しでも揉んでおかなければ筋肉痛は不可避だろう。

 

「……ふぅ」

 

 スマホと自分の身体をベッドに放り投げる。次第にだんだんと睡魔が襲ってきた。

 

「ふぁあ……」

 

 大きなあくびを一つ。そろそろ寝るとするか。部屋の電気を消して布団をかぶる。

 

「なあ、デイブレイク……俺は、あいつらとうまくやれてるのかな……」

 

 答える者は誰もいない。そのつぶやきは、誰にも聞かれることなく暗闇に溶けていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 次の日、いつものように教室に入ると、これまたいつものようにスペシャルウィークが声をかけてきた。

 

「あっ、おはようございます! デイブレイクちゃん!」

 

「朝から元気だな、お前……」

 

「はい! あっ、セイちゃんも! おはよう、セイちゃん!」

 

 続いてやってきたセイウンスカイにも元気よく挨拶をするスペシャルウィーク。

 ……そういや、こいつ他のやつらにはタメで話すのに俺だけ敬語なんだよな……実は他よりちょっと距離を置かれてるのかもしれない。別にいいけど。

 

「おはよ〜、スペちゃん」

 

 セイウンスカイがこちらに向かってくる。こちらに、というよりかは自分の椅子に、だが。

 

「あ、そうだ! デイブレイクちゃん、昨日は本当にありがとうございました!」

 

「昨日も聞いたよ、それ。何度も言わなくていいって」

 

「いやいや! あのおかげでなんだかすごい力がついたような気がするんですよ!」

 

「1日だけで変わるもんじゃないだろ……」

 

 俺とスペシャルウィークが話していると。

 

「そういえばさ〜、スペちゃんって何でデイブレイクちゃんにだけ敬語なの? 私たちは力抜いていいよ〜って言ったけどさ」

 

ちょうど思ってたことをセイウンスカイが問う。……俺は聞かなくてもよかったんだが。これで気遣われてもかえって困る。

 

「あ、ごめんなさ……じゃなくて、ええと」

 

「いやいいんだけど、話し方は勝手で」

 

「ち、違うんですよ! デイブレイクちゃんが嫌いとかそういう訳じゃなくて……」

 

「……無理しなくていいぞ?」

 

「本当に違うんですって! なんというか、デイブレイクちゃんはクラスメイトっていうより、お姉ちゃんって感じがするっていうか……」

 

「……お姉ちゃん、ね……」

 

 その単語に一瞬だけ顔が曇ってしまったのは誰にも気付かれなかっただろうか。

 

「あ、いや、どっちかっていうとお兄ちゃん……?」

 

「あ、それ分かるかも。いよっ、デイブレイクお兄ちゃ〜ん」

 

「セイウンスカイまで……なんでだよ」

 

「え〜だって、デイブレイクちゃんツンツンしてる割に優しいじゃん」

 

「ツンツンって……そもそも優しくしてるつもりもないんだが?」

 

「いやいや、優しいですよ! この前だって、私とエルちゃんに勉強教えてくれたじゃないですか!」

 

「あれはお前らが泣きつくからだろ…… キングヘイローだけに任せんのも悪いだろうからな」

 

 キングヘイロー。クラスメイトのウマ娘の1人だ。いつも何人かの取り巻きとともに悪役令嬢みたいな高笑いを上げているが、その実面倒見のいいお嬢様って感じのウマ娘だ。

 成績も優秀で、最初スペシャルウィークに勉強を教えていたのも彼女だった。だがさすがに1人では手が回らなそうだったので、仕方なく俺も講師役になった。ただそれだけのことだ。

 

「ほら、そういうところが優しいんですよ!」

 

 普通だと思うけどな…… 別に彼女ら個人に悪感情を持ってるわけではないんだし。

 

「というか、デイブレイクちゃんの方こそどうなんですか!」

 

「どうって、何が」

 

「呼び方ですよ! 私たちのこと、いちいち全部呼ぶじゃないですか! みんなみたいにスペって呼んでくれてもいいんですよ?」

 

「えぇー?」

 

「なんでそんな嫌そうな顔するんですかー!」

 

 こだわってるわけじゃないから別にいいんだけれども。うん、別にいいんだけれども……

 

「……スペシャルウィーク」

 

「なんでですかー!」

 

 悪い。しばらくこれでやらせてくれ……

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「デイブレイクちゃん! 今日こそ併走、付き合ってもらいますよ!」

 

「断る」

 

「ええー!」

 

 昨日に引き続き今日もまたスペが俺の前に立つ。……てかここグラウンドなんだけど。なんならもうアップ始めてたんだけど。なんで今言うかな……

 

「ほら! みんなもやりたいよね?」

 

 みんな?スペが向いた先にはいつものメンバーが勢揃いしていた。

 

「デイブレイクちゃん! エルは負けないデース!」

 

 すでに走る気まんまんじゃん。まだ決めてないからな?

 

「このキングと走る権利をあげるわ!」

 

 できれば謹んで辞退させていただきたい。

 

「ふふっ。ごめんなさいねー?」

 

 柔和な笑みを浮かべるグラス。でもお前止める気ないだろ。さては結構やる気だな?

 

「てかセイウンスカイも居たのか。お前がこういうのに乗る気なイメージなかったんだが」

 

「いやー、セイちゃんもキングに捕まっちゃいまして。ってことで、デイブレイクちゃんにも道連れになってもらいますよ〜」

 

 しまった、囲まれた!

 

「あーもうわかったよ、一周だけな!一周だけならやってやるよ!」

 

「やったー!頑張りましょうね、デイブレイクちゃん!」

 

「そうこなくっちゃデース!」

 

「キングと走れるのだもの、当然よね」

 

「ふふふ、楽しみですねー」

 

「さすがデイブレイクお兄ちゃんですな〜」

 

「ああもう、うるせえぞお前ら!」

 

 

 そんなわけで5人に囲まれて断れるはずもなく。渋々と同じコースのトラックに並ぶ。併走とはいえ、誰かと競って走るのはこれが初めてだ。

 

「よーい、スタート!」

 

 スペの掛け声で走り出す。掛け声係はじゃんけんで決めた。

 幸い、誰も出遅れたりしてはいないようだ。走り出しは順調、このままならば置いていかれることはないだろう。そう思った矢先、早くもその見立ては崩れることになった。

 

「エルの実力は……こんなものじゃないデース!!」

 

「あっこら、マジかよ、飛ばし過ぎだろ!」

 

 エルが速度を上げはじめる。一周とはいえそう短い距離じゃないんだ、序盤に調子に乗ると終盤垂れる危険性だって大いにあるのだが……そんなこと、あいつにはお構いなしのようだ。このくらいならばスタミナは持つ、という自信の現れなのかもしれない。

 

「クッソ、この……」

 

 これはあくまで併走だ。1人がペースを上げれば他もついていかなければならない。俺は必死に食らいつく。

 ……やっぱ速いな、こいつら。俺以外の5人はまだまだ余裕そうだ。

 

 走り続け、なんとか最終コーナーが見えてきた。本当の勝負はここからだ。皆一斉にスパートをかける。俺も一杯になりかけながらそれについていく。

 

「くぅっ……」

 

 結果は皆よりも半歩ほど遅れてのゴールだった。

 

「ああ、クソッ……まだ足んねえか……」

 

 水を飲みながらひとりごちる。やはり最後までついていくことができなかった。まだ、もっと鍛えないと……

 

「お疲れ様です、デイブレイクちゃん」

 

「ん?グラスワンダーか。お疲れ」

 

「あれほど渋っておきながら、ちゃんと走りきれたじゃないですか」

 

「走りきれた?冗談だろ。まだまだ、お前らを追い越すには足りなかったよ」

 

「あらあら、追いつく、ではなく追い越す、ですか。ふふふっ」

 

「ああ。いつか絶対、お前らに勝つ。俺は強いってこと、わからせてやる」

 

「それはそれは。ふふ、楽しみにしてますね〜?」

 

「おう。首洗って待ってな」

 

 ……よっと。よし、息も整ったし自分の練習に戻るとしよう。今ので自分の課題点がよくわかった。選抜レースまでに最低限、レースを最後まで走れるスタミナをつけなくては。

 立ち上がり、俺のいつもの場所である端っこの方のトラックへ向かおうとすると、誰かに声をかけられた。

 

「やあ、アットデイブレイク君。ちょっといいかな?」

 

「……会長さん」

 

 そこにはシンボリルドルフが立っていた。いつ見ても堂々とした立ち振る舞いだ。……というか、なぜここにいるんだ?

 

「何の用です、会長さん」

 

「デイブレイク君。——君に、模擬レースを挑みに来た」

 

 

「…………は?」




楽しんでいただけたでしょうか。

前回の話の展開はアニメ版の展開を参考にしましたが、この世界は基本的に(だいたい)ゲーム版準拠です。なのでチームに所属していなくてもトレーナーと契約さえ結んでいればデビューが可能です。他の細かいところは後々オリジナル設定が混ざってくるかもしれません。

あと来週は投稿できないかもしれません。ごめんなさい。
現在は毎週木曜日投稿を心がけていましたが次回以降は更新頻度が落ちてしまうかもしれません。重ねてお詫びします。
引き続き感想・評判等お待ちしてます。

他のいろんなウマ娘が登場する番外編みたいなの書いていいですか

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