最高記録:ジャンプⅠ(15cm)
キリトのレクチャー通りどんどんモンスターを狩っていく俺とクライン。すると、何体目かのフレンジーボアを倒した瞬間身体が光に包まれ、どこからかファンファーレが鳴り響いた。
「・・・?これは・・・。」
「おめでとう、レベルアップだ。」
「やっぱりそうか。・・・となると、ステータスは。」
「あぁ、このゲームはレベルアップする度にHPが増えたり、ステータスを上げるためのポイントがもらえる。そのポイントはそれぞれ、筋力と敏捷に振り分けられるんだ。」
「筋力と敏捷を上げるとどうなるんだ?」
「筋力を上げれば重たい武器を装備できて、敏捷を上げれば走る速さが上がったりする。・・・そうだな、タンクをやるには何が必要だと思う?」
「そりゃあ、鎧や盾じゃないか?」
「その通り。そしてその鎧や盾は重い程防御力が高くなる傾向にあるから、基本的にタンクは筋力を優先してあげる。逆に、敏捷を上げれば素早く動いて攻撃を差し込むことができるから、アタッカーをやるなら上げておいて損はない。ちなみにオレはアタッカーだ。」
「なるほど・・・。なぁ、脚力はどうなんだ?」
「脚力?さっき言った通り、敏捷を上げれば・・・。」
「あぁすまない、言い方が悪かった。
そう、これは死活問題だ。ジャンプをするということは脚の力で地面から離れなければならないと言うこと。そのためにはより力強く踏み込み、より速くその力を解放しなければならない。つまり、場合によっては筋力よりも敏捷の方が俺にとっては上げ得になる可能性があるのだ。もちろん良い槍も使いたいので筋力も上げるつもりではいる。
「脚の筋力だって?おいおい、モンクでもやるつもりか?」
「いや、竜騎士だ。」
「・・・なんて?」
「悪い、忘れてくれ。」
そうだよ、ジャンプ存在しないから竜騎士=ただのドラゴン乗ってる兵士だ!嘆かわしい・・・。
「まぁともかく、脚の筋力は普通に筋力で上がるぜ。」
「・・・そうか、ご教授感謝する。」
そりゃそんな上手い話ありませんよね・・・。てことはこのポイントを割り振るには細心の注意が必要だな。良い塩梅にしなければ良いジャンプはできない。
と、キリトと長話してたせいか、一人でフレンジーボアを狩っていたクラインが戻ってきた。
「おーい、結構狩ってきたぞ!おかげでまたレベルアップしたぜ!」
「おめでとう。・・・おっと、もうこんな時間か。」
現実世界の時間と連動してるのか、辺りは夕焼けに包まれていた。
「いっけね!アツアツのピッツァ頼んでたんだわ!悪りぃ、オレ落ちるわ。」
「待ったクライン。せっかくだし、フレンドにならないか?またキリトに世話になるかもしれないからな。」
「おいおい、オレの事情も考えてくれよ。・・・まぁ、いいけどな。」
「お、じゃあ遠慮なく申請送らせてもらうぜ!えっと確かこの辺に・・・ってアレ?」
「どうした、フレンド申請の仕方がわからないのか?」
「い、いや、そうじゃなくてよ・・・。ログアウトボタンって、どこにあるんだ?」
「はぁ?それならメニューの一番下に・・・ない?」
「なっ・・・お、おい、ハイウインド!オマエのはどうなってる!?」
「・・・残念ながら俺のもない。いや、俺もなかったのはラッキーかもしれない。これで運営の不都合という線が濃くなったかもしれないからな。」
「そ、そうだよな!サービス開始直後のトラブルなんてよくあること—。」
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン
「?この鐘の音は・・・。」
突如として響き渡った鐘の音。気づけば俺たちは最初にログインした時に訪れた広場にいた。周りを見渡せば、他のプレイヤーもここに転送されてきたみたいだ。
「お、おい、なんだよコレ・・・。」
「運営からの正式なアナウンスじゃないか?よかったな、気づいた直後に対応されて。」
「いや、待て。何かがおかしい。」
何か違和感を感じているらしいキリト。そりゃ初のフルダイブ型ゲームなんだし、今までとは違うから違和感を感じて当然なのでは?
そう思っていたが、流石に空が夕焼けより紅く染まった時点で何か異常な事態が起きていると考えを改めた。
『ようこそ諸君、私の世界へ。私の名は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消えていることに気づいているハズだ。』
あ、なんだ。やっぱり不具合修正のお知らせ—。
『しかし、これはゲームの不具合ではない。繰り返す、不具合ではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である。』
・・・・・・は?
『諸君は自発的にログアウトすることはできない。また、外部の人間によるナーヴギアの停止、あるいは解除もありえない。もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し生命活動を停止させる。』
「ちょっ、ちょっと待て。本気で言っているのか・・・?」
「お、おいおい、ハイウインド。間に受けてんのか・・・?そんなことあるわけ—。」
「信号素子のマイクロウェーブは確かに電子レンジと同じだ。リミッターさえ外せば、脳を焼くことも・・・。」
「だ、だったら電源を切れば・・・。」
「待て、ナーヴギアの停止でマイクロウェーブを発するということは電源を切っても終わりかもしれない。むしろ電池切れになれば・・・。」
「そこは大丈夫だ。ナーヴギアには内臓バッテリーがある。」
「で、でも無茶苦茶だろ!?なんなんだよ・・・!」
『残念ながら、現時点でプレイヤーの家族・友人などが警告を無視し、ナーヴギアを強制的に解除しようと試みた例が少なからずあり、その結果213名のプレイヤーがアインクラッド及び、現実世界からも永久退場している。』
「お、おい待て。それは不慮の事故だろ・・・?」
「信じねぇ、信じねぇぞオレは・・・っ!」
『この通り、多数の死者が出たことを含め、この状況をあらゆるメディアが繰り返し報道している。よって、すでにナーヴギアが強制的に解除される危険は低くなっていると言ってよかろう。諸君らは、安心してゲーム攻略に励んでほしい。』
・・・確かこのゲームにも蘇生するためのシステムがあったハズだが、それでそのプレイヤーを蘇生したらどうなる?・・・まさか。
『しかし、十分に留意してもらいたい。今後、あらゆる蘇生手段は機能しない。HPがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される。』
・・・だよな。アレ、ちょっと震えてきたな・・・。
『諸君らが解放される条件はただ一つ。このゲームをクリアすればよい。現在君達がいるのは、アインクラッドの最下層・第一層である。各フロアの迷宮区を攻略し、フロアボスを倒せば上階へ進める。第百層にいる最終ボスを倒せば、クリアだ。』
「第百層だと?できるわけねぇだろうが・・・!ベータテストじゃ碌に上がれなかったんだろ!!」
『それでは最後に、諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ。』
プレゼント、だと?メニューを開き、そのプレゼントやらを取り出す。それはどう見ても普通の手鏡なのだが・・・。
そんなことを思っていると、隣にいたクラインの身体が光りだした。
「うおぉぉぉぉ!?」
「クライン!?っ!俺もか・・・!」
光に包まれて何も見えなくなったが、それは一瞬のことですぐに周りの状況を確認することが・・・。
「だ、大丈夫か?キリト。」
「あ、あぁ。・・・?お前、誰・・・?」
「オマエこそ誰だ?」
隣にいたハズのクラインとキリトが消え、そこには中性的な顔立ちの少年と野武士面の男性がいた。
「一体どうなっている?」
「ハイウインド、オマエは・・・。あれ、オマエは変わってないのか?」
「やけにハイウインドと親しい、ってことはやっぱりお前がクラインか!」
「そういうオマエはキリトか!・・・なんでこうなったんだ?」
「・・・スキャン。ナーヴギアは高密度の信号素子で顔をスッポリ覆っている。だから、顔の形を把握できるんだ。でも、身長や体格は・・・?」
「ナーヴギアを始めて装着した時に、キャリブレーション?とかで身体のあちこちを触られたじゃねぇか。」
「あ、あぁ、そうか。その時のデータを元に・・・。てことはハイウインド!オマエまさかリアルでも・・・。」
「待て、さっきから一体何の話をしているんだ?顔の形がどうとか・・・。まさか、自由に変えられたのか?」
「・・・ハイウインド、アバターの制作画面は見ただろ?」
「・・・待てよ、いつものクセでポチポチして何か飛ばした気がしなくもないが・・・。そうか、アバター制作をすっぽかしていたのか。」
「なるほどな、それでリアルの顔がそのまま反映されたってわけか。・・・なんか癪だな。」
「キリト、わかるぜその気持ち。でも、なんだってこんなことを・・・!」
「どうせすぐに答えてくれる。」
キリトが空中に映る巨大茅場を指差すと、タイミングよく茅場が口を開いた。
『・・・諸君は今、何故と思っているな。何故、ソードアート・オンライン及び、ナーヴギア開発者の私がこんなことをしたのかと。私の目的はすでに達せられている。この世界を創り出し鑑賞するためにのみ、私はソードアート・オンラインを作ったのだよ、そして今、全ては達成せしめられた。以上で、ソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君、健闘を祈る。』
そう言い残して茅場晶彦はその姿を消し、空の色が元に戻った。暫しの静寂の後、小さな悲鳴を皮切りに、動揺が感染していく。
「ちょっと来いクライン、ハイウインド!」
「え?お、おぉ・・・。」
「わかった、わかったから手を放せ。」
クラインと俺はキリトに手を引かれて広場から抜け、人気の無い場所へ辿り着いた。
「・・・よく聞け、オレはすぐに次の村へ向かう。お前らも一緒に来い。
「え?」
「・・・。」
「アイツの言葉が本当なら、この世界で生き残るにはひたすら自分を強化しなくちゃならない。バーチャルMMORPGが供給するリソース、つまりオレ達が得られる金や経験は限られている。始まりの街周辺のフィールドはすぐに狩り尽くされるだろう。効率良く稼ぐには、今のうちに次の村を拠点にした方がいい。」
「オレは道も危険なポイントも全部知ってるから、レベル1でも安全に辿り着ける。」
「え、でも、でもよぉ・・・。オレは、他のゲームでダチだった奴と徹夜で並んでこのソフトを買ったんだ。アイツら、広場にいるハズなんだ。置いてはいけねぇ。」
「・・・・・・。」
(クラインやハイウインドだけでも精一杯なのに、あと二人。いや一人増えたらもう・・・。)
「・・・悪りぃ。オマエにこれ以上世話になるわけにもいかねぇもんな。だからオマエら、気にしないで次の村へ行ってくれ。」
「っ・・・。」
顔を歪めるキリト。そりゃ不安だろう。クラインはニュービーだ。幾らキリトからレクチャーを受けたとはいえ・・・。
「オレだって前のゲームじゃあギルドの頭張ってたからな。オマエに教わったテクでなんとかしてみせらぁ。」
「そうか・・・。そういえばハイウインド、お前の返事を聞いてなかった。仲間がいるなら無理しなくても・・・。」
「いや、俺は父さんのツテでたまたまゲットできただけだ。気にしなくていい。・・・なぁクライン、何かあったらすぐ呼んでくれ。アンタは俺の恩人だからな。」
「よ、よせやいこんな時に。」
「いや、いたって真面目だ。あの時アンタが誘ってくれなければ、俺は何もわからないままやられていたかもしれないからな。その点で言えばキリトにも恩がある。だから、必ず助けに行ってやる。」
「そうか、それじゃそん時はよろしく頼むぜ。」
「・・・じゃあクライン、ここでお別れだな。何かあったら、オレも力になる。」
「おう!」
「・・・またなクライン。」
「キリト、おいキリト、オマエ案外可愛い顔してんな。結構好みだぜ。ハイウインドもそのイケメン面、たまには崩してみろよ。」
「・・・お前もその野武士面の方が、10倍似合ってるよ!」
「善処はしよう。クライン、達者でな。」
前を向くと、キリトはすでに走り出していた・・・かと思えば急に止まり、後ろを振り返る。俺も釣られて後ろを見るが、その先にはもうクラインの姿はなかった。こうしてまた前を向くとキリトは走り出していたため、俺も急いでその後を追った。・・・涙が飛んだ気がするが、気のせいだと思っておこう。
こうして俺とキリトは最短ルートでフィールドを駆け、モンスターと出会っては倒すを何度か繰り返していた。そして、肝心の答えを言ってなかったことに気づき、今更ではあるがキリトに自分の考えを打ち明けた。
「・・・興味がない、だって?」
「いや、クリアしなければ出られないのだから完全に興味がないわけではない。ただ、それ以上にここでやりたいことがある。それが俺がSAOに来た理由だ。・・・そんなヤツが一緒に行動していては少なからず衝突が起きるだろう。よって、俺はオマエに同行するが行動は共にしないことにする。無論、助けが必要ならすぐに応える。・・・すまないが、これで許してくれ。」
「・・・いや、構わない。パーティはどうする?本当に邪魔なら解除するが。」
「そのままにしてくれ。俺の目的には経験値がどうしても必要になる。・・・では早速向こうに行ってくる。手頃なモンスターがいるようなのでな。少々経験を積んでくる。」
こうしてキリトから離れ、単独でフレンジーボアに戦いを挑む俺。SAOクリアよりもやりたいこととはもちろんジャンプだ。これを完成させなければここに来た意味がない。そして、その開拓を進めるために俺は先程レベルアップした時のポイントの殆どを筋力に注ぎ込んだ。
「・・・行くぞ。」
助走は要らない。力強く地面を蹴りつけろ。そうすれば—。
「飛べっ!!」
ダンッ!ザシュッ!
「ブモォォォォ!」
ドゴッ!
「ぐぉっ!・・・ぐっ。」
フレンジーボアの反撃を受けてしまったが、それ以上に俺は歓喜に満ち溢れていた。筋力を上げたことで最初よりも高く飛ぶことができたのだ!!少なくとも20cmは超えていただろう。この調子であればいずれあのジャンプにも届くかもしれない。
そんな希望を抱いた俺は、フレンジーボアの残りHPを無難にソードスキルで狩り、キリトに元へと戻っていった。
ここからハイウインドはキリトについては行くけど一緒に行動はしないという奇妙なポジションにつくこととなりました()
全てはジャンプのために・・・!
ホロウ・フラグメントに登場したキャラを出すか(リーファやシノンなどはそれぞれALO、GGO編にて登場予定)
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出す!
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出さない
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シノンやリーファも出して!
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それ以外の作品からも出せ