ガーネット海峡を渡ったアルカディア号はエマール国の港にたどり着いた。
巨大タコにマストを折られはしたものの一人の怪我人も出さずに済んだ事は奇跡と言って良いであろう。
「ありがとうございました!あなた達がいなければアルカディア号はタコによって積み荷と共に海に沈んでいたでしょう。本当に助かりました」船長は深々と頭を下げた。
「お礼と言っては何ですが、このエマール国は山賊、夜盗が多い国ですので関所が厳しくございます。私が予備で持っている関所の通行手形をあなた方に差し上げたいと思います。」
船長はユースに手の平サイズの板で作られた通行手形を差し出した。
手形にはエマール国全域往来許可証と書かれ国の刻印が押されていた。
「ありがとう。通行手形は発行までに時間がかかるからな。無駄な時間の浪費をせずに済んだよ。」
船長から通行手形をもらったシャズナ達は西の国へ続く街道を目指した。まだまだ先は長いのだが街道の先には西の国があるのだ。
「我らの旅もだいぶんと進んだな。」ユースは言った。
「そうじゃな。このまま何事も無ければ先が見えてきたな。」
「何もなければ退屈だぜ!怪物でも何でも出てきてくれた方が面白いわ」三人三様に話ながら関所の前まで来た。
関所は立派な門構えで左右に大きな壁が立ち塞がっていた。壁の先には岩山が行く手を塞いでいた。
「こりゃ、また、厳重な関所だなぁ。」サーガが間の抜けた声で言った。「船長が山賊、夜盗が出ると言った話はほんとのようじゃな。」シャズナ達は関所に出来た列に並んだ。
関所は混み合ってた。かなりの時間が過ぎユース達は暇になっていた。
関所を通過するには時間がかかるのだ。
シャズナ達にはたいした荷物が無いから問題ないのだが、ほとんどが荷馬車に山のような商品を積んで運ぶ旅商人達だったのだ。
山賊対策なのか、屈強そうな男達が用心棒として雇われていた。
男達は退屈しのぎに他の用心棒達と"腕相撲大会"をして有り余る力を発散させていた。
旅芸人の一座が、この行列の人だかりをchanceと思い様々な芸を披露して小銭を稼いでいた。
ユース達は旅芸人のみごとな芸に小銭を投げた。
「これゃ退屈はしねぇな。よし!いっちょ腕相撲でもしてみるか!」サーガは暇潰しに腕相撲大会に加わるようだ。
シャズナ達は自分達の順番が来るまでそれぞれ時間を潰した。
「そろそろ俺たちの順番じゃねえか?」
サーガはホクホクした顔で帰ってきた。
「どうしたサーガ、嬉しそうじゃな」
「おうよ!腕相撲でガッポリ稼いだぜ」
「ランドルシア.ゼッペルドルフ.フォン.ユースどのは居られるか?」門の衛兵がユースの正式名称を呼び上げた。
「よし!僕たちの番だ。」
関所は通行手形があったので簡単に越えられた。
関所の反対側も岩と山で囲まれた同じような風景であった。
「ここから次の街まではどれくらいかかるのだ?未だ次の町までは遠そうじゃな。」
「待っている間に聞いたのだけど、2時間も歩くとセロケッティアと云う街に出るそうだ。」
「さすがユースじゃな。しっかりしておるわ。サーガではこうはいかん。」
「シャズナ、わしは今日の飯と宿代を稼いどったんだ!」サーガがシャズナの不当な対応に不満を漏らしながら殺風景な景色の続く街道を歩いていった。
「お!あれじゃねえか」サーガが前方を指し示すと巨大な壁が見えてきた。