どうしたのか?と思い、上を見ると突然、丸太ほどもある大きな物体がアルカディア号のマストをなぎ倒したのだ!
「何だ!」
「げー!」
「うわぁー!!」船員たちは何が起こったか解らずにパニック状態に陥った。
「何が起こった!?」ユースは船長に聞いたが、船長もパニック状態に陥っているので解答が得られない。
「シャズナ!サーガ!無事か️」ユースは二人の安全を確認した。
「私は大丈夫だ!」
「俺は大丈夫じゃねえ~気分悪い。」サーガがゲッソリとした顔で言った。「今のは何だったんだ?船長が言っていた魔物なのか?」
「何にしてもこの深い霧では何も見えぬな!」
「シャズナ、お前の呪言で霧を晴らせるか?」
「やってみよう!…りるなは、このめさ、たの!」
シャズナが呪言を唱えると辺りに立ち込めていた霧がスーっと晴れてきた。
「ー!!」「ウゲ!」船員達は声にならない悲鳴を上げた。なんとアルカディア号の正面に巨大なタコがいるではないか!その大きさはアルカディア号と同じくらいの大きさ。いや、その1.5倍はあるほどの大きさであった。
「旨そうだ!」先程まで気分の悪そうだったサーガは巨大タコを見て急に元気な顔になった。
「…サーガ、あれを見てその感想か」
ユースは呆れたように言った。
「どちらかと言うと私たちの方が食べられる側じゃぞ」シャズナも呆れ顔で言った。
「で、どうする?このままでは沈没しますぞ。」
船はタコの足を巻き付けられギシギシと悲鳴を挙げていた。「ダンナ達!早く逃げないと船と一緒に溺れちまいますぜ!」どうやら船長はアルカディア号よりも命を選択したようだ。
「サーガ、シャズナ、どうする?」
「俺は喰うぜ!あの巨大タコを!」「勇ましい限りだが、この状況では船と共に沈むだけだぞ。何か策はあるのか?」シャズナは言った。
「なーに!心配ない。シャズナ!呪言でタコの動きを止めろ!そしてユース、お前の火竜の剣であのタコを炙ってくれ!炙った先から俺が喰っていけば、そのうちタコはいなくなるさ!」
「・・・」「・・・」
「それは作戦なのか?」
ユースとシャズナは呆れて言葉が出なかった。
そうしている間に巨大タコはアルカディア号をギシギシと締め付けていった。「このままではこの船は持たぬな。仕方ない、サーガのメチャクチャな作戦を試して見よう。」そう言うとシャズナは呪言を唱えた。すると巨大タコは舟を締め付けながらも動きを止めたのだった。
「ユース!火で炙れ!たこ焼きだ!」
「この剣は調理道具では無いのだが・・・」ブツブツと文句を言いながらもユースはタコの足先を目掛けて炎を放った。辺りにはタコの焼けた芳ばしい匂いが漂い、この緊急事態にも関わらずユースとシャズナの腹が"ぐぅ~"っと鳴ってしまった。
「よーし!頂きまーす️」
みるみる内に焼けたタコ足を食べ尽くすサーガは獣人族の腕力でタコの足を千切りユースとシャズナに投げた️
「ホレ、旨いぞ!食え!」言われるがままに二人も巨大タコを食い始めた。
すると脱出していた船長と船員たちがアルカディア号に戻ってきた。「お前たち!今のうちにタコを食え!食い尽くしたら船は助かるぞ️」サーガはタコを頬張りながら船長たちにも食べるよう薦めた。思いもよらない展開に船員達はたじろいだが、タコを喰ってアルカディア号が助かるならば!とタコの足にかぶりついた。4本目の足が食べられようとしている時、タコの反撃が始まった!身体はシャズナの呪言で動かないのだがスミを吐いたのだ!船の上は巨大タコのスミで真っ黒になったのだが、サーガは全く気にせずに食い続けた。
「おい!サーガ、もうその辺りにしておけ。タコも4本も足を食われたら人間に悪さをしなくなるだろう。」ユースは生きたまま食われ続けるタコが可愛そうになった。
巨大タコは目に大粒の涙をためながらこれ以上食べられないうちに海のそこに消えていった。