〜千年女王〜   作:ローゼンリッター

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第七話 ユース サーガ シャズナ

魔の森を抜けた三人は再び西の国を目指した。

ユースは馬車を操作しながら、これまでの事を思い返していた。

そもそもユースがこの旅を始めるきっかけになったのは、あの日の出来事からであった。

ユースの正式な名はランドルシア.ゼッペルドルフ.フォン.ユース。

オーク公国の南方にあるランドルシア領の貴族の長男であった。本来ランドルシア家を継ぐはずだったユースが何故 “この世の真理” を探す旅に出ることになったのか。

ユースには3人の弟がいた。兄弟仲は良く、ユースは弟達の剣の稽古や騎士としての作法なども良く教えていた。

ある時ランドルシアに一人の魔道士がやって来た。

旅の途中らしくランドルシア領主であるユースの館にしばらくの間身を寄せた。

まだ少年っ気が抜けきれていないユースにとっては魔道と言う響きが、何か退屈で平和な日常を変えてくれる魅力的な言葉に思えたのだ。魔道士は気が向くとユース達兄弟を呼んで手品紛いの魔道を見せてくれた。ヒヨコを鶏にしたり、その逆であったり。

時には空中舞踊を見せたりもした。ある時「その魔道の力はどのようにして得るのか?」と次男のラークが聞いた。魔道士は “この世の真理” を手に入れるのです。

そうすれば万物を支配することが出来るでしょう。と教えてくれた。30日ほど魔道士はランドルシア領に留まったが、また旅に出てしまった。

この言葉はユースにとって印象に残る言葉だった。

それから数年経ったが魔道士の言葉はユースの記憶から離れることはなかった。

ある日の夕方、西の空が赤く輝くのを見た。夕日で赤いのでは無く、何か妖しい輝きだった。

その輝きを見た領民の中から数人死人が出た。

そして、なんと死んだ翌日に全員が生き返ったのだ。

そもそも死んだ人間が生き返ることは、この世の真理に反する。

しかも数人の死んだ人間はそれぞれ何かしらの病や身体的な不自由を患っていたのだが、生き返った時には全て完治していたのだった。

この不思議な出来事は若者が旅に出るには十分過ぎる理由となった。

領主の地位を約束されていた若者は家督を次男のラークに譲り旅に出たのだった。

 

 

 

獣人サーガは荷馬車に揺られながら考えた。

シャズナとユースの二人と共に旅をすることになったきっかけを。

あの日、シャズナとユースはサーガの牙を得るために現れた。魔法の牙を二人にくれてやる代わりにサーガは二人と旅をすることになった。

しかし、他にも選択肢はあったはずだ。何も一緒に旅をしなくても。二人と戦い、そして打ち負かすこともできたはずだった。

しかしサーガはそれをしなかった。

退屈していたのだ、自分の生活に。

森に住み湖を眺める暮らしは悪くなかったが、獣人としての。いや狼としての血がサーガを突き動かした。

サーガは獣人族の中でも最強の狼族だった。

そして狼族の中でも魔法の力が宿った牙をもつ一族だったのだ。しかし、仲間たちは流行り病で倒れてしまいサーガは森の中で一人暮らしていた。サーガは、鼻が利く。善人と悪人をかぎ分けられるのだ。シャズナとユースの二人からは悪人の臭いはしなかった。

未知の、甘いようで危険な香りのする。例えようのない不思議な臭いがしたのだ。この二人とならば俺の退屈極まりない生活を面白いものにしてくれそうだった。

そしてサーガはシャズナとユースの旅に付いていくことにしたのだった。

 

 

 

 

シャズナは荷馬車に揺られながら夢を見ていた。

それはシャズナがまだ幼い少女時代の夢だった。

少女のシャズナは村の巫女に仕える見習い巫女だった。見習い巫女はシャズナの他にも4人ほどいた。

この中から1000年巫女が選ばれるのだ。そのためにはシャズナ達は厳しい修行をしなければならなかった。

火の中を歩き、氷の湖を泳ぎ、ある時には崖から鳥のように飛ぶ事を強要された。

もちろん死人も出る。シャズナが18才になる年に生き残っていたのはシャズナとルーチェだけだった。

ルーチェはシャズナよりも出来が良く、精霊を喚ぶことを得意としていた。

ある日、隣村のジュガ族が村にやって来た。ジュガ族が言うには、巫女が一人欲しい。と言うことだった。

ジュガ族はとても好戦的な部族で近隣の村を攻めては征服し、征服された部族は奴隷として扱われていたが、シャズナの村には巫女がいることもあり神の怒りを恐れてジュガ族も手出しをしなかった。そのため村は平和で豊かに暮らしていた。

危険なジュガ族の元に大切な巫女を渡すわけにはいかない。が、ジュガ族は交渉材料として大量の貢ぎ物と脅迫を用意してきた。

 

シャズナの村には巫女が居たため見習い巫女のルーチェがジュガ族の巫女として選ばれたのであった。

本来、巫女の役目は占いや雨乞いなのだか、ルーチェは戦の為の雨乞いや相手のを呪い殺す為の呪術を使わされた。

戦の為には神は味方しない。ルーチェは闇の魔術を使うしか無かったのだ。

闇の魔術を使い続けたルーチェは、闇に呑み込まれてしまい還らぬ人となったのだ。

その頃にはジュガ族は村というよりは国の大きさになっていた。

大量の兵士と武器、そして奴隷。

ジュガ族は国と国との争いをし始めた。が、ルーチェを失ったジュガ族は新たな巫女を求めたのだ。その頃にはシャズナが1000年巫女の座に就いていた。

そして、あの日シャズナの村は戦いに破れシャズナは囚われの身となってしまった。

そうユースが来るまでは。

 

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