"ジャンプ"の開拓者   作:鮭のKan2me

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 前回記録:ジャンプⅡ(32cm)
 最高記録:ジャンプⅡ(32cm)

 


ジャンプⅢ:怒りのジャンプ(攻撃はしない)

「キリト、遅れてすまない。」

 

 

「いや大丈夫だ。まだ始まってないみたいだしな。」

 

 

 キリトの行く先について来てはレベリング、即ちジャンプ開拓から一週間が経過した。そして今日、SAO始まって以来の最初の攻略会議があるという。新しいフロアが解放されれば、その分得られる経験値の多いモンスターが出るかもしれないし、より性能の良い槍を調達できるかもしれない。

 俺が来てからそう数分もしない内に、会場の中心に一人のプレイヤーが現れ、号令をかけた。

 

 

「はーい、そろじゃあそろそろ始めさせてもらいまーす!今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!俺はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」

 

 

 その言葉に会場から笑いが出るが、俺としてはかなりの天啓だった。確かにこのSAOにジョブシステムはないが、そのジョブになりきるというのはジャンプを極めることになる俺からしたら参考になる心構えだ。よし、なら俺は竜騎士で通してやる。もちろん通じないだろうから言葉には絶対出さないが。

 その言葉で緊張がほぐれたのを見て、ディアベルは真剣な顔をして語り始める。

 

 

「今日、俺たちのパーティがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した。」

 

 

 ・・・なんと、それはお手柄だな。

 

 

「俺たちはボスを倒し第二層に到達して、このデスゲームをいつかきっとクリアできるってことを始まりの街で待っているみんなに伝えなくちゃならない!それが、今この場所にいる俺たちの義務なんだ!そうだろう、みんな!」

 

 

 否定はしないが、それは俺みたいなヤツには不釣り合いな義務だろう。なんせ俺はゲームクリアよりジャンプの完成を優先しているからな。

 他のプレイヤーはその言葉に感銘を受け、拍手や口笛を送る。隣にいたキリトは先程から姿勢を変えていないが、その表情には笑みが浮かんでいた。

 

 

「それじゃあ早速だけど、これから攻略会議を始めたいと思う。まずは、6人のパーティを組んでみてくれ!」

 

 

 6人、か。俺はキリトと組むとして、あとの4人は・・・?どうしたキリト、そんなギョッとした顔をして。そんな顔のまま周囲を見渡し始め、俺と目が合った。

 

 

「・・・ヤケに必死そうだが、何かあったのか?」

 

 

「ハイウインド!お前はオレを裏切らないよな!?」

 

 

「何を言っているんだお前は?」

 

 

「あ、いや、ちょっとリアルでのトラウマがな・・・。」

 

 

 ・・・なるほど、ならこれ以上は詮索しない方がいいだろう。バツが悪くなったのか、キリトは俺から視線を逸らす。すると、その先にフードで顔を隠したプレイヤーが一人で座っていた。

 

 

「・・・ハイウインド、ちょっと付き合ってくれ。」

 

 

「?・・・構わないが。」

 

 

 俺が了承すると、キリトは立ち上がってそのフードのプレイヤーの元へと歩き出した。もちろん俺もその後に続いていく。

 

 

「なぁ、パーティ組まないのか?」

 

 

「・・・周りがみんなお仲間同士みたいだから遠慮しただけ。」

 

 

「ソロプレイヤーか、ならオレ達と組まないか?ボスは一人じゃ攻略できない、今回だけの暫定でいい。いいよな、ハイウインド。」

 

 

「異論はない。」

 

 

 俺がそう答えると、フードのプレイヤーはキリトのパーティに入り、視界の端に新しくプレイヤー名が追加された。・・・アスナでいいのか?

 

 

「よーし、そろそろ組み終わったかな?じゃあ—。」

 

 

「ちょお待ってんか!」

 

 

 広場の一番上、つまり最後列にいた男性プレイヤーがディアベルの声を遮った。かと思えば、階段を数回に分けて飛び降り、そのままディアベルのいる広場中心へと降り立った。周りのプレイヤーはその光景におぉー、と感心を示したようだが、俺からすれば全然なってない。まぁ俺もそれを咎められるほど上達はしていないのだが。

 

 

「ワイはキバオウってモンや。ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある。この中に今まで死んでいった2000人に詫びいれなアカン奴がおるハズや!」

 

 

 そういってキバオウはこちら側、正確にこの場に集まったプレイヤー全体に向けて指を差した。というより、2000人だと?最初に死んでいったプレイヤー抜きでも4桁近く亡くなったのか・・・。だが、詫びを入れなければならないプレイヤーとは?

 

 

「キバオウさん、キミのいう奴らとはつまり、元ベータテスターの人たちのことかな?」

 

 

「決まっとるやないか!ベータ上がり共はこのクソゲームが始まったその日に、ビギナーを見捨てて消えよった。奴らは上手い狩場やらボロいクエストを独り占めして自分らだけポンポン強なって、その後もずーっと知らんぷりや。こん中にもおるハズやで!ベータ上がりの奴らが!そいつらに土下座させて貯め込んだ金やアイテムを吐き出してもらわな、パーティメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」

 

 

 待て、キリトはベータテスターだがそんなヤツではないぞ。そう思ってキリトの方をチラッと見たが、何やら思い詰めたような表情をしていた。その顔を見て、俺は—。

 

 

「すまない二人とも、ちょっと行ってくる。」

 

 

「・・・え?」

 

 

 キリトがそう声を出した頃には、俺はその場から跳び去っていた。そのまま俺はその一飛び(・・・)で広場へと降り立つ。

 

 

「おぉ!?な、なんやワレェ!」

 

 

「急に上がってすまない。俺の名はハイウインド。ディアベルさん、一つ発言してもよろしいだろうか?」

 

 

「あぁ、構わない。」

 

 

「感謝する。・・・俺は詳しくは知らないが、確かにベータテスターにもそういう輩が一定数いることだろう。だがな、今の発言はまるでベータテスター全員がそうであるように聞こえたが?」

 

 

「実際そうやろ!そのおかげでウン千死んでるんやからな!」

 

 

「それが事実だとしよう。だがそのベータテスターに助けられた人物がいるとは考えなかったのか?」

 

 

「な、そんなのおるわけ・・・。」

 

 

「ここにいる。俺もニュービーだったが、そのベータテスターのレクチャーのおかげでここまで来れたんだ。それでもベータテスターに、その恩人にそのような仕打ちをするというのであれば、俺もお前なぞの命は預からないし、預けられたくもない!!」

 

 

「な、なんやとぉ・・・!!」

 

 

「失礼、発言いいか。」

 

 

 ヒートアップする俺とキバオウであったが、そこに第三者の介入が入る。そのプレイヤーは褐色肌の大男で、前に立たれるだけでも威圧されるほどだった。実際キバオウも少し後ずさっている。

 

 

「オレの名前はエギル。アンタの言いたいことはつまり、元ベータテスター達が面倒を見なかったからビギナーが沢山死んだ。その責任を取って謝罪・賠償しろ、ということだな。」

 

 

「そ、そうや。」

 

 

 キバオウの返事を聞くと、エギルは一冊の本を取り出しながら発言を続けた。

 

 

「このガイドブック。アンタも貰っただろ。道具屋で無料配布してるからな。」

 

 

「・・・もろたで。それがなんや!」

 

 

「配布していたのは、元ベータテスター達だ(・・・・・・・・・・)。」

 

 

「・・・っ。」

 

 

 何?それは、知らなかったな・・・。いや、俺が知らないだけでキリトも情報を提供していたのかもしれない。

 

 

「いいか!情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのに沢山のプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえて、オレ達はどうボスに挑むべきなのか。それがこの場で論議されるとオレは思っていたんだがな。」

 

 

 ここまで反論されていてはキバオウもぐうの音、いや出てたがそれ以外は言えてなかった。が、それは俺も同じである。俺はたった一人のために激しく反論したが、対してエギルはあくまで理性的に事実を述べ、ほぼ全体に遺恨が残らないようにした。もし俺がガイドブックについての情報を得ていたとしてもそんな対応はできなかっただろう。一度人生を経験したとはいえ、この肉体通りまだまだ子供のようだ。いや今の肉体はアバターなのだが。

 エギルに反論できなかったキバオウはフンッ、と言いながら広場の段差へ戻り、不機嫌そうに座った。その様子を見て、エギルも戻る・・・前に俺の方を向いた。

 

 

「そら、オマエさんも戻った方がいい。」

 

 

「あぁ・・・すまない。アンタがいなければもっと荒れていただろう。感謝する。」

 

 

「フッ、なら貸し一つだ。お互いボス戦頑張ろうぜ。」

 

 

 そんな大人の対応をしたエギルの背中を見ながら、俺は元いた席に戻る。その際視線が集まっていたような気もするが、気のせいではないだろう。あんな啖呵を切って注目するなと言う方が難しい。

 

 

「・・・すまない、ガマンが効かなかった。」

 

 

「あ、あぁ・・・その、気持ちは嬉しかったぜ。」

 

 

「・・・よし、じゃあ再開していいかな。ボスの情報だが、先程例のガイドブックの最新版が配布された。それによると、ボスの名は『イルファング・ザ・コボルトロード』。それと『ルインコボルトセンチネル』という取り巻きがいる。ボスの武器は斧とバックラー、四本あるHPバーの最後の一段が赤くなると曲刀カテゴリのタルワールに武器を持ち替える。攻撃パターンも変わるということだ。攻略会議は以上だ!最後に、アイテム分配についてだが、金は全員で自動均等割り、経験値はモンスターを倒したパーティのもの、アイテムはゲットした人のものとする。異存はないかな?」

 

 

 もちろんだ。その分配方法は最上のものと言って差し支えないだろう。

 

 

「よし、明日は朝10時に出発する。では解散!」

 

 

 ディアベルの言葉を最後に、その場に集まっていたプレイヤーは今後のことについて話し合っていた。一方アスナ(仮)は俺達を置いてそそくさと広場を後にしていた。

 

 

「すまないキリト、一つ用事がある。先に行っててくれ、すぐ戻る。」

 

 

「あぁ、わかった。また後でな。」

 

 

 こうしてキリトとも別れた俺は広場中央、ディアベルの元に向かった。どうやらキバオウもいるようだ。

 

 

「おぉ?オマエは確か・・・。」

 

 

「ハイウインドくんだね。先程の啖呵は見事だったよ。」

 

 

「いえ、正直無鉄砲な行動でした。下手をすれば攻略メンバーに亀裂が入っていたことでしょう。申し訳ありません。」

 

 

「大丈夫、結果的にそうはならなかったからね。ところで、キミのパーティメンバーは今どこに?」

 

 

「広場の外です。あとで追いつくつもりではありますが・・・。」

 

 

「よし、なら行ってくるといい。打ち合わせは大事だろう。」

 

 

「ありがとうございます。・・・最後に、キバオウ、だったか?」

 

 

「なんや、まだ文句あるんか?」

 

 

「いや、先程は感情的になり過ぎた。すまない。ボス攻略、武運を祈る。」

 

 

「お、おぉ・・・。」

 

 

「ではこれで失礼する。」

 

 

 こうして広場を後にし、俺はキリト達のところへ向かった。・・・ところで、槍は持っていなかったものの、先程の跳躍は我ながら見事なものではないだろうか?段差の分もあったとはいえ、十数メートルは跳べた気がする。あのイメージはこれからのジャンプ開拓に多いに貢献するであろう。




 こうしてジャンプ時の高度がどんどん更新されていってるわけですが、実は致命的な欠陥があることにお気づきでしょうか?次回はそれに悩む話になる予定なので期待していただければ・・・。

ホロウ・フラグメントに登場したキャラを出すか(リーファやシノンなどはそれぞれALO、GGO編にて登場予定)

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  • 出さない
  • シノンやリーファも出して!
  • それ以外の作品からも出せ
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